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痴漢の時効は何年?刑事の時効と民事の時効の違いを弁護士が解説

痴漢事件の時効

2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。

この記事は、痴漢の時効に関する情報をまとめています。

痴漢の時効は刑事事件と民事事件の2つの意味があり、それぞれ年数も異なります。

刑事事件では原則3年または12年(内容によっては20年)、民事事件では3年・5年・20年と、ケースによって年数が異なります。

実際に数多くの痴漢事件を取り扱ってきた弁護士が、痴漢事件の解決にポイントになることを整理しています。痴漢事件でご不安をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。

ここでは、痴漢事件の解決に必須となる被害者対応「示談」についても解説しています。はじめて示談を検討されている方にもわかりやすく説明していますので、ご確認ください。

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痴漢の時効は2種類ある

時効とは、一定の期間が経過することにより、法的な責任追及や権利行使ができなくなる制度のことです。

痴漢の時効には、刑事上の時効と民事上の時効の2種類が存在します。刑事は国から受ける処罰に関するもの、民事は被害者への賠償に関するものという大きな違いがあります。

時効が成立した際の効果や、時効が完成するまでの期間もそれぞれ異なるため、両者を区別して理解しておくことが重要です。

刑事上の時効|公訴時効

刑事上の時効は、正しくは「公訴時効」と呼ばれます。検察官が持つ公訴権(裁判にかける権利)の期限を定めるものです。

逮捕された被疑者は、最終的に検察官によって起訴され、裁判で有罪か無罪か判断されます。

公訴時効を過ぎると、検察官は起訴することができなくなり、原則として、警察に逮捕されることや前科がつくことはありません。

民事上の時効|消滅時効

民事上の時効は、正しくは「消滅時効」と呼ばれます。被害者が加害者に対して、慰謝料などを請求できる期限を指します。

痴漢は刑法上の犯罪であると同時に、民法第709条が定める不法行為にも該当します。

被害者は加害者に対して、損害賠償を請求する権利を持っていますが、一定期間が経過するとその権利が消滅します。

消滅時効が過ぎ、加害者が時効を援用(主張)すれば、被害者から民事訴訟を起こされることはなくなり、法律上の支払い義務もなくなります。

時効により自動的に消滅するわけではないため、注意が必要です。

痴漢の刑事上の時効|公訴時効

痴漢事件の公訴時効は、どのような罪に問われるのかによって異なります。

痴漢の公訴時効は3年もしくは12年が多い

罪名公訴時効態様
迷惑防止条例違反3年衣服の上から身体に触れる
撮影罪(性的姿態撮影等罪)3年盗撮行為、盗撮画像の所持
不同意わいせつ罪12年衣服の中に手を入れる、暴行・脅迫を用いる
不同意わいせつ致傷罪20年痴漢行為により被害者にケガをさせた場合

痴漢事件は、各都道府県が定める迷惑防止条例違反になる場合と、刑法犯としての不同意わいせつ罪に該当する場合がほとんどです。

迷惑防止条例違反となる場合には、3年が公訴時効となりますが、行為が執拗であったり悪質と判断された場合は不同意わいせつ罪として12年の公訴時効が適用されます。

痴漢行為によって、相手にケガをさせた場合は不同意わいせつ致傷罪に問われることになり公訴時効も20年と長くなります。

なお、公訴時効は「犯罪行為が終わったとき」から起算されます。被害届が出された日や警察が捜査を始めた日ではない点に注意が必要です。

痴漢の公訴時効が停止するケース

年数が経過していたとしても、特定の事情がある間は、時効のカウントが停止します。停止期間がある場合、その日数分だけ時効が完成する日は後ろ倒しになります。

たとえば、犯行後に国外へ出国した場合、逃亡目的だけでなく仕事や旅行での滞在であってもその期間は時効のカウントが停止されます。公訴時効の進行が停止するため、帰国後も逮捕される可能性が残ります。

主に以下のようなケースで公訴時効が停止します。

  • 被疑者が国外に滞在している場合
  • 被疑者が起訴された場合
  • 被疑者の共犯者が起訴された場合
  • 被疑者が逃げ隠れして、裁判の書類を届けることができない場合

被害者が18歳未満だった場合の時効

2023年の法改正により、不同意わいせつ罪などの重大な性犯罪において、被害者が18歳未満の場合は公訴時効のカウントが始まるタイミングに特例が設けられました。

この場合の時効は、被害者が18歳に達した日から起算します。

たとえば、被害者が15歳の時に起きた不同意わいせつ罪(時効12年)の事件であれば、被害者が18歳になるまでの3年間は時効が進行しません。

その結果、被害者が30歳になるまで逮捕されるリスクが続くことになります。

痴漢の民事上の時効|消滅時効

痴漢事件の消滅時効は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求権を状況に応じて定めています。

痴漢の消滅時効は3年、5年もしくは20年

適用されるケース消滅時効起算点(カウント開始)
通常の痴漢行為3年損害および加害者を知った時
生命・身体を害する不法行為5年損害および加害者を知った時
客観的な期限20年痴漢行為があった時

一般的な痴漢行為(迷惑防止条例違反など)であれば、消滅時効は3年となります。

痴漢行為の際に、被害者にケガをさせた場合などは、「生命・身体を害する不法行為」として5年の消滅時効が適用されます

痴漢の消滅時効の起算点

民事上の時効において重要なのが、被害者が加害者を判明しない限り、3年や5年の時効は進まないという点です。

その場で逃走して身元を隠し続けている場合は、3年や5年が経過したとしても賠償義務は消えません。ただし、加害者が誰かわからない状態であっても、原則として犯行時から20年が経過すると賠償請求権は消滅します。

痴漢の消滅時効が完成猶予・更新されるケース

消滅時効は、特定の事情によってカウントが完成猶予(停止)したり、更新(それまでの期間が無効となり、新たに時効期間が進行)されたりするケースがあります。

消滅時効が完成猶予される主なケース

  • 裁判上の請求
  • 強制執行
  • 仮差押え
  • 協議を行う旨の合意
  • 催告(内容証明郵便等による請求)

消滅時効が更新される主なケース

  • 裁判上の請求
  • 強制執行
  • 承認(加害者が責任を認め、支払いの約束などをする)

時効の成立は単純なカレンダー計算だけで判断することは難しく、民事の時効が過ぎたからといって刑事罰(前科)のリスクが消えるわけではないという点にも注意する必要があります。

ご自身のケースでは時効がいつ完成するのか、示談による解決が可能なのかを判断するためには法的専門知識が不可欠です。

過去の事件で不安を抱えている方は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

痴漢の時効の完成を待つリスク

過去の痴漢行為について、時効が過ぎれば安心、と楽観視するのは、現実的にはリスクが高い判断です。

アトムが実際に取り扱った事件では、痴漢の逮捕率が約51%、不同意わいせつの逮捕率が49%と高い水準にあります。

法務省が発行する統計データ(令和7年版 犯罪白書)によると、令和6年の全刑法犯の逮捕率が34.6%であり、一般的な犯罪に比べて逮捕されるリスクが高いことが浮き彫りになっています。

後日逮捕の可能性がある

その場から逃げきれたとしても、今の時代には犯人を特定するための網はあらゆるところに張り巡らされています。

防犯カメラと映像解析

駅構内や車内、街中の防犯カメラの普及に加えて、映像解析技術も飛躍的に進歩しています。

犯行当日に特定がされなくても、後日映像を辿って身元が判明することで、後日逮捕される事例も少なくありません。

交通系ICカードの履歴

改札を通過する際の交通系ICカードの利用履歴から、犯人の足取りが特定されるケースもあります。

スマートフォンなどの証拠

被害者や目撃者が、写真・動画で記録した犯人の姿や逃走経路が有力な証拠となることも増えています。

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被害者の処罰を望む感情は消えない

痴漢は、被害者の心に深い傷を負わせる性犯罪です。

被害者の処罰を望む感情は時間経過で薄れるものではなく、むしろ許せないと心の整理がついて数ヶ月後や数年後に被害届や告訴状が提出されることもあります。

多くの痴漢事件は非親告罪であり、被害者の告訴がなくても警察の判断で捜査が進められる場合があります。時効の完成前に検挙しようと動くことが一般的であるため、実務上、何もせず時効を迎えることは容易ではありません。

犯行を繰り返すことでリスクは増える

逃げきれたことを良いことに、犯行を繰り返してしまうと逮捕のリスクは高まる傾向にあります。

通勤ルートで犯行を繰り返している場合、証言に基づいて張り込みや警戒が強化されるためです。

逮捕された際に余罪が発覚すると、より厳しい処分を受けることになります。

痴漢事件は逮捕される?痴漢解決の鍵は示談にある

弁護士は痴漢事件が起きたとき、時効と同じくらい注意することがあります。

それは示談です。示談の成否が痴漢事件解決の鍵になるため、スピーディに最良の結果を得るためには示談が必須です。

痴漢事件は、窃盗事件や傷害事件と同じく被害者が存在する事件です。被害者対応が適切にできるかで、刑事処分の内容はかわると考えてよいでしょう。

弁護士は、痴漢事件を担当するとき、特に被害者との接触には注意を払います。

それは、痴漢が性犯罪であるという性質から、被害者が加害者側に対して恐怖心や不快感を強く持っている可能性があるからです。その点をよく理解して、被害者の心情に配慮した形で示談交渉を進めることになります。

被害者との示談は逮捕回避・早期釈放につながる

痴漢の被害者と示談ができると、逮捕回避につながります。逮捕・勾留という身体拘束を受けていたとしても、被害者との示談成立は釈放の後押しになるのです。

そのため、痴漢事件で家族が逮捕されても、家族が少しでも早く弁護士に相談し、早い段階で示談をすることができれば早期釈放が期待できるでしょう。

逮捕や勾留という手続きは、被疑者が「逃亡するかもしれない」と思われたり、「証拠隠滅が疑われる」場合に行われます。被害者と示談をすることで、捜査機関が懸念することを払拭することができ、逮捕回避につながります

身体拘束されない在宅捜査では、日常生活への影響はほとんどなく、物理的に仕事や学業に支障がでることはありません。

痴漢事件の示談は不起訴処分への重要なステップ

痴漢事件の示談にはもう一つ、重要な意味があります。

それは刑事処分に影響があるということです。刑事処分は検察官が起訴して裁判にするか、不起訴処分にするかを決めます。起訴されると刑事裁判に発展しますが、不起訴となればそこで事件は終了となります。

不起訴になれば前科もつきません。痴漢事件では、検察官は刑事処分を検討するにあたり、被害者の感情を重視します。

示談をしてすでに被害者が加害者を許しているのであれば、検察官はすでに被害感情は慰謝されたとして、不起訴を選択する可能性が高くなります

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痴漢の時効が気になる方へ|弁護士からのアドバイス

迷惑防止条例違反でも不同意わいせつでも、いずれの場合も前科がつくリスクがあります。

厳しい刑事処分を受けるリスクを選ぶより、早い段階で示談をして一気に事件解決まで進めるほうが賢明であるといえます。何年も逮捕の危険を抱えて生活をするのは精神衛生上もよくありません。

痴漢で前科をつけない最良の方法

痴漢で前科をつけないためには、(1)不起訴処分を獲得する(2)事件化されることを防ぐの2つの方法があります。

いずれもポイントは、被害者との示談を早い段階でできるか、ということにあります。

もちろん、示談は被害者との話し合いにより解決を図る手段です。示談が決裂することもあれば、そもそも被害者と連絡をとることすら叶わないこともあります。

刑事事件を数多く手がけてきた弁護士であれば、示談できなかった場合に備えて供託という方法も視野に入れた活動を展開します。

痴漢事件の解決にあたっては、実践経験が豊富な弁護士に相談するのが望ましいです。単純な痴漢事件でも、適切な弁護活動を行わなければ、刑事裁判になって前科がついてしまう可能性もあります。

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弁護士への早期相談が事件解決の明暗をわける

痴漢事件で特に注意をしたいのが、逮捕されずに在宅事件になっているケースです。

在宅事件になっている方に一番多い誤解は、「自分は逮捕されていないから、軽い処分で済む」というものです。逮捕されたかどうかと、刑事処分の軽重は直接的にはリンクしません。

在宅事件でも起訴されたり罰金処分で前科がつくこともあります

安易に「自分は大丈夫」と思い込むのではなく、警察から取り調べの対象となっているときには、早めに弁護士までご相談ください。

相談が早ければ早いほど、対応策の選択肢も広がります。早期相談は、早期解決につながるということを、覚えておいてください。

まとめ

痴漢の時効は刑事事件としての側面と民事事件としての側面があります。

それぞれ、意味も年数も違いますので、痴漢の時効が気になる方はこの記事を参考にしてください。

時効と同じくらいに大事なこととして、示談についても解説しました。痴漢事件でお困りの方は、逮捕回避や不起訴獲得を目指して、まずは弁護士相談を利用されることをおすすめします。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了