6か月以上10年以下の懲役
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪は、強制性交等罪と同じように13歳以上の者に対して「暴行又は脅迫」を用いて行為に及んだときに罪が成立します。
ただ、強制わいせつ罪における「暴行又は脅迫」と強制性交等罪における「暴行又は脅迫」は、判例上その意味を異にしています。
条文の語句の意味について、くわしく解説していきます。
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
条文中の「暴行又は脅迫」は「相手の意に反して」という程度の行為であれば足りるとされています。
また条文中の「わいせつな行為」とは具体的には接吻、陰部に手を触れる、乳房を弄ぶ、自己の陰部を押し当てるなどの行為を指し、また陰部や乳房を着衣の上から触れた場合については、弄んだと言える程度の態様が必要とされます。
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、(略:強制わいせつ罪)の例による。
条文の「心神喪失」「抗拒不能」とは、精神的な傷害により正常な判断力を失っている状態、心理的又は物理的に抵抗ができない状態を指します。
具体的には睡眠、酩酊等の状態や、錯誤などによって抵抗を期待できない状態等を指します。
平成30年の法務省の統計によると、強制わいせつで逮捕勾留されたのは全体の6割ほどで残りは在宅事件となっています。
強制わいせつの犯行態様としては、路上等でのわいせつ行為の他、いわゆる痴漢の事案も代表的です。
また「合意があった(あると思い込んでいた)」として強制わいせつの故意を否認するケースもあります。
犯行後、被害者からの「被害届の提出」「告訴」などをきっかけに警察が事件を認知する可能性があります。
事件を認知した警察は、取調べや防犯カメラの解析などで犯行の全容把握に努めます。
在宅事件化する場合の他、通常逮捕(=後日逮捕)が行われる場合もあります。
犯行の前や犯行中などに通報等が行われ、警察官により現場で拘束されるというケースも考えられます。
例えば、痴漢の事案の一部について、強制わいせつ罪として検挙が行われる場合もあります。
痴漢事案では、被害者や目撃者によって現場で拘束され、駅員室に連れて行かれて警察に引き渡されるケースが多いです。
強制わいせつ罪においては「暴行又は脅迫」の定義、「わいせつ行為」の定義についてしばしば問題となります。
ここで、その2つについて参考となる裁判例をそれぞれ解説します。
「刑法第百七十六條前段ニ所謂暴行トハ相當ナ理由ナク他人ノ意思ニ反シ其ノ身體髪膚ニ力ヲ加フルノ謂ニシテ固ヨリ其ノ力ノ大小強弱ヲ問フコトヲ要スルニ非ズ」
強制わいせつ罪条文における「暴行又は脅迫」の程度は、「被害者の意に反する」といった程度のもので足りるとされています。
裁判例において「力ノ大小強弱ヲ問フコトヲ要スルニ非ズ」と判示されたのもこの趣旨であると解されます。
具体的には殴る蹴るはもちろんのこと、着衣を引っ張る、体をおさえるといった行為の他、不意に股間に手を差し入れるなどわいせつ行為自体が暴行行為として認められているものなども挙げられます。
「(接吻が)行われたときの当事者の意思感情、行動環境等によつて、それが一般の風俗道徳的感情に反するような場合には、猥裂な行為と認められることもあり得る」
条文中の「わいせつ行為」について、具体的には陰部に手を触れる、陰部や乳房を弄ぶ、自己の陰茎を押し当てるなどといった行為が挙げられます。
さらに接吻も裁判例の通りわいせつ行為に該当します。
衣服の上から身体に触れた態様の場合、単に触れるだけでは足りず弄んだというような態様が必要とされます。
もっとも、単に触れただけの態様でも迷惑防止条例など他の犯罪によって処罰される可能性は高いです。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。