2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
「盗撮をしてしまった。会社にバレたら解雇されるのだろうか…」
結論から言えば、盗撮をしたからといって必ず解雇されるわけではありません。 不起訴を獲得することで懲戒解雇を覆せる可能性は十分にあります。実際、裁判所が「懲戒解雇は無効」と判断したケースも存在します。
そして、その分かれ道となるのが被害者との示談交渉であり、ここで弁護士のサポートを受けられるかどうかが、その後の人生を大きく左右します。
この記事では、盗撮で解雇されるかどうかを左右する条件と、解雇を回避するために今すぐ取るべき行動を、判例と法律に基づいて解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
盗撮をしたら必ず解雇される?
「刑事事件を起こしたら解雇」というイメージを持っている方が多いですが、法律上はそう単純ではありません。
そもそも、会社が従業員を懲戒解雇するには高いハードルがあります。労働契約法15条では、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、懲戒権の濫用として無効になると定められています。
つまり、会社側が「盗撮したから即クビ」と判断しても、その処分が法律上有効と認められるとは限らないのです。
解雇の有効性を左右する3つの要件
会社が懲戒解雇を有効に行うためには、次の2つを満たす必要があります。
懲戒解雇が有効となる2つの要件
- 客観的に合理的な理由があること
就業規則に懲戒解雇の根拠規定が存在し、盗撮行為がその規定に該当することが必要です。なお、就業規則は単に作成されているだけでは足りず、従業員に周知されていることが求められます。 - 社会通念上相当であること
処分の重さが行為の重大性に見合っているかが問われます。初犯で軽微な事案に対していきなり懲戒解雇とするのは、相当性を欠くと判断されることが多くあります。 - 適正な手続が踏まれていること
懲戒処分を行うにあたって、本人に弁明の機会を与えることも重要な要素です。いきなり一方的に懲戒解雇を通告するような進め方は手続的相当性を欠くと判断されることがあります。
盗撮が会社にバレる経緯は?
盗撮事件で警察から会社に連絡されることは基本的にありません。そのため、盗撮が会社にバレる経緯としては、逮捕による長期欠勤や実名報道等が挙げられます。
ただし、会社内で盗撮を行った場合は被害者が会社の誰かに相談したり、捜査のために警察が会社へ連絡する可能性は高いと言えます。
盗撮したのが社内か私生活で扱いが異なる
盗撮で解雇されるかどうかを考えるとき、最も重要な分岐点はどこで盗撮をしたのかです。
社内での盗撮:解雇される可能性が高い
職場内で盗撮を行った場合、たとえば社内のトイレや更衣室での盗撮などは、懲戒解雇となる可能性が高いといえます。
社内盗撮で解雇リスクが高い理由
- 加害者が同じ職場の人間であるため、被害者の精神的苦痛が極めて大きい
- 職場で犯罪行為を行うことは、企業秩序を著しく乱す行為と評価される
- 顧客が被害者の場合、企業の信用問題に直結する
職場という、本来安心して働ける場所で犯罪行為が行われたという事実は、企業にとって看過できない重大事と捉えられます。
私生活上の盗撮:必ずしも解雇されるとは限らない
一方、通勤中の電車内や駅、街中など、業務とは関係のない私生活の場面で行われた盗撮については、扱いが大きく異なります。
懲戒権はそもそも企業秩序を維持するために認められた権利です。私生活上の非行は、たとえ犯罪行為であっても、直ちに企業秩序が乱されたとは言えないため、職場内での盗撮よりも懲戒解雇が認められにくいのです。
判例では、私生活上の犯罪行為を理由とする懲戒解雇が有効と認められるためには、次の両方の条件を満たす必要があるとされています。
私生活上の盗撮で懲戒解雇が有効となる条件(両方必要)
- 就業規則などに、私生活上の犯罪が懲戒事由にあたることが明記されている
- その行為が企業の社会的評価を著しく低下させるおそれがあると客観的に認められる
このハードルは非常に高く、一般の会社員が通勤中に起こした初犯の盗撮事件で、ただちに懲戒解雇が有効になるケースは決して多くありません。
ただし、公務員などの高い職業倫理が求められる立場の場合や、管理職など組織内で指導的立場にある場合は、私生活上の行為であっても厳しい判断がされやすい傾向があります。
実際に「懲戒解雇は無効」とされた最近の判例
不起訴処分後の懲戒解雇が無効とされた裁判例
名古屋地裁 令和6年8月8日判決
郵便会社の課長職にあった男性が、通勤途上の地下鉄車内でリュックサックに小型カメラを設置して女性のスカート内を撮影しようとし、逮捕された事例。会社は男性を懲戒解雇したが、男性はその後不起訴処分となり、有罪判決を受けることはなく、報道もされなかった。
裁判所の判断
盗撮行為そのものは「極めて卑劣なものであって社会的非難を免れない」と厳しく断じながらも、最終的な結論は「懲戒解雇は無効」。
- 会社の懲戒規定では、有罪判決を受けた者とそれ以外で処分の重さを変えていた
- 男性は不起訴となっており「有罪判決を受けた者」には該当しない
- 報道もされておらず、会社の業務に悪影響を及ぼした具体的な事実関係が認められない
- 男性は過去に懲戒処分を受けたことがなかった
判決のポイント
「懲戒解雇を選択したことは、懲戒処分としての相当性を欠き、懲戒権を濫用したもの」
この判例は、私生活上の盗撮で逮捕されたとしても、不起訴を獲得できれば懲戒解雇を覆せる可能性があることを示しています。
盗撮での解雇を回避するために今すぐやるべきこと
不安に押しつぶされそうな今、最も大切なのは「正しい順序で行動する」ことです。
何よりも先に弁護士に相談する

盗撮事件における会社の処分の重さは、刑事手続の結果に大きく左右されます。そして、刑事手続を有利に進めるためには専門家の力が不可欠です。
「弁護士費用が高そう」「大ごとにしたくない」と躊躇する方もいますが、解雇されて職と退職金を失うことに比べれば、弁護士費用は十分に合理的な投資といえます。多くの法律事務所では、初回相談を無料で行っています。
被害者との示談を成立させる
盗撮事件において、不起訴処分を獲得するために最も重要なのが被害者との示談です。
示談が成立し、被害者が「処罰を望まない」という意思を示してくれれば、検察官が不起訴処分とする可能性が大きく高まります。不起訴になれば前科はつかず、先ほど紹介した判例のように、懲戒解雇を覆す材料にもなります。
ただし、被害者との直接交渉はほぼ不可能です。警察も、加害者本人に被害者の連絡先を教えることはありません。弁護士を通じて、冷静かつ誠実に交渉する必要があります。
会社への対応も慎重に
会社に事件が知られていない段階であれば、刑事手続が落ち着くまで様子を見るという選択肢もあります。一方、すでに知られてしまった場合は、自暴自棄にならず、弁護人を通じて適切に状況を説明することが重要です。
会社の経営者や人事担当者は、必ずしも労働法に詳しいわけではありません。「犯罪を犯したから即解雇」という誤った認識のもとで処分を下そうとするケースもあります。弁護士が法的根拠に基づいて交渉することで、解雇を回避し、自主退職や軽い処分にとどめられる可能性があります。
やってはいけないこと
不安なときほど、衝動的な行動は事態を悪化させます。次のことは必ず避けてください。
絶対にやってはいけない行動
- 被害者に直接連絡を取ろうとする(脅迫や口止めと受け取られる危険があります)
- 証拠となるデータや機材を慌てて処分する(証拠隠滅は別の罪に問われます)
- 一人で被害者宅を訪ねて謝罪する(さらなる被害感情を生みます)
- SNSなどで事件について発信する
公務員の場合は厳しい結果になりやすい
なお、公務員の方が盗撮した場合は、民間企業よりも厳しい結果になりやすいことに注意が必要です。
国家公務員法や地方公務員法では、禁錮以上の刑に処せられた場合、当然に失職することが定められています。罰金刑や不起訴の場合でも、人事院の「懲戒処分の指針」に基づいて懲戒処分が下される可能性があります。
懲戒処分の指針
- 動機・態様が極めて悪質、結果が極めて重大
- 職員の職責が特に高い
- 公務内外に及ぼす影響が特に大きい
- 過去に類似の非違行為を行ったことを理由に懲戒処分を受けたことがある
- 処分対象となる複数の非違行為を行っていたとき
したがって公務員の方が処分の妥当性を争う場合は、民間企業のように就業規則の合理性を検討するのではなく、処分が処分基準に照らして重すぎないか、裁量権の濫用にあたらないかという観点での主張になります。
また、公務員の盗撮事件は実名報道されやすく、これも処分を重くする要因となります。公務員の方は特に、早期の段階で刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
撮影罪の新設で罰則は大幅に重くなった
参考までに、2023年7月13日に施行された「性的姿態撮影等処罰法」によって、いわゆる撮影罪(性的姿態等撮影罪)が新設されたことも知っておく必要があります。
従来、盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例で取り締まられており、罰則は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金程度でした。
しかし撮影罪では、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と、罰則が大幅に厳罰化されています。さらに、盗撮データの提供や保管行為も処罰の対象となりました。
罰則の変化(盗撮行為)
- 改正前(迷惑防止条例):1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(東京都の場合)
- 改正後(撮影罪):3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金
社会全体として盗撮への目が厳しくなっている状況は、被害者との示談交渉や会社の処分判断にも影響します。だからこそ、専門家の適切なサポートを受けることがますます重要になっているのです。
アトムの解決実績
風俗店での盗撮未遂が発覚し、示談成立で事件化を回避し、公務員の職を守った事例
アトムの解決事例(撮影罪未遂・事件化回避で失職を防いだ)
30代の公務員男性が、風俗店の個室内に小型カメラを設置して盗撮を試みたが、サービス開始前に被害女性に発覚。店側から氏名・勤務先などの個人情報を把握されており、警察への被害届提出を示唆された。公務員という立場上、事件化すれば失職は免れないと強く懸念し、当事務所に相談。撮影罪未遂の事案。
弁護活動の成果
受任後すぐに店舗へ連絡し示談交渉を開始。交渉は難航したが粘り強く対応し、受任から約1か月で示談金100万円での示談が成立。被害者から宥恕を得て被害届は提出されず、事件化を完全に回避した。警察・検察への事件化がなかったため、勤務先に知られることもなく、公務員としての職をそのまま守ることができた。
風俗店での盗撮が発覚し、弁護士交渉で示談成立、会社・家族に知られず解決した事例
アトムの解決事例(盗撮発覚・刑事事件化回避で会社・家族への発覚を防いだ)
50代の会社員男性が風俗店利用中にペン型カメラで盗撮したところ、その場で発覚。店の関係者に免許証・名刺を預かられ、ATMまで同行されて現金35万円を支払い、さらに追加80万円の念書まで作成させられた。盗撮動画も店側に押さえられており、会社や家族に知られることを強く懸念して当事務所に相談。盗撮の事案。
弁護活動の成果
弁護士が店舗側と粘り強く交渉。被害女性とは示談金35万円、店舗側とは示談金30万円でそれぞれ示談が成立し、双方から宥恕を得た。被害届は提出されず刑事事件化を完全に回避。警察・検察が介入しなかったことで、依頼者が最も恐れていた会社・家族への発覚も生じることなく、平穏な日常生活に戻ることができた。
盗撮による解雇が不安なら弁護士へ相談を
盗撮をしてしまったという事実は、もう取り返しがつきません。しかし、これからの人生を守るためにできることは、まだ多く残されています。
この記事のポイント
- 盗撮をしたからといって必ず解雇されるわけではない
- 私生活上の初犯の盗撮で、ただちに懲戒解雇が有効になるケースは限られる
- 不起訴を獲得できれば、解雇を覆せる可能性が高まる
- そのために最も重要なのは、被害者との示談交渉
- 会社への対応も含め、すべての行動は弁護士のサポートのもとで進めるべき
弁護士への相談をいかに早い段階で行うかが人生を左右すると言っても過言ではありません。刑事手続きの各段階で最善の弁護を受け懲戒解雇を避けたい方は下記の電話番号から今すぐご連絡ください。

