「痴漢で逮捕されたけど、不起訴になれば前科はつかない?」
「痴漢の被害者と示談をして、不起訴で解決したい」
刑事事件で起訴されてしまうと、ほとんどの場合、有罪判決が下されます。
痴漢で起訴され前科がついてしまうと、仕事をクビになるのでは、社会生活への復帰が困難になるのでは、と不安になりますよね。
適切な対応をとることで、痴漢で不起訴になる確率を高めることができます。
痴漢での不起訴を獲得し、前科を回避したい加害者やその家族の方に向けて、今回の記事では以下のことを解説します。
- 痴漢で不起訴になるためには
- 痴漢の起訴・不起訴率
- 痴漢事件を弁護士に相談すべき理由
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
痴漢で逮捕されても不起訴になれば前科はつかない?
痴漢で捕まってしまったら人生が終わってしまうと考えている人はどうやら少なくないようです。
しかし、痴漢事件の被疑者となってしまっても、早期に適切な対応をとることができればこれまで通りの生活を続けられる可能性は十分にあります。まずは、「不起訴」になるという選択肢があることを知ってください。
痴漢は起訴されないことが重要|そもそも起訴・不起訴とは
起訴とは、検察官が事件を裁いてもらうために裁判所に訴え出ることをいいます。
起訴には公開の裁判を開いてもらうための通常の起訴(公判請求)のほか、書面上の審理のみで罰金刑を求める略式起訴(略式請求)があります。痴漢事件では略式起訴により罰金刑となることが多くあります。
他方、事件を捜査した結果、裁判で有罪を得ることが難しいと判断したり、刑罰を与える程ではないと検察が判断すると、事件を起訴しない「不起訴」という決定が下されます。
不起訴になればそもそも裁判が開かれないので、有罪になることも前科が付くこともなく日常生活に戻ることができます。
日本の裁判の有罪率は99.9%といわれています。そのため一度事件が起訴されてしまえば無罪を勝ち取ることは非常に困難です。
ですから、痴漢で加害者になってしまった場合には、不起訴によって事件を終了することが非常に重要になってくるのです。
不起訴処分の種類
不起訴処分になる理由はいくつかありますが、その中でも重要なものは以下の3つです。
- 嫌疑なし
痴漢の疑いが晴れた場合 - 嫌疑不十分
痴漢の犯人とする証拠が不十分な場合 - 起訴猶予
犯行を行った事実は確実だが、被疑者や事件の状況を考慮して、検察官が起訴しないと判断する場合
痴漢が冤罪である場合や否認をする場合には、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」での不起訴を目指すことになります。
一方、痴漢を認めている場合には、「起訴猶予」としてもらえるかどうかがもっとも重要です。
起訴・不起訴が決定するまでの流れ
痴漢における、起訴・不起訴が決定するまでの流れは、逮捕・勾留されるかどうかにより、身柄事件と在宅事件という2つの場合に分けることができます。
身柄事件では、逮捕された後72時間以内に「勾留」請求されるかどうかが決まり、勾留されるとさらに最大20日間身柄を拘束されます。そして、勾留期間が満了するまでの間に検察官が起訴・不起訴の判断をします。
実務では近年、社会生活への影響を考慮して、痴漢で逮捕されても罪を認めていて身元もはっきりしているのであれば勾留せずに在宅事件とする運用が増えているようです。なかには、否認しているケースでも勾留請求が却下される事案もみられます(最決平成26年11月17日参照)。
逮捕されなかったり釈放されて在宅事件となった場合には、日常生活を送りながら捜査を受けることになります。在宅事件でも、最終的に検察が起訴・不起訴を判断しますが、捜査期間に身柄事件のような時間制限はありません。
ここで重要なのは、起訴される前のできるだけ早い段階で弁護士に相談すべきだということです。検察官が起訴の判断をした後に、慌てて弁護士に依頼しても不起訴処分を獲得することはできません。
起訴されて手遅れになってしまう前に適切な対応を取らなければなりません。
痴漢で不起訴を獲得するには?被害者との示談が重要
痴漢で不起訴になるには|犯行を認めている場合
痴漢で不起訴(起訴猶予)を獲得するには示談を締結することが極めて重要です。
痴漢のような被害者がいる犯罪、特に性犯罪では、被害者と示談がされているか否かが検察官の起訴判断を大きく左右します。
示談が成立し被害者と和解しているのであれば、検察官も刑事罰まで科す必要がないと判断する可能性が高まります。
被害者にとっても捜査や裁判で事件について詳細に追及されることは辛いものですから、こういった性犯罪で被害者の意向を無視してまで検察官が起訴の判断をすることはそう多くありません。
実際に、初犯の痴漢事件(迷惑防止条例違反)では、被害者と示談ができれば不起訴とする運用が定着しているようです。
他方、示談ができなかったケースでは、ほとんどが罰金刑となり前科が付くことになります。
痴漢事件が起こった場合、早急に弁護士に相談の上被害者と示談を締結することが不起訴処分の獲得につながると言えるでしょう。
痴漢の示談方法と示談金相場
痴漢事件を認めて被害者と示談をするには、弁護士に依頼する必要があります。
痴漢のような性犯罪では、加害者個人が被害者と連絡を取ることは基本的に許されません。そのため、示談を試みる場合は、弁護士を通してという対応にならざるを得ないでしょう。
被害者の承諾を得ることができれば、弁護士が被害者と示談交渉を行います。両者が合意に至り、示談書が作成されれば、示談の成立です。
示談書には「加害者を許します」という旨の条項(「宥恕条項」といいます)を入れることがポイントです。他にも、「刑事処罰を望まない」旨の嘆願書や、被害届や告訴取り下げ(取消し)の合意についても、盛り込まれる場合があります。
痴漢の示談金相場は、迷惑防止条例違反の場合で30~50万円ほど、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)に問われた場合には数十万円~数百万円と幅が広くなります。いずれにせよ決まった額があるわけではなく、あくまで示談金の額はお互いの合意で決定されます。大切なのは被害者の納得を得ることです。
痴漢で不起訴になるには|犯行を否認する場合
否認事件では、被害者との示談はできなくはないもののしないことが普通です。「痴漢はしていないが、もし不快な思いをさせたのならばお詫びしたい」と思うかもしれませんが、痴漢を認めないという態度では被害者や検察官の納得は得られにくいですし、むしろ不利な事情として働くリスクすらあります。
そこで、犯行を否認する場合、嫌疑不十分や嫌疑なしでの不起訴を得ることが目標になってきます。
痴漢行為をしていないのであれば、当たり前ですが犯行の明確な証拠はありません。そのため、重要なのは取り調べでの供述です。取り調べで効果的な供述が得られなければ、検察も起訴を断念し、嫌疑不十分とすることもあります。
しかし、相手は捜査のプロですから、突然取り調べをされて適切な対応をすることは普通はできないでしょう。そのため、取り調べ対応についてできる限り早い段階で弁護士のアドバイスを受け、対策を練ることが大切です。
また、痴漢事件では、警察が積極的に証拠を集めようとしないことも多いです。そこで、弁護士が積極的に被疑者に有利な証拠を収集し、被害者の言い分の矛盾点を探すなど疑いを晴らすよう尽力します。
一度かけられた容疑を晴らすことは容易ではありません。痴漢を否認して、不起訴を得るためには弁護士のサポートが必要不可欠でしょう。
痴漢の起訴・不起訴率は?
それでは、実際に不起訴になる可能性はどのくらいあるのでしょうか。検察統計によると2019年の刑事事件(※)のうち、実に58.9%もの事件が不起訴処分となっています。
※自動車運転過失致死傷等及び道路交通法違反を除く
このうち、痴漢で問われる可能性がある、迷惑防止条例違反及び不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)の起訴状況を詳しくみていきましょう。
痴漢の罪名と刑罰を確認
痴漢を行った場合、以下の2つの罪が成立する可能性があります。
- 迷惑防止条例違反
- 不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)
警察白書の統計によれば、痴漢事犯の9割以上は迷惑防止条例違反です。
一般的には、服の上から被害者の身体を触ったような態様であれば、迷惑防止条例違反となり、衣服の中に手を入れたような暴行の程度が強いケースでは不同意わいせつ罪になることが多いと言われています。
迷惑防止条例違反であれば略式裁判で罰金刑となるケースも多いですが、不同意わいせつ罪に問われた場合には罰金刑がないため、起訴されると必ず公開の裁判が開かれることには注意が必要です。
痴漢の行為 | 刑罰 | |
---|---|---|
迷惑防止条例違反 | 服の上から身体をさわる | 6か月以下の懲役または50万円以下の罰金※ |
不同意わいせつ罪 | 無理やり服の中に手を入れる | 6か月以上10年以下の拘禁刑※ |
※東京都の場合。都道府県によって条例内容に若干の違いがある場合があります。
※拘禁刑は2025年の刑法改正で新設予定。それまでは懲役刑が適用される。
地方公共団体条例違反の起訴状況(2020年)
それでは2020年における地方公共団体条例違反の起訴状況を確認してみましょう。この統計は、迷惑防止条例や痴漢事犯に限定した統計ではありませんが、痴漢の状況を知るためには良い参考になります。
※公安条例及び青少年保護育成条例以外の条例
※痴漢以外の事件を含む
※検察統計より作成
起訴 | 4,086人 | 54.1% |
不起訴 | 3,470人 | 45.9% |
公判請求 | 834人 |
略式請求 | 3,252人 |
起訴猶予 | 2,791人 |
嫌疑不十分 | 604人 |
嫌疑なし | 4人 |
その他 | 71人 |
※その他:罪とならず,時効完成,心神喪失など
強制わいせつ罪の起訴状況(2020年)
次に強制わいせつ事件の起訴状況です。
※痴漢以外の事件を含む
※検察統計より作成
起訴 | 1,090人 | 32.7% |
不起訴 | 2,245人 | 67.3% |
公判請求 | 1,090人 |
略式請求 | 0人 |
起訴猶予 | 1,057人 |
嫌疑不十分 | 927人 |
嫌疑なし | 2人 |
その他 | 259人 |
※その他:罪とならず,時効完成,心神喪失など
痴漢を不起訴にしたい人が弁護士に相談すべき理由
理由①示談の交渉を依頼し、不起訴の可能性を高められる
痴漢が起訴になるか不起訴になるかは、示談が成立するかどうかで大きく変わってきます。示談を被害者と締結することができれば、痴漢が不起訴になる可能性は十分あると言ってよいでしょう。
とはいえ、示談は自分一人で出来るものではありません。示談を被害者と行うためには、刑事事件に精通した弁護士に依頼することが必要です。
示談交渉を成功させ、痴漢を不起訴にできる可能性を高めるためには、弁護士の豊富な経験や人柄、被害者感情に配慮した真摯な対応が求められます。
アトム法律事務所は刑事事件に注力する事務所として、これまでに痴漢事件も数多く取り扱ってきました。以下のような、痴漢事件が示談で不起訴になった事案について豊富な実績があります。
電車内の痴漢|(迷惑防止条例違反・不起訴処分)
電車内において、女子高生の臀部を触る痴漢行為をしたというケース。被害者である女子高生に腕を掴まれ、その後逮捕された。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。
理由②不当な示談金を支払わずに済む
弁護士に相談することで、法外な示談金の支払いを回避することができます。
示談金の金額は示談交渉の中で決定されます。つまり、示談金の金額は、弁護士の交渉の腕にかかっているということです。たとえ、被害者側が不当に多額の示談金を要求してきたとしても、示談経験が豊富な弁護士であれば、妥当な示談金で合意に持ち込めます。
刑事事件に詳しい弁護士に相談することで、不当な示談金を支払わずにすむというわけです。
理由③示談以外でも効果的なアドバイスがもらえる
弁護士に相談することで、示談以外でも有益なアドバイスを受けることができます。
弁護士は、法律の専門家としての観点から、取り調べの受け方や被害者への対応についても、適切な助言をしてくれます。
また、逮捕されている場合には勾留を阻止する活動や保釈請求など、加害者の早期釈放のための活動にも尽力します。
アトム法律事務所では24時間365日刑事事件のご相談を受付しています。警察が介入した事件では無料相談も可能です。痴漢事件の加害者となってしまいお悩みの方は以下の番号からお気軽にお電話ください。
早期の相談がきっと最良の結果につながります。