こちらの記事では、一般的には「置き引き」などと称される、占有離脱物横領事件における時効に関する情報をまとめています。
占有離脱物横領の罪を犯してしまった場合、事態を早期に解決に導くためには、時効によらず早期に弁護士に相談し、示談を締結することが重要となります。
目次
占有離脱物横領の時効には刑事と民事がある
まずは占有離脱物横領の定義と、その時効について見ていきましょう。
占有離脱物横領の定義
占有離脱物横領は、刑法254条に定められた罪です。
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法254条
具体的には、誰かがベンチやトイレなどに忘れていった財布やバッグ、あるいはATMに置き忘れられた紙幣を自分のものにしてしまうといったような、「置き引き」行為を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
そのほかにも、おつりを本来の会計額よりも多くもらったのに後で気付いたにも関わらず返却しない、私有地に乗り捨てられた自転車を無断で処分する、などといった行為を行った場合、罪に問われる可能性があります。
占有離脱物横領の罪に問われる可能性のある行為や、窃盗罪などとの違いについては以下の記事で詳しく解説しています。ご参照ください。
占有離脱物横領における刑事の時効
一般にイメージされる「時効」とは、正式には刑事訴訟法250条に定められた「公訴時効」のことを指します。
犯行が終わった時点から一定の期間を過ぎ、公訴時効を過ぎた場合は起訴は行われず刑事裁判も開かれなくなるため、刑事罰を科されて前科がつくことはなくなります。
占有離脱物横領の場合は刑事訴訟法250条の規定の「長期5年未満の懲役もしくは禁錮または罰金にあたる罪」に該当し、公訴時効は3年になります。
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
刑事訴訟法250条
占有離脱物横領における民事の時効
なお、時効には刑事事件とは別に民事上のものがあります。占有離脱物横領は民法709条が定める不法行為にあたるため、被害者は加害者に対して賠償請求をする権利があります。
ただしこの賠償請求権にも時効が存在します。被害者が加害者を知った時点から3年、事件が発生した時点からは20年というのが民事事件の時効であり、この期間を経過すると支払いの義務がなくなります。
占有離脱物横領は時効を待つよりも弁護士へ相談を
ここまでは占有離脱物横領罪の概要と、その時効についてみてきました。それでは、占有離脱物横領の罪を犯してしまった場合、その後の対応はどのようにすべきなのでしょうか。
時効成立を待つことのリスク
占有離脱物横領は立件されることが少ない比較的軽微な罪ではありますが、その時効が成立するのを待つことは賢明な判断とはいえません。
占有離脱物横領は現行犯逮捕されることは稀ですが、その後の捜査で証拠が見つかり後日逮捕されるケースがあります。特に商業施設や公共の場における置き引きの場合、犯行の様子が防犯カメラに記録され、そこから逮捕に繋がることが考えられます。
逮捕された時点で何もせず時効を待っていたとなれば、反省の態度が見られないとしてそのぶん刑事処分も厳しいものとなることが予想されます。
占有離脱物横領により前科を付けないためにすべきこと
占有離脱物横領により逮捕され前科がつくことを防ぐためには、時効が成立するのを待つのではなく、できる限り早い段階で被害者と示談を締結し、不起訴処分を得る、もしくは事件化を防ぐことが重要です。
示談を締結することで占有離脱物横領事件の解決を図る
占有離脱物横領の初犯で前科をつけないためには、早期に弁護士に相談し、不起訴処分を得ることが重要です。
不起訴処分を獲得し前科を回避する
検察官により起訴が行われた場合、裁判で無罪になるのは非常に難しくなります。しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けること自体がなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。
すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。
示談により不起訴の可能性を高める
占有離脱物横領は被害者のいる犯罪であり、早期に被害者対応を行うことが肝要です。
まずは横領した金品の返還・弁償をしっかりと行いましょう。さらに、被害者との間に示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」の可能性が高まります。
被害者と示談するためには弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
逮捕されてから起訴される前の身柄拘束が続く期間は最大で23日間ですが、起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその間に行う必要があります。そのため、できる限り早い段階で弁護士に相談することが大切になってきます。
逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできず、また逮捕されていない場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難です。そのため、示談交渉の際は弁護士を間に立てることが必要となります。