2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
盗撮で逮捕・書類送検された場合、前科を回避するには不起訴処分を得ることが最も重要です。
令和7年版の犯罪白書によれば、撮影罪(性的姿態撮影等処罰法違反)の不起訴率は32.7%で、約3人に1人が不起訴となっています。
不起訴になれば前科がつかず、刑事罰も科されないため、職業資格や社会生活への影響を最小限に抑えることができます。
なお、撮影罪の法定刑は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金であり、起訴されれば実刑(刑務所に収容される)が科される可能性があります。
この記事では、盗撮事件の最新の起訴・不起訴率、不起訴になるメリット、そして不起訴を得るための具体的な方法を解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
盗撮事件で不起訴になるメリット
盗撮事件で逮捕・書類送検されたとしても、検察官が不起訴処分を下せば刑事裁判は開かれません。
不起訴処分には主に「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの種類がありますが、いずれの場合も以下のようなメリットがあります。
前科がつかない
前科とは、刑事裁判で有罪判決を受けた記録のことです。不起訴になれば裁判自体が行われないため、前科は一切つきません。
前科がつくと、一定の国家資格(医師・看護師・教員免許など)の取得や維持に支障が出たり、海外渡航時のビザ申請で不利になったりする場合があります。
また、再犯時に量刑が重くなる要素にもなります。不起訴であればこうした不利益を回避できる可能性があるため、将来の社会生活への影響を最小限に抑えることができます。
ただし、逮捕や送検された事実は「前歴」として捜査機関内部に記録が残る点には注意が必要です。
前歴は一般に公開されるものではありませんが、再び事件を起こした場合には捜査や処分の判断材料になり得ます。
刑事罰を受けない
不起訴になれば、罰金・拘禁刑といった刑事罰が科されることはありません。
盗撮は各都道府県の迷惑防止条例違反や、撮影罪(2023年施行の性的姿態等撮影処罰法)に該当し、有罪となれば罰金刑や拘禁刑が科される可能性があります。
例えば迷惑防止条例違反の場合、多くの自治体で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が法定刑とされています。不起訴になればこうした刑罰を一切受けずに済みます。
職業・資格への影響を抑えられる
多くの職業資格では「拘禁刑以上の刑に処せられた者」が欠格事由として定められています。不起訴であれば有罪判決を受けていないため、法律上の欠格事由には該当しません。
公務員、士業(弁護士・税理士など)、医療従事者などの資格を持つ方にとっては特に大きな意味があります。
また、就職・転職時に提出を求められる場合がある「賞罰欄」にも、前科がなければ記載する必要がないのが一般的です。
報道・社会的影響のリスクが下がる
逮捕された時点で報道されてしまうケースもありますが、不起訴処分となれば、その後の裁判に関する報道は発生しません。
起訴されて公判が開かれれば、裁判の経過や判決がさらに報じられる可能性がありますが、不起訴であればそうしたリスクを避けられます。
身体拘束からの早期解放
起訴されると、保釈が認められない限り勾留が続く場合があります。不起訴処分が出れば速やかに釈放されるため、長期間の身体拘束による仕事や日常生活への影響を最小限に抑えることができます。
盗撮事件における検挙数・起訴・不起訴の統計
盗撮事件で不起訴になる可能性はどのくらいあるのでしょうか。最新の統計データをもとに解説します。
盗撮事件の検挙数
2023年7月に性的姿態撮影等処罰法(いわゆる「撮影罪」)が施行されて以降、盗撮事件の大半はこの法律で立件されるようになりました。
それ以前は各都道府県の迷惑防止条例違反として処理されていましたが、現在は撮影罪での検挙が主流です。撮影罪の刑罰は3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金です。
警察庁の犯罪統計資料によれば、令和7年の撮影罪による認知件数は9,962件、検挙件数は8,703件に上り、前年から約18%増加しています。
一方、迷惑防止条例違反に係る盗撮の検挙件数は令和6年で2,013件にとどまり、撮影罪施行前の令和4年の5,737件から大幅に減少しました(令和6年中の痴漢・盗撮事犯に係る検挙状況の調査結果より)。
盗撮事件の起訴・不起訴率
令和7年版犯罪白書によれば、令和6年(2024年)における性的姿態撮影等処罰法違反の起訴・不起訴状況は以下のとおりです。
- 起訴:2,982人(67.3%)
- 不起訴:1,451人(32.7%)
盗撮事件で検察の処分を受けた人のうち、約3人に1人が不起訴となっています。
なお、過去にアトム法律事務所が過去に取り扱った盗撮事件では約81%が不起訴となっています。
撮影罪の起訴・不起訴の内訳
起訴された2,982人のうち、公判請求(正式裁判)が985人、略式命令請求(書面審理で罰金刑)が1,997人です。起訴されても約67%は略式命令、つまり正式な裁判を開かずに罰金刑で終わっています。
不起訴の内訳は1,451人のうち、起訴猶予が1,332人(91.8%)、その他の不起訴(嫌疑不十分等)が119人(8.2%)です。
不起訴のほとんどは「犯罪の事実は認められるが、示談成立や反省などの事情を考慮して起訴を見送る」という起訴猶予によるものです。
他の性犯罪と比較すると起訴率は高い
撮影罪の起訴率67.3%は、刑法犯全体の37.7%と比較すると比較的高い数値です。性犯罪の中で比較しても、不同意わいせつの33.7%、不同意性交等の35.5%を大きく上回っています。
これは、盗撮事件ではスマートフォンの画像・動画データなど物的証拠が残りやすく、嫌疑不十分で不起訴になるケースが少ないためと考えられます。
盗撮で不起訴を得るのに有利・不利な要素
検察官が起訴猶予(不起訴)を判断する際には、以下の有利・不利の要素を総合的に考慮します。これらを踏まえたうえで弁護士に相談するなど適切な行動を取りましょう。
不起訴に有利・不利な要素
| 要素 | 不起訴に有利 | 不起訴に不利 |
|---|---|---|
| 前科・前歴 | 初犯・前科なし | 同種の前科あり・常習 |
| 示談 | 成立・被害者の宥恕(許し)あり | 示談未成立・被害者が強く処罰を求める |
| 反省 | 深く反省・再犯防止策を具体的に実施 | 反省が形式的・否認 |
| 悪質性 | 1回・軽微な手口 | 常習・隠しカメラ設置・複数被害者 |
| 証拠の強さ | 証拠が限定的 | 現行犯逮捕・大量データあり |
| 被害者への配慮 | 損害補填・接触禁止の徹底 | 被害者への直接連絡・接触 |
初犯なら必ず不起訴になるわけではない
「初犯だから大丈夫」という考え方は危険です。初犯は有利な要素のひとつに過ぎず、悪質性・常習性・被害者の処罰感情なども総合的に判断されます。
また撮影罪施行後は罰則が重くなったため、撮影罪として立件された場合は公判請求(正式裁判)になる可能性もあります。
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盗撮で不起訴処分を得るためには?被害者との示談が重要
盗撮で不起訴になるには|犯行を認めている場合
盗撮事件は被害者の存在する犯罪であるため、事態の解決には適切な被害者対応が求められます。
盗撮事件で不起訴(起訴猶予)を獲得するには、被害者との示談が極めて重要です。
示談が成立し被害者と和解しているのであれば、検察官も刑事罰まで科す必要がないと判断する可能性が高まります。
被害者にとっても捜査や裁判で事件について詳細に追及されることは負担になりますから、こういった性犯罪で被害者の意向を無視してまで検察官が起訴の判断をすることはそう多くありません。
他方、示談ができなかったケースでは、ほとんどが罰金刑となり前科が付くことになります。
盗撮事件が起こった場合、早急に弁護士に相談の上被害者と示談を締結することが不起訴処分の獲得につながると言えるでしょう。
盗撮の示談方法と示談金相場
盗撮の慰謝料・示談金相場は約50万円前後が目安です(アトム法律事務所「盗撮の示談金の相場」より)。
ただし、これは相場であり決まった額があるわけではありません。大切なのは誠実な示談交渉で被害者の納得を得ることです。
盗撮は性犯罪であり、被害者は加害者側に対して強い怒りや恐怖心を抱いている可能性があります。そのため、対応には被害者の心情に配慮し細心の注意を払うことが求められ、単独で示談を締結することは極めて困難です。
そうした事情もあり、盗撮事件において示談を締結しできる限り早期に事態を解決するためには、まずは経験豊富な弁護士に相談することが重要です。
示談書には「加害者を許します」という旨の条項(「宥恕条項」といいます)を入れることがポイントです。
他にも、「刑事処罰を望まない」旨の嘆願書や、被害届や告訴取り下げ(取消し)の合意についても、盛り込まれる場合があります。
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盗撮事件で示談できない場合の対処法
盗撮事件では、被害者が特定できないケースや、被害者が示談を拒否するケースも少なくありません。
しかし、示談ができない場合でも不起訴処分の可能性がなくなるわけではありません。不起訴の判断は示談の有無だけで決まるものではなく、加害者の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情状など総合的に考慮されます。
示談以外の手段で反省と再犯防止の姿勢を示すことが重要です。具体的には以下のような対処法が挙げられます。
①贖罪寄付(しょくざいきふ)
贖罪寄付とは、弁護士会や犯罪被害者支援団体などに対して寄付を行うことで、被害回復に向けた具体的な行動を示す方法です。被害者に直接賠償できない場合の代替手段として、実務上広く認知されています。
寄付先としては、日弁連の「贖罪寄付制度」のほか、各地の弁護士会が窓口を設けています。寄付額に明確な基準はありませんが、事件の内容や罰金刑の相場を踏まえて弁護士と相談のうえ金額を決めるのが一般的です。
贖罪寄付を行った事実は、弁護士から検察官に証明書とともに提出され、「被害回復に向けた努力をしている」という客観的な証拠となります。
示談金を支払う場合と比べて効果は限定的ですが、何もしないよりも処分に与える影響は大きいといえます。
②性依存症の専門クリニックへの通院
盗撮を繰り返してしまう方の中には、性依存症(性嗜好障害)の傾向を抱えている方がいます。自分の意思だけではやめられないと感じている場合、専門の医療機関で治療を受けることが再犯防止の有効な手段となります。
具体的には、認知行動療法を中心としたカウンセリングプログラムを提供している精神科・心療内科を受診し、定期的な通院を続けます。
弁護士はその通院記録や診断書、主治医の意見書などを検察官に提出し、「専門的な治療に取り組んでおり、再犯の可能性が低減している」ことを主張します。
検察官にとって、起訴猶予の判断で重要な要素のひとつが「再犯のおそれ」です。自発的に治療を開始し継続しているという事実は、この点において有力な材料になります。
特に余罪や前歴がある場合には、単なる反省の弁だけでは不十分と判断されやすいため、治療の実績がより大きな意味を持ちます。
③反省文・誓約書・弁護人意見書の提出
被疑者本人が作成した反省文や再犯防止の誓約書を、弁護士が作成する意見書とあわせて検察官に提出します。
反省文では、単に「反省しています」と書くだけでは不十分です。
自分の行為が被害者にどのような恐怖や精神的苦痛を与えたかを具体的に理解していること、犯行に至った原因を自分なりに分析していること、今後の再発防止策として何をするかを明確にしていることが求められます。
弁護人意見書では、上記の贖罪寄付や通院の実績、家族の監督体制、生活環境の改善状況なども含め、起訴の必要性がないことを法的な観点から論じます。
複数の対処法を組み合わせることが効果的
実務上は、上記の対策をひとつだけ行うのではなく、複数を組み合わせて検察官に提出することで、不起訴の可能性が高まります。
実際に、被害者が特定できない事案でも、贖罪寄付の実施、専門クリニックへの継続的な通院、反省文の作成を弁護士が意見書にまとめて検察官に提出したことで、起訴猶予による不起訴処分が得られたケースもあります。
ただし、これらの対策は検察官が処分を決定する前に行う必要があります。逮捕・勾留されている身柄事件では最長23日間で起訴・不起訴が決まるため、弁護士への相談は一刻も早いほうが有利です。
在宅事件であっても、検察官からの呼び出しを受けた段階では既に処分が近い可能性があるため、書類送検された時点で弁護士に依頼することをお勧めします。
アトムが担当した盗撮事件で不起訴になった事例
撮影罪(不起訴処分)
ホテルで風俗サービスを受けた際、あらかじめカメラを起動させたスマートフォンをシャツのポケットに忍ばせ、脱いだ服と一緒にベッドの方へ置いてサービス提供者の女性を盗撮した。撮影罪の事案。
弁護活動の成果
被害者との間で示談金30万円を支払い、依頼者を許すという内容(宥恕条項付き)の示談が成立。示談書を検察官に提出するとともに、依頼者が深く反省していること、示談が成立し被害回復がなされていることなどを主張する意見書を提出した結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり(30万円)
最終処分
不起訴
撮影罪(不起訴処分)
駅前の路上で、通行中の女性のスカートの中に自身のスマートフォンを差し入れて動画を撮影した。加害者は当時飲酒により判断能力が低下していた。撮影罪の事案。
弁護活動の成果
弁護士による交渉の結果、被害者との示談が成立。示談書には、依頼者を許し、刑事処罰を求めないという宥恕文言もいただけた。弁護士は、示談が成立したことを証明する示談書の写しを速やかに担当警察官に提出した結果、本件は検察庁に送致されることなく、警察段階で手続きが終了(送致なし)。
示談の有無
あり(60万円)
最終処分
不起訴
盗撮事件で不起訴を得るには早めの弁護士相談が鍵
弁護士に相談することで、示談以外でも有益なアドバイスを受けることができます。
弁護士は、法律の専門家としての観点から、取り調べの受け方や被害者への対応についても、適切な助言をしてくれます。
また、逮捕されている場合には勾留を阻止する活動や保釈請求など、加害者の早期釈放のための活動にも尽力します。
アトム法律事務所では24時間365日刑事事件のご相談を受付しています。警察が介入した事件では無料相談も可能です。盗撮事件の加害者となってしまいお悩みの方は以下の番号からお気軽にお電話ください。
早期の相談がきっと最良の結果につながります。


