
2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
- 罰金刑を払ったら前科はつく?
- 前科は時間が経てば消える?
- 罰金刑で前科がついたら人生終了…?
刑事事件を起こしてしまった方やそのご家族の中には、上記のような不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
罰金刑は比較的軽度な処分と思われがちですが、前科がつきます。前科がついてしまうと、就職・資格・結婚など、将来に及ぶ影響が気になる人は少なくありません。
また、「罰金で前科=人生終了」と感じてしまう方もいますが、過度に心配する必要はありません。この記事では、「罰金と前科の関係」「前科は消えるのか」「人生にどのくらい影響があるのか」について、法律的な観点からわかりやすく解説します。
不安を整理し、できるだけ穏やかに前を向けるよう、正しい知識を一緒に確認していきましょう。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
罰金刑は前科がつく?
罰金刑も前科になる
前科とは、刑事裁判で有罪の判決を受けた経歴のことです。刑罰の重さや種類にかかわらず、有罪判決が確定すれば「前科あり」となります。
科される刑罰の種類は軽い順から科料、拘留、罰金、拘禁刑、死刑の5種類があります。罰金刑とは、1万円以上の金銭の納付を命じる刑罰のことです。納付額はケースによって異なりますが、数十万円程度が一般的です。
罰金刑も刑罰の種類の一つであるため、有罪判決を受ければ前科がつきます。

なお、罰金が納められない場合は「労役場留置」となり、強制的に労働させられます。一般的に、1日あたり5,000円で換算され、判決で言い渡された罰金額に達するまで働く必要があります。
罰金刑の可能性がある犯罪
罰金刑の可能性がある犯罪は、大前提として法定刑に罰金刑が規定されている必要があります。窃盗罪、傷害罪、撮影罪などでは拘禁刑のほかに罰金刑も用意されているため、罰金刑となる可能性があるでしょう。
その他にも痴漢で問われる各都道府県の迷惑防止条例、交通事故で問われる自動車運転死傷処罰法などにも罰金刑が規定されています。
一方、詐欺罪や不同意わいせつ罪では拘禁刑しか法定されておらず、罰金刑が科されることはありません。
罰金刑になりやすい犯罪
犯罪白書によると、令和4年度、地方裁判所(第一審)において、罰金・科料になった割合が10%を超えた犯罪については、以下のようなものがあります(令和5年版犯罪白書 第2編/第3章/第3節/1 終局裁判 「2-3-3-3表 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況」参照)。
- 公務執行妨害
- 傷害
- 銃刀法違反
- 廃棄物処理法違反
同じく、犯罪白書によると、令和4年度、簡易裁判所(第一審)において、罰金・科料になった割合が10%を超えた犯罪については、以下のようなものがあります。
- 住居侵入
- 傷害、過失傷害
- 横領
- 銃刀法違反
- 道路交通法違反
- 自動車運転死傷処罰法違反
罰金刑になるかどうかは、事件の態様によっても異なります。
拘禁刑を回避して罰金刑を目指せる事案や、また、そもそも裁判を回避して不起訴を目指せる事案もあります。早期の弁護士相談により、事件の見通しを立てて、迅速な対応をすることが大切です。
罰金刑の前科がつく場合
(1)略式裁判で罰金刑が確定した場合
略式裁判で、罰金刑が確定した場合も、前科(罰金前科)がつきます。
略式起訴の場合、書面手続きのみで罰金刑が科されるので、前科がつく認識がない方もいますが注意が必要です。
そもそも、罰金刑が言い渡される「裁判」には、おもに、正式裁判と略式裁判があります。
正式裁判と略式裁判の違い
正式裁判 | 略式裁判 | |
---|---|---|
内容 | 公開の法廷での裁判 | 書面審理による裁判 |
くだされる刑罰 | ・死刑 ・拘禁刑 ・罰金 ・拘留 ・科料 | ・罰金(100万円以下) ・科料 |
前科 | つく | つく |
正式裁判とは、公開の法廷でおこなわれる刑事裁判のことです。
略式裁判とは、被疑者の同意がある場合に、略式起訴によって開廷される裁判のことです。
略式裁判は、書面審理によって、「1万円以上100万円以下の罰金」または「科料」がくだされます。

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・略式起訴の要件と罰金相場|前科はつく?起訴・不起訴との違いは?
略式起訴での罰金処分のメリット
罰金の中でも、略式起訴での罰金処分は簡易な手続により行われます。正式な刑事裁判は、公開の法廷で行われますが、略式起訴の場合は非公開の手続きとされます。刑事処分を行う検察官が起訴状を作成し、それが証拠資料とあわせて簡易裁判所へ提出される流れです。
そして裁判官が書類をみて罰金の判断を行いますので、本人が裁判所に行くこともなく結論が出されます。罰金は納付が完了すれば手続きもすべて終了になります。
簡易迅速な手続きで行われるため、正式裁判と比べ早く事件が終了することがメリットです。そのため、不起訴処分の獲得が難しい場合には、精神的負担の軽減や早期社会復帰の観点から、略式起訴による罰金処分を目指すことが望ましいといえます。
もっとも、すべての事件が略式起訴されるわけではありません。略式起訴とは何か、略式起訴の要件などは以下の関連記事を参考にしてください。
(2)正式裁判で罰金刑が言い渡される場合

一方で、正式裁判とは法廷での公開審理を行う通常の刑事裁判です。弁護士が付き、被告人が出廷して意見を述べる機会があるなど、より厳密な手続きとなります。
この正式裁判の結果としても、罰金刑が言い渡されることがあります。
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罰金刑で前科がつくデメリットは?
(1)就職・転職活動が不利になる
罰金刑の前科がついてしまうと、就職・転職活動に不利になる可能性はあります。
前科について、就職・転職の際に自ら申告する必要はありません。前科は重大なプライバシー情報ですから、特に必要がなければ面接等で前科の有無を聞いてくるようなことも普通はないでしょう。
会社が、求職者の前科を照会する方法もないため、実名報道等がなければ前科があっても就職先に知られることなく済むことが大半です。
ただし、履歴書に賞罰欄がある場合には前科について記入する必要があります。前科を隠して賞罰欄に「なし」と書き込むなど、虚偽の申告をしてしまうと、経歴詐称として解雇事由になる可能性があるので注意が必要です。
(2)資格に影響を及ぼす
罰金刑の前科があると、医師や看護師、弁護士などの国家資格の取得や維持に影響が出る場合があります。
すでに資格を持っている人も、犯罪で有罪判決を受けたことで資格を剥奪される可能性があるため、注意が必要です。
(3)結婚や家庭における前科の影響
前科がつくことで結婚や家庭にもマイナスの影響がある場合があります。
基本的には相手の理解次第ですが、当人同士が良くても周囲の反対にあうケースもあります。
家族・親族という近親者の間では、前科についてどこまで伝えるのかといったことについては犯罪の重さや発覚するリスクも踏まえてより慎重に考えるべきでしょう。
既に結婚している場合、前科がついたことが離婚につながることもあり得ます。前科がつく犯罪行為や刑事処分が重大である場合、民法で離婚事由として定められている「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」にあたると判断される可能性があります。
罰金刑の前科に関するよくある質問
Q.罰金刑の前科がついたら人生終了?
人生が終わるわけではありませんが、影響が出る可能性はあります。
罰金刑を受けたことで「前科」がついたとしても、それだけで人生が取り返しのつかない状況になるわけではありません。日常生活に大きな支障が出るケースは少なく、多くの方がその後も社会生活を送っています。
ただし、前科があることで以下のような影響が出る可能性があります。
- 特定の職業(公務員・士業など)での採用・継続
- 海外渡航やビザ取得の制限
- 社会的信用の低下
- 家族や職場での人間関係への影響
こうしたリスクは、犯した罪の内容や本人の社会的立場によって異なります。したがって、罰金刑であっても、軽視せず、今後の対応をしっかり考えることが大切です。必要に応じて弁護士に相談し、今後の生活に悪影響が出ないよう備えることをおすすめします。
Q.前科と前歴の違いは?
前科と前歴については、よく似た概念として間違われやすいので、ここで整理しておきましょう。前科は、刑事裁判において有罪判決を受け、その判決が確定した場合につくもので、「有罪判決を受けた履歴」を指します。
第一審判決の翌日から数えて14日が経過すると刑は確定し、前科がついた状態になります。この14日間を控訴期間といい、一審の判決に対して不服申立てができる期間です。控訴権を放棄した場合でも、刑が確定することになるのです。
一方、前歴という言葉は、一般に「逮捕歴」を指して使われます。すぐに釈放された場合でも、逮捕された履歴があれば、それは前歴ありとなります。逮捕された段階は、あくまで「被疑者」という立場であり、決して犯人と決まったわけではありません。とはいえ、実際には一度逮捕されると、周囲に犯人であるという印象を与えるため、社会的ダメージは甚大なものとなります。

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Q.罰金刑の前科はいつか消えるの?
法律上「前科が完全になくなる」ことはありませんが、一定期間が経過すれば社会的・実務的に影響しにくくなります。
罰金刑を受けると、刑法上の「前科」が記録されます。これは警察や検察、裁判所などの捜査機関に記録が残るものであり、法律上「完全に消える」ことはありません。
ただし、刑法の規定により、罰金刑を受けた後5年間何も罪を犯さなければ、「刑の言渡しの効力は失われた」とされ、再犯時の刑の加重などに影響しなくなるとされています(刑法第34条の2)。
これはいわば「前科のリセット期間」のようなもので、実務ではこれ以降、重大な不利益が及ぶことは少なくなります。
Q.罰金前科と交通反則金の違いは?
罰金とよく混同されるものが、交通違反の「反則金」です。反則金で前科になることはありません。
比較的軽微な交通違反の場合、青切符を切られると、反則金の納付義務が生じます。ですが、反則金は、罰金とは異なります。反則金を納付すれば、罰金刑等の刑事罰が免除されるので、前科がつくことはありません。
なお、反則金は、交通反則通告制度に基づく行政上の制裁(行政処分)の一種で、「過料」と呼ばれます。一方、罰金は刑事事件での制裁(刑事処分)の一種です。罰金と反則金とは、性質が異なります。
反則金と罰金の違い
反則金 | 罰金 | |
---|---|---|
性質 | 行政処分 | 刑事処分 |
前科 | 前科にならない | 前科になる |
弁護士解説│罰金刑の前科を回避する方法
(1)罰金刑の前科を回避するには|不起訴を目指す

罰金による前科を回避するためには、まずは不起訴処分を目指すことが重要です。不起訴処分となるためには、事件に応じて弁護士に適切な弁護活動をしてもらうことが必要となるでしょう。
被害者が存在する事件の場合は、被害者に謝罪と被害弁償を行い示談が締結できれば、不起訴の可能性を高めることができます。
被害者がいない犯罪の場合は、犯罪を犯した原因の究明、再犯防止策の徹底が課題です。
たとえば、薬物犯罪であれば医療機関の協力を得て薬物依存を治療したり再犯防止のための監督体制を強化するなどです。こうした活動を行い検察官に報告することで、不起訴処分の可能性を高めることができます。
(2)罰金刑の前科を回避するには|刑事事件化を防ぐ
罰金で前科を回避する方法として、もう一つの方法をご紹介します。それは、そもそも刑事事件として立件されることを防ぐというものです。これは、一部の刑事事件で有効な手段です。
被害者が明確にわかっており、相手方と接触を図れる状況にあれば、弁護士に示談を依頼し、被害者と示談交渉を行います。被害者が被害届や告訴を提出する前に示談を成立させることができれば、刑事事件化を防げる可能性が高まります。
被害者が警察に駆け込む前に、被害回復を図ったり被害感情をおさめることができれば、刑事事件化を阻止することができるでしょう。
その際、重要なことは「自分で被害者に連絡し示談を持ちかける前に、必ず弁護士に相談する」ということです。特に、性犯罪などの繊細な示談交渉が求められる事件では、絶対に加害者自らが被害者に接触してはいけません。被害者の感情に配慮し、誠実な対応をするために、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

被害者との示談が刑事処分を左右する
不起訴処分を目指したり、刑事事件化を防ぐためには、被害者との示談が大きな鍵です。示談は被害者の反応次第でその展開が大きく変わります。一見同じに見える刑事事件であっても、被害感情の大小や精神的苦痛の程度は異なります。そのため、示談交渉は単純にパターン化して行えるものではありません。
すでに立件されている事件では、示談は検察官が刑事処分を行うにあたり重視する事情です。被害者が謝罪や被害弁償を受け入れているのか、すでに精神的苦痛を慰謝するに足る金銭賠償が行われたのか、被害者が被害届を取り下げたのか、これらを確認して被疑者の処分を検討します。
示談が成立することで、早期釈放や不起訴獲得につながり、事件解決に向け大きく前進することができるでしょう。
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アトムの解決事例
こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った刑事事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。
覚醒剤取締法違反(不起訴処分)
電車内で、女子高校生の臀部を触った。被害者本人に腕をつかまれて連行され、その後逮捕された。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。その結果、不起訴処分で前科を回避した。
児童買春(不起訴で前科を回避)
出会い系アプリを通じて知り合った18歳未満の少女に1万5000円を渡し、ホテルで性交などをした。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の事案。
弁護活動の成果
示談を締結。勾留延長を請求されず早期釈放が叶ったほか、不起訴処分で前科を回避した。
万引き(不起訴で前科を回避)
スーパーで衣料品数点を万引き。店員に声をかけられて逃走したが、通行人に取り押さえられ、警察に通報された。窃盗の事案。
弁護活動の成果
被害弁償を尽くすと同時に、窃盗癖専門のクリニックで治療すること約束。前科・前歴があったが、不起訴処分となった。
罰金前科に不安を感じたら弁護士に相談を
最後にひとこと
罰金も、懲役や禁錮と同じく前科がつきます。
自分の事件が罰金になるかもしれない、前科がつくかもしれないと不安な方は、弁護士までご相談ください。そもそも罰金がどのような刑罰で、罰金になることでどのような不利益が予想されるか、正しい理解をする必要があります。不起訴で罰金を回避する方法や、そもそも刑事事件化を回避するための方法もあります。
場合によっては、戦略的に罰金処分(略式起訴)を狙うことが事件の早期解決として妥当というケースもあります。自分の刑事事件がどのような結論になるかが心配という方は、まず刑事事件に詳しい弁護士までお問い合わせください。
弁護士はそうした心配や不安を少しでもやわらげるために有益なアドバイスをしてくれます。
アトムのご依頼者様の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
年明けでもすぐ弁護活動してくれ、早期釈放が叶いました。

大変お世話になりました。一度目は新年早々、依頼するのが難しい時期でしたが、アトム法律事務所の先生方はすぐに弁護活動を開始してくださり息子は早々に釈放されました。半年がたち、充分反省していたはずでしたが、突然の転勤で慣れない一人暮らしのストレスから再犯、もう元の生活には戻れないと半ばあきらめ、長い勾留も覚悟しておりましたが、今回も事務所の皆様と庄司先生の迅速かつ誠実な弁護活動のおかげで釈放も早く、一度目と同じ罰金で済みました。感謝しております。本当にありがとうございました。
本日罰金を納付するに至り、胸をなでおろしております。

前略この度はお力添えを頂き誠にありがとうございました。お陰様で本日罰金を納付するに至りました。最も、私といたしましては、百日間の留置を受けた方が、本人の為ににはなるのではないか、と思うところではございますが…。とはいえ、商売のことを考えますと胸をなでおろしております。万が一のことを考え太田先生の御名刺をいつも財布に入れておりました。今回、それが役立つ事態になってしまったことは、非常に残念としか言いようがありませんが、安心しておまかせをすることができ、私にとっては幸いでございました。寒さも厳しくなってきております。くれぐれも御自愛下さいませ。はなはだ簡単で失礼ではございますが、まずは御礼申し上げます。
弁護士へのご相談が早ければ早いほど、多くの時間を弁護活動にあてることが可能です。
- 刑事事件の今後の流れが知りたい
- 罰金刑の前科を回避するために不起訴を目指したい
このような刑事事件のお悩みをお持ちの方は、お早目にアトム法律事務所までご相談ください。