
罰金刑でも、前科はつきます。前科がつくと、解雇や退学、資格剥奪などの影響があり、困る場面もあります。
罰金前科を回避するためには、不起訴を求める活動や刑事事件化を回避する活動が重要です。
この記事では、「自分が罰金になるかもしれない」「罰金という刑罰がよくわからない」という方に向けて、情報を整理しています。
罰金と前科の関係について網羅した内容になっていますので、何度も確認できるようブックマークしておくことをおすすめします。

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目次
罰金刑とは?禁錮や懲役と同じく前科がつく?
罰金刑も前科になる!
前科とは、「有罪」が確定した経歴のことです。
有罪とは、刑事裁判で、被告人の罪が認定されて「刑罰」が科されることです。
罰金も、刑罰の一種です。懲役や禁錮などとは重さ・内容は違いますが、刑罰である点は共通します。
そのため、有罪になり罰金刑が確定すれば、懲役刑や禁錮刑などと同様に、「前科」として扱われます。
罰金刑とは?懲役・禁錮との違いは?
懲役 | 禁錮 | 罰金 | |
---|---|---|---|
内容 | 刑務所に入る | 刑務所に入る | お金を納付 |
作業 | あり | なし | ※ |
前科 | つく | つく | つく |
罰金刑とは、金銭を納付を命じる刑罰のことです。罰金刑は、財産上の制裁を与える刑罰なので、金銭の納付さえ行えば、刑事事件が終了します。
一方、禁錮刑や懲役刑は、人の自由を奪う刑罰です。
懲役刑の場合、刑務所に入り、刑務作業をします。禁錮刑の場合も、刑務所に入りますが、刑務作業は科されません。
なお、罰金刑が科された場合でも、作業が科されるケースもあります(※)。
それは、罰金を納付できるお金がない場合です。
罰金を納付できなければ、労役場留置となり、強制労働をさせられます。1日5,000円で換算され、判決で言い渡された罰金額に満つるまでは働く必要があります。
罰金前科がつく場合
略式裁判でも罰金前科がつく
略式裁判で、罰金刑が確定した場合も、前科(罰金前科)がつきます。
略式起訴の場合、書面手続きのみで罰金刑が科されるので、前科が付く認識がない方もいますが注意が必要です。
そもそも、罰金刑が言い渡される「裁判」には、おもに、正式裁判と略式裁判があります。
正式裁判 | 略式裁判 | |
---|---|---|
内容 | 公開の法廷での裁判 | 書面審理による裁判 |
くだされる刑罰 | ・死刑 ・懲役 ・禁錮 ・罰金 ・拘留 ・科料 | ・罰金(100万円以下) ・科料 |
前科 | つく | つく |
正式裁判とは、公開の法廷でおこなわれる刑事裁判のことです。
略式裁判とは、被疑者の同意がある場合に、略式起訴によって開廷される裁判のことです。
略式裁判は、書面審理によって、「1万円以上100万円以下の罰金」または「科料」がくだされます。
略式起訴での罰金処分のメリット
罰金の中でも、略式起訴での罰金処分は簡易な手続により行われます。正式な刑事裁判は、公開の法廷で行われますが、略式起訴の場合は非公開の手続きとされます。刑事処分を行う検察官が起訴状を作成し、それが証拠資料とあわせて簡易裁判所へ提出される流れです。そして裁判官が書類をみて罰金の判断を行いますので、本人が裁判所に行くこともなく結論が出されます。罰金は納付が完了すれば手続きもすべて終了になります。
簡易迅速な手続きで行われるため、正式裁判と比べ早く事件が終了することがメリットです。そのため、不起訴処分の獲得が難しい場合には、精神的負担の軽減や早期社会復帰の観点から、略式起訴による罰金処分を目指すことが望ましいといえます。
もっとも、すべての事件が略式起訴されるわけではありません。略式起訴とは何か、略式起訴の要件などは以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事
・略式起訴の要件と罰金相場|前科はつく?起訴・不起訴との違いは?
罰金前科がつく犯罪
罰金刑になる可能性がある犯罪
罰金刑を求める場合、前提として、その刑事事件の刑罰に罰金が予定されていなければなりません。例えば、詐欺罪や不同意わいせつ罪では懲役刑か拘禁刑しか法定されておらず、罰金はありえません。一方、窃盗罪、傷害罪、器物損壊罪では懲役刑も用意されていますが、罰金刑も用意されています。このような犯罪では懲役刑を回避して罰金刑を求める弁護活動が重要になります。
痴漢や盗撮も、罰金の可能性がある犯罪です。痴漢に対しては、都道府県が定める迷惑防止条例か不同意わいせつ罪が主に適用されます。盗撮に対しては原則として撮影罪が適用されます。
初犯では示談をすることで不起訴になるケースが多いものの、二回目、三回目となれば、犯行態様にもよりますが公判請求(検察官が正式裁判を求めること)される可能性が高まります。
その場合は、示談に加えて医療機関のサポートを得るなど、罰金を狙った弁護活動を展開する必要が出てきます。罰金を得るための具体的な活動は事件により異なりますので、個別に弁護士に相談して見通しを立てることが大切です。
罰金刑になりやすい犯罪
前提として、罰金刑になるのは、法定刑に罰金刑が規定されている犯罪です。
犯罪白書によると、令和4年度、地方裁判所(第一審)において、罰金・科料になった割合が10%を超えた犯罪については、以下のようなものがあります(令和5年版犯罪白書 第2編/第3章/第3節/1 終局裁判 「2-3-3-3表 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況」参照)。
- 公務執行妨害
- 傷害
- 毀棄隠匿(刑法第2編第40章)
- 暴力行為等処罰法違反
- 公職選挙法違反
- 銃刀法違反
- 税法等違反
- 廃棄物処理法違反
同じく、犯罪白書によると、令和4年度、簡易裁判所(第一審)において、罰金・科料になった割合が10%を超えた犯罪については、以下のようなものがあります。
- 住居侵入
- 傷害、過失傷害
- 横領
- 銃刀法違反
- 道路交通法違反
- 自動車運転死傷処罰法違反
罰金刑になるかどうかは、ケースバイケースです。
懲役刑を回避して罰金刑を目指せる事案や、また、そもそも裁判を回避して不起訴を目指せる事案もあります。
早期の弁護士相談により、事件の見通しを立てて、迅速な対応をすることが大切です。
罰金前科の影響は?
罰金前科による資格剥奪
前科がつくと、生活にはどのような支障が生じるのでしょうか。直接的な影響があることとしては、資格剥奪や海外への渡航制限、被選挙権の喪失があげられます。特に、資格をもって仕事をされている方やこれから資格取得のため受験をしようとされている方は、その資格の欠格事由を確認しておく必要があります。
罰金前科の噂が広がる
前科の有無は、基本的にはごく限られた人にしか知られることはなく、第三者が調べてわかるというものではありません。しかし、逮捕歴(前歴)がある場合には、それがネットニュースなどで報じられ、いつまでも残っていることがあります。10年前の事件であっても、それが今見つかって職場に居づらくなってしまうというケースも否定できません。そのようなときは、できる限り風評被害を最小化するために、弁護士に相談して記事の削除など対策をとる必要があります。
罰金前科でよくある質問
Q 罰金前科と交通反則金の違い
罰金とよく混同されるものが、交通違反の「反則金」です。反則金で前科になることはありません。
比較的軽微な交通違反の場合、青切符を切られると、反則金の納付義務が生じます。ですが、反則金は、罰金とは異なります。反則金を納付すれば、罰金刑等の刑事罰が免除されるので、前科がつくことはありません。
なお、反則金は、交通反則通告制度に基づく行政上の制裁(行政処分)の一種で、「過料」と呼ばれます。一方、罰金は刑事事件での制裁(刑事処分)の一種です。罰金と反則金とは、性質が異なります。
反則金 | 罰金 | |
---|---|---|
性質 | 行政処分 | 刑事処分 |
前科 | 前科にならない | 前科になる |
Q 前科と前歴の違い
前科と前歴については、よく似た概念として間違われやすいので、ここで整理しておきましょう。前科は、刑事裁判において有罪判決を受け、その判決が確定した場合につくもので、「有罪判決を受けた履歴」を指します。
第一審判決の翌日から数えて14日が経過すると刑は確定し、前科がついた状態になります。この14日間を控訴期間といい、一審の判決に対して不服申立てができる期間です。控訴権を放棄した場合でも、刑が確定することになるのです。
一方、前歴という言葉は、一般に「逮捕歴」を指して使われます。すぐに釈放された場合でも、逮捕された履歴があれば、それは前歴ありとなります。逮捕された段階は、あくまで「被疑者」という立場であり、決して犯人と決まったわけではありません。とはいえ、実際には一度逮捕されると、周囲に犯人であるという印象を与えるため、社会的ダメージは甚大なものとなります。

関連記事
弁護士解説│罰金での前科を回避する方法
(1)罰金回避の方法|不起訴を目指す
罰金による前科を回避するためには、まずは不起訴処分を目指すことが重要です。不起訴処分となるためには、事件に応じて弁護士に適切な弁護活動をしてもらうことが必要となるでしょう。被害者が存在する事件の場合は、被害者に謝罪と被害弁償を行い示談をします。窃盗、詐欺、痴漢、盗撮、暴行、傷害などの犯罪がこれにあたります。
被害者がいない犯罪の場合は、犯罪を犯した原因の究明、再犯防止策の徹底が課題です。たとえば、薬物犯罪であれば医療機関の協力を得て薬物依存を治療したり再犯防止のための監督体制を強化するなどが考えられるところです。こうした活動を行い検察官に報告することで、不起訴処分の可能性を高めることができます。不起訴処分となれば前科はつきません。
(2)罰金回避の方法|刑事事件化を防ぐ
罰金で前科を回避する方法として、もう一つの方法をご紹介します。それは、そもそも刑事事件として立件されることを防ぐというものです。これは、一部の刑事事件で有効な手段です。被害者が明確にわかっており、相手方と接触を図れる状況にあれば、弁護士に示談を依頼し、被害者と示談交渉を行います。被害者が被害届や告訴を提出する前に示談を成立させることができれば、刑事事件化を防げる可能性が高まります。
被害者が警察に駆け込む前に、被害回復を図ったり被害感情をおさめることができれば、刑事事件化を阻止することができるでしょう。その際、重要なことは「自分で被害者に連絡し示談を持ちかける前に、必ず弁護士に相談する」ということです。特に、性犯罪などの繊細な示談交渉が求められる事件では、絶対に加害者自らが被害者に接触してはいけません。被害者の感情に配慮し、誠実な対応をするために、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
被害者との示談が刑事処分を左右する
不起訴処分を目指したり、刑事事件化を防ぐためには、被害者との示談が大きな鍵です。示談は被害者の反応次第でその展開が大きく変わります。一見同じに見える刑事事件であっても、被害感情の大小や精神的苦痛の程度は異なります。そのため、示談交渉は単純にパターン化して行えるものではありません。
すでに立件されている事件では、示談は検察官が刑事処分を行うにあたり重視する事情です。被害者が謝罪や被害弁償を受け入れているのか、すでに精神的苦痛を慰謝するに足る金銭賠償が行われたのか、被害者が被害届を取り下げたのか、これらを確認して被疑者の処分を検討します。示談が成立することで、早期釈放や不起訴獲得につながり、事件解決に向け大きく前進することができるでしょう。
関連記事
・示談すると前科はつかない?不起訴になる?犯罪ごとの示談金相場も解説!
アトムの解決事例
こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った刑事事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。
痴漢(不起訴で前科を回避)
電車内で、女子高校生の臀部を触った。被害者本人に腕をつかまれて連行され、その後逮捕された。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。その結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
児童買春(不起訴で前科を回避)
出会い系アプリを通じて知り合った18歳未満の少女に1万5000円を渡し、ホテルで性交などをした。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の事案。
弁護活動の成果
示談を締結。勾留延長を請求されず早期釈放が叶ったほか、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
万引き(不起訴で前科を回避)
スーパーで衣料品数点を万引き。店員に声をかけられて逃走したが、通行人に取り押さえられ、警察に通報された。窃盗の事案。
弁護活動の成果
被害弁償を尽くすと同時に、窃盗癖専門のクリニックで治療すること約束。前科・前歴があったが、不起訴処分となった。
示談の有無
なし
最終処分
不起訴
罰金前科に不安を感じたら弁護士に相談を
最後にひとこと
罰金も、懲役や禁錮と同じく前科がつきます。
自分の事件が罰金になるかもしれない、前科がつくかもしれないと不安な方は、弁護士までご相談ください。そもそも罰金がどのような刑罰で、罰金になることでどのような不利益が予想されるか、正しい理解をする必要があります。不起訴で罰金を回避する方法や、そもそも刑事事件化を回避するための方法もあります。
場合によっては、戦略的に罰金処分(略式起訴)を狙うことが事件の早期解決として妥当というケースもあります。自分の刑事事件がどのような結論になるかが心配という方は、まず刑事事件に詳しい弁護士までお問い合わせください。弁護士はそうした心配や不安を少しでもやわらげるために有益なアドバイスをしてくれます。
アトムのご依頼者様の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
年明けでもすぐ弁護活動してくれ、早期釈放が叶いました。

大変お世話になりました。一度目は新年早々、依頼するのが難しい時期でしたが、アトム法律事務所の先生方はすぐに弁護活動を開始してくださり息子は早々に釈放されました。半年がたち、充分反省していたはずでしたが、突然の転勤で慣れない一人暮らしのストレスから再犯、もう元の生活には戻れないと半ばあきらめ、長い勾留も覚悟しておりましたが、今回も事務所の皆様と庄司先生の迅速かつ誠実な弁護活動のおかげで釈放も早く、一度目と同じ罰金で済みました。感謝しております。本当にありがとうございました。
本日罰金を納付するに至り、胸をなでおろしております。

前略この度はお力添えを頂き誠にありがとうございました。お陰様で本日罰金を納付するに至りました。最も、私といたしましては、百日間の留置を受けた方が、本人の為ににはなるのではないか、と思うところではございますが…。とはいえ、商売のことを考えますと胸をなでおろしております。万が一のことを考え太田先生の御名刺をいつも財布に入れておりました。今回、それが役立つ事態になってしまったことは、非常に残念としか言いようがありませんが、安心しておまかせをすることができ、私にとっては幸いでございました。寒さも厳しくなってきております。くれぐれも御自愛下さいませ。はなはだ簡単で失礼ではございますが、まずは御礼申し上げます。
弁護士へのご相談が早ければ早いほど、多くの時間を弁護活動にあてることが可能です。
- 不起訴を目指したい
- 罰金前科にとどめたい
このような刑事事件のお悩みをお持ちの方は、お早目にアトム法律事務所までご相談ください。