この記事は、痴漢の時効に関する情報をまとめています。痴漢の時効は刑事事件と民事事件の二つの意味があり、それぞれ年数も異なります。実際に数多くの痴漢事件を取り扱ってきた弁護士が、痴漢事件の解決にポイントになることを整理しています。痴漢事件でご不安をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
ここでは、痴漢事件の解決に必須となる被害者対応「示談」についても解説しています。はじめて示談を検討されている方にもわかりやすく説明していますので、ご確認ください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
痴漢の時効は「刑事」「民事」で意味・年数が異なる
痴漢事件の時効の意味|弁護士が細心の注意を払うワケ
痴漢事件の時効には、刑事事件としての時効と民事事件としての時効があります。刑事事件の時効を迎えると、痴漢事件は起訴されることがなくなるため、逮捕されることもなければ刑事裁判を受けることもなくなります。つまり、刑事罰を受ける可能性がなくなるということです。民事事件の時効を迎えると、被害者から損害賠償請求を受ける可能性がなくなります。
時効成立の有無によって、その後の流れが大きく変わるため、弁護士はその痴漢事件が時効を迎えているか細心の注意を払いチェックします。時効は刑事手続き上も、民事責任の追及を受けるという意味でも見逃してはいけません。弁護士は痴漢事件の相談を受けた際に、時効成立に必要な情報を確認するところからはじめます。
刑事事件の時効|公訴時効は「3年」「12年」
刑事事件の時効のことを「公訴時効」といい、検察官の公訴権を失わせる効果があります。痴漢事件を起訴して刑事裁判にかけることができるかは、検察官に決める権限があります。起訴されなければ、痴漢事件はそれ以降、罪に問われることはなくなるのです。痴漢事件の公訴時効は「3年」と「12年」の二つの場合が考えられます。公訴時効を数え始めるのは、犯罪行為が終わったときからです。
痴漢事件は、各都道府県が定める迷惑防止条例違反になる場合と、刑法犯としての不同意わいせつ罪に該当する場合があります。迷惑防止条例違反となる場合には、3年が公訴時効となり、不同意わいせつ罪の場合は12年が公訴時効です。公訴時効が成立すると、逮捕されることもなくなります。逮捕は捜査の一貫で、捜査は公訴に向けた活動であるため、公訴されることがなくなれば捜査は行われません。
民事事件の時効|被害者の損害賠償請求は「3年」「20年」まで
痴漢の民事事件の時効には、被害者が加害者に対して行う損害賠償請求の時間的な限界という意味があります。つまり、民事の時効が成立すれば、加害者が被害者から損害賠償請求を受けたとしても、支払う義務がなくなるのです。民事の時効はいつから進行するかという点は、重要ですので押さえておく必要があります。加害者を知ったときから3年、事件が発生したときから20年というのが、民事の時効になります。
加害者は、時効を迎えても、被害者に損害賠償を支払うことも可能です。時効はあくまで、「支払う義務がなくなる」という法律上の効果が発生することを意味します。痴漢という犯罪行為は、民法上の不法行為(民法709条)に該当しますので、被害者から損害賠償請求されるときには、これが根拠になります。
痴漢事件は逮捕される?痴漢解決の鍵は示談にある
弁護士が痴漢事件で示談にこだわるワケ
弁護士は、痴漢事件が起きたとき、時効と同じくらい注意することがあります。それは、示談です。示談の成否が痴漢事件解決の鍵になるため、スピーディに最良の結果を得るためには示談が必須です。痴漢事件は、窃盗事件や傷害事件と同じく被害者が存在する事件です。被害者対応が適切にできるかで、刑事処分の内容はかわると考えてよいでしょう。
弁護士は、痴漢事件を担当するときには、特に被害者との接触には注意を払います。それは、痴漢が性犯罪であるという性質から、被害者が加害者側に対して恐怖心や不快感を強く持っている可能性があるからです。その点をよく理解して、被害者の心情に配慮した形で示談交渉を進めることになります。
被害者との示談は逮捕回避・早期釈放につながる
痴漢の被害者と示談ができると、逮捕回避につながります。逮捕・勾留という身体拘束を受けていたとしても、被害者との示談成立は釈放の後押しになるのです。そのため、痴漢事件で家族が逮捕されても、家族が少しでも早く弁護士に相談し、早い段階で示談をすることができれば早期釈放が期待できるでしょう。
逮捕や勾留という手続きは、被疑者が「逃亡するかもしれない」と思われたり、「証拠隠滅が疑われる」場合に行われます。被害者と示談をすることで、捜査機関が懸念することを払拭することができ、逮捕回避につながります。身体拘束されない在宅捜査では、日常生活への影響はほとんどなく、物理的に仕事や学業に支障がでることはありません。
痴漢事件の示談は不起訴処分への重要なステップ
痴漢事件の示談には、もう一つ、重要な意味があります。それは、刑事処分に影響があるということです。刑事処分は検察官が起訴して裁判にするか、不起訴処分にするかを決めます。起訴されると刑事裁判に発展しますが、不起訴となればそこで事件は終了となります。
不起訴になれば、前科もつきません。痴漢事件では、検察官は刑事処分を検討するにあたり、被害者の感情を重視します。示談をしてすでに被害者が加害者を許しているのであれば、検察官はすでに被害感情は慰謝されたとして、不起訴を選択する可能性が高くなります。
痴漢の時効が気になる方へ|弁護士からのアドバイス
示談で一気に解決へ|リスクを最小化するために
痴漢の時効が成立するまで待つことはよい判断といえるでしょうか?刑事事件を数多く扱ってきた弁護士からすると、それは「賢明な判断ではない」といえます。公訴時効が成立するまで待つというのは、厳しい刑事処分となるリスクが高いからです。痴漢事件はどの段階で逮捕されるかわかりません。逮捕されたとき、被害者対応をせずにただ時効成立を待っていたとなれば、反省の態度も認められないとなり、刑事処分はより厳しいものになる可能性があります。
迷惑防止条例違反でも不同意わいせつでも、法定刑には「懲役刑」が予定されています。厳しい刑事処分を受けるリスクを選ぶより、早い段階で示談をして一気に事件解決まで進めるほうが賢明であるといえます。何年も逮捕の危険を抱えて生活をするのは精神衛生上もよくありません。
痴漢で前科をつけない最良の方法
痴漢で前科をつけないためには、①不起訴処分を獲得する、②事件化されることを防ぐ、の2つの方法があります。いずれも、ポイントは、被害者との示談を早い段階でできるか、ということにあります。もちろん、示談は被害者との話し合いにより解決を図る手段です。示談が決裂することもあれば、そもそも被害者と連絡をとることすら叶わないこともあります。
刑事事件を数多く手がけてきた弁護士であれば、示談できなかった場合に備えて供託という方法も視野に入れた活動を展開します。痴漢事件の解決にあたっては、実践経験が豊富な弁護士に相談するのが望ましいです。単純な痴漢事件でも、適切な弁護活動を行わなければ、刑事裁判になって前科がついてしまう可能性もあります。
弁護士への早期相談が事件解決の明暗をわける
痴漢事件で特に注意をしたいのが、逮捕されずに在宅事件になっているケースです。在宅事件になっている方に一番多い誤解は、「自分は逮捕されていないから、軽い処分で済む」というものです。逮捕されたかどうかと、刑事処分の軽重は直接的にはリンクしません。在宅事件でも起訴されたり罰金処分で前科がつくこともあります。
安易に「自分は大丈夫」と思い込むのではなく、警察から取り調べの対象となっているときには、早めに弁護士までご相談ください。相談が早ければ早いほど、対応策の選択肢も広がります。早期相談は、早期解決につながるということを、覚えておいてください。
まとめ
痴漢の時効は刑事事件としての側面と民事事件としての側面があります。それぞれ、意味も年数も違いますので、痴漢の時効が気になる方はこの記事を参考にしてください。時効と同じくらいに大事なこととして、示談についても解説しました。痴漢事件でお困りの方は、逮捕回避や不起訴獲得を目指して、まずは弁護士相談を利用されることをおすすめします。