刑事事件を起こしてしまうと「明日にでも警察が逮捕状をもってくるのではないか」といった不安を抱えて生活することになります。
逮捕状をもって警察がやってきた場合、刑事事件の被疑者として身柄を拘束されることになります。
前兆なく、突然逮捕されるケースもあるので、逮捕状が出ているか分からない中でも、早期の対応が必要です。
この記事では、逮捕状の発行を回避するために注意すべき内容や、逮捕状の請求から逮捕までの手続きの流れなどについて解説します。
逮捕の前兆に気づかないまま、逮捕状を見せられて慌てることがないように、逮捕の不安がある方は、お早目の弁護士相談もご検討ください。
逮捕された方のご家族へ
突然、逮捕状をもった警察が家に来て連行された場合でも、通常、ご家族は詳しい事情を教えてもらえません。
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目次
逮捕状とはどんなもの?
逮捕状とは何か、どういったケースで逮捕状が出てしまうのかといった概要をみていきましょう。
逮捕状とは何か
逮捕状とは、「特定の個人を、捜査機関(警察官や検察官等)が逮捕すること」を許可する書面です。
逮捕状は、捜査機関からの令状請求にもとづいて、裁判官が発行します。
逮捕状が発付された後は、捜査官が、逮捕状を見せて、被疑者(罪を犯した疑いのある者)を逮捕します。
逮捕状には強制力があるので、仕事や予定を理由に拒否することはできず、逃走すれば指名手配になることもあります。
逮捕状の記載内容
逮捕状の記載内容は、被疑者の氏名および住居、罪名、被疑事実の要旨、引致すべき官公署などの場所、逮捕状の有効期間および有効期間を過ぎた場合の返却の旨などです。
逮捕状の意義
そもそも「逮捕」とは、犯罪の疑いをかけられた者が留置施設に収容されることです。逮捕は、個人を拘束して身体の自由を制限するものなので、その人の人権を侵害する行為ともいえます。
そのため、逮捕は厳格な手続きのもとでのみ認められています。
逮捕時に裁判官が発付した逮捕状が必要になることも、逮捕に求められる厳格な手続きのひとつです。そして、裁判所が逮捕を許可した証明となるものが「逮捕状」なのです。身体拘束による不利益を最小限度にするため、逮捕状の記載内容も、法律で明確に定められています。
逮捕状と令状のちがい
逮捕状は令状の一種です。令状とは、裁判所が捜査機関に対して捜査の実行・執行を許可する書面のことをいいます。
日本では令状主義の考え方のもと、個人の自由の制約を最小限にとどめるために、強制捜査や強制執行をする際は、裁判所の許可状である「令状」が必要とされています。
逮捕状のほかにも、次のような令状があります。
- 捜索差押許可状:強制的に住居等を捜査(ガサ入れ)して犯罪関連物を取得してよいという許可状
- 鑑定処分許可状:死体の解剖等の鑑定を行ってもよいという許可状
- 勾留状:逮捕に引き続き身体拘束をしてもよいという許可状
逮捕状発行の要件
逮捕状は全ての事件や被疑者に発行されるわけではありません。犯罪を犯したことが十分に疑われること、逃亡や証拠隠滅いずれかの可能性があることが逮捕の要件です。
逮捕の要件に該当する場合に捜査機関が逮捕状を請求し、裁判所が逮捕の必要性を認めることで、逮捕状が発行されます。逮捕状が発行された時点で、逮捕までの期間はあまりなく、逮捕が迫っているといえるでしょう。
通常逮捕は逮捕状が必要!現行犯は不要
逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の3種類があります。逮捕の種類によって、逮捕状が発行される時期が異なったり、逮捕状なしに逮捕ができるといった特徴があります。
通常逮捕とは
通常逮捕とは、捜査機関が事前に逮捕状を請求し、裁判所から逮捕状を発行してもらってから逮捕を執行する手続きです。通常逮捕は後日逮捕ともいわれます。
なお、逮捕状を請求しているものの発行が間に合わなかったり、発行済みの逮捕状を所持していなくても、緊急度が高い場合は逮捕状を示さずに逮捕を執行できる緊急執行もあります。
緊急逮捕とは
緊急逮捕とは、まだ逮捕状が無い段階でも、ある一定の重大な犯罪を犯したという疑いが十分あり、すみやかに逮捕の必要性がある場合にとられる逮捕手続きです。緊急逮捕後はただちに逮捕状を請求し、裁判所より逮捕状の発行をしてもらう必要があります。
現行犯逮捕とは
現行犯逮捕は、犯罪が現に起きて犯人が明白なときにおこなわれる逮捕手続きで、逮捕状は不要とされています。なお、現行犯逮捕であれば一般人による逮捕(私人逮捕)も認められていますが、すぐに警察などの捜査機関に被疑者を引き渡さねばなりません。
通常逮捕 | 緊急逮捕 | 現行犯逮捕 | |
---|---|---|---|
逮捕状の請求 | 逮捕前 | 逮捕後 | 不要 |
逮捕権 | 権利者*のみ | 権利者*のみ | 誰でも可能 |
※権利者:検察官、検察事務官、司法警察職員
逮捕状発行にかかる期間
逮捕状の請求から発行までの期間は、おおよそ数時間から半日以内とされています。逃亡や証拠隠滅の恐れがあって逮捕状請求に至っているため、逮捕状が出るまでに長く時間がかかることはありません。
なお、警察が逮捕状を請求する時期については事件ごとに異なります。捜査によって被疑者の容疑がかたまった段階で、逮捕の要件を満たしていると逮捕状が請求される可能性があります。
逮捕状の有効期限
逮捕状の有効期限は、逮捕状発行日の翌日から数えて原則7日間とされています。有効期間を過ぎた逮捕状では逮捕できません。失効した逮捕状は裁判所へと返却が義務付けられています。
もっとも、裁判官が認めたときには7日間を超える有効期限の設定が可能です。
逮捕状が出ているか確認する方法はある?
警察が逮捕状を請求したり、裁判所から逮捕状が発行されても、被疑者に通知される仕組みや確かめる手段はありません。
また、逮捕状が出ているということは逃亡や証拠隠滅の疑いをもたれているので、警察に「私の逮捕状は出ていますか?」「逮捕の予定はありますか?」などと問い合わせても答えてもらえないでしょう。
逮捕状は事前に郵送されるものでもなく、逮捕が執行される際に提示されます。逮捕されるかもしれないという不安がある方は、早急に弁護士に相談してください。
警察に逮捕される主な前兆
逮捕される主な前兆としては、警察による自宅周辺の下見や警察からの直接連絡、家宅捜索などが挙げられます。
逮捕状は発行日の翌日から原則7日間という有効期限があるので、逮捕状の請求・発行からあまり日を空けずに逮捕は執行されるでしょう。
前兆①警察が逮捕前に下見に来ている
警察が自宅周辺や職場周辺を下見している場合、逮捕が近づいているかもしれません。
警察が被疑者を逮捕するには、逮捕状に記載の有効期限内に逮捕を執行する必要があります。そのため、被疑者の行動を監視したうえで、何時だと家にいることが多いのか、どういうルーティーンで行動するのか、逃走させないためにどこで声をかけるかなどを、逮捕前の下見で確認している可能性があるのです。
また、逮捕前日から張り込みをして被疑者の居場所を突き止めているケースもあるでしょう。
前兆②警察からの直接連絡
警察から事件について話を聞きたいなどと連絡が入った場合も、逮捕される前兆といえるでしょう。
被害届が提出されていて、取り調べによって犯行の疑いが強まった場合は、そのまま逮捕される可能性が高いです。
逮捕前の取り調べは任意であり、警察から要請を受けても拒否することができます。しかし、正当な理由なく取り調べを拒否すると、警察に何かを隠していると疑われ、逮捕されやすくなるため注意してください。
前兆③警察による家宅捜索
証拠を隠滅させないために行われる家宅捜索では、事前に知らせることなく警察が突然自宅に訪れ、事件に関連する物品が隠されていないか捜索されることになります。
家宅捜索は、犯罪に関与していると強く疑われていなければ実施されません。そのため、家宅捜索の時点で身柄を拘束されなかったとしても、捜索で犯罪の証拠が見つかれば、逮捕される可能性が極めて高くなるでしょう。
そのため、警察による家宅捜索も逮捕の前兆となるのです。
逮捕される前兆に気づけないことも多い?
もっとも、逮捕は事前通告されることはなく、前兆があったとしても気づくことができず、突然逮捕されることは多いです。外出前、朝早い時間に自宅に警察がきて「おはよう逮捕」されるケースもあります。
逮捕状請求から逮捕状執行の流れ
逮捕執行までは、警察が逮捕状を請求する、裁判所が逮捕状を発行する、逮捕状を元に逮捕が執行されるといった流れがあります。
各段階について詳しくみていきましょう。
警察が逮捕状を請求する
警察官や検察官が逮捕の必要性を判断すると、裁判所に「逮捕状請求書」を提出して、被疑者に対する逮捕状を請求します。同時に、逮捕の理由や裏付け資料も提出されます。
逮捕状請求書に記載される内容は?
刑事訴訟規則(以下「刑訴規則」といいます)142条1項によると、逮捕状請求書には、被疑者の氏名、年齢、生年月日、職業、住居、罪名、被疑事実の要旨、逮捕を必要とする理由などが記載されることが分かります。
被疑者の氏名が明らかでない場合でも、人相、体格その他被疑者を特定できる事項を記入すれば、逮捕状請求は可能です(刑事訴訟規則142条2項)。
また、被疑者の年齢、職業、住居が明らかでない場合も、その旨を記載すれば、逮捕状請求は可能です(刑訴規則142条3項)。
裁判所から逮捕状が発行される
警察からの逮捕状請求を受けると、裁判所にておおむね数時間から半日のうちに判断がなされ、逮捕状が発行されるか、却下されます。
裁判所発行の司法統計(令和3年度)によると、通常逮捕の逮捕状は78,832件発付されており、却下数は43件、取下げ数は1,047件でした。裁判所にて逮捕状の請求が却下される可能性は低く、ほとんどが逮捕状の発付が認容されると考えておきましょう。
捜査機関により逮捕が執行される
捜査機関によって逮捕が行われる際には、逮捕状が示されるのが原則です。逮捕にあたっては、被疑者が在宅している居宅や、場合によっては職場に踏み込んでくることも考えられるでしょう。
逮捕状が発行されていても、逮捕状を所持していない場合には緊急執行という形で逮捕されます。緊急執行の場合、逮捕状が発せられている事実や逮捕にかかる被疑事実が述べられて逮捕される流れです。
逮捕されやすい時間帯はある?
逮捕状に基づく通常逮捕は、平日の早朝に行われるケースが多いとされています。被疑者の行動パターンにもよりますが、仕事へ行く前の時間帯であれば在宅していると考えられやすいためです。
このように、ある朝突然警察が逮捕しにくることから「おはよう逮捕」ともいわれます。
土日でも逮捕される?
土日・祝日など休日であっても、逮捕の要件を満たしていれば逮捕は十分ありえます。刑事手続きにはカレンダー上の休日などは関係ありません。
そのため土日の逮捕事件であっても迅速な対応をするには、土日でも対応している法律事務所への相談が肝要です。アトム法律事務所では土日祝日関係なく、年中無休での相談予約を受け付けています。
逮捕される確率は?
令和4年の犯罪白書によると、検察庁にて受理された271,489件の刑事事件のうち、逮捕率(身柄率)は34.1%でした。この逮捕率は罪名によって異なり、例えば放火は63.1%、恐喝は74.4%、覚せい剤取締法違反は70%と高い割合です。
もっとも逮捕されるかどうかは事件の内容次第です。軽い犯罪だから逮捕されないだろうと判断せず、逮捕される見込みはあるのか、逮捕を避ける方法はあるのかなど、法律の専門家である弁護士に見解を聞いておくことが大切です。
逮捕状執行後は最大23日間拘束される
逮捕されると、まずは最大3日間、警察署内の留置施設に置かれて取り調べを受けます。その後は検察へと身柄がうつされ、引き続いての勾留(身柄の拘束)が必要かを判断されるのです。
逮捕後の流れを知りたい方は、関連記事も併せてお読みください。
関連記事
・逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説
逮捕状の発行につながるNG行動3つ
逮捕状の発行につながるNG行動とは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると、捜査官に思われる態度をとることです。
逮捕を避けるには、絶対に、逮捕要件を満たしてはいけません。
ここでは、逮捕の要件を満たす可能性がある「3つのNG行動」をご紹介します。
警察からの呼び出しを無視するとNG
警察から事情聴取として呼び出しを受けている場合、安易に無視してはいけません。もし日程の都合がつかないときは正直に伝えて、スケジュールの調整を依頼しましょう。
警察からの不在着信を無視し続けると、警察が強引な手段、つまり逮捕状で身体拘束をしてくる可能性があります。ただ無視し続けるのではなく、一度弁護士に相談してください。
証拠隠滅とみられる行動をとるとNG
証拠隠滅の恐れがあると判断されると逮捕の要件を満たしてしまいます。
被害者のいる事件では、被害者への接触を試みることは危険です。被害者に対して事件のことを口外しないように迫ったり、何らかの危害を加えると判断されかねません。
また、共犯者がいるときに口裏合わせを持ち掛けたり、逃走を手助けするといった行動も危険です。
なお、誰かに犯罪行為をそそのかして実行させたり、犯罪行為をしたと知ったうえで被疑者をかくまった場合などは、教唆犯や幇助犯として罪に問われる可能性があります。関連記事『教唆や幇助とはどんな犯罪?共犯の成立要件や事例、逮捕への対応』もよく読み、今後の対応を弁護士に相談することをおすすめします。
逃亡と判断される行動をとるとNG
逮捕要件のひとつに逃亡の恐れがあげられています。
海外渡航はもちろん、他人の家にかくまってもらったり、警察での事情聴取時に嘘の現住所を伝えるなどした場合は、逃亡を計画しているものと見なされて逮捕につながる可能性があるでしょう。
逮捕を回避するための行動については、関連記事『逮捕回避の手段と条件は?弁護士相談で逮捕阻止は可能?』も併せてお読みください。
逮捕状が出るまでに弁護士に依頼するメリット
逮捕状はいつ出るかわからないものなので、早急にかつ効果的な対応を取る必要があります。そんなときには、法律の専門家である弁護士に依頼しておくことで、今後想定されるあらゆる展開に備えるこが可能です。
取り調べのアドバイスがもらえる
逮捕されるまでに何度か警察から呼び出しを受ける可能性があります。まずは自分が被疑事実を認めるのか、認めるとしたらどういった内容を話すことになるのかをよく考えることが大切です。弁護士と共に最適な方針を立てていきましょう。
取り調べ時の言葉遣いも大切です。供述の仕方次第では自身に不利な内容で受けとられてしまったり、不必要な内容まで話すことのないように、弁護士と打ち合わせをしておくことも重要になります。
逮捕状が出るまでは、特に移動の制限はありません。刑事事件に詳しい法律事務所へ相談し、取り調べへのアドバイスを受けることをおすすめします。
関連記事
・警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ
被害者との示談交渉を進めてもらえる
被害者が被害届の提出を見送ってくれたり、被害届を取り下げてもらえれば、逮捕の可能性は極めて低くなります。そのためには被害者と示談をして、許しを得ることが大切です。
ただし被害者に無理に近づくと、危害を加えたり、口止めを迫るのではないかと誤解されかねません。警察や検察に被害弁済や示談の申し入れを申告して、被害者の意向を聞いてもらいましょう。
もっとも、警察や検察が被害者の連絡先を被疑者に教えることはほぼありません。また、被害者自身が被疑者との直接交渉を嫌がる可能性もあります。
こういうときには弁護士を入れることで、警察や検察、被害者との間に立ってもらう方法が有効です。被害者と連絡を取り、示談をすすめるうえでは弁護士の存在が欠かせません。
逮捕前の自首の判断・自首同行
自首も、証拠隠滅や逃亡の恐れがないことのアピールにつながります。ただし逮捕前でないと自首はできません。
警察の捜査前であれば刑事事件化を阻止できたり、逮捕報道の回避や不起訴という寛大な処分につながる可能性もあるでしょう。ただし、逆に逮捕されてしまったり、まだ明らかになっていない犯罪事実が警察に発覚したり、刑事処分を受けることになる可能性もあります。
刑事事件の豊富な実績をもつ弁護士であれば、あらゆる可能性を説明したうえで、最適な選択肢が取れるようにアドバイス可能です。また、自首同行といった形で警察署へ付き添うこともできます。
自首を検討している方は、関連記事『自首すると減刑や逮捕にどれくらい影響がある?自首の要件や方法を解説』を参考にしてください。
逮捕状が出ているか不安な方、逮捕の前兆があった方は弁護士に相談!
さいごに一言
逮捕状は、裁判官が発行する逮捕の許可状です。
逮捕状が発行されると、警察や検察によって逮捕され、長期間にわたり身体拘束されるリスクがあります。
その結果、私生活に多大な影響を及ぼすことが予想されます。会社をクビになったり、学校を退学に追い込まれたりするなど、その影響範囲は計り知れません。
また、事件内容がセンセーショナルなものであれば報道されてしまう可能性もあります。逮捕により実名報道された場合、事件と何ら関係のない家族や友人、仕事仲間にも悪影響となる可能性があるでしょう。
関連記事
アトム法律事務所は土日も相談予約受付
- 警察の下見等の逮捕の前兆に気づいた
- 被害者から被害届を出すと言われ、逮捕状が出ているか不安
それぞれ立場は異なると思いますが、逮捕の不安がある方は、今後の見通しや対策を立てるために、弁護士への早期相談をご検討ください。
アトム法律事務所はこれまでにも逮捕を避けるための刑事弁護活動に注力してきました。
逮捕を避けるための弁護活動は、どれだけ迅速かつ的確に行えるのかがポイントです。逮捕状が出てしまっては、弁護士であっても逮捕を阻止することはできません。ご依頼のタイミングが早いほど、逮捕を避けるための選択肢は多いものです。また、万が一逮捕されてしまっても、身柄の解放活動へ迅速に取り掛かることができます。
お早めのご相談をおすすめいたします。