
アダルトコンテンツなどのわいせつ物をネット上に公開すると、「わいせつ物頒布等罪」に問われる可能性があります。
わいせつ物頒布等罪の類型
- わいせつ物・電磁的記録媒体の頒布・陳列
- わいせつ電磁的記録の送信頒布
- 有償で頒布する目的で、わいせつ物を所持・電磁的記録を保管
刑罰は「1ヶ月以上2年以下の懲役」または「1万円以上250万円以下の罰金」または「科料」のいずれかです。
場合によっては、懲役刑と罰金刑の両方が科されることもあり得ます。
この記事では、わいせつ物頒布等罪やわいせつ電磁的記録の送信頒布罪について、要件、刑罰、起訴の可能性、弁護士相談のメリット、実際の解決事例などを紹介します。
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目次
わいせつ物頒布等罪の類型
(1)わいせつ物頒布等罪
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体などの「わいせつ物」を、「頒布」または「公然と陳列」した場合に成立します(刑法175条1項)。
わいせつ物頒布等罪の刑罰は「1ヶ月以上2年以下の懲役」若しくは「1万円以上250万円以下の罰金」若しくは「科料」です。
科料とは、1,000円以上1万円未満を納付する刑罰です。
なお、場合によっては、懲役及び罰金が併科(へいか)されることがあります。併科とは、両方科されることです。
わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。
刑法175条1項前段
「わいせつ物」とは?
わいせつ物について、最高裁判所は「その内容がいたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」ものと判示しました。(最高裁判所昭和32年3月13日判決・刑集第11巻3号997頁)。
他人を性的に興奮させたり、刺激させるような文書であることが認められれば、性的羞恥心を害しないなどの事情(芸術品等でしばしば問題となります。)がない限り、「わいせつな文書」等に該当する可能性が高いです。
わいせつ物であるかどうかの判断基準は非常にあいまいです。本人がわいせつ物ではないと思っていても捜査の対象となるケースもあるため、注意する必要があります。
わいせつ物の「頒布」とは?
「頒布」とは、分かりやすくいうと、「不特定又は多数の人に対して交付すること」をいいます。有料・無料は問わず、不特定又は多数の人に無料で交付した時点で「頒布」に該当すると解させています。
例えば、わいせつな画像や動画を、不特定又は特定の多数の人に送りつけた場合には、頒布したと認められ、わいせつ物頒布罪に該当する可能性が出てきます。
わいせつ物の「陳列」とは?
また、わいせつな文書等を「公然と陳列した」場合にも、犯罪が成立することになります。
「公然と陳列した」がどのような行為を指すのかというと「不特定又は多数の人が認識できるような状態に置く」ことをいいます。
例えば、わいせつな画像データや動画のデータをインターネット上で自由に再生したり閲覧できる状態に置いた場合、「公然と陳列した」に該当する可能性が出てきます。
(2)わいせつ電磁的記録媒体陳列罪
わいせつ電磁的記録媒体陳列罪は、わいせつ物頒布等罪の一類型です。刑罰は「1ヶ月以上2年以下の懲役」若しくは「1万円以上250万円以下の罰金」若しくは「科料」です。
わいせつ物頒布等罪には、わいせつな文書や図画だけでなく、わいせつな「電磁的記録に係る記録媒体」を頒布したり、公然と陳列した場合も処罰対象にしています。
「電磁的記録に係る記録媒体」とは、わいせつな写真や動画のデータが保存されたパソコンのハードディスクやインターネット上のサーバー等を指します。。
わいせつな画像データや動画データをサーバーにアップロードして一般公開したり、わいせつな動画像データを記録媒体に焼いて頒布したりした場合、同罪に該当する可能性が出てきます。
(3)わいせつ電磁的記録送信頒布罪
わいせつ電磁的記録送信頒布罪は、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した場合に成立する犯罪です。
わいせつ電磁的記録送信頒布罪の刑罰も、「1ヶ月以上2年以下の懲役」若しくは「1万円以上250万円以下の罰金」若しくは「科料」です。
電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
刑法175条1項後段
わいせつ記録送信頒布罪が成立するには、不特定または多数の者の記録媒体に、わいせつな電磁的記録を存在するに至らしめることが必要です。
わいせつ記録送信頒布罪になる例
- わいせつな画像データをメール添付で不特定多数人に送信
- わいせつな写真の画像をファックスで不特定多数人に送信
(4)有償頒布の目的でわいせつ物を所持・電磁的記録を保管した場合の犯罪
わいせつ物は「頒布」や「公然と陳列」しなくても、有償で頒布する目的がある場合、所持しただけで罪に問われ得ます(有償頒布目的わいせつ物所持・わいせつ電磁的記録保管罪、刑法175条2項)。
有償頒布目的わいせつ物所持・わいせつ電磁的記録保管罪の刑罰も、「1ヶ月以上2年以下の懲役」若しくは「1万円以上250万円以下の罰金」若しくは「科料」です。
有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。
刑法175条2項
有償で頒布する目的とは、販売目的や有償で貸与する目的になります。
わいせつ物を不特定または多数の人に販売する目的で所持していたり、わいせつな電磁的記録を同じ目的で保管していたりした場合には、実際に頒布や陳列をしていない場合であっても処罰の対象となるわけです。
わいせつ物頒布等罪・電磁的記録送信頒布罪の量刑
わいせつ物頒布等の法定刑
上記の一連の「わいせつ物頒布等罪」の量刑は「2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役及び罰金の併科」です(刑法175条1項前段、同1項後段、同2項)。
有罪が確定したら、このような法律の範囲内で、量刑が検討され、刑罰が言い渡されることになります。
刑罰の重さに影響する事情
一般的に、わいせつ文書等の内容や頒布・陳列の規模の程度などによって科される刑の内容が変わってきます。行為の内容がより悪質であると判断された場合、懲役刑のみでなく、懲役刑と罰金刑を併せて科されてしまう可能性もあります。
また、罰金刑が科される場合、有償で頒布した場合の方が、無償で頒布した場合に比べて罰金額が高くなる傾向があるようです。
有罪になる割合
わいせつ物頒布等罪だけの統計はありませんが、刑法22章の犯罪(わいせつ物頒布等罪を含む。)に関する統計はあります。
犯罪白書によると、令和4年、わいせつ等の第一審の裁判結果については、以下のとおりとなっています。
令和4年度、わいせつ等の罪は、起訴されたうち99.4%が有罪となっています。有罪になったうち、懲役刑は99.0%、罰金刑は1.0%でした。
令和4年 わいせつ等*¹の裁判結果
結論 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
有罪 | 1,321人 | 99.4% |
無罪 | 2人 | 0.2% |
その他*² | 6人 | 0.4% |
総数 | 1,329人 |
刑罰 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
有期懲役 | 1,308人 | 99.0% |
罰金 | 13人 | 1.0% |
総数 | 1,321人 |
令和5年版犯罪白書 第2編/第3章/第3節/1終局裁判「2-3-3-1表 通常第一審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)」より数値を抜粋し、編集しました。
*¹ わいせつ等とは、刑法2編22章の罪を指します。
わいせつ物頒布等(175条)の他に、公然わいせつ(174条)、不同意わいせつ(176条)。不同意性交等(177条)、監護者わいせつ・監護者性交等(179条)、不同意わいせつ等致死傷(181条)、面会要求(182条)、淫行勧誘(183条)、重婚(184条)が含まれます。
*² その他とは、免訴、公訴棄却、管轄違い、取下げを指します。
起訴の割合は?有罪になる可能性は?
わいせつ物頒布等罪で立件された場合、起訴に踏み切られてしまう可能性は非常に高いです。
起訴は、裁判の開廷を提起する手続きです。起訴は、検察官がします。
起訴されると、統計上99.9%の事件が有罪となるといわれています。
なお、検察庁が一般に公開している統計調査によると、2020年度にわいせつ物頒布等罪として送致を受けた事件のうち、起訴に踏み切った割合は約56.3%と過半数を超えていることが認められています。ちなみに、2019年の起訴率は約61.9%、2018年の起訴率は約56.0%という結果が報告されています。
刑法犯全体では2020年度の起訴率は約22.3%であるため、わいせつ物頒布等罪の起訴率は非常に高いと言えます。
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・起訴とは?弁護士の活動は?起訴の流れは?示談で不起訴?刑事事件の弁護士相談
わいせつ物頒布等罪・電磁的記録送信頒布罪を弁護士に相談するメリット
逮捕回避の可能性を上げられる!

逮捕は「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」が認められるときに行われます。
逮捕・勾留されると起訴されるまで最大で23日にもわたり身体拘束されるおそれがあり、日常生活に影響が生じるのは必至となります。
弁護士は捜査機関に対して「証拠隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」がないことを効果的に主張できます。
関連記事
・逮捕されたら│逮捕の種類と手続きの流れ、釈放のタイミングを解説
不起訴獲得の可能性を上げられる!

わいせつ物頒布等罪は、他の犯罪と比べても起訴に至るおそれが相当程度認められる犯罪です。日本の刑事裁判の有罪率は約99.9%。起訴される可能性が高いといことは、その後、有罪になる確率が高いということ。わいせつ物頒布等罪は前科が残る可能性が高い犯罪といえます。
しかし、わいせつ物頒布等罪で立件されたとしても必ず起訴されてしまうという訳ではありません。
検察官は、様々な事情を考慮して処分に付すべきかを判断するため、当然、情状面などで有利な事情があれば、処分に付しない(不起訴処分)と判断してもらえる可能性も残されています。不起訴処分を得ることができれば、前科がつくことを防ぐことができます。
わいせつ物頒布等罪で不起訴獲得の可能性を上げるためには、同様の犯罪を起こすおそれが一切ないことを強調するという方法が挙げられます。
具体的には、わいせつな文書等は全て破棄済みであること、頒布や陳列行為を可能にしたツール(携帯電話やパソコン等)を今後一切使用しないことを誓約すること、同居人の方や勤め先の方に協力してもらい今後監督を続けることを約束してもらうことなども有効です。
また、初犯であることや、事実を認め十分に反省していること等も、プラスの事情として考慮されると考えられています。
被疑者に有利な要素
- 犯罪に使ったツールを今後一切使用しないことを、本人が誓約する
- 本人が二度と犯罪をくり返さないように、同居の家族が本人を監督する
- 初犯である
etc.
当然、犯罪行為自体が悪質かどうかも重視されるところですが、情状面で有利な事情が複数あれば、検察官からも、今回に限っては不起訴で事件終了になるという判断がなされる可能性も見えてくるでしょう。
弁護士は捜査機関に対して、上記の事情を効果的に主張できます。
刑事事件に精通した弁護士であれば、事件の見通しを適切に示すことができ、その上で、不起訴を得るためにどのような方法が最善なのかについて、早期にアドバイスを得ることが可能となります。
あれこれと自分の頭のなかで思いを巡らせるよりも、まずは弁護士にご相談いただくのがよろしいでしょう。
わいせつ物頒布等罪・電磁的記録送信頒布罪をアトムの弁護士に相談
最後にひとこと
わいせつ物頒布等罪は、迅速かつ適切な弁護活動をおこなうことで、不起訴処分を獲得できる犯罪です。
二度とわいせつ物頒布等罪をおこさないこと、反省している事情などを検察官に伝えて、不起訴処分獲得の交渉をうまく進めるには、刑事事件に強い弁護士のサポートが必須といっても過言ではないでしょう。
アトムの解決事例
こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱ったわいせつ物頒布等事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。
ネットでわいせつ画像掲載(わいせつ物頒布等・不送致)
わいせつな画像をネット上に頒布したとされるケース。依頼者は出会い喫茶で知り合った女性との性行為の様子をネット上のアダルトサイトに掲載した。わいせつ物公然陳列の事案。刑事事件化前に受任。
弁護活動の成果
依頼者の意向に沿い顧問としてアドバイスを行った他、意見書や添付資料等の作成に協力した。刑事事件化することなく事件終了となった。
示談の有無
ー
最終処分
不送致
児童を撮影・画像を販売(わいせつ物頒布等・執行猶予)
児童買春を行い行為の様子を撮影もしくは盗撮し、それを販売する行為を繰り返していたとされるケース。児童買春・児童ポルノ禁止法違反、迷惑防止条例違反、わいせつ物頒布等の事案で、被害者7名の分が立件された。
弁護活動の成果
被害者全員に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。裁判の場で情状弁護を尽くし執行猶予付き判決を獲得した。
示談の有無
1名のみと成立
最終処分
罰金30万円、懲役3年執行猶予4年
自己の陰部を投稿(わいせつ記録送信頒布・不起訴)
約2年間、インターネット上に自身の陰部の画像を投稿していたとされたケース。わいせつ電磁的記録媒体公然陳列の事案。
弁護活動の成果
報道回避の意見書提出や事件担当警察官との面談などの活動により報道の回避に成功。不起訴処分となった。
示談の有無
ー
最終処分
不起訴
複数人の女性器等を投稿(わいせつ記録送信頒布・不起訴)
インターネット掲示板に女性器等を撮影した画像を投稿した際、画像修正の程度が甘いとされ、警察の取り調べを受けるにいたったケース。わいせつ電磁的記録記録媒体陳列の事案。
弁護活動の成果
贖罪寄付を行うなどするとともに、意見書を作成し提出。略式起訴で罰金刑となった。
示談の有無
全員と示談成立
最終処分
不起訴
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迅速な示談交渉で逮捕・報道を回避

(一部抜粋)事件から約2週間後には、示談が成立しました。とても早かったと思います。ありがとうございます。逮捕・報道に関する意見書を警察署に出して頂き、おかげで、逮捕も報道もされずにすみました。
きちんと話を聞き、適切に対応してくれる

(一部抜粋)野尻先生は、きちんと話を聞いて頂き、本当に大感謝です。相手側の弁護士から電話が来た時は、すごく不安でした。それでも先生はすごく対応して下さってすごくうれしかったです。本当にありがとうございました。先生のおかげで、もう一度チャンスを頂けたと思います。本当に心強かったです。これを機に今後は真面目に頑張りたいと思います。
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