万引き事件で逮捕されると、窃盗罪として刑事手続が進められていきます。場合によっては、逮捕・起訴される可能性もあります。もっとも万引き事件では、被害店舗との示談交渉が刑事処分に影響を与えます。すぐに示談をして、逮捕回避や不起訴獲得を目指していくことが大切です。
もし、起訴されたら、執行猶予獲得に向けた公判活動を弁護士に依頼しましょう。執行猶予付き判決になれば、刑務所に行くことがなくなります。いつもの日常生活を取り戻すために、弁護士に頼っていただきたいと思います。
目次
万引きは刑務所行き?「懲役10年以下」の意味
万引きは窃盗罪で逮捕され起訴される
万引きは、通常、窃盗罪という犯罪になります。逮捕されるときには、窃盗罪の被疑者となります。ただ、万引きをしたときの状況によっては、窃盗罪ではなく、他の犯罪を構成してしまうことがあります。万引きをした後、逮捕されることを免れるために人に暴行や脅迫を用いた時は、事後強盗罪という罪が疑われます。また、万引きをして店員ともめてしまい、店員を突き飛ばして怪我をさせてしまうと強盗致傷罪になる可能性があります。
商品を盗み、その場を静かに立ちさるような万引きでは、窃盗罪となるでしょう。窃盗罪は逮捕され、その後、起訴される可能性もある犯罪です。逮捕されないために、起訴されないためには、犯行後の対応が極めて大切です。法律の専門家である弁護士に相談し、早期解決を図るようにしましょう。
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万引きは起訴されると「懲役10年以下」の刑罰
万引きが窃盗罪で立件され、警察の捜査を受けたとします。警察は窃盗事件を検察官に引継ぎ、捜査が尽くされた段階で、検察官が起訴か不起訴処分を検討します。検察官に起訴されると、刑事裁判を受ける流れになります。通常は、起訴後、1ヶ月前後のタイミングで第1回公判の期日が設定されます。逮捕されずに起訴された場合には、通常の日常生活を送りながら、刑事裁判を受けることになります。
刑事裁判では、窃盗罪の場合、「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」の範囲内で判決が言い渡されます。「10年以下の懲役」ということは、「1ヶ月~10年」の範囲で刑務所に入るということを意味します。3年以下の懲役刑であれば、執行猶予がつく可能性があります。執行猶予が付くときは、5年以下の期間で付され、刑務所に直ちに行くことはありません。
万引きで執行猶予がつく場合|示談の重要性
万引きで起訴されても、刑務所に行かないためには執行猶予付き判決を獲得する必要があります。執行猶予がつかないということは、「実刑」であり、刑務所行きとなります。執行猶予を獲得するためには、様々な活動が求められます。被害者対応ができないまま起訴されたのであれば、まずは示談交渉を進めます。被害者が示談を受け入れてくれれば、執行猶予の可能性は高まります。この場合、示談書や示談金の受領書(正確にはその写し)を裁判所に証拠として提出します。
万引きした店舗と示談ができ、被害弁償の支払いをすることができたのであれば、その事実は審理・判決にも影響します。反対に、示談をしないまま結審してしまうと、執行猶予獲得の可能性は低くなるでしょう。もちろん、示談の有無だけが判決の決め手とされるわけではありませんが、示談が判決に与える影響は大きいといえます。
弁護士が解説する逮捕から刑務所に入るまでの流れ
万引き事件での逮捕|すぐには刑務所に入らない
万引き事件で逮捕されると、すぐに刑務所に入ることになると心配されている方もいると思います。しかし、刑事事件で逮捕されて、すぐに刑務所での服役が決まるわけではありません。刑事事件は厳格なルールにのっとって、手続が進められていきます。逮捕後、勾留という段階を経て、起訴か不起訴の処分を受けます。起訴されてはじめて刑事裁判になり、そこで裁判所の判断を受けます。
逮捕・勾留ではおよそ23日間の身体拘束が行われます。起訴後も保釈で釈放されなければ、裁判が終わるまで拘束状態が続きます。起訴後、約1か月後に第1回公判の期日が設定されます。仮に1回の期日で結審まで進んだとすると、その後に判決の日が設けられ、そこで最終の判断が言い渡されます。そこで懲役実刑が言い渡されても、すぐに刑は確定しません。判決の翌日から起算して、14日間は控訴期間とされており、判決に対して不服申立てを行うことができます。控訴期間が経過したり控訴権を放棄すれば、刑が確定します。
逮捕・起訴・裁判・刑務所の流れ
万引き事件を起こして刑務所に入るまでには、逮捕・起訴・裁判・刑の確定という流れをたどります。もちろん、万引き事件は逮捕されず、在宅事件の扱いになることもあります。また、逮捕されても、どこかの段階で釈放されて在宅事件に切り替わることもあります。検察官の処分で、起訴か不起訴がわかれます。不起訴になれば、そこで事件は終了し、刑事裁判にもなりません。つまり、刑務所に行くことはなくなります。
起訴には大きく二つの種類があります。略式裁判の起訴と、正式裁判の起訴です。略式裁判の起訴では、罰金となり、事件が終了します。正式裁判は、テレビドラマでも再現されているように、傍聴人がいる中で裁判を受けるものです。刑務所行きになるためには、かならず正式裁判を受ける(公開の法廷で裁判を受ける)という手続が必要になります。
万引きで刑務所に入らないために|前科回避の方法
万引きで刑務所に入らないためには、いくつか方法があります。①刑事事件になる前に万引き事件を解決する、②不起訴処分を獲得する、③略式罰金処分を目指す、④執行猶予付き判決を獲得する、という方法を検討します。これらのいずれかが実現できれば、刑務所に入らず事件を終わらせることができます。
この中で、①②は前科が付かずに刑事事件を終わらせることができる方法です。①②は、万引き事件の後、被害者対応を早期に行うことがポイントとなります。すぐに弁護士が動き、示談がうまくいけば逮捕を回避することができます。さらには、警察に被害届が出されずに事件が終了するということもあります。
万引きで執行猶予を獲得する|弁護士相談のすすめ
万引きは示談をして逮捕回避、早期釈放を目指す
万引き事件の解決に最も大切なことは、示談です。被害店舗の管理者と示談することで、逮捕回避の可能性を高めることができます。逮捕された場合でも、早期に示談交渉を開始し、謝罪・被害弁償・宥恕を得る(「許しを得る」という意味です。)ことで、釈放のタイミングを早めることが可能です。逮捕後、勾留された場合には、示談締結により準抗告申立てや勾留取消し請求ができるようになります。
店舗側が示談に応じてくれても、被害弁償の受け入れに留まることもあります。また、会社の方針として、宥恕まではしないということもあります。その場合でも、示談の内容を報告書にして検察官に提出することができます。万引きは、被害弁償をして被害が回復されたことを客観的に示すことが大切です。具体的には、示談金を支払ったときに被害店舗がサインをした受領書を検察官に示すことになります。
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万引きで起訴されたら執行猶予獲得を目指す
万引き事件で起訴されたら、執行猶予付き判決を目指します。懲役刑に執行猶予が付されれば、刑務所に行くことはなく、いつもの日常生活を取り戻すことができます。ただ、執行猶予の期間中は、過ごし方に注意が必要です。たとえ事故であっても、事件に巻き込まれて刑事事件の被疑者になってはいけません。
執行猶予中に再度犯罪を起こしたとなると、執行猶予が取り消されて、刑務所に入ることになる可能性があります。特に、交通事故など、自分では避けがたい状況下で事故を起こしてしまうことがあります。日常生活の中で車を運転する機会が多いなど、少しでも事故のリスクがあるときには、十分行動に注意する必要があります。
万引き事件はすぐに弁護士に相談を
万引き事件は、逮捕される可能性のある犯罪です。たしかに、初犯で示談が成立すれば、不起訴で事件が終了することもあります。しかし、何度も繰り返し行っていたり、万引きをした商品が高額商品であったり、犯行態様によっては、簡単に不起訴処分を獲得することは難しいものです。示談がスムーズにいくとも限りません。
また、万引き事件は早い段階で被害者対応と警察対応をしなければ、逮捕されたり、前科がつく可能性も出てきます。万引きをした場合、とにかく早く弁護士に相談することが大切です。
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【コラム】クレプトマニア(窃盗癖)の事例
万引きが犯罪であること、してはいけないことを認識していても、繰り返し行ってしまう場合があります。万引きする時のスリルを味わいたくて、やめられないという場合があります。このようなときは、クレプトマニア(窃盗癖)の疑いがありますので、弁護士への相談とともに、医療機関のサポートを受ける必要があります。
クレプトマニアは、気持ちの切り替えだけで解決できる問題ではありません。専門の医師にみてもらい、治療をしていくことが必要です。まずは、クレプトマニアの弁護活動の経験を持つ弁護士に、アドバイスを受けることをおすすめします。
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まとめ
万引き事件で刑務所に入るまでには、いくつもの刑事手続きを経る必要があります。逮捕されてもすぐに裁判になるわけでもありません。万引き事件で逮捕を回避したい、不起訴で裁判を回避したいという方は、まず弁護士までご相談ください。万引き事件に詳しい弁護士にアドバイスをもらい、早期解決を目指していきましょう。