1. »
  2. »
  3. 窃盗罪や器物損壊罪とは|違いや成立する場合を解説

窃盗罪や器物損壊罪とは|違いや成立する場合を解説

窃盗と器物損壊

窃盗罪は、持ち主の承諾がないのに物の占有を移転させる犯罪です。店の承諾なく、商品を持ち出す万引きなどが典型例です。

一方、器物損壊罪は、他人の物の効用を失わせる犯罪です。壊す・隠す・捨てるなどが典型例です。

それでは、相手の物を持ち出してから壊した場合、窃盗罪と器物損壊罪のどちらになるでしょうか。

窃盗罪と器物損壊罪は、相手の財物を経済的に利用する意思(利用処分意思)の有無が違います。

他人の物を勝手に持ち出す行為でも、「壊す」「捨てる」等が目的の場合、利用処分意思が認められず、器物損壊罪になる可能性が高いです。

窃盗罪器物損壊罪
利用処分意思 あり なし
・万引き
・スリ
・車上荒らし
・壊す、隠す
・壊すために持ち出す

この記事では、窃盗罪や器物損壊罪の違い窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立する場合などを詳しく解説します。

刑事事件でお困りの方へ
無料相談予約をご希望される方はこちら
tel icon
24時間365日いつでも相談予約受付中 0120-204-911

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。

窃盗罪と器物損壊罪

窃盗罪と器物損壊罪との違い

窃盗罪と器物損壊罪は、他人の財物に関して成立する犯罪という点で共通します。

もっとも、窃盗罪は他人の財物を自分や第三者のものにするために、占有を移転する犯罪であるのに対して、器物損壊罪は他人の財物を壊す、隠す、勝手に捨てるなどして、物の効用を害する犯罪であるという点に、最も大きな違いがあります。

窃盗罪のような犯罪のことを「領得罪」、器物損壊罪のような犯罪のことを「毀棄罪」といいます。

以下では、窃盗罪と器物損壊罪の要件、刑罰について詳しく見ていきましょう。

窃盗罪と器物損壊罪の要件

窃盗罪の要件

窃盗罪は、刑法235条に規定されている罪です。窃盗罪が成立するための要件は、他人が占有する財物を、その人の意思に反して、自分又は第三者のもとに占有を移転することです。他人の物を盗んで、自分のものにする行為は、窃盗罪になります。

占有とは、物に対する事実上の支配のことをいいます。占有の有無は、財物の性質、占有者の意思、距離や時間などの客観的な関係性で、判断します。

例えば、手に持ったかばん、その中にある財布などは事実上の支配が及ぶので、占有している物にあたります。また、お店などに置き忘れたかばんや財布も、置き忘れてからまだ時間があまり経っていない場合などは、事実上の支配が及んでいるとして占有が認められる可能性が高いです。そのため、置き忘れられたかばんを取って自分のものにしてしまう行為についても、窃盗罪が成立することがあります。

また、窃盗罪の成立には、利用処分意思が必要です。利用処分意思とは、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思のことです。

食べるために商品を万引きする、転売目的で自動車盗をすることなど典型的な窃盗事案のほか、性的目的で利用するために下着泥棒をするケースでも、利用処分意思が認められます。

器物損壊罪の要件

器物損壊罪は、刑法261条に規定されている罪です。器物損壊罪が成立するための要件は、他人の財物について毀棄・隠匿行為を行ってその物の本来の効用を害することです。

毀棄とは壊すことをいい、隠匿とは隠すことをいいます。物の本来の効用を害するとは、その物の本来の使い方ができなくしてしまうことと言い換えることができます。

典型的には、他人の物を壊す隠すなどして、使えなくしてしまう行為は、器物損壊罪に該当します。その物の本来の使い方をできなくしてしまう行為には、器物損壊罪が成立するのです。食器への放尿、処分なども器物損壊罪になり得ます。

窃盗罪と器物損壊罪の法定刑

窃盗罪の刑罰は、器物損壊罪の刑罰よりも重いです。

窃盗罪の法定刑は「1ヶ月以上10年以下の懲役」または「1万円以上50万円以下の罰金」です。

器物損壊罪の法定刑は「1ヶ月以上3年以下の懲役」、「1万円以上30万円以下の罰金」、「科料」のいずれかです。科料とは、1,000円以上1万円未満の金銭を支払う刑のことを言います。

窃盗罪のほうが器物損壊罪よりも刑罰が重いのは、窃盗罪は他人の財物を自分(又は第三者)のものとしてしまう点で悪質性が高いからです。窃盗罪の方が、器物損壊罪よりも一層強い非難を加えるべきだと考えられているのです。

他人の物を盗んでも器物損壊罪が成立する場合

他人の物を盗んでも器物損壊罪が成立する場合がある

他人の財物を盗む行為であれば全て窃盗罪が成立するというわけではありません。他人の財物を盗んだとしても、窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立する場合があります。典型的には、他人の財物をもっぱら毀棄・隠匿目的で盗む場合です。この場合には、窃盗罪ではなく、器物損壊罪が成立します。もっぱら毀棄・隠匿目的で盗むとは、盗む目的がただ壊したり隠したりするためだけであるという意味です。

壊したり隠したりするためだけに物を盗む場合としては、他人に嫌がらせをする目的などの場合があります。例えば、ある人に対して嫌がらせをする意図でその人の財布を盗んで川に捨てたというような場合には、財布を盗んだ行為について窃盗罪が成立することはありません。窃盗罪ではなく器物損壊罪が成立するのです。この場合には、たしかに他人の財布を盗んでいるものの、自己のものにする目的で盗んでいるのではありません。もっぱら嫌がらせのために捨てる目的で盗んでいることが、窃盗罪が成立せず器物損壊罪が成立する理由です。

不法領得の意思の意義

窃盗罪が成立するための要件の一つとして、不法領得の意思という概念があります。不法領得の意思が欠ける場合には、窃盗罪は成立しません。不法領得の意思とは、他人の物について、その物の権利者を排除してその物を自己の物として利用・処分する意思のことをいいます。不法領得の意思は、権利者排除意思と利用処分意思の2つから構成される主観的な要件です。窃盗罪と器物損壊罪との境界線を判断する際に問題となるのは、このうちの利用処分意思です。

嫌がらせのためなどの意図で、他人の物をもっぱら毀棄・隠匿する目的で盗む場合には、盗んだ物を自己の物として利用・処分する意思が欠けるといえます。壊したり捨てたりすることは、自己の物として利用したり処分したりするということとは異なるからです。利用処分意思が欠けることから不法領得の意思が欠けることとなり、不法領得の意思が欠ける以上、窃盗罪が成立しないのです。

器物損壊罪の成立を検討する意義

窃盗罪器物損壊罪
刑罰・懲役10年以下
・罰金50万円以下
・懲役3年以下
・罰金30万円以下
・科料
親告罪

他人の財物を盗んだことについて、窃盗罪ではなく器物〇壊罪が成立するのではないかと検討することには、意義があります。なぜなら、器物損壊罪は窃盗罪よりもはるかに法定刑が軽いからです。

捜査機関が窃盗罪の成立を前提として捜査をしていたとしても、実は器物損壊罪が成立するという場合もあり得ます。器物損壊罪は窃盗罪よりも軽い犯罪であるため、器物損壊罪が成立するのであれば不起訴になるという可能性も高まります。

さらに、器物損壊罪は親告罪であるため、告訴がなければ起訴することができません。これに対して窃盗罪は親告罪ではありません。親告罪とは、被害者からの告訴がなければ起訴をすることができない犯罪のことをいいます。捜査機関が窃盗罪が成立すると見込んで捜査をしている場合には、被害者から告訴が得られていないこともあります。実は器物損壊罪が成立するということが分かれば、被害者から告訴が得られていないことを理由として不起訴となることもあり得ます

このように、器物損壊罪の成立を検討することは、実務上も大きな意義があります。窃盗罪が成立するのか器物損壊罪が成立するのかの判断は、簡単ではありません。このような場合には、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談して、どのようになるのか判断してもらうのが良いでしょう。

関連記事

器物損壊罪で逮捕されることはある?逃げるのは本当にNGなのか

物を壊しても器物損壊罪が成立しない場合

物を壊しても器物損壊罪が成立しない場合がある

他人の物を壊しても器物損壊罪が成立しない場合があります。このような場合としては、いったん盗んだ他人の物についてその物を盗んだ後で壊す行為などがあります。

一般的には、他人の物を盗む行為には窃盗罪が成立します。また、他人の物を壊す行為には器物損壊罪が成立します。このことから、他人の物を盗んでから盗んだ後にその物を壊せば、窃盗罪と器物損壊罪の両方が成立するかのようにも思えます。しかし、この場合には窃盗罪のみが成立し、器物損壊罪は成立しません

不可罰的事後行為とは

このような場合に窃盗罪のみが成立して器物損壊罪が成立しないのは、いったん盗んだ他人の物を盗んだ後で壊す行為が不可罰的事後行為にあたるからです。

不可罰的事後行為とは、ある犯罪を行った後にさらに行った行為のうち、犯罪が成立しないものとして扱われる行為のことをいいます。不可罰的事後行為について犯罪が成立しないのは、後から行われた行為も先に行われた犯罪行為と合わせて処罰する扱いとされるからです。

窃盗罪と器物損壊罪の場合には、物を壊す行為が不可罰的事後行為となり、器物損壊罪が成立せず窃盗罪だけが成立します。他人の物を盗む行為が窃盗罪として処罰される以上、盗んだ後に他人の物を壊す行為は先に行われた他人の物を盗む行為と一体のものとして合わせて処罰されることになるのです。

不可罰的事後行為を検討する意義

他人の物を盗んでから物を壊した行為について、器物損壊罪が成立すると見込まれて捜査がなされることがあります。このような場合には物を壊す行為は不可罰的事後行為となるので、器物損壊罪が成立することはありません。代わりに窃盗罪が成立します。

窃盗罪が成立する場合、被害者との間での示談が重要となります。被害者に弁償をして、被害者が加害者を許して処罰を求めないという内容の示談が成立すれば、不起訴などの有利な処分を得ることができる可能性が高くなります。このことから、他人の物を盗んでから物を壊したような場合には、刑事事件の経験が豊富な弁護士に相談し、不可罰的事後行為とならないか検討してもらうべきです。窃盗罪が成立すると判断された場合には、示談に向けて活動してもらうのが良いでしょう。

関連記事

窃盗で示談をする方法とメリット|示談金相場のリアルデータ

アトムの解決事例

こちらでは、過去にアトム法律事務所が取り扱った事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介しています。

窃盗の解決事例(1)

店舗内での窃盗(不起訴処分)

大手家電量販店において、パソコン周辺機器数点(販売価格数万円相当)を万引きしたとされるケース。店から出た時点で店員に声を掛けられ現行犯逮捕された窃盗の事案。同種前科あり。


弁護活動の成果

被害店舗と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。

示談の有無

あり

最終処分

不起訴

窃盗の解決事例(2)

財布の置き引き(不起訴処分)

ネットカフェの男子トイレ内に落ちていた現金数万円や運転免許証等が入っていた財布を拾って持ち帰ったとされる窃盗の事案。


弁護活動の成果

被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。

示談の有無

あり

最終処分

不起訴

器物損壊の解決事例(1)

体液をかけた事案(不起訴処分)

学校の自習室で、掛けてあったコートに体液をかけて汚損したとされるケース。防犯カメラの映像から身元が特定され逮捕された器物損壊の事案。


弁護活動の成果

裁判官に意見書を提出した結果、勾留請求が却下され早期釈放が叶った。被害者に謝罪と賠償を尽くして示談を締結し不起訴処分を獲得。

示談の有無

あり

最終処分

不起訴

器物損壊の解決事例(2)

タクシーを蹴った事案(不起訴処分)

路上でタクシーを拾おうとしていたところ、通りがかった被害者の車にクラクションを鳴らされたことに立腹し、車のドアを蹴ったとされる器物損壊の事案。


弁護活動の成果

依頼者の意向を受けて相手方と示談を締結。不起訴処分となった。

示談の有無

あり

最終処分

不起訴

より多くの事案をご覧になりたい方は『刑事事件データベース』をご確認ください。

窃盗罪・器物損壊罪の不安は弁護士相談

最後にひとこと

窃盗罪の刑罰は1ヶ月以上10年以下の懲役、または1万円以上50万円以下の罰金です。器物損壊罪の刑罰は、1ヶ月以上3年以下の懲役、または30万円以下の罰金、科料です。

窃盗罪と器物損壊罪には、刑罰に大きな差があります。

また、器物損壊罪は、被害者から刑事告訴されない場合、不起訴になります。

被害者の方の財物を持ち出した場合でも、その時点で、もっぱら毀棄隠匿を目的としていたときは、器物損壊罪になります。

この判断は、法律の専門的な判断になりますし、捜査機関の誘導的な取り調べにより意図せず不利益な供述をしてしまう可能性もあります。

弁護士に早期に相談して、適切な対処をしてもらう必要があるでしょう。

ご依頼者様からのお手紙・口コミ評判

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

この度は大変お世話になりました。

ご依頼者様からのお手紙(この度は大変お世話になりました。)

この度は大変お世話になりました。庄司先生には、私の気持ちの動揺を受けとり、常に冷静に対応してもらい、大変心強く思いました。感謝しております。本当にありがとうございました。

本人が改心して真っ当に生きる猶予をもらい、感謝しています。

ご依頼者様からのお手紙(本人が改心して真っ当に生きる猶予をもらい、感謝しています。)

今回、お世話に成りました件は射場先生の御尽力には大きな感謝を心いっぱいに抱き有難く存じます。何より、表面に出にくい言葉を、陰で、おやさしくおだやかな言葉で検察庁への書類を整えて下さり体力的な事も、我々一般人には想像もつかない事をおさっし頂きました。今後、本人には重々気持ちを改心させ、全うに生きる事のゆうよを下さいました。誠に感謝の一言であります。 本人・・・先生のおやさしさに感動致しました。

二度とこの様なことのないように精進していきたいと思います。

ご依頼者様からのお手紙(二度とこの様なことのないように精進していきたいと思います。)

この度は本当に有りがとうございました。二度とこの様なことのないように精進していきたいと思います。

ご依頼者様からのお手紙のほかにも、口コミ評判も公開しています。

身柄事件では、逮捕から23日後には起訴の結論が出ている可能性があります。

在宅事件でも、検察からの呼び出し後、すぐに処分が出される可能性があります。

弁護士へのご相談が早ければ早いほど、多くの時間を弁護活動にあてることが可能です。

窃盗罪・器物損壊罪でお悩みの方は、お早目にアトム法律事務所までご相談ください。

24時間相談ご予約受付中

アトム法律事務所では現在、警察が介入している窃盗・器物損壊事件について初回30分の無料相談を実施中です。

  • 窃盗罪で警察に逮捕された
  • 器物損壊罪で警察から呼び出しを受けた など

くわしくはお電話でオペレーターにおたずねください。

刑事事件でお困りの方へ
無料相談予約をご希望される方はこちら
24時間365日いつでも相談予約受付中 0120-204-911

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。

岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

詳しくはこちら

高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了