過去に痴漢で捕まったのに、また痴漢してしまった・・・
このような痴漢再犯では、「起訴されて有罪になるのか」「刑務所に入るのか」など、心配事が多いと思います。
痴漢再犯で不起訴を獲得するためには、被害者との示談と性依存症の治療が重要です。
被害者対応を適切に行うことで、検察官が刑罰を与える必要がないと判断しやすくなります。
また、根本原因である性依存症の治療に意欲的に取り組むことで、検察官に更生の余地があると判断させ不起訴の可能性を高めます。
痴漢再犯で弁護士に相談するべきタイミングは、事件直後から起訴されるまでの間です。弁護士の対応の速さが、早期釈放や不起訴の可能性を高めます。
警察対応と被害者対応に加え、医療機関による支援態勢も整えるため、痴漢再犯でお悩みの方はアトム法律事務所の弁護士相談をご利用ください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
痴漢の刑罰と再犯率
痴漢は何罪?迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪
痴漢には、都道府県が定める迷惑防止条例違反と刑法犯である強制わいせつ罪の2類型が考えられます。
条例違反の刑罰は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(東京都迷惑防止条例8条1項2号)と規定されています。
強制わいせつ罪の刑罰は「6月以上10年以下の懲役」(刑法176条)とされており、罰金刑はありません。
程度によって変わってきますが、
服の上から触る痴漢行為が迷惑防止条例違反
服の中に手を突っ込んで触る痴漢行為が強制わいせつ罪
だとイメージしておきましょう。
痴漢の再犯率は高い
法務省公式ホームページに掲載された、平成27年版犯罪白書によると、次のような分析がされています。
「調査対象事件で初めて実刑に処せられた痴漢型の者56人について、条例違反による前科の内容を詳細に見ると、43人に罰金前科があり、30人に単純執行猶予前科があり、7人に保護観察付執行猶予前科がある(重複計上による。)。」
ここから、罰金前科のある者の痴漢再犯率の高さがうかがえますね。
なお、この記事では再犯を「(タイミングに関係なく)再度同じ犯罪を行った」という意味で用いています。刑法上の「再犯」(累犯)については累犯と表記します。
痴漢再犯の刑罰は重くなる?執行猶予はつく?
前回の痴漢で刑事処分がなかった場合
前回の痴漢で被害者と示談するなど、適切な事後対応を行って不起訴処分を得た場合には前科はつきません。この場合の痴漢再犯では、刑罰が重くなる法律上の決まりはありません。
ただ、前回の事件が警察沙汰になっていれば前歴はついています。前歴がつくと、犯罪履歴が捜査機関に保存されてしまうため、2回目の痴漢の処分を検討する際の材料になり処分が重くなる可能性があります。
特に、前回の事件直後に再び痴漢をしている等のケースでは起訴される可能性が高まりますので、警察対応や被害者対応を適切に行いましょう。
前回の痴漢で罰金刑だった場合
前回の痴漢事件で略式起訴となり、罰金を支払った場合には、前科がついています。罰金刑を受けた人が再び痴漢を行うと、前回刑事処分がなかった時よりも厳しい処分が検討されます。
しかし、条例違反に該当するような程度の軽い痴漢や被害者との間で示談が成立した場合等では、再び罰金刑で済んだり、執行猶予つきの判決になったりする可能性もあります。
前回の痴漢で懲役刑だった場合
執行猶予中での痴漢再犯の場合
痴漢の再犯を【執行猶予中】にした場合、再度の執行猶予はつくのでしょうか。再度の執行猶予の要件は以下の通りです。
- 今回言い渡された刑が1年以下の懲役または禁錮
- 情状に特に酌量すべきものがある
- 前回の執行猶予が保護観察付きでない
上記の3つ全てを満たす必要があるため、再度の執行猶予は非常に厳しいものとなっています。執行猶予中に痴漢再犯をしたならば、再度の執行猶予判決が出るのは極めて限定的な場合であると認識しておきましょう。
痴漢再犯について再度の執行猶予が付かず、実刑判決が出たならば前刑の執行猶予は取り消されます。そうすると今回の刑と前回の刑を合わせた期間、刑務所に入らなければなりません。
関連記事『執行猶予にしてほしい。懲役実刑との違いは?執行猶予中の逮捕で取り消し?』では、執行猶予がつく条件や執行猶予が取り消しになるケースについて詳しく解説しています。
刑の執行を終えた日・執行猶予を得た日から5年以内の痴漢再犯の場合
痴漢再犯が刑法上の累犯にあたる場合、刑罰が重くなります。累犯については刑法56条、57条に規定されています。累犯の要件を条文で確認しておきましょう。
懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
刑法56条
再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の二倍以下とする。
刑法57条
痴漢再犯が累犯にあたる場合、最大で懲役刑が2倍になってしまいます。東京都の迷惑防止条例違反の痴漢なら懲役1年以下になります。強制わいせつにあたる痴漢なら懲役6月以上20年以下です。
痴漢が再犯でも不起訴・執行猶予の獲得は可能?
痴漢で罰金処分を受けたことがある人は、罰金前科がついています。また、痴漢の中でも強制わいせつ罪として起訴され、有罪判決を受けてそれが確定している場合にも、前科がついている状態です。
もっとも、前科があっても、痴漢の再犯で不起訴処分を獲得したり、執行猶予付きの判決を得ることは可能です。
しかし、前科がある中で痴漢の再犯をしたということは、客観的にみて「根本的な解決をしていない」と受け取られる可能性があります。つまり、不起訴や執行猶予獲得への道はとても厳しいと覚悟しなければなりません。
被害者対応を誠実に行うことは当然、自分の中にある性依存症などの原因に本気で向き合い完治を目指して努力していきましょう。
痴漢再犯で不起訴を目指す|「示談」と「治療」
痴漢再犯は「被害者との示談」がマスト
痴漢再犯は、被害者と示談をすることが何より大切です。痴漢は被害者の存在する犯罪です。初犯でも再犯でも、示談で被害者に謝罪し宥恕(ゆうじょ)を得ることが刑事処分に大きな影響を与えます。
特に痴漢の再犯となると、前にも同じ犯罪を犯しているという点で、より重い刑事処分が見込まれます。その意味で、初犯よりも再犯のほうが示談の重みは大きいといえます。
宥恕付示談
宥恕とは「許す」ことを意味する言葉で、加害者を許す旨の条項が入った示談を宥恕付示談といいます。
宥恕付示談の有無のみで起訴・不起訴が決まるわけではありませんが、被害者のいる事件類型では、宥恕付示談が成立すれば不起訴になるものが多いです。
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痴漢再犯は「治療」で依存症を克服する
痴漢や盗撮などの性犯罪は、「魔がさして、してしまった」というケースもありますが、再犯となると事情が変わってきます。
痴漢をはじめて行い、逮捕されたときには、その経験をもとに規範意識が高まるものです。二度と同じ過ちは犯さないよう気をつけようとします。しかし、それを乗り越えてまで同じ事件を犯すとなれば、もはや自己制御ができない病的な原因を疑う必要があります。
そこで、痴漢の再犯をしてしまったときには、性依存症の克服のため、専門機関を受診して治療を行うことを検討しましょう。痴漢の再犯では単に反省し、被害者対応をするだけでは根本解決に至らないと判断され、厳しい刑事処分を受ける可能性があります。
弁護士に相談して、専門家のカウンセリングや治療機関のサポートを受けることも重要です。
痴漢再犯で不起訴を目指す弁護活動
痴漢再犯では、不起訴を目指すことが弁護活動の一番のゴールとなります。不起訴処分となれば、前科を付けることなく事件は終了します。
検察官は捜査の中で再犯という事情に注目しつつ、被害者の感情を考慮した刑事処分を検討します。検察官は公益の代表者として処分を考えます。個人の感情などではなく、多くの人が納得するような落としどころを検討するのが役割です。
検察官が注目する被害者対応や再犯防止への取り組みは、被疑者本人や家族だけで行うことは困難です。法律の専門家である弁護士にアドバイスを求め、刑事事件のプロフェッショナルに対応を任せて最善の結果を目指していきましょう。
痴漢再犯はすぐに弁護士に相談する
痴漢再犯で弁護士に相談するべきタイミングは、事件直後から起訴されるまでの間です。弁護士の対応が早ければ早いほど、早期釈放が現実的になったり不起訴処分の可能性を高めることができます。
痴漢は初犯か再犯か、犯行態様はどうであったか、被害者への謝罪の有無など、諸々の事情によって弁護方針が変わります。
痴漢は被害者と示談をして被害回復に努めることが大切です。事件発生から時間がたてばたつほど、示談交渉の難易度は高まります。謝罪のひとつもしないまま長期間放置することは決して望ましくありません。すぐに弁護士に示談活動を開始してもらい、示談状況を検察官に伝えてもらいましょう。
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まとめ
痴漢再犯は、初犯とは異なる対応が求められます。初犯のときと同じ対応をしても結果が同じになるとは限りません。
むしろ、痴漢再犯では事件解決の難易度が高まるため、刑事事件に精通した弁護士の助けがより重要になります。痴漢の再犯で逮捕されたときには、刑事手続きは一刻を争います。迷うことなく弁護士までご相談ください。