大麻事件を起こしてしまった場合に、薬物事件は重いため実刑になってしまうのではないかと不安になるかと思われます。大麻事件では初犯の場合には実刑になりにくいですが、一方で大麻事件の初犯であっても実刑になりやすくなってしまう事例もあります。
以下を読めば、大麻ではどれくらい実刑になりやすいのか、初犯の場合どうして実刑になりにくいのかが理解でき、そして大麻の初犯でも実刑になりやすい場合はどのような場合なのかを、その具体的な5つの例を踏まえて把握することができます。
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大麻で実刑になる割合は?
大麻に関する罪で起訴される割合は?
令和2年犯罪白書によれば、令和元年に大麻取締法違反により捜査を受けた人のうち、約45%が起訴されております。50%後半から70%ほどの起訴率であった昔と比べると現在の大麻に関する罪での起訴率は減少傾向にありますが、約半数という起訴率は決して低いものとは言えないでしょう。
大麻に関する主な罪には罰金刑がなく、したがって基本的に起訴された場合には最低でも執行猶予付きの懲役刑となる重いものです。そのため、疑わしい事案はもちろん、微細な量で起訴により身体刑を科すほどでもないと思われる場合には不起訴となる場合も少なくないということになります。
大麻に関する罪で実刑になる割合は?
令和2年犯罪白書では、令和元年に大麻取締法違反で裁判を受けた人のうち12%が実刑判決を受けております。全部執行猶予が付いた人が約85%、一部執行猶予が付いた人が約2%となっており、大麻に関する罪で起訴されたとしても実刑になる割合は全体の中では少なくなっております。
大麻に関する主な罪には罰金刑がなく、例えば少量の所持であっても起訴された場合には懲役刑となります。そのため、大麻の少量の所持の場合も起訴された大麻事件の中には少なからずあり、実刑に科すほどでもないが起訴された事件には執行猶予が付くということが考えられます。
大麻で実刑になったときの刑期は何年?
大麻で実刑となった場合、法定刑の下限である1か月から上限である7年、10年、20年まで科せられる可能性があります。
たとえば、大麻の使用や所持の刑期は1年未満の場合もあれば、長ければ7年ほどの刑期となる場合もあるのです。
行為 | 罰則 |
---|---|
使用・所持・譲受・譲渡 | 1か月以上7年以下の懲役 |
営利目的の使用・所持・譲受・譲渡 | 1年以上10年以下の懲役 ※300万円以下の罰金が併科されることもある |
栽培・輸出入 | 1年以上10年以下の懲役 |
営利目的の栽培・輸出入 | 1年以上20年以下の懲役 ※500万円以下の罰金が併科されることもある |
懲役刑の刑期については、個々の事件の事情を考慮して、裁判官が年数を決めます。
刑罰は刑事事件をおこした非難の度合いや、更生のために必要な期間を考慮して決められます。
実際のところ、令和元年に大麻事件で実刑になった人のうち、約半数の人の刑期が1年未満でした。
初犯者の場合、再犯者に比べれば非難の度合いが下がることも多いので、1年未満の短い刑期になる可能性も高まるでしょう。
しかし、それでも、実刑になると、すぐに刑務所に収容され、大きく自由が損なわれます。その後の社会復帰に支障をきたすことも多いです。
そのため、まずは不起訴や執行猶予を目指した対応を、早急に検討する必要があります。
おまけ:大麻の刑罰(新旧早見表)
※こちらの表は、大麻の刑罰について、改正前後の刑罰を簡略化し、分かりやすく比較するものです。
営利目的の場合は、懲役刑の刑期が長くなります。罰金刑が併科されることもあります。
刑罰について詳しく知りたい方は、弁護士へのご相談をお勧めいたします。
大麻所持は初犯だと実刑になりにくいって本当?
大麻所持の初犯で実刑になりにくい理由とは
大麻の使用や所持の刑罰は、基本的には懲役刑です。実刑になれば、数年間、刑務所に収容されることになります。
しかし、初犯者で営利目的がない場合、大麻をはじめとする薬物への依存性・親和性が比較的低いため、懲役刑を執行猶予にして、社会の中で日常生活を送らせる方が更生につながるケースも多いです。
そのため、たとえば大麻所持の初犯の場合、所持量が微量、反省し更生の意欲が高い等の事情があるときは、実刑ではなく執行猶予付き判決となるケースは少なくありません。
場合によっては、大麻事件の初犯者は不起訴になることもあります。
執行猶予に有利な事情の例
- 初犯。薬物の前科がない
- 大麻の所持量が微量。使用頻度が低い
- 本人・家族が更生を誓約
- 罪を認めて反省している
- 薬物乱用防止のプログラムを受講・薬物依存症を治す治療を受けている
- 密売等の目的はなく、自己使用
大麻初犯で不起訴になると実刑にならない
大麻初犯の場合には、実刑判決を受ける以前に起訴にならず、不起訴処分となることも多くあります。
大麻事件は起訴された場合、基本的には懲役刑が科されます。罰金刑のみで済むことはありません。そのため、疑わしくて立件が難しい事件はもちろん、量が微量の大麻所持など身体刑が相当でない場合には不起訴になる可能性が高くなります。
不起訴には起訴ができるほどの証拠がない場合の不起訴と、起訴できるほどの証拠はあるが検察官の判断で不起訴とする起訴猶予があります。大麻事件でたとえば初犯でかつ微細な量の所持など懲役刑を科すことが不適切な場合、後者の起訴猶予として不起訴処分を検察官が下すことになります。
大麻初犯で執行猶予になると実刑にならない
大麻初犯で起訴されてしまっても、執行猶予が付けば実刑になりません。大麻事件の初犯の場合、初めてということで更生の余地があると判断され、かつ比較的重くない内容であり再犯の可能性がそこまで高くないと考えられるときには執行猶予が付き、実刑とならないことになります。
大麻事件では罰金刑がないため、起訴された事件については執行猶予の付かない場合には必ず実刑となってしまいます。しかし、初犯でありかつ内容として即座に実刑にするほど重い内容ではないという場合も多く、執行猶予を付けた判決として実刑を回避することができる場合も多くあります。
大麻初犯でも実刑になりやすい事案5選
(1)営利目的で大麻を所持・譲受・栽培した場合
営利目的で大麻を所持・譲受・栽培していた場合には、たとえ初犯であっても実刑判決を受ける可能性が高まります。営利目的の大麻事件を起こせば大麻を流通させ、さらなる大麻事件を生む可能性が高いため営利目的での大麻事件は重く処罰されることとなっており、初犯であっても実刑になりやすいといえます。
営利目的での大麻の所持・譲受・栽培はそれぞれ営利目的でない場合と比べて法定刑が重く設定されており、それだけ営利目的での大麻事件は悪質なものと評価されています。したがって、営利目的での大麻事件は、営利目的ではない場合と比べて実刑判決を受ける可能性が高いといえます。
(2)所持していた大麻の量が多かった場合
大麻を所持している量が多かった場合には、大麻所持の初犯であっても実刑判決となる可能性が高くなります。違法薬物である大麻を大量に所持していることは流通可能性を上げる悪質な行為であり、たとえ初犯であっても実刑にしなければ再犯する可能性が高いと考えられる危険性があります。
大麻の所持にはさまざまな場合があり、初犯で少量であれば不起訴や執行猶予が付く可能性があります。しかし大麻の量が多い場合は継続的な使用や他への流通の可能性もあり、より悪質な大麻の所持といえるため、初犯であっても実刑判決を受ける必要があると判断される可能性が高まることになります。
(3)更生や反省が期待できない場合
大麻事件の初犯であっても、更正や反省が期待できない場合には、実刑判決を受ける可能性が高くなります。大麻事件は再犯可能性が高く、どれだけ再犯する可能性が高いかが重視されます。大麻事件について更正や反省が期待できない者は大麻事件の再犯可能性が高いと判断され、実刑を受ける危険性があります。
被害者がいない犯罪である大麻などの薬物事件において、再犯可能性の有無は実刑か執行猶予かを決める上で重大な要素となります。大麻事件について更正や反省をしなければ大麻事件を再び引き起こす可能性が高く、更正や反省が期待できない場合には実刑もやむを得ないという判断となる可能性が高くなります。
(4)大麻以外の前科がある場合
大麻事件では初犯だったとしても、大麻事件以外の前科がある場合には実刑となる可能性が高くなります。大麻以外の薬物の前科がある場合はもちろん、薬物事件以外の前科がある場合にも、犯罪傾向がある者というに認定がされ、再犯可能性があるとして実刑となる可能性が高まります。
大麻以外の前科で執行猶予判決を受けている場合の執行猶予期間中や実刑判決を受け刑が終了し間もない場合には基本的に実刑となるでしょう。また、大麻事件以外に前科がある場合、同じように犯罪行う可能性が非常に高く、再犯可能性が非常に高いとして実刑となる可能性は高くなります。
(5)家族や弁護人の協力が無い場合
家族や弁護人の協力が無い場合にも、実刑判決を受ける可能性が高くなります。大麻事件で家族や弁護人の協力が得られない場合、裁判所から大麻事件の再犯を防止する環境が整っていないと判断される危険性があり、再犯可能性が高いとして実刑判決を受ける可能性が高くなります。
大麻事件では、再犯可能性の高さが実刑を受けるかどうかの重要な判断要素となります。そのため、再犯を防止するための家族による監督の協力や弁護人による再犯防止策の提案などを裁判所に示すことができないということであれば、再犯をする可能性があるとして実刑の可能性が高まることになります。
大麻初犯での実刑を避けるために弁護士に相談を
大麻で逮捕されたらまずは弁護士の相談・接見
大麻初犯で逮捕されてしまった場合、実刑を避けるためにまずは弁護士に相談し、弁護士による接見を行いましょう。弁護士に相談すれば大麻事件での実刑の可能性があるかどうかや実刑を避けるための助言を受けることができ、接見でご本人からも事情を聞いた上で実刑を避けるための的確な活動をすることができます。
大麻事件の場合、起訴されてしまう場合には必ず裁判となり、実刑の可能性も残るものになります。そのため、弁護士による相談や接見を行った上で不起訴を目指したり執行猶予を目指したりなど、実刑を避けるための動きをすることにより、実刑を避けるための試みをすることが重要となります。
早期の釈放・保釈を目指し社会復帰を
大麻事件で弁護士に相談を行い、早期の釈放・保釈を目指して社会復帰を目指すことが重要となります。大麻事件で逮捕・勾留された場合、不起訴処分がされない限り釈放は難しく、保釈が通らなければ釈放されません。そのため、早期の釈放・保釈からの社会復帰のためには弁護士による釈放活動が必要となります。
弁護士が不起訴処分の早期獲得のために動くことにより、早期釈放からの社会復帰を目指すことができます。また、保釈は起訴されてから行うことができるため、弁護士が大麻事件により起訴されるまでの間に保釈の準備を進め、起訴後早期に保釈の許可を得られるような活動を行うことができます。
逮捕後から起訴までの釈放については『勾留とは何か。勾留手続きや拘留との違いは?早期釈放を実現する方法』の記事をご覧ください。
起訴後の釈放については『保釈を弁護士に依頼する|刑事事件に強いアトム法律事務所』の記事で詳しく解説しています。
実刑を避けられる大麻の再犯防止策とは?
実刑を避けるために裁判等で示す大麻の再犯防止策として、たとえば心療内科や薬物再発防止のための専門機関など第三者機関への通所・通院や同居の親族など第三者による監督協力などが考えられます。ご本人だけではなく周りの監督があるということで再犯を防止するという策が考えられることになります。
大麻などの薬物事案において、再犯可能性があるかどうかは実刑になるか執行猶予が付くかの判断の上で重大な要素となります。そのため、第三者機関や第三者の監督による精神的実質的なサポートなどしっかりとした再犯防止策が練られていることが実刑を避けるためには必要となります。
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