この記事では、痴漢の証拠について、現行犯逮捕の場合と後日逮捕の場合に分けて解説しています。
「痴漢の現行犯逮捕で、決め手となる証拠は?」
「どんな証拠があれば、痴漢は後日逮捕されるの?」
このような痴漢の証拠についての疑問をお持ちではありませんか。
痴漢の証拠になるものは、被害者や目撃者の証言、防犯カメラ、鑑定結果などです。
痴漢事件は現行犯逮捕が多いといわれています。痴漢の現行犯逮捕は、痴漢の現場で相手が被害を申し出て、電車内や駅のホームで捕まり駅員室へ連行され、そのまま警察に身柄を引き渡されるといったケースです。痴漢の現行犯で証拠になるものは、被害者や目撃者の供述、取調べでの自白などです。これらの供述証拠が信用できると判断された場合、痴漢の有罪認定をくつがえすことは非常に困難でしょう。
一方、痴漢は現行犯逮捕されずに済んだ場合でも、被害届の提出などを受けて捜査が進められ、後日逮捕(通常逮捕)される痴漢事件もあります。痴漢の後日逮捕で証拠になるものは、痴漢の被害者や目撃者の供述のほか、繊維鑑定・DNA鑑定・防犯カメラ映像・改札の入出場記録などです。
なお痴漢冤罪であっても、しつこい取調べに耐えかねて、取調べで無実の罪を自白してしまった場合も、有罪認定の決定的証拠になるおそれがあります。
痴漢の証拠や逮捕の不安がある方は、この記事を読んだら、できるだけ早く弁護士相談に行きましょう。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
痴漢で現行犯逮捕される場合の証拠は?
痴漢は後日逮捕されない?現行犯だけ?
痴漢は現行犯逮捕が基本といわれます。
満員電車の電車内での痴漢などは、被害者と犯人に面識がない場合が多く、何も情報がない中では、犯人特定や痴漢の立証は困難をきわめるということが、痴漢は現行犯以外での逮捕が難しいとされている理由でしょう。
現行犯逮捕は痴漢の被害者がおこなう?
痴漢の現行犯は、多くの場合、被害者からの痴漢の被害の申し出が証拠となり、その場で取り押さえられ、駅員室に連れて行かれることになるでしょう。
法的にみると、この時点ですでに被害者によって現行犯逮捕されている状況とみることができます。
駅事務室に連れて行かれた後は、駅員からの事情聴取を受けるのではなく、鉄道警察に身柄を引き渡されることになり、警察の取調べを受けなければなりません。鉄道会社では、痴漢の被疑者を捕まえた場合、駅員からは事情を聴かず、鉄道警察隊に通報して身柄を引き渡すことがマニュアル化されているのです。
その後の刑事手続の流れとしては、勾留という比較的長期の身体拘束手続に移行する可能性があります。駅員のマニュアル通りの対応を回避する(長期の身体拘束を避ける)には、駅の事務室に行かないことが最善の対策です。
闇雲に逃走するのは考えものですが、現場から穏便に離れるという対応をとる必要性はあるでしょう。
【コラム】痴漢の現行犯逮捕とは?
警察に身柄を引き渡された時点ではじめて現行犯逮捕されたことになるとお考えの方もいらっしゃるかと思いますが、それは誤りです。
現行犯逮捕は、犯罪の行われている最中やその直後に行われるため、被疑者(犯人)を取り違える可能性が低いものです。このように現行犯の場合、犯行・犯人が明白であることから、誰でも・逮捕状なしで逮捕行為が可能とされています(刑事訴訟法212条・213条)。したがって、法律上は、被害者から痴漢の被疑者として呼び止められたり、取り押さえられたりした時点で、痴漢で現行犯逮捕されたこととなります。
駅事務室で待機させられ、警察に身柄を引き渡されるのは、すでに現行犯逮捕が行われた後の手続に過ぎません(刑事訴訟法214条)。一般人が現行犯逮捕した場合には被疑者の身柄を引き渡さなければならないというルールが、法律に書かれているのです。
①痴漢の現行犯逮捕は被害者の供述が有力な証拠となる
このように、現行犯逮捕を行うのは被害者自身ですから、痴漢の現行犯逮捕において重要な証拠となるのは、被害者の供述です。痴漢で現行犯逮捕された場合、被害者の供述が信用できるかどうかが、起訴されるか不起訴になるか、有罪か無罪かの分かれ目になるといっても過言ではないほどです。
ですが、通常、被害者の供述には信用性が認められると判断されやすい傾向は強いものです。
痴漢は、被疑者と被害者がお互いをまったく知らず、利害関係のないことがほとんどですから、被疑者をおとしめるために被害者がわざわざ嘘をつくはずがないと判断される傾向にあります(もちろん例外もあり、示談金を支払わせるために男女が協力して、女性が痴漢被害者・男性が目撃者を演じ、無実の人を痴漢の被疑者であると偽った冤罪の事例もあります)。
そのため、痴漢事件においては、被害者の供述は嘘ではないはずだという、被疑者にとっては不利な状況で判断される傾向にあると考えておかなければなりません。
被害者の供述が信用できるかどうかは、供述内容が具体的なのか、一貫性があるのかなどをはじめとして、主に次のような点が基準として判断されます。
供述の信用性の判断要素(一例)
- 実際に痴漢の被害を受けた者でなければ話せないほど具体的・迫真的かどうか
- 重要な事項についての供述が痴漢被害の直後から一貫しているかどうか(痴漢被害直後の供述は「初期供述」と呼ばれ、特に重要な証拠です)
- 電車内の混雑具合や位置関係などから、被害者が被疑者を犯人と特定できる状況にあったかどうか
- 目撃者の供述などの他の証拠と整合するかどうか
②目撃者の供述も痴漢の重要な証拠となる
痴漢の現行犯逮捕の場合、目撃者などの第三者の証言も、被害者の供述と同じくらい重要な証拠になります。
場合によっては、痴漢の被害者よりも、目撃者の証言のほうが重要な証拠とされるケースもあるでしょう。とくに被害者側とも加害者側とも、まったく面識のない第三者であれば、利害関係に左右されることなく供述できるので、その供述内容の信用性は高まるといえるでしょう。
痴漢の目撃者が、被害者の家族や交際相手などの関係者ではない場合は、あえて被害者の肩をもつような発言はしません。逆に、加害者と親しい間柄でなければ、加害者をかばう発言をする必要もないわけです。被害者・加害者の双方にとって中立的な立場にある目撃者の供述であれば、被害者の供述以上に信用される傾向はあるでしょう。
また、目撃者の供述の信用性を争うには、事件当事者との関係性が問題になるほかにも、本当に痴漢行為を見ることができたのかどうかも重要です。満員電車では、視界が遮られて、触っているところを直接見ることがかなわない状況も多々あるでしょう。視力が悪いうえに、被害者が痴漢被害を申告し、たまたま近くに居たのがあなただったという場合、手が触れているところを直接見ていなくても、勘違いで犯人として指を差される可能性もありうるのです。
供述証拠の信用性は、供述証拠以外の証拠によって裏付けられるものでもあります。被害者や目撃者の証言のほかに、どのような証拠があるのか把握したうえで、説得的な反論ができるとよいでしょう。
取調べでは、検察官がどんな証拠があるのか言及することがあります。その内容をよく覚えておいて、弁護士相談の際に、今後の対策を立てるのがよいでしょう。
③被害者の衣服や持ち物も痴漢の証拠となる
被疑者が実際に痴漢を行ったのであれば、被疑者の身体(指や手のひら)に被害者の衣服の繊維が付着していたり、被害者の衣服や持ち物に被疑者のDNAが付着していたりすることがあります。
繊維の付着があるか科学的に分析・確認することを「繊維鑑定」、衣類にDNAの付着があるか確認することを「DNA鑑定」といい、これらの鑑定結果は、被疑者や目撃者の供述を裏付ける客観的な証拠となります。
そのため、被害者の衣服や持ち物も、被疑者が痴漢の犯人であることを立証する証拠となるものです。
④冤罪の場合も同様の証拠が重要となる
無実の証拠を集める
これまでお伝えした痴漢の証拠は、誤って痴漢の被疑者とされた冤罪の場合には、一転して無実を証明するための重要な証拠ともなります。
万が一、誤って痴漢の加害者とされてしまった場合には、直ちに弁護士に連絡してください。
そして、被害者の初期供述を録音して確保する、自分が痴漢をしていないことを供述してくれている目撃者がいれば連絡先を聞いておく、被害者の衣服や持ち物の現状維持を警察に申し出るなどして、自身の無実を証明する証拠を確保するようにしてください。
痴漢冤罪は捜査段階から一貫して否認
たとえ警察の取調べで「認めれば釈放されて罰金で済む」などと告げられて利益誘導されたとしても、無実の罪を自白してはいけません。刑事処分を決める権限は、警察官には無いからです。起訴か不起訴か、略式罰金かは検察官が決めることです。
作成された供述調書にサインをしてしまうと、その供述内容を無かったことにはできず、修正もできません。虚偽の自白で一度でも「痴漢をした」という供述調書が作成されてしまうと、発言を撤回することは極めて困難です。痴漢冤罪を争うのに不利益な証拠となるので、一貫して無実を主張しなければなりません。
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・警察による供述調書の作成とは?取り調べの流れやポイントを解説
痴漢で後日逮捕される場合の証拠は?
痴漢は後日逮捕される?通常逮捕とは?
痴漢は現行犯逮捕が多いものですが、絶対に後日逮捕(通常逮捕)されないわけではありません。
通常逮捕、いわゆる後日逮捕とは、逮捕状をつかって警察などの捜査機関に逮捕される手続きのことです。
痴漢事件で現行犯逮捕されずに済んだという場合であっても、被害者が事後に被害届を出し、そこから捜査が始まって、犯人特定につながる証拠が出てくれば、逮捕状が発付され、後日逮捕(通常逮捕)されることもあり得ます。
後日逮捕は、被疑者が家にいる可能性の高い時間帯、たとえば早朝などに実施されるケースも多いものです。
後日逮捕につながる痴漢の証拠になるものは、被害者や目撃者の供述のほか、防犯カメラ、鑑定結果などがあります。
後日逮捕につながる痴漢の証拠(一例)
- 被害者の供述
- 目撃者の供述
- 電車内や駅ホームの防犯カメラ
- 改札の入出場記録
- DNA鑑定
- 繊維鑑定
- 被疑者が保有する痴漢関係の動画・画像・雑誌など
など
なお後日逮捕(通常逮捕)は、痴漢の嫌疑が濃厚であっても、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがなければ実行されません。たとえば、定職がある場合、持ち家の場合、養うべき家族が居る場合などは逃亡のおそれが小さく逮捕を回避できる可能性もあるでしょう。ただし最終的には総合考慮によるため、あくまでケースバイケースでしょう。
【コラム】痴漢で任意同行を求められたら逮捕される?
痴漢事件で任意同行を求められたら、応じた方がよいでしょう。逮捕されずに捜査が進められる在宅事件という手法もあるので、出頭要請があったとしても必ずしも逮捕されるとは限りません。
ただし任意同行に応じて警察署に着いた際に、通常逮捕される可能性もあります。任意同行に応じていないと逃亡のおそれがあると判断されて、結局逮捕されるという流れもありえます。
痴漢の証拠(後日逮捕)①被害者の供述
現行犯逮捕の場合と同じく、後日逮捕の際に痴漢の証拠になるものとしてやはり被害者の供述は重要な証拠となります。
痴漢は、通勤・通学時の混雑した電車内で行われ、被疑者も毎日同じ時間帯・同じ車両に乗車することが多いですから、被害者の供述をもとに、痴漢の現場を現認すべく、警察による尾行捜査が行われることもあります。
尾行捜査が行われた場合には、尾行捜査の内容を記載した捜査報告書が作成され、これも痴漢の証拠として取り扱われることがあります。
痴漢の証拠(後日逮捕)②目撃者の供述
第三者である目撃者の供述も、被害者の供述と同じく、後日逮捕の場合でも重要な証拠となります。目撃者の供述によって、被害者の供述を裏付けるとともに、外見や特徴や服装などから被疑者の範囲を絞り込んでいくこととなります。
被害者と目撃者には利害関係がなく、口裏合わせをする理由がないのが通常ですので、被害者の供述と整合する目撃者の供述の数が多ければ多いほど、被害者の供述の信用性は高まることとなります。
痴漢の証拠(後日逮捕)③電車内や駅ホームの防犯カメラ
被害者や目撃者の供述によって被疑者をある程度絞り込むことができれば(または被害者や目撃者への事情聴取と並行して)、電車内や駅ホームなどの防犯カメラの映像が収集されます。
防犯カメラの映像に痴漢の現場そのものが映っていれば、それが直接の証拠となります。痴漢の現場そのものが映っていなくても、映像の中に被疑者が映っているかを被害者や目撃者に確認したり、被疑者が被害者の近くにいたかどうか(痴漢が可能だったかどうか)を確認するための証拠となります。
なお、防犯カメラの映像は、7~10日程度で消去されることが多いですので、万が一誤って痴漢の被疑者とされた場合には、直ちに弁護士に依頼して防犯カメラの映像の保全を行ってください。
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痴漢の証拠(後日逮捕)④改札の入出場記録
被疑者がある程度絞り込まれれば、警察が鉄道会社に捜査事項照会(刑事訴訟法197条2項)を行い、ICカードなどによる改札の入出場記録の提出を受けることとなります。
これによって、被疑者が痴漢被害のあった電車を実際に利用していたかどうかの裏付け捜査が行われます。
痴漢の証拠(後日逮捕)⑤繊維鑑定
被害者から痴漢の被害の申し出があったものの現行犯逮捕されずに済んだという場合であっても、通報を受けて駆け付けた警察は、被疑者の指などにテープを貼り付け、被害者の衣服の繊維が付着しているかの繊維鑑定を行います。
衣服の上から痴漢をしたのであれば、被疑者の指に被害者の衣服の繊維が付着していることがありますので、繊維が付着しているとの鑑定結果が出れば、被疑者が痴漢をしたという客観的な証拠となります。
ただし、密着するほど混雑した車内では、被害者の衣服の繊維が空気中を浮遊して色々な人に付着する可能性がありますので、誤って痴漢の被疑者とされた場合は、当時の車内の混雑状況を再現するなどして、痴漢によって繊維が付着したわけではないことを主張立証する必要があります。
痴漢の証拠(後日逮捕)⑥DNA鑑定
被疑者が被害者の衣服の上から痴漢を行った場合には、被害者の衣服に被疑者のDNAが付着しているはずです。また、被害者の身体を直接触る痴漢を行った場合には、被疑者の身体に被害者のDNAが付着しているはずです。
これらのDNA鑑定も、繊維鑑定と同じく、被疑者が痴漢をしたという客観的な証拠となるものです。
ただし、繊維鑑定と同じく、密着するほど混雑した車内では、意図せずして他人の衣服に身体が触れてしまう可能性があります。誤って痴漢の被疑者とされた場合には、当時の被疑者と被害者の位置状況を再現するなどして、痴漢によってDNAが付着したわけではないことを主張立証する必要があります。
痴漢の証拠(後日逮捕)⑦痴漢関係の動画・画像・雑誌など
このほか、被疑者の自宅などに痴漢関係の動画・画像・雑誌などがないかを確認するための捜索・差押えが行われることがあります。痴漢関係の動画などが発見されれば、被疑者は痴漢の性癖があると立証するための証拠として用いられることもあります。
痴漢はどんな罪で逮捕される?罪によって証拠は違う?
痴漢は何罪?証拠になるものは?
痴漢は、都道府県ごとに制定されている迷惑防止条例違反の罪や、不同意わいせつ罪(刑法176条)などの罪名で逮捕される可能性があります。
いずれの罪名で逮捕された場合であっても、痴漢の証拠となるものは、ほとんど共通します。
痴漢で逮捕されたときの刑罰は?
現行犯逮捕、後日逮捕(通常逮捕)のいずれにしろ、その後刑事裁判をうけて有罪が確定した場合、刑罰が科されます。
迷惑防止条例違反で検挙された場合と、不同意わいせつ罪で検挙された場合とでは、罰則の重さに大きな違いがあります。
東京都の場合、迷惑防止条例違反で検挙された場合の罰則は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています(8条1項2号)。
他方、不同意わいせつ罪で検挙された場合の罰則は、6月以上10年以下の拘禁刑と定められています(刑法176条)。
迷惑防止条例違反の痴漢と違って、不同意性わいせつ罪の痴漢行為は罰金刑で済むことはありません。不同意わいせつ罪には罰金刑が規定されておらず、裁判になれば必ず公開の法廷で懲役刑が言い渡されます。
また、不同意わいせつ罪の場合、痴漢の態様が悪質である事案も多く、場合によっては初犯であっても、執行猶予付き判決ではなく「実刑」となる可能性もあります。
不同意わいせつ罪*¹ | 迷惑防止条例違反 | |
---|---|---|
態様 | 悪質性が高い | 比較的軽微 |
例 | 下着の中に手を入れる | 服の上から触る*² |
刑罰 | 6月以上10年以下の有期拘禁刑 | 6月以下の懲役または 50万円以下の罰金*³ |
*¹ 相手が13歳未満の子供である場合、または相手が13歳以上16歳未満の子供であり犯人が5歳以上年長である場合には、同意しない意思の形成・表明・全うが困難かどうかにかかわらず、わいせつ行為をしただけで不同意わいせつ罪は成立する。
*² 衣服の上から触る場合でも、被害者を羽交い絞めにするなど行為態様の悪質性が高い場合は、条例違反ではなく不同意わいせつ罪に問われる。
*³ 東京都迷惑防止条例違反の痴漢の場合の刑罰。
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痴漢で逮捕された後の流れや罰則について詳しく知りたい方は、『痴漢で逮捕された!その後の流れと早期解決に向けた対応を解説』記事もあわせてお読みください。
痴漢の証拠があっても不起訴になる?
痴漢で逮捕後の流れは?
現行犯逮捕にしろ、後日逮捕(通常逮捕)にしろ、基本的には逮捕後の流れは同じです。
まず逮捕された後は、警察の取調べをうけた後、逮捕から48時間以内に検察官に事件がひきつがれます(送致)。
検察官は送致を受けてから、24時間以内に勾留を請求するかどうかを決定します。勾留とは、逮捕につづく比較的長期の身体拘束手続きです。
勾留請求があった場合、裁判官が勾留をおこなうかどうかを決定します。裁判官が勾留決定した場合は原則10日間身体拘束されます。そしてその後、10日以内の範囲内で勾留延長されることもあります。
逮捕された時から通算すると、最大で23日間身体拘束が続く可能性があるということです。
そして最終的には、勾留満期までに、検察官によって起訴・不起訴・処分保留で釈放のいずれかの処分が出されることになります。
検察官によって起訴された場合は、痴漢事件の被告人となり、その後、刑事裁判をうけます。刑事裁判では、裁判官によって、有罪・無罪、刑罰の重さなどが審理されます。
痴漢で起訴される可能性は?
アトム法律事務所であつかった痴漢事件の統計を参考すると、痴漢の起訴率は約12%、不起訴率は約88%となります。
被害者の方との示談成立が不起訴につながるケースも多いので、実際に痴漢事件をおこしてしまった方は、できるだけ早目に弁護士に相談して示談交渉に取り組みましょう。
証拠があっても不起訴になる痴漢事件とは?
いくらかの証拠があっても、痴漢を立証するには証拠が不十分という場合もあるでしょう。痴漢を立証できないのであれば、不起訴処分になるでしょう。
また、痴漢の立証のために十分な証拠がある場合でも、起訴猶予という不起訴処分を獲得できる痴漢事件もあります。
そのほか痴漢の証拠があったとしても、公訴時効(起訴の期限)が経過した場合は、不起訴処分になります。
不起訴になる痴漢事件(一例)
- 痴漢の証拠が不十分な場合
(例)混雑時に不可抗力でふれてしまった
(例)人違いである - 起訴猶予
(例)痴漢の事実はあるが、諸事情が考慮されて不起訴になる場合 - 公訴時効をむかえた場合*¹
(例)2023年7月13日以後に不同意わいせつ罪にあたる痴漢事件をおこした場合、原則として犯罪が終わった時から12年経過することで起訴されなくなる
(例)2023年7月12日以前に強制わいせつ罪にあたる痴漢事件をおこした場合、犯罪が終了した時から7年を経過することで起訴されなくなる
*¹ 2023年7月13日から改正刑法が施行されました。公訴時効の期間についても改正がありました。詳細については、法務省のホームページなどでご確認ください。
「起訴猶予」による痴漢の不起訴とは?
起訴猶予とは、犯罪の嫌疑が十分認められるものの、検察官によって起訴の必要がないと判断された場合に出される不起訴処分のことです。
起訴猶予(不起訴)の判断要素となるのは、犯罪の軽重、被疑者の更生の可能性、反省の状況、被害者の処罰感情、示談の成否、前科・前科の有無などです。
具体的には、起訴猶予(不起訴)を目指すには、痴漢の衝動をおさえるための治療を受けるという対策が考えられます。この場合、医師の診断書や治療計画書などを証拠として、検察官に提出する対応が必要になるでしょう。
また、痴漢を二度とくり返さないように、家族の監督を受けるという対策もあるでしょう。この場合、家族が上申書や誓約書を作成し、真摯に再発防止策に取り組んでいることの証拠として検察官に提出するという対応も考えられます。
そのほか、被害者の方との示談交渉の中で、電車内の痴漢の場合は被害者と鉢合わせしないように「通勤経路を変える」という条件が付されることがあります。痴漢事件についての示談の成否や、示談条件については、被害者と締結した示談書という書面や証拠になるでしょう。
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痴漢の証拠になるものは被害者の証言、目撃者の証言、繊維片の鑑定、DNA鑑定、被疑者取調べにおける自供など様々です。
痴漢事件を争う場合はもちろんのこと、痴漢行為を認める場合も不起訴や刑罰を軽くするための証拠を集めなければなりません。
痴漢という犯罪の立証責任は検察官にありますが、検察官の主張に反論できるような証拠を、被疑者側でも集めなければならないのが実情です。
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