罰金刑を受けると前科がつきます。罰金前科を回避するためには、不起訴を求める活動や刑事事件化を回避する活動が重要です。この記事では、自分が罰金になるかもしれない、罰金という刑罰がよくわからないという方に向けて情報を整理しています。前科や前歴の意味の違いもまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
前科がつくと、実際にどのような場面で困ることがあるのかについても解説しています。罰金と前科の関係について網羅した内容になっていますので、何度も確認できるようブックマークしておくことをおすすめします。
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目次
罰金という刑罰|禁錮や懲役と同じ前科がつく?
刑罰解説|罰金は禁錮や懲役と同じ前科がつく
罰金は刑罰のひとつで、金銭の納付が義務付けられる財産上の制裁です。禁錮や懲役が身体の自由を奪う刑罰であるのに対し、罰金は金銭の納付さえ行えば刑事事件が終了することになります。
刑罰の重いものから、懲役、禁錮、そして罰金という順番になります。なお、 懲役とは刑務作業を伴う服役で、刑務作業が課されない服役が禁錮です。
罰金も懲役や禁錮と同じく前科がつきます。刑事裁判で罰金という判決を宣告されると、それは有罪であり、刑が確定することで前科がつくのです。公開の法廷で刑事裁判を受ける他にも、略式起訴により罰金処分を受けることがあります。このときも、罰金前科がつくこととなります。
略式起訴の場合、書面手続きのみで罰金刑が科されるので、前科が付く認識がない方もいますが注意が必要です。
なお、罰金とよく混同されるものが、交通違反の「反則金」です。反則金で前科になることはありません。反則金は、交通反則通告制度に基づく行政上の制裁で、「過料」と呼ばれます。罰金は刑事事件での制裁ですので、反則金とは性質が異なります。
懲役刑 | 罰金刑 | |
---|---|---|
起訴 | 正式起訴 | 略式起訴 |
服役 | あり | なし |
前科 | つく | つく |
前科と前歴の違いは?
前科と前歴については、よく似た概念として間違われやすいので、ここで整理しておきましょう。前科は、刑事裁判において有罪判決を受け、その判決が確定した場合につくもので、「有罪判決を受けた履歴」を指します。
第一審判決の翌日から数えて14日が経過すると刑は確定し、前科がついた状態になります。この14日間を控訴期間といい、一審の判決に対して不服申立てができる期間です。控訴権を放棄した場合でも、刑が確定することになるのです。
一方、前歴という言葉は、一般に「逮捕歴」を指して使われます。すぐに釈放された場合でも、逮捕された履歴があれば、それは前歴ありとなります。逮捕された段階は、あくまで「被疑者」という立場であり、決して犯人と決まったわけではありません。とはいえ、実際には一度逮捕されると、周囲に犯人であるという印象を与えるため、社会的ダメージは甚大なものとなります。
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略式起訴の罰金処分|メリットは大きい
罰金の中でも、略式起訴での罰金処分は簡易な手続により行われます。正式な刑事裁判は、公開の法廷で行われますが、略式起訴の場合は非公開の手続きとされます。刑事処分を行う検察官が起訴状を作成し、それが証拠資料とあわせて簡易裁判所へ提出される流れです。そして裁判官が書類をみて罰金の判断を行いますので、本人が裁判所に行くこともなく結論が出されます。罰金は納付が完了すれば手続きもすべて終了になります。
簡易迅速な手続きで行われるため、正式裁判と比べ早く事件が終了することがメリットです。そのため、不起訴処分の獲得が難しい場合には、精神的負担の軽減や早期社会復帰の観点から、略式起訴による罰金処分を目指すことが望ましいといえます。
もっとも、すべての事件が略式起訴されるわけではありません。略式起訴とは何か、略式起訴の要件などは以下の関連記事を参考にしてください。
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・略式起訴の要件と罰金相場|前科はつく?起訴・不起訴との違いは?
弁護士解説|罰金での前科を回避する方法
①罰金回避の方法|不起訴処分を目指す
罰金による前科を回避するためには、まずは不起訴処分を目指すことが重要です。不起訴処分となるためには、事件に応じて弁護士に適切な弁護活動をしてもらうことが必要となるでしょう。被害者が存在する事件の場合は、被害者に謝罪と被害弁償を行い示談をします。窃盗、詐欺、痴漢、盗撮、暴行、傷害などの犯罪がこれにあたります。
被害者がいない犯罪の場合は、犯罪を犯した原因の究明、再犯防止策の徹底が課題です。たとえば、薬物犯罪であれば医療機関の協力を得て薬物依存を治療したり再犯防止のための監督体制を強化するなどが考えられるところです。こうした活動を行い検察官に報告することで、不起訴処分の可能性を高めることができます。不起訴処分となれば前科はつきません。
②罰金回避の方法|刑事事件化を防ぐ
罰金で前科を回避する方法として、もう一つの方法をご紹介します。それは、そもそも刑事事件として立件されることを防ぐというものです。これは、一部の刑事事件で有効な手段です。被害者が明確にわかっており、相手方と接触を図れる状況にあれば、弁護士に示談を依頼し、被害者と示談交渉を行います。被害者が被害届や告訴を提出する前に示談を成立させることができれば、刑事事件化を防げる可能性が高まります。
被害者が警察に駆け込む前に、被害回復を図ったり被害感情をおさめることができれば、刑事事件化を阻止することができるでしょう。その際、重要なことは「自分で被害者に連絡し示談を持ちかける前に、必ず弁護士に相談する」ということです。特に、性犯罪などの繊細な示談交渉が求められる事件では、絶対に加害者自らが被害者に接触してはいけません。被害者の感情に配慮し、誠実な対応をするために、まずは弁護士に相談することをお勧めします。
被害者との示談が刑事処分を左右する
不起訴処分を目指したり、刑事事件化を防ぐためには、被害者との示談が大きな鍵です。示談は被害者の反応次第でその展開が大きく変わります。一見同じに見える刑事事件であっても、被害感情の大小や精神的苦痛の程度は異なります。そのため、示談交渉は単純にパターン化して行えるものではありません。
すでに立件されている事件では、示談は検察官が刑事処分を行うにあたり重視する事情です。被害者が謝罪や被害弁償を受け入れているのか、すでに精神的苦痛を慰謝するに足る金銭賠償が行われたのか、被害者が被害届を取り下げたのか、これらを確認して被疑者の処分を検討します。示談が成立することで、早期釈放や不起訴獲得につながり、事件解決に向け大きく前進することができるでしょう。
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罰金処分が不安な方は弁護士に相談を
罰金刑になる可能性がある犯罪
罰金刑を求める場合、前提として、その刑事事件の刑罰に罰金が予定されていなければなりません。例えば、詐欺罪や不同意わいせつ罪では懲役刑か拘禁刑しか法定されておらず、罰金はありえません。一方、窃盗罪、傷害罪、器物損壊罪では懲役刑も用意されていますが、罰金刑も用意されています。このような犯罪では懲役刑を回避して罰金刑を求める弁護活動が重要になります。
痴漢や盗撮も、罰金の可能性がある犯罪です。痴漢に対しては、都道府県が定める迷惑防止条例か不同意わいせつ罪が主に適用されます。盗撮に対しては原則として撮影罪が適用されます。
初犯では示談をすることで不起訴になるケースが多いものの、二回目、三回目となれば、犯行態様にもよりますが公判請求(検察官が正式裁判を求めること)される可能性が高まります。
その場合は、示談に加えて医療機関のサポートを得るなど、罰金を狙った弁護活動を展開する必要が出てきます。罰金を得るための具体的な活動は事件により異なりますので、個別に弁護士に相談して見通しを立てることが大切です。
罰金前科の影響は?
前科がつくと、生活にはどのような支障が生じるのでしょうか。直接的な影響があることとしては、資格剥奪や海外への渡航制限、被選挙権の喪失があげられます。特に、資格をもって仕事をされている方やこれから資格取得のため受験をしようとされている方は、その資格の欠格事由を確認しておく必要があります。
前科の有無は、基本的にはごく限られた人にしか知られることはなく、第三者が調べてわかるというものではありません。しかし、逮捕歴(前歴)がある場合には、それがネットニュースなどで報じられ、いつまでも残っていることがあります。10年前の事件であっても、それが今見つかって職場に居づらくなってしまうというケースも否定できません。そのようなときは、できる限り風評被害を最小化するために、弁護士に相談して記事の削除など対策をとる必要があります。
罰金処分に不安を感じたら弁護士に相談を
自分の事件が罰金になるかもしれない、前科がつくかもしれないと不安な方は、弁護士までご相談ください。そもそも罰金がどのような刑罰で、罰金になることでどのような不利益が予想されるか、正しい理解をする必要があります。不起訴で罰金を回避する方法や、そもそも刑事事件化を回避するための方法もあります。
場合によっては、戦略的に罰金処分(略式起訴)を狙うことが事件の早期解決として妥当というケースもあります。自分の刑事事件がどのような結論になるかが心配という方は、まず刑事事件に詳しい弁護士までお問い合わせください。弁護士はそうした心配や不安を少しでもやわらげるために有益なアドバイスをしてくれます。