「最近検察に呼び出されていないから大丈夫」「示談できたから大ごとにはならないだろう」と思っていたのに、突然起訴状が届いたら驚いてしまうものです。
あるいは、検察から「起訴します」「起訴状が届くと思います」などと言われ、今後の対応について悩む方もおられるでしょう。
起訴とは検察官が事件を裁判にかけることを意味する手続きです。
逮捕されずに在宅捜査であっても、証拠が揃えば在宅起訴されて刑事裁判にかけられます。
起訴状が届いてから約1ヶ月後には1回目の裁判をむかえることがほとんどです。まだ弁護士がついていない場合は、できるだけ早く弁護士を選任しましょう。
この記事では、起訴状が届いたら今後どうなっていくのか、刑事裁判に向けた弁護士の選び方や起訴後の流れを説明します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
起訴状が届いたらこの先どうなる?
起訴状が届いたら、弁護士への相談と依頼といった対応が必要です。今後刑事裁判の被告人として裁判に対応せねばならず、裁判では弁護士をつけることになるためです。
起訴状とはどんな書類か
起訴状は刑事裁判を開くために必要な書類で、検察が作成するものです。起訴とは、検察官が事件を裁判にかけることで、公訴の提起ともいわれます。
起訴されると、これまで「被疑者」とされていましたが「被告人」という呼称に変わります。
起訴状が届くまでの流れ
検察が「刑事裁判が必要」と判断すると起訴状を裁判所へ提出します。この手続きは公判請求ともいわれます。
検察から起訴状を受理すると、裁判所は被告人にすみやかに起訴状を送達せねばなりません。このときは特別送達という方法で起訴状を送達する決まりになっています。
特別送達とは何か
特別送達とは、裁判所から訴訟関係人に対して書類を送付する時に用いられる方法になります(郵便法第49条)。受け取りは対面形式で、発送ならびに受け取りの記録が残ることが特徴です。
裁判の被告人となったことを意味する
起訴状が届いた段階では裁判所が刑罰を決めたわけでもなく、刑務所に入ることが確定したわけでもありません。
いきなり起訴状が届いたら誰だって動揺してしまうでしょう。しかし、起訴状はあくまで刑事裁判の被告人となったこと、これから刑事裁判が開始されることの通知と思ってください。
以下の図は刑事事件の流れを示しており、起訴状が届くタイミングは、在宅起訴の段階にあたります。
なお身柄を拘束されている身柄事件の場合は、留置場に起訴状が届きます。起訴された場合に保釈はされるのか、いつ保釈されるのかについては関連記事『保釈申請の流れ。保釈条件と必要な保釈金は?起訴後の勾留から解放』も参考にしてください。
起訴状が届いたら内容を確認する
起訴状が届いたら、まずは記載内容を確認してください。起訴状を読むと、誰が刑事裁判の被告人であるのか、どういった罪に問われているのかなどを確認できます。
起訴状とは何か
起訴状に記載されている項目は次の通りです。
- 被告人を特定できる事柄
- 公訴事実
- 罪名・罰条
被告人を特定できる事柄とは、氏名、年齢、住所、本籍、職業等です。起訴されたのが誰であるかを特定できる情報といえます。
公訴事実とは、起訴された容疑の内容のことです。事件の起こった日時や場所、誰に対してどういったことを行ったかという事実が記載されています。
罪名は、公訴事実により被告人が問われる罪のことです。
起訴状は、刑事裁判の冒頭でも読み上げられます。起訴状の内容に誤りがある場合には、刑事裁判においてその旨を述べることができます。事件の起こった日時や場所が違うだけでも、重大な結果を招く恐れがあるからです。
弁護人選任届とは何か
弁護人の選任に関する書面も届きます。刑事事件の裁判手続きでは、ほぼ全ての事件で弁護士がつきます。
弁護士に依頼すると、委任を受けた弁護士のほうで裁判所に弁護人選任届を提出します。被告人で対応する必要はありません。
起訴状が届いたら弁護士をつける
弁護士は私選と国選があり、それぞれにメリットがあります。しかし、国選弁護人の選定には所得制限などの条件があるため、私選弁護人への委任を検討する方が多いです。
なお弁護人とは、刑事事件において使用される言葉になります。弁護人は原則弁護士から選任しますので、弁護人と弁護士はほぼ同じ意味で用いられると考えてください。
私選弁護人を選ぶメリット
弁護人は被告人の心情や背景を理解する立場であり、本音を打ち明けられる信頼関係が必要です。
私選弁護人を選ぶ主なメリットには、ご自身で弁護人を選べること、状況に応じてこまめな連絡が期待できること、いつでも変更できることがあげられます。
国選弁護人は原則費用が掛かりませんが、選ぶことができず、変更も簡単ではありません。また、他に案件を多く抱えている場合には、スムーズに連絡がつかない場合もあります。
関連記事
・弁護士をつけるなら私選弁護士?国選弁護士?メリットを徹底比較
私選弁護人を選ぶときのポイント
刑事裁判に向けて私選弁護人を選ぶ際には、次のようなポイントに注目するとよいでしょう。
- 刑事事件のノウハウ
- わかりやすい弁護士費用
- 信頼して任せることができそうか
どういったところに着目するべきかを説明していきます。
刑事事件のノウハウ
刑事事件の弁護活動は、必要な証拠を集めること、先読みして先手を取って行動できることなど、状況に合わせた広い能力が求められます。そのためには多くの解決実績をもっていることや、類似事件の弁護活動経験があるかなどに着目すべきです。
法律事務所のホームページから取り扱い範囲や実績を確かめてみましょう。
アトム法律事務所について
わかりやすい弁護士費用
国選弁護士にかかる弁護士費用は、原則被告人が負担することはありません。しかし私選弁護士の場合には被告人の負担となります。
弁護士費用は法律事務所によって個別に設定されているので、最低限かかる費用はいくらぐらいか、弁護士費用が追加されるケースなど、分かりやすく説明してくれる弁護士を選びましょう。
裁判に出廷すると出張日当などの実費が発生するので、法律事務所と裁判所との距離も弁護士選びのポイントです。
信頼関係や安心感
刑事事件の被告人になるということは、人生の中でも重大な局面です。そんな重大な局面を一緒に乗り越える弁護士は「この人になら任せよう」と思える存在が望ましいでしょう。
例えば、あなたの話をじっくりと聞いてくれること、わかりやすく説明してくれることなど、弁護士とのコミュニケーションで相性もわかってきます。
弁護活動の中では被告人の家庭環境や交友関係が重要になる場合もありますので、必要があればプライベートなことも話をして頂くことになるでしょう。そんなときにも、弁護士が信頼できる存在であれば安心して話せます。
弁護士は気難しそうなイメージがあるかもしれませんが、実際に話をしてみることは重要です。法律事務所によっては、刑事事件の法律相談を実施しているので活用すると良いでしょう。
アトム法律事務所は全国主要都市に事務所があり、刑事事件で起訴されてしまった方には初回無料で法律相談を行っています。
起訴状が届いたら裁判の流れを知っておこう
刑事事件の起訴後の流れは、以下の通りに進行します。
- 冒頭手続き
- 証拠調べ手続き
- 弁論手続き
- 判決、控訴や上告
それぞれのポイントを解説します。
冒頭手続き
刑事裁判の冒頭手続きでは、人定質問、起訴状の朗読、黙秘権の告知、罪状の認否確認が行われます。
人定質問とは、裁判官が氏名、生年月日、住所や本籍地を確認することです。証言台に立つ被告人が、本当に被告人であることを確かめるために行われます。
検察官による起訴状の読み上げが終わると、裁判官より黙秘権があることを告げられます。そして、罪状認否では、起訴状の内容に対する意見を求められるので、自分がやったことを認めるのか、自分ではないと否認するのかを簡潔に述べましょう。
証拠調べ手続き
証拠調べ手続きでは、検察官が証拠で証明するべき事実を「冒頭陳述」として述べることから始まります。罪があると主張する側が立証することが原則なので、検察官から先に証拠となる文書や証拠物、証人を呼ぶなどの立証活動を行います。
ただし、提出した証拠のすべてを取り調べられるとは限りません。検察官や弁護人の意見をもとに裁判所が決定します。
相手方の証拠にどう対応するのか、どういった証拠を提出するべきかは弁護活動の方針によって様々です。被告人の反省の有無を証言してもらう情状証人の準備をするなど、情状酌量によって刑罰を軽くしてもらうこともあるでしょう。
また、被告人質問も刑事裁判の重要な局面です。被告人質問とは、裁判官が被告人に対して質問をなげかけ、供述を求めることをいいます。刑事事件のノウハウを多くもつ弁護士であれば事前に想定質問を考え、どのように答弁するのか、内容の打ち合わせや答弁練習が可能です。
期日より前に裁判官へ証拠を提出できる?
刑事裁判の法廷で証拠を提出するまでは、裁判官は起訴状に書かれた事実のみしか知りません。これは裁判官が裁判外の情報や先入観を持たないようにするためです。こういった考え方を、起訴状一本主義ともいいます。そのため、公判期日よりも先に証拠を集めて裁判官の心象を良くしておくことはできません。
弁論手続き
証拠調べが終わると、検察官が「論告」として、妥当と考えられる刑罰を求刑します。検察官からの求刑を受けて、弁護士は被告人の刑罰に対する意見を述べる流れです。具体的には執行猶予や罰金を求めたり、「寛大な処分」を要望することもあります。
執行猶予が付くと、判決言い渡しから刑の執行まで一定の猶予期間が与えられるなど、実刑と比べてメリットは多数あります。
関連記事
・執行猶予とは?懲役実刑との違いは?執行猶予中の逮捕で取り消し?
判決、控訴や上告
双方の弁論を終えて結審すると、裁判官から判決が言い渡されます。
判決の内容には、懲役刑や禁錮刑などの実刑から執行猶予がつく判決、罰金刑まで様々です。いずれも有罪に変わりなく、判決が確定すれば前科がつきます。判決の内容に不服があれば、裁判所に不服申し立てをしなくてはなりません。
一方で無罪が言い渡された場合には、無罪判決が確定すると前科はつきません。しかし、検察からの不服申し立てが行われると、もう一度裁判にかけられることになるので、無罪確定とはならないのです。
関連記事
・刑事事件の裁判とは|刑事裁判の流れ・弁護士は何をしてくれる?
・刑事事件の控訴期間は14日間|第一審判決から控訴審まで流れを解説
起訴状についてのQ&A
ここからは起訴状がいつ届くのか、起訴状を受けとらないとどうなるのかなど、起訴状に関するよくある疑問に回答します。
検事に裁判になると言われてから起訴状はいつ届く?
検事から「刑事裁判になります」や「起訴します」と言われたら、公判請求される可能性が高いです。
在宅捜査を受けている場合、検察がいつ公判請求するかによって起訴状が届くタイミングが決まります。検察からの起訴状が裁判所に提出されると、まもなく起訴状が手元に届くと考えてください。
起訴状が届かないということは不起訴?
在宅捜査の場合、時効の期間中はずっと捜査が続いている可能性があります。そのため、不起訴処分になったことを確認したいときには、検察庁に問い合わせてください。そして、担当検事より「不起訴」と言われたら不起訴処分告知書を請求しましょう。
身に覚えのない起訴状は無視していい?
起訴状の内容を確認したが、全く身に覚えがないという可能性もあるでしょう。本当に身に覚えのない起訴状であれば、差出人である裁判所に確認を取るようにしてください。
また、事実とは異なる起訴状であっても無視をするべきではありません。例えば、警察や検察に対して「私はやっていない」ときっちり説明したはずなのに起訴されてしまったケースもあるでしょう。
起訴状の内容に不服がある場合には、刑事事件を取り扱う法律事務所への相談をおすすめします。
略式命令だと起訴状は届かない?
略式手続は正式裁判を開かずに処分を確定させるものです。略式手続により起訴されることを略式起訴といいます。略式起訴された場合は、検察庁で「略式請書」という書式にサインを求められます。
被告人の元には起訴状と併せて裁判所からの「略式命令書」が届くので、その内容に従って罰金を納付します。
略式起訴について詳しく知りたい方は、関連記事『略式起訴の要件と罰金相場|前科はつく?起訴・不起訴との違いは?』を参考にしてください。略式起訴とは何か、略式起訴の罰金相場や納付の流れなどを解説しています。
起訴後の示談は意味がない?
起訴後に示談が成立することは判決に影響を与える可能性があるので、示談成立を目指すことは意味があります。示談成立により執行猶予の獲得につながることもあるでしょう。
刑事裁判は証拠調べ手続きといって、検察と弁護士双方で証拠を提出しながら進めていきます。示談が成立したことも証拠として提出可能です。
また、証拠調べ手続きや結審後に示談が成立した場合でも決して遅くありません。新たな証拠が出てきたとして、弁護士が裁判官と検察に掛け合うことで証拠調べ手続きをやり直せる可能性があります。
起訴状は誰でも閲覧できる?
刑事裁判が終了した事件については、検察庁で保管されています。判決の確定後であれば、事件と関係のない第三者であっても起訴状を含む刑事訴訟記録の閲覧が可能です。
閲覧の申請先は、第二審・第三審とすすんだ事件であっても、第一審裁判所に対応する検察庁になります。
アトム法律事務所の刑事裁判例
アトム法律事務所では、起訴後の刑事裁判の弁護活動にも注力しています。アトム法律事務所の解決事例の一部を紹介するので、参考にしてみてください。
万全な裁判対応で実刑を回避|危険運転致死傷
在宅事件として捜査され、信号無視による危険運転致傷罪で起訴された事案です。裁判所に出頭する旨の通知を受け、アトム法律事務所にご相談をいただきました。裁判での受け答えの練習など、弁護士が万全のサポートを行い、懲役10か月執行猶予3年という執行猶予つきの判決に至ったのです。
危険運転致死傷(執行猶予つき)
信号のある交差点において赤信号を無視して自動車を進行させ、被害者搭乗の原動機付自転車と衝突したケース。被害者は全治2週間の傷害を負った。信号無視による危険運転致傷の事案。
弁護活動の成果
任意保険会社と被害者との間で示談が結ばれていることを主張。さらに加害者を許す旨の嘆願者を被害者から取得。執行猶予つき判決を獲得。
最終処分
懲役10か月執行猶予3年
依頼者のお手紙
示談不成立でも執行猶予判決|迷惑防止条例違反
電車内の盗撮について検事からの取り調べを受け、裁判所の招集前に相談・依頼があった事案です。示談は成立しませんでしたが、弁護活動により懲役6か月執行猶予4年という執行猶予つきの判決となりました。
迷惑防止条例違反(執行猶予つき)
電車の車内において、女性のスカート内に小型カメラを差し向け盗撮しようとした際、女性に気づかれホームに降ろされ、駅員に警察を呼ばれたケース。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
示談は不成立であったが、粘り強く弁護活動を継続。執行猶予付判決となった。
最終処分
懲役6か月執行猶予4年
依頼者のお手紙
情状弁護を尽くして執行猶予判決|窃盗および暴行
ドラッグストアでの窃盗および暴行について起訴された事案です。裁判の事前打ち合わせや、再犯防止の重要性、カウンセリングの紹介など、依頼者の方に寄り添う弁護活動を行いました。結果として、執行猶予つきの判決を獲得しました。
暴行・窃盗(執行猶予つき)
ドラッグストアにおいて、歯ブラシ等1000円相当を万引きしたとされたケース。事件を目撃し取り押さえに来た保安員を殴るなどの暴行を加えたために、強盗容疑で逮捕された。後日、窃盗および暴行に罪名が変更された。
弁護活動の成果
示談は不成立であったが、依頼者の反省の情を裁判の場で十分伝えるなど情状弁護を尽くし、執行猶予付き判決となった。
最終処分
懲役1年6か月執行猶予3年
依頼者のお手紙
起訴後の無料法律相談|刑事事件の被告人になったらアトムに相談
アトム法律事務所は、刑事事件の被告人となってしまった方の弁護活動に力を入れています。起訴状が届いたら、ご自身の将来やご家族や職場へのダメージ、刑務所に入るのかなど悪い想像で頭がいっぱいになってしまいます。しかし起訴状が届いた時点で刑罰が確定したわけではありません。アトム法律事務所では、法律相談の予約を年中無休で受付中です。どういった対応を取っていくのか、法律の専門家がアドバイスします。