
2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
- 少年事件の国選弁護人とは?
- 少年事件で国選弁護人がつく条件は?
- 国選弁護人に費用はかかる?
20歳未満の少年が事件を起こして警察に逮捕・勾留された場合、資力が一定以下であれば国選弁護人を選任することができます。
少年事件において弁護士の適切なサポートを受けることは、将来への影響を最小限に抑えるために非常に重要です。
本記事では、少年事件の国選弁護人制度について詳しく解説します。国選弁護人の選任条件や費用、私選弁護人との違い、国選付添人制度についても説明します。
また、お金がなくても弁護士サポートを受ける方法や、アトム法律事務所の実際の解決事例も紹介しているので、少年事件でお悩みの方はぜひ最後までお読みください。
2022年の民法改正により、民法上の成人年齢は20歳から18歳に引き下げられましたが、少年法上では「少年とは20歳に満たないものをいう」とされています。本記事内では、少年法にのっとり20歳未満の者を「少年」と呼称しています。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
少年事件の国選弁護人・国選付添人とは
少年事件の国選弁護人とは?
少年事件の国選弁護人とは、逮捕・勾留された少年に対して国が費用を負担して選任する弁護士のことです。
刑事手続きの対象が20歳未満の少年である場合も、成人と同様に弁護人選任権が保障されています。
経済的理由などから自ら弁護士を依頼できない場合に、国が弁護士を選任し、その費用を負担する制度が国選弁護人制度です。
これに対し、自分で費用を支払って選任する弁護士のことを、私選弁護人といいます。
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少年事件で国選弁護人がつく要件は?
すべての少年事件で国選弁護人がつくわけではありません。国選弁護人をつけられるのは、原則として被疑者が勾留されており、かつ資力が一定以下の場合です。
通常、国選弁護人は、被疑者が逮捕されて勾留が決定した後でなければ選任することができません。
勾留とは、逮捕後に留置施設で引き続き身体を拘束する手続きのことをいいます。逮捕された被疑者は、48時間以内に検察に送致され、送致から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求を行います。そして、裁判官が勾留請求を認めれば勾留が決定します。
したがって、以下のようなケースでは国選弁護人をつけることができません。
国選弁護人をつけられないケース
- 逮捕直後(勾留が決定する前)の段階
- 逮捕されていない場合
- 逮捕後に勾留されずに釈放された場合
また、国選弁護人は主に経済的な理由により弁護士をつけられない人のための制度であるため、資力の要件があります。
ここでいう資力に土地や建物などの財産は含まれず、流動性のある(すぐに弁護士費用に充てることのできる)現金や預金のことを言います。
少年事件は「本人(少年)」の資力のみが判断基準
国選弁護人の資力要件(資産が50万円未満)は、あくまで「本人(少年)」の資力のみが判断基準となります。親や家族の資力は関係ありません。
したがって、たとえ親や家族に十分な資力があっても、少年本人の流動資産(現金・預貯金など)が50万円未満であれば、国選弁護人をつけることが可能です。
ただし、50万円以上の資力があっても、私選弁護人に依頼を断られた場合は例外的に国選弁護人を選任できます。
少年事件で国選弁護人を呼ぶには?
少年事件で国選弁護人をつけたい場合は、少年本人が申し出る必要があります。少年の家族や友人などが国選弁護人の選任を請求することはできません。
少年から警察官や裁判官などに「国選弁護人を呼んでほしい」と伝えると、選任請求の書類が渡されます。書類に自身の資力などの必要情報を記入して提出すると、裁判所による審査を経て国選弁護人名簿の中からランダムに弁護士が選ばれます。
選任される弁護士が決まったら、弁護士が少年のいる留置施設に接見(面会)に来るという流れになります。

少年審判では国選付添人がつけられる場合も
成人の刑事手続きでは、警察での捜査のあと検察官に事件が引き継がれ、刑事裁判へと進みます。
しかし、少年事件の場合は流れが異なり、警察と検察で捜査を受けた後、少年は家庭裁判所に送致されます。必要に応じて観護措置(少年鑑別所への収容)が取られ、その後少年審判が行われます。
少年事件が家庭裁判所に送致され、少年審判手続きに移行すると、弁護人ではなく付添人という立場の支援者をつけることができます。付添人は少年審判において少年の法的支援を担い、審判での弁明や証拠調べの請求、少年を受け入れる環境の調整などを行います。
弁護士でない人も付添人になれますが、多くの場合は弁護士が付添人を務めます。
一定の要件を満たす事件では、国の費用負担で国選付添人が選任されることがあります。国選付添人が選任される要件は以下の通りです。
必要的国選付添人
- 検察官関与決定がなされた事件(少年法22条の3第1項)
- 被害者等による少年審判の傍聴が許可された事件(少年法22条の5第2項)
上記のいずれかにあたる場合、国選付添人を選任しなければならない。
裁量的国選付添人
- 死刑、無期もしくは長期3年を超える懲役・禁錮にあたる罪
- 観護措置が取られている
- 弁護士である付添人がいない
上記を全て満たす場合、家庭裁判所の判断で国選付添人を選任することができる(少年法22条の3第2項)。
国選付添人が選任されない場合や自分で弁護士を選びたい場合は、私選付添人を選任することが可能です。
少年事件の国選弁護人は途中で終了?
通常、国選弁護人の任務は勾留段階から一審の公判手続きが終了するまで継続します。しかし、少年事件の場合は特殊な状況が生じることがあります。
少年が逮捕・勾留されて国選弁護人がついた後、検察官が家庭裁判所送致を決定すると、刑事手続きは一旦終了します。そのため、少年が家庭裁判所に送致されたら、国選弁護人としての任務は終了することになります。
家庭裁判所に送致された後は、要件を満たせば国選付添人制度により法的支援を受けることが可能です。送致前に国選弁護人として活動していた弁護士が、引き続き国選付添人に選任されるケースもあります。
しかし、国選付添人が選任されない事件の場合は、付添人なしで少年審判に臨むか付添人を自分で探さなければなりません。
少年事件の国選弁護人の費用はいくら?
国選弁護人・国選付添人にかかる費用
少年事件の国選弁護人にかかる費用は原則として無料です。
ただし、資力があることが後から分かった場合は、裁判所から国選弁護人の報酬を負担するよう命じられることがあります。
国選付添人も、国選弁護人と同様に原則として費用はかかりません。
少年事件の弁護士費用を払えないときはどうする?
少年事件で費用を支払えず私選弁護士に依頼できない場合、いくつかの選択肢があります。
国選弁護人を選任する
少年が勾留されていて資力もない場合、前述の通り国選弁護人に依頼することで、費用をかけずに弁護士のサポートを受けることができます。
ただし、家庭裁判所に送致されると国選弁護人の活動が終了してしまう点には注意してください。
なお、家庭裁判所から検察に逆送致され起訴された場合には、成人の事件と同じく、被告人国選という起訴後の弁護活動を任せる国選弁護人を選任することができます。
当番弁護士を呼ぶ
当番弁護士制度とは、逮捕・勾留されている被疑者が希望したときに、弁護士会の当番弁護士が1回のみ無料で接見を行う制度です。当番弁護士は、年齢を問わず誰でも無料で呼ぶことができます。
当番弁護士を呼ぶには、少年本人が警察官や検察官、裁判官に「当番弁護士を呼んでください」と頼むか、外にいる家族が弁護士会に連絡する必要があります。
当番弁護士の呼び方について、詳しくは『逮捕後すぐ呼べる当番弁護士とは?制度の評判や呼び方・費用もわかる』をご覧ください。
当番付添人を呼ぶ
当番付添人制度とは、少年鑑別所に収容された少年が弁護士の面会を希望したときに、弁護士会が1回のみ無料で弁護士を派遣する制度です。
当番付添人を呼ぶには、少年本人が警察や検察、少年鑑別所、裁判所の職員に「弁護士を呼んでください」と頼むか、外にいる家族が弁護士会に連絡する必要があります。
当番弁護士制度と当番付添人制度の両方を利用することも可能です。勾留の段階では当番弁護士を、少年鑑別所に収容されている段階では当番付添人を呼ぶことになります。
少年保護事件付添援助制度を利用する
経済的理由で弁護士に付添人を依頼できない場合は、日本弁護士連合会(日弁連)の少年保護事件付添援助制度を利用できる可能性があります。
少年保護事件付添援助制度とは、少年が付添人の選任を希望している場合に、日弁連が付添人の弁護士費用を援助する制度です。利用には資力要件などの条件がありますが、条件を満たせば費用の心配なく弁護士のサポートを受けられます。詳細は各地の弁護士会にお問い合わせください。
少年事件の国選弁護人と私選弁護人の違い
国選弁護人と私選弁護人の違いは?
少年事件における国選弁護人と私選弁護人の主な違いは以下の通りです。
【少年事件】国選・私選弁護人の違い
国選弁護人 | 私選弁護人 | |
---|---|---|
選任方法 | 裁判所が選任 | 自分で選ぶ |
費用負担 | 国 | 自己負担 |
選任のタイミング | 原則として勾留された後 | いつでも |
それぞれのメリット・デメリットについて、次で詳しく説明します。
少年事件の国選弁護人のメリット
少年事件で国選弁護人を選任することの最大のメリットは、費用がかからない点です。
私選弁護人に依頼するお金が用意できない人でも、弁護士のサポートを受けることができます。
少年事件の国選弁護人のデメリット
国選弁護人には、制度上いくつかのデメリットもあります。
国選弁護人のデメリット
- 勾留を阻止するための弁護活動ができない
- 弁護士を選べない
勾留が決定する前の段階では国選弁護人を付けることができない点は、大きなデメリットであるといえます。
勾留が決定してしまうと、原則として10日間、延長が認められればさらに10日間の身体拘束が行われるため、長期間学校や会社を欠席することになり、周りに逮捕された事実が知られてしまったり、退学・解雇になってしまうリスクも高まります。
そのため、勾留決定がなされる前に弁護活動を開始し、勾留を阻止することは、少年の日常生活と将来を守るために非常に重要です。勾留されて国選弁護人がついた時点で、すでに少年事件の初期対応としては遅れをとった状態になってしまうでしょう。
また、被疑者・被告人が国選弁護人を選ぶことはできず、登録者の名簿の中からランダムに弁護士が選ばれるため、少年事件の弁護経験の少ない弁護士が選ばれる可能性もないとはいえません。どうしても少年事件に強い弁護士に依頼したい場合は、私選弁護人の選任を検討しましょう。
少年事件で私選弁護人を選ぶメリットは?
少年事件で私選弁護人を選ぶと、費用はかかってしまいますが様々なメリットがあります。
私選弁護人を選ぶメリット
- 弁護士を自由に選べる
- 逮捕前・逮捕直後から活動が可能
- 逮捕から少年審判まで一貫サポート
私選弁護人をつける場合は、知人の紹介やインターネット検索など様々な手段を使って自分で弁護士を探すことが多いです。そのため、数多くの弁護士の中から少年事件の解決実績が豊富な弁護士を選んだり、何人かの弁護士と話して信頼性や相性を確認した上で依頼することも可能です。
また、勾留決定後でなければ国選弁護人をつけられないのに対し、私選弁護人はどのタイミングでもつけることができます。そのため、警察が本格的な捜査を始める前に被害者との示談交渉を行って事件化を防いだり、少年を逮捕・勾留しないよう警察官や検察官、裁判官を説得することもできます。
さらに、私選弁護人は逮捕から少年審判まで一貫して活動できます。国選弁護人の任務は家庭裁判所に送致された段階で終了してしまうため、審判の段階で新たに付添人をつけるか、付添人なしで審判に進むケースもあります。
一方、私選弁護人に依頼すれば、逮捕前・逮捕時から少年審判の終了まで同じ弁護士のサポートを受けることができます。
少年事件の弁護士解決事例
アトム法律事務所の弁護士が解決した少年事件の事例を2つ紹介します。
事例(1)少年の盗撮事件で審判不開始となったケース
少年の盗撮事件(審判不開始)
高校生の少年が、電車内で盗撮を行い警察の捜査を受けた事案。
弁護活動の成果
再犯防止のための対策としてカウンセリングの受診を提案。被害者との示談交渉などの弁護活動を行った結果、審判不開始*となり、学校に通報されることもなく終了した。
示談の有無
あり
最終処分
審判不開始
*家庭裁判所の判断により審判を行わずに事件を終了させること
事例(2)少年の万引き事件で不処分となったケース
少年の窃盗事件(不処分)
大学生の少年が、コンビニで数百円分の食料品を万引きして逮捕された事案。
弁護活動の成果
裁判官に勾留回避の意見書を提出した結果、勾留請求が却下され早期釈放が叶った。少年審判で弁護活動を尽くし、不処分*となって終了した。
最終処分
不処分
*少年審判を行った結果、保護処分を言い渡さずに事件を終了させること
少年事件の私選弁護人をお探しの方へ
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アトムを選んだお客様の声
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各所に迅速に赴き、的確に対処してくれたおかげで立ち直れます。

(抜粋)思いもかけぬ出来事に、ショックと不安で親としてどうすればよいのかわからない状況の中、先生にご相談出来た事で、何とか心を保ち、問題に立ちむかえたと思っております。遠く離れた土地で、すぐに様子も分からない中、息子との接見をはじめ、被害者の方や各方面の方々に迅速に足を運んで下さり、的確に対処して下さったおかげで、今の結果があると思っております。本当に感謝しかありません。これから、今回の事件を忘れず、一社会人として真面目に暮らしていけるよう、家族全員で支える所存です。立ち直るチャンスを与えていただき、本当にありがとうございました。