強姦目的で被害者を連れ去ったり、わいせつ目的で子供をさらったりすると、わいせつ目的略取罪もしくはわいせつ目的誘拐罪に問われる可能性があります。
被害者が逃げ出したり、第三者に発見されたりして、強姦やわいせつ行為に失敗したとしても、略取・誘拐罪は成立します。
特に被害者が幼い事案では、逮捕・起訴されやすくなるでしょう。
この記事ではわいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪の要件や定義、刑罰などについて解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪とは
略取・誘拐とは?
略取・誘拐とは、他人を自由に移動する権利を奪い、その人の居場所を変更する行為を指します。
略取は、暴行・脅迫などを用いて、主に力づくで連れ去る場合を指し、誘拐は騙すなどして連れ去る場合を指しますが、法律上はほぼ同じ扱いとなります。
わいせつ目的で人を略取・誘拐することは、刑法第225条に規定された重大な犯罪行為です。被害者の人権を著しく侵害し、社会的影響も大きいため、厳しい刑罰が科されることになります。
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪の刑罰
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪は、1年以上10年以下の懲役に処せられます。また、未遂罪も処罰の対象となるため、被害者をわいせつ目的で略取・誘拐を試みただけで罪に問われる可能性があります。
営利目的等略取及び誘拐(刑法225条)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の拘禁刑に処する。
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪は親告罪ではないため、被害者側からの刑事告訴がなくても、起訴される可能性があります。
しかし、非親告罪であっても、被害者の処罰感情は、加害者の刑事処罰に大きな影響を与えるケースが一般的です。そのため、告訴される前に示談を締結し、被害届や告訴状の提出をしないことに同意してもらうことが重要となります。
一度提出された告訴状は、後になって示談が成立しても、自動的に取り消されるわけではありません。
検察官の判断によっては、示談しても起訴される可能性がゼロではありませんので、わいせつ目的の略取・誘拐事件を起こした場合は、迅速に弁護士に相談しましょう。
実際にわいせつ行為をしていたらどうなる?
わいせつ目的で略取・誘拐をして、実際にわいせつ行為をしていた場合、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などが成立します。
例えば、わいせつ目的略取・誘拐罪と不同意わいせつ罪が成立する場合、両者は手段と結果の関係にあたるため、刑法第54条に規定されている牽連犯の関係になります。
牽連犯は複数の犯罪が成立していますが、科刑上一罪として処理されるため、最も重い犯罪について定めた刑のみが科されます。
わいせつ目的略取・誘拐の刑罰は「1年以上10年以下の拘禁刑」で、不同意わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の拘禁刑」です。よって、この場合、刑の重い「わいせつ目的略取・誘拐罪」の法定刑の範囲内で処罰されることとなります。
不同意わいせつ罪の詳細については『不同意わいせつ罪とは?逮捕されたらどうなる?強制わいせつ罪との違いを解説』の記事をご覧ください。
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪で逮捕されたら
逮捕後の流れ
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪で逮捕された場合、まず警察署で取り調べを受けます。その後検察官に身柄が送致され、勾留の必要性があるかどうかが判断されます。
検察官が裁判所に勾留請求を行い、勾留が認められると取り調べを経て、起訴するかどうかが決定されます。
逮捕から起訴までの期間は通常23日間以内ですが、勾留期間内に起訴できずさらに捜査が必要な場合、一時釈放されて在宅事件に切り替わるケースもあります。
逮捕されたら起訴される?
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪で捜査されたり逮捕された場合、余罪や同種前科が多数など、状況によっては起訴されるでしょう。悪質な犯行や、実際にわいせつ行為に成功していて別の罪が成立している場合も、起訴される可能性が高いです。
もっとも、証拠が不十分な場合や、被害者との示談が成立した場合などは、不起訴となりやすいといえます。
起訴された場合は、公判が開かれ、刑事裁判での審理となり、被告人は弁護人と共に無罪を主張したり、処分の軽減を求めていきます。
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わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪の捜査を受けたら弁護士に相談を
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪は、社会的影響が大きく、厳しい処罰の対象となりうる重大な犯罪です。そのため、疑いをかけられただけでも、個人の人生に重大な影響を及ぼす可能性があります。
もし警察から事情聴取を求められたり、捜査の対象となったりした場合は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。弁護士は、被疑者・被告人の権利を守り、適切な法的助言を提供することができます。
例えば、取り調べの際の対応方法や、証拠の取り扱いについてのアドバイス、示談交渉のサポートなど、様々な面で支援を受けることができます。また、無実の場合は、その証明のための戦略を立てることも可能です。
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪の解決事例
わいせつ目的略取罪の弁護事例
わいせつ目的略取罪(不起訴処分)
泥酔して道で寝ていた20代女性を自家用車に乗せたところ、警察から職務質問を受けて逮捕・勾留された。わいせつ目的略取の事案。
弁護活動の成果
被害者とは宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。その結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
わいせつ目的誘拐罪の弁護事例
わいせつ目的誘拐罪(不起訴処分)
SNSで知り合った、家出して宿泊できる場所を探していた18歳未満の少女を自宅に泊めた。わいせつ目的誘拐および強制わいせつ未遂の事案。
弁護活動の成果
被害児童とは両親を通じて宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。その結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪の相談はアトム法律事務所へ
弁護士に相談することで、自身の立場を適切に主張し、公平な裁判を受ける権利を確保することができます。また、必要に応じて被害者との示談交渉をしたり、更生のためのプランを提示したりすることで、可能な限り軽い処分を受けられるよう努めることができます。
結論として、わいせつ目的略取罪・わいせつ目的誘拐罪は非常に重い犯罪であり、疑いをかけられただけでも深刻な事態です。しかし、適切な法的支援を受けることで、自身の権利を守り、公正な扱いを受けることができます。
早期の段階から弁護士に相談し、適切な対応を取ることが、結果的に最善の道につながる可能性が高いといえるでしょう。