
この記事は、置き引きをしてしまい警察に捕まるか不安な方、捕まった場合どうなるか知りたい方に向けて、置き引きの罪や逮捕される可能性、前科をつけないための対処法について解説します。
アトム法律事務所が過去にとり扱った事例では、置き引きで逮捕された割合は36%前後でした(アトム法律事務所「置き引きの逮捕率」の統計より)。
置き引きは「占有離脱物横領罪」もしくは「窃盗罪」に問われる犯罪行為です。いずれにせよ、逮捕されると起訴されるまで最長23日間身柄拘束されるおそれがあります。
置き引きで逮捕を回避するための対策も解説しているので、ぜひ最後までご覧ください。

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目次
置き引きは何罪になるのか
置き引きで捕まると、「占有離脱物横領罪」もしくは「窃盗罪」に問われます。ここでは置き引きに該当する行為の例と、どのようなときに何罪に問われるのか詳しく解説します。
置き引きとはどのような行為か
まずは「置き引き」と称される行為がどういったものか説明します。置き引きとなるのは、主に以下のようなケースです。
置き引きの具体例
- ベンチやトイレなどに誰かが置いていった財布やバッグを盗んだ
- ATMに置き忘れられた紙幣やクレジットカードを盗んだ
- 自転車のカゴの中のバッグや荷物を盗んだ
このように、誰かが忘れていった、あるいはあえてそこに置いた金品を盗む行為のことを総じて置き引きと呼びます。しかし、置き引き罪という罪名はないため、置き引き行為で捕まると、主に「占有離脱物横領罪」もしくは「窃盗罪」に問われます。
占有離脱物横領罪
占有離脱物横領罪は遺失物等横領罪または遺失物横領罪ともいい、刑法254条に定められた罪です。法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」です。
科料とは、日本の刑法における刑罰の一種で、比較的軽い犯罪に科される罰金のようなものです。具体的には、1,000円以上10,000円未満の金銭を国家に納めることを命じられます(刑法17条)。
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
刑法254条
占有離脱物横領罪は、「ネコババ」行為を思い浮かべると分かりやすいでしょう。道端に落ちていた財布を拾い、警察に届けずこっそりと自分のものにしてしまうようなケースです。
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窃盗罪
窃盗罪は、刑法235条に定められた罪です。法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法235条
窃盗罪は一般にイメージされる「盗み」行為であり、「他人の財物」を「窃取」した場合に成立します。「窃取」とは、他人の占有している財産や物品を、その意思に反して自分または第三者のものとしようとする行為のことを指します。
窃盗罪には未遂罪もあるため、置き引き行為が失敗に終わった場合でも、処罰されることがあります。
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どのようなケースで占有離脱物横領罪・窃盗罪が適用されるのか
それでは、置き引きを行った場合、占有離脱物横領罪と窃盗罪はそれぞれどのようなケースにおいて適用されるのでしょうか。
占有離脱物横領罪と窃盗罪のどちらが適用されるかは、自分のものにしたものが持ち主の占有を離れているかどうかが問題となります。
たとえば、誰かが置いていった財布を自分のものにしたとします。この場合、持ち主が財布を置いていってから一定以上の時間が経っている場合は占有離脱物横領になりえますが、持ち主がトイレに行っていた隙に自分のものにしてしまった場合などは窃盗罪となる可能性が高いと考えてください。
もっとも、占有が離れているか否かの判断はケースバイケースです。裁判例をひとつ紹介します。
裁判例
ポシェットを公園のベンチに置き忘れた被害者が27メートルほど歩いた時点で、犯人がそのポシェットを持ち去ったという事案があります。この場合においては、最高裁は離れた距離がその程度ではポシェットに対する持ち主の占有は失われていないとして占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪の適用を認めています。(最高裁平成16年8月25日第三法廷決定)
また、飲食店などの商業施設内の忘れ物については、本来の持ち主の占有は離れていてもその施設の管理者の占有が及んでいるとされることもあります。たとえば、施設内のトイレに忘れられていた財布を置き引きすると窃盗罪が適用されることは十分あり得るでしょう。
いずれにせよ置き引きは犯罪行為であり、逮捕されて事件が起訴されると前科がつく可能性があります。警察の捜査によって犯人として特定されれば、突然警察が家にやってきて捕まったり、事情を聞かせてほしいと電話がかかってくることもあるでしょう。
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置き引きで捕まる確率はどれくらい?
置き引きで捕まる確率と、逮捕に至る可能性はどれくらいあるのかを解説します。アトム法律事務所が過去にとり扱った事例では、置き引きで逮捕された割合は36%前後でした(アトム法律事務所「置き引きの逮捕率」の統計より)。
この統計では、おおよそ3人に1人が逮捕されていることになります。もっとも、このデータは占有離脱物横領罪、窃盗罪を区別しないデータです。ここからは問われる罪名によって、捕まる確率に違いはあるのか、見ていきましょう。
占有離脱物横領罪で捕まる確率
犯罪白書(令和4年版)によると、令和3年における遺失物横領罪の検挙率は77.1%でした。占有離脱物横領罪で犯人と特定される可能性はかなり高いでしょう。
しかし、犯人として検挙されても逮捕されるとは限りません。
まず、占有離脱物横領罪に問われた場合は比較的軽微な犯罪であるため、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば逮捕されずに在宅事件として捜査が進むことがほとんどです。
実際に、警察庁が発表している統計「令和3年の犯罪(PDF)」によると、令和3年の占有離脱物横領の件数8,680件のうち、9割以上の8,342件が身柄不拘束(=逮捕なし)となっています。
検挙されても逮捕されない場合は、在宅事件として捜査が進みます。
ただし、在宅事件として扱われているからといって、罪に問われないわけではありません。警察による捜査の結果、検察庁へと書類送検され、起訴されれば前科がつく可能性が高まるでしょう。
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・在宅事件の流れを解説|起訴率は低い?逮捕される刑事事件との違い
窃盗罪で捕まる確率
犯罪白書(令和4年版)によると、令和3年における窃盗罪の検挙率は42.2%でした。占有離脱物横領罪と比べると、犯人と特定される可能性は低いといえます。
もっとも検挙率は年々向上しており、窃盗罪で捕まる確率は十分あるといえるでしょう。防犯カメラなどの技術向上なども、犯人特定の可能性をあげる要素です。
窃盗罪に問われた場合は占有離脱物横領よりも重い罪であるため、そのぶん逮捕される可能性も高くなります。
また、犯人として逮捕はされていなくても、警察による捜査期間は時効まで続くと考えましょう。窃盗罪の公訴時効(刑事事件の時効)は7年です。
1年前の窃盗だから捕まらないと思うのは早計で、ある日突然警察から取り調べを受ける可能性があります。
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置き引きで逮捕を回避するためには
刑事事件を起こしたからと言って必ず逮捕されるわけではありません。事件によっては逮捕を回避することができます。
事件を実際に起こしてしまった場合、逮捕の必要性がないことを示せば逮捕を回避できる可能性が高まります。
具体的には以下のような対策が有効です。
逮捕回避のために有効な対策
- 自首する
- ひとり暮らしの場合は実家に引っ越す
- 被害者と示談を締結する
自首する
まだ警察が関知していない事件の場合、自首をすることで逮捕回避の可能性を高めることができます。
逮捕は「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」が認められるときに行われます。
自首をしたという事実は、捜査に協力する意思があるということを示すことに繋がるため、これらのおそれがなくなり逮捕される可能性が低くなるのです。
客観的な証拠があるにもかかわらず否認を続けていると、逮捕される可能性が高まります。
警察に捜査されるのが目前であるような場合には、自首することも検討してください。
ひとり暮らしの場合は実家に引っ越す
実家に引っ越すということは、常に両親など家族の監督下に置かれるということを意味します。
逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが低減するので、逮捕の可能性が低くなるのです。
特に両親に今後きちんと監督するという旨の宣誓書などを書いてもらい、これを捜査機関に提出などすれば、逮捕の回避に一層期待が持てるようになります。
被害者と示談を締結する
被害者と示談を締結するのは、逮捕の回避という点でかなり有効な対策です。
示談というのは当事者同士の話し合いによって民事上の賠償責任を解消する手続きです。

示談を締結したという事実は、起こしてしまった事件について真摯に反省し、誠実に手続きに応じる用意があるという事実を示します。
示談締結の有無は捜査機関による逮捕の判断にかなり大きな影響を与えるのです。
置き引きで逮捕された場合の流れ
ここでは、置き引きで逮捕されてしまった場合の流れを見てみましょう。逮捕には主に通常逮捕と現行犯逮捕の2つの形式があります。

逮捕は主に現行犯逮捕と通常逮捕の2種類
通常逮捕
通常逮捕は、後日逮捕とも呼ばれ、裁判官が発付した逮捕状に基づいて逮捕されるものです。
通常逮捕の流れは、警察官が犯罪の証拠を集め、裁判官に逮捕状を請求します。
裁判官は、逮捕状の発付を行うべきか嫌疑の相当性や逮捕の必要性を審査し、逮捕の要件を満たした場合には発付します。
そして逮捕状をもった警察官が、自宅にやってきて逮捕します。通常は在宅の可能性が高い朝早くに警察官がやってきて、そのまま連行される流れになります。
現行犯逮捕
現行犯逮捕は、犯行現場において今まさに犯行を行っている犯人や犯行直後の犯人を逮捕するものです。逮捕状は必要ありません。
現行犯逮捕は警察官でなくても、誰でもすることができます。
目撃者や被害者が犯人を取り押えるケースや、万引き直後の犯人を店員が捕まえて控室に拘束するケースなどが現行犯逮捕の典型例です。
現行犯逮捕が行われたあとはすぐに警察への連絡が行われ、やってきた警察官によって警察署にまで連行されます。
置き引きは持ち主がその場で気付いた場合は現行犯逮捕されることもありますが、特に商業施設内での置き引きの場合などは、防犯カメラに犯行の様子が記録され、そこから後日逮捕にいたることもあります。
逮捕勾留から起訴前の釈放までは最長23日間

次に、逮捕された後の流れをみてみましょう。逮捕されてから起訴するかどうかの決定が行われるまでは、最長で23日間の身体拘束が続く可能性があります。
置き引きにおいては警察は微罪処分として釈放する場合もありますが、それ以外の場合、事件を検察官に引き継ぐ検察官送致(送検)が48時間以内に行われます。検察官の判断により24時間以内に勾留請求が行われ、勾留質問などのあと、原則として10日間身柄が拘束されます。必要に応じ、さらに最長で10日間の勾留延長が行われます。
捜査の結果、検察官は起訴するかどうかを判断します。不起訴や処分保留となった場合は釈放されますが、起訴されると略式裁判もしくは正式裁判が開かれ、罰金刑や懲役刑などの刑罰が決定されます。
置き引きが窃盗罪に問われたらどのような処分を受ける?
置き引きが窃盗罪に問われた場合、刑罰は初犯で被害金額も少ない場合であれば微罪処分や不起訴、起訴された場合であっても最大30万円程度の罰金刑となる場合が多いです。
再犯(2回目)でも罰金刑になる可能性が高いですが、被害金額が高額な場合は正式裁判になることも多く、執行猶予期間中に万引きで起訴されると原則として懲役刑になります。
服役後に窃盗を繰り返した場合は「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」3条が適用されることがあり、その場合、常習累犯窃盗罪として3年以上の刑に処せられます。
常習累犯窃盗罪については『常習累犯窃盗とは?窃盗罪との違いや執行猶予の条件を解説』の記事で詳しく解説しています。
置き引きで前科を防ぐためにすべきこと
置き引きで前科をつけないためには、早期に弁護士に相談し、不起訴処分を得ることが重要です。
不起訴処分を獲得し前科を回避する
検察官により事件が起訴されてしまうと、裁判で無罪になるのは非常に難しいです。日本の刑事裁判では起訴されると99%以上の確率で有罪判決を受けます。
しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けること自体がなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。
すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。
示談により不起訴の可能性を高める
置き引きは被害者のいる犯罪であり、早期に被害者対応を行うことが重要です。
まずは置き引きした金品の返還・弁償をしっかりと行いましょう。さらに、被害者との間に示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」で不起訴となる可能性が高まります。
被害者と示談するためには弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
逮捕されてから起訴される前の身柄拘束が続く期間は最大で23日間です。起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉は検察官の起訴・不起訴の判断の前までに行う必要があります。
逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできず、また逮捕されていない場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難です。
そのため、被害者との示談交渉の際は弁護士への依頼が事実上必須になります。
原則として捜査機関は加害者本人には被害者の連絡先を教えてくれません。弁護士が介入してはじめて相手方との交渉が可能になり得るのです。

また、刑事事件に強い弁護士であれば被害者の方の心情に配慮した示談交渉を行うことができます。
作成される示談書についても法的な不備が生じないようにすることができます。
相手方と示談を締結し前科を回避したいという方は、まずは一度弁護士に相談しましょう。

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ご依頼者様からのお手紙・口コミ評判
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(抜粋)この度は、先生の弁護活動に感謝致します。刑事事件の被疑者になるという生まれて初めての悲劇かつ悪夢のような体験からさらに事態を悪化させないために釈放直後の夜に早急に弁護士を探したところ、インターネットでの評判が良く、刑事事件に強かったアトム法律事務所にお任せして正解でした。
示談文作成のアドバイス、わかりやすい料金プランの説明、実際の示談交渉や警察側、検察側との交渉等、先生のお力のおかげで元の日常を取り戻すことができました。
今後は同じ過ちを二度と犯さぬようにより慎重に生活を送っていきます。
適時的確な対応のおかげで再スタートが切れました。

(抜粋)被害者の心情を別にさせていただくと、今回程度の事案でも、否認することで、逮捕・勾留10日とオートマチックに進んでしまうという恐しさを感じました。ちょっとしたことで仕事、人生も失うということです。まったくの素人ではそのまま流されていたところ、貴事務所の対応で何とか再スタートが切れました。ありがとうございました。タイムリーで適確な対応が不可欠と思います。この意味で弁護活動は大変だと思いますが、今後のご活躍を祈念いたします。ただし、二度と依頼しないように致します。
身柄事件では、逮捕から23日後には起訴の結論が出ている可能性があります。
在宅事件でも、検察からの呼び出し後、すぐに処分が出される可能性があります。
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