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微物検査とは?痴漢冤罪との関係や精度・信頼性をわかりやすく解説

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痴漢を疑われた際、「微物検査」と呼ばれる捜査手法が取られることがあります。

微物検査とは、衣類や身体などに付着した繊維や皮膚片、DNAなどの「微物(びぶつ)」を科学的に調べることで、被疑者と被害者の接触の有無を推定する捜査手法です。

しかし、精密に見えるこの検査には限界があり、「付着していた=接触した」という単純な結論が必ずしも導けるとは限りません。ときには無実の人が冤罪に巻き込まれる一因となることもあります。

この記事では、微物検査の検査内容や精度、痴漢冤罪が生まれる可能性などに関してわかりやすく解説します。

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微物検査とは?痴漢事件で微物検査が行われるのはなぜ?

微物検査とは?

微物検査とは、衣類や身体などに付着した繊維や皮膚片、DNAなどの「微物(びぶつ)」を科学的に調べることで、被疑者と被害者の接触の有無を推定する捜査手法です。

顕微鏡や科学的な分析機器を用いて、事件に関係する人や物の接触の有無を科学的に検証するために使われます。

なお、微物検査は広範な痕跡物質を対象としますが、その中で繊維片が特定された場合、それをさらに詳細に分析する際には繊維鑑定がおこなわれます。微物検査は繊維鑑定への橋渡しとなる役割を果たします。

なぜ痴漢事件で微物検査が行われるのか

痴漢事件で微物検査が行われるのは、被疑者とされる人物と被害者の間に実際に接触があったかどうかを科学的に確認するためです。

痴漢事件は、目撃者がいなかったり、防犯カメラに映っていなかったりすることが多く、加害者とされる人と被害者との身体的接触があったかどうかが争点になることがあります

このような状況で、重要な証拠となり得るのが微物検査です。

痴漢事件では被疑者が衣服の上から被害者の身体を触っていることが多く、被害者の衣服の繊維が被疑者の手や指に付着していることがあります。微物検査によって「接触があったかどうか」を判断する一因になるケースもあるため、微物検査が行われるのです。

微物検査では、主に以下の点が調査されます。

  • 被害者の衣服に被疑者の繊維や汗などが付着していないかを調べる
  • 被疑者の手や指に、被害者の衣類の繊維が付着していないかを確認する

実務上、微物検査は、痴漢事件の通報を受けて現場に臨場した警察官によって行われることが一般的です。

微物検査の手順

微物検査の具体的な流れの一例は、次のとおりです。

微物検査の流れ

  1. 被害者や容疑者の衣服や手を、特殊なフィルムや粘着テープで採取
  2. 採取した物質を顕微鏡などで観察・分析
  3. 必要に応じてDNA鑑定、繊維の種類や形状を調べて、接触の有無を推定

微物検査は一見、科学的で客観的な証拠となる印象を受けるかもしれません。

しかし、実際には「付着していた=接触した」という単純な結論が必ずしも導けるとは限らない点に注意が必要です。

微物検査は「絶対」ではない|精度と信頼性

微物検査は「絶対」ではありません。そのため、痴漢事件において「微物が付着していた=犯人」となるわけではありません。言い換えると、微物が検出されなかったからといって、無実であるとも限らないのです。

微物検査の精度と信頼性には、以下のような問題が生じる可能性があります。

(1)誤検出が起こる

繊維をはじめとする微物は、人体や衣類のわずかな接触でも移動するため、通勤ラッシュの満員電車など、人と人が密着する環境では「犯人でなくても」繊維が付着する可能性があります。

また、微物は時間が経つと手や指から取れてしまうこともあり、実際に痴漢をした犯人であっても、繊維が検出されないこともあります。

(2)再現性の問題

微物検査は、同じ条件で再検査をしても、必ずしも同じ結果が出るとは限りません。技術者の技量や使用される分析機器によって、微妙に結果が異なるリスクも存在します。

痴漢事件で微物検査以外の証拠は何があるのか

痴漢事件では微物検査以外にも、重要とされる証拠は多数存在します。

痴漢の証拠となるものは、主に以下が挙げられます。

痴漢の証拠の例

  • 被害者の供述
  • 目撃者の供述
  • 電車内の防犯カメラ など

痴漢冤罪では、微物検査以外の証拠も踏まえ、総合的に無罪・有罪を争っていくことなります。

被害者の供述

被害者の供述はもっとも重視される証拠の一つです。被害者の話が一貫していて具体性があるほど、信用される可能性が高くなります。

目撃者の供述

第三者が犯行現場を見ていた場合、その証言は重要な証拠となります。ただし、混雑した電車内では目撃者が現れるケースは多くありません。

電車内の防犯カメラ

電車内で発生した痴漢事件の場合は、電車内に設置された防犯カメラの映像が証拠となる場合もあります。電車の混雑具合や被疑者と被害者がどの程度接近していたか、位置関係などが確認されます。

その他にも痴漢の証拠について詳しく知りたい方は『痴漢の証拠とは?現行犯逮捕と後日逮捕(通常逮捕)をケース別に解説』の記事をご覧ください。

痴漢冤罪で微物検査が争点となった裁判例

痴漢は、主に各都道府県で定められている迷惑防止条例もしくは不同意わいせつ罪に問われます。

たとえば、東京都の迷惑防止条例に抵触すると、「1か月以上6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。刑法の不同意わいせつ罪に抵触すると、「6か月以上10年以下の拘禁刑」に処されます。

ここからは、痴漢冤罪で微物検査が争点となった過去の裁判例をご紹介します。

微物検査で証拠が出ても無罪となったケース

裁判例(東京地裁平成24年9月20日判決)

被害者の犯人特定に関する供述の信用性に合理的な疑いが残るとして無罪となった事案。

微物検査(繊維鑑定)に関するポイント

  • 被告人の左手の平から採取された繊維と、被害者のスカートおよびパンツ(下着)の構成繊維との間に、類似の繊維が検出されたが「類似」しているだけで「同一」とは断定できない
  • 繊維の種類が普遍的(ありふれたもの)であるため、被害者由来と特定できない。
  • 鑑定方法が精密ではなく、他の繊維の付着状況も考慮すると、決定的な証拠とは言えない。

その他のポイント

  • 満員電車内で目視せず感触頼りに掴んだため、犯人ではない被告人を誤認した可能性を否定できない。
  • 犯人を掴んだ状況(手か袖か)についての被害者供述が変遷し、信頼性に疑問が残る。

微物検査で証拠が出なくて無罪となったケース

裁判例(さいたま地裁平成22年6月24日判決)

痴漢の被害事実は認定されたものの、被告人が犯人と断定するには合理的疑いが残るとして無罪とされた事案。

微物検査(繊維鑑定)に関するポイント

  • 被告人の左手の甲および掌から採取された繊維と、被害者Aの下着および着衣から採取された繊維の間に、同種または類似の繊維は検出されなかった
  • 被害者の下着に付着していた細胞様片からはヒト成分(DNA)が検出されたが、そのDNA型は被告人のものとは一致しなかった

その他のポイント

  • 被害者が痴漢の手を直接つかんだとは断定できず、記憶も曖昧。
  • 混雑した電車内で、犯人を誤認した可能性が否定できない。
  • 目撃証言も曖昧で、痴漢の具体的状況を証言できていない。

微物検査・痴漢冤罪に対して弁護士ができること

もし微物検査の結果が有罪の根拠にされそうな場合でも、弁護士による弁護活動で次のような対応が可能です。

(1)検査手法の信頼性を争う

弁護士は微物検査の信頼性を精査し、検査方法そのものに疑問を示すことで、証拠としての価値を下げる主張が可能です。

具体的には「検査の方法に問題がなかったか」「検査結果が本当に客観的なものだったか」などを確認します。

アトムの解決事例(駅での痴漢冤罪で不起訴獲得)

駅ホームにおいて、すれ違いざまに女性の臀部に触れたとされた痴漢事案。依頼者は容疑を否認したが、目撃者と称する男性に取り押さえられ駅員に引き渡された。迷惑防止条例違反として検挙。


弁護活動の成果

痴漢を行ったというには不合理な条件があり、その点をまとめた意見書を検察官に提出。不起訴処分となった。

(2)証拠開示請求

警察や検察に対して、微物検査の詳しい資料(検査報告書、写真、解析データなど)の開示を求めることで、証拠の根拠を詳しく分析します。

証拠に根拠が欠けると判断した場合には、捜査機関に意見書を提出するなどして、冤罪を防ぎます

アトムの解決事例(電車での痴漢冤罪で不起訴獲得)

電車内において、服の上から手の甲で被害者女性の臀部を触ったとされるケース。被害者や目撃者によって駅に降ろされ、駅員に引き渡された。依頼者は一貫して否認。迷惑防止条例違反の事案。


弁護活動の成果

検察官に対し電車に乗っていた経緯や電車内での姿勢等をまとめた否認主張の意見書を提出。不起訴処分となった。

(3)独自鑑定の依頼

必要に応じて、第三者(民間の鑑定機関や科学捜査の専門家)に対し再鑑定を依頼し、検査結果の信頼性を確認します。

弁護士に依頼することで、不当な起訴や不確かな証拠による冤罪を防げる可能性が高まります

痴漢事件でお悩みの方はアトム法律事務所へご相談

痴漢事件などで用いられる微物検査は、たしかに科学的な検査手法ではありますが、絶対的な証拠ではありません。痴漢事件は微物検査の結果や、被害者・目撃者の供述などから、総合的に判断されることになります。

もしあなたやご家族が突然、痴漢などの容疑をかけられた場合は、冷静に事実確認を行い、早い段階で法律の専門家である弁護士に相談することが、誤った結論を防ぐ第一歩となります。

特に痴漢冤罪の経験がある刑事事件に強い弁護士に相談すれば、過去のノウハウから、取り調べや今後の方針について適切なアドバイスがもらえる可能性が高まります。

疑わしい検査結果や不十分な証拠による冤罪を防ぐために、ぜひ正しい知識を持ち、適切に対応していきましょう。

ご依頼者様からのお手紙・口コミ評判

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

先生からの親切なアドバイスを基に自信をもって活動出来ました。

ご依頼者からのお手紙(先生からの親切なアドバイスを基に自信をもって活動出来ました。)

(抜粋)今回の一連の動きの中で先生には大変親切なアドバイスを頂き感謝しております。先生のアドバイスの基に自信をもって活動できた事に本当にありがたい限りです。また事務所の方々にも適切な対応して頂き本当にありがとうございました。

他所では示談しか扱ってくれない中、「最後まで戦いましょう」と励まし勇気づけて下さいました。

ご依頼者からのお手紙(他所では示談しか扱ってくれない中、「最後まで戦いましょう」と励まし勇気づけて下さいました。)

(抜粋)突然被疑者扱いされ、本当につらい日々でした。そんな中、いつも先生には励まし、勇気づけて頂きました。法律事務所の中には実際やっていなくても示談するのがよいとすすめる所や示談しか扱わないという所ばかりでしたが、貴社だけが、示談する必要はない、もし起訴するようなら最後まで戦いましょうとおっしゃって下さいました。警察でも検察でも一方的に被疑者扱いされ被害者(という人の)ことだけが信用されこの先どうなってしまうのか、心が押しつぶされる日々でしたが、先生に色々ご対応頂いたおかげで、不起訴となることができました。

アトム法律事務所では、警察が介入した事件で初回30分の無料相談を実施中です。

  • 痴漢冤罪の容疑をかけられ警察から取り調べを受けた
  • やってもいない痴漢の件で警察から呼び出しを受けている

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了