2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
「警察に出頭すれば、刑が軽くなる?」「自首したらその場で逮捕されてしまうのでは?」このようなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
罪を犯してしまったとき、そのことを反省し、責任を取りたいと考えて自首を選択肢に入れる方は少なくありません。
しかし、自首にはメリットだけでなく、デメリットや注意すべきこともあります。正しい知識を持たずに行動すると、かえって不利な状況につながる可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
この記事では、自首によって刑が軽くなる可能性(減刑)、そのために必要な法律上の「要件」、自首の方法や流れ、そして弁護士に相談するべき理由をわかりやすく解説します。
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目次
自首とは?法律上の定義とは
自首とは、事件の発覚前または犯人特定前に、捜査機関に対して、罪を犯した者がみずから罪を申告することです。自首が成立した場合は、裁判所が刑を減軽できると定められています(刑法42条)。
しかし、刑法で定められている「自首」の要件を満たさなければ、たとえ警察に出頭しても自首は成立しません。自首の最大のメリットでもある「自首による減軽」が認められないこともあります。
刑法42条では、以下のように定められています。
犯人が捜査機関に発覚する前に、その罪を捜査機関に自発的に申し出たときは、その刑を減軽することができる。
刑法42条
つまり、自首と認められるためには次の4つの要件を満たす必要があるのです。
自首の要件とは?
(1)犯罪が「捜査機関に発覚する前」である

自首が成立するためには、警察・検察などの捜査機関が、まだその犯罪の存在や犯人を特定していない段階である必要があります。
たとえば、警察が容疑者を特定しており、逮捕状の準備が進んでいる段階で出頭しても、それは「自首」にはならず、単なる「出頭」と見なされます。
また、犯人の特定は氏名が明らかでなくても、容貌・体格・特徴等によって具体的な個人が特定できているなら自首は成立しません。
どこまでが発覚になる?
最も判断が難しいのは、捜査機関が犯人を特定する以前のグレーゾーンです。
捜査機関が特定の人物を犯人として「疑っている」段階 や、「重要参考人」として捜査線上にリストアップしている段階での申告は、自首となるかということです。
この点について、単なる疑いや、捜査線上に名前が挙がっているというだけでは、直ちに「犯人発覚」とは言えません。
裁判所は、捜査機関が当該人物を「犯人として確実視」するに至ったか否かを、客観的な証拠の収集状況に基づき、実質的に判断する傾向にあります。
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(2)「自発的」に申し出ること
自首が成立するためには、自分の意思で、捜査機関に犯罪を申し出る必要があります。
誰かに連れられて嫌々自首したようなケースでは、自発性が認められず「自首」と評価されないこともあります。
(3)捜査機関に対して申告すること
申告の相手は、警察や検察などの捜査機関に限られます。友人や家族、民間団体に話しただけでは、自首とはなりません。
自首を成立させるには、正式な手続きとして捜査機関に申し出る必要があります。
(4)自身への刑事処分を求めていること
単なる相談や雑談のように「こんなことをしてしまったかも」ではなく、自分が犯罪を犯したという明確な認識のもと、処罰される覚悟で申告する必要があります。
そのため、「冗談だった」「やったとは言っていない」などと否認するような内容では、自首とは認められません。
親告罪における特例
捜査機関への申告が原則である自首において、唯一の重要な例外が刑法42条第2項に規定されています。
同項は、告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪(名誉毀損罪、器物損壊罪等)について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、自首と同様に扱うと定めています。
自首すると刑は軽くなる?
自首で刑が減刑される可能性
自首すれば「必ず刑が軽くなる」わけではありません。しかし、自首が認められると、法律上「減軽される可能性」が出てきます。これを「任意的減軽(にんいてきげんけい)」と呼びます。
刑法42条1項でも「減軽することができる」と定められており、必ずしも義務ではなく、裁判官が事件の内容・反省の度合い・被害の程度などを総合的に判断して決めることになります。
なお、法律上の言葉として、刑が軽くなることは「減軽」といい、「減刑」とは書きません。「減刑」という場合は政令で刑を軽くしてもらうという特別な場合(「恩赦」といいます)を指します。
ただ、一般的な言葉として、刑を軽くすることを減刑と表現することがあるため、この記事では「減刑」も「刑の減軽」という意味で使用します。
自首するとどれくらい減刑される?
自首による減刑は、刑法68条にもとづいて行われます。法定刑の種類によって、どの程度刑が軽減されうるかが決められています。
法定刑の種類ごとの減刑内容
| 元の刑罰 | 減刑後の刑罰 |
|---|---|
| 死刑 | 無期または10年以上の拘禁刑 |
| 無期拘禁刑 | 7年以上の有期拘禁刑 |
| 有期拘禁刑 | 最短期間と最長期間がそれぞれ2分の1 |
| 罰金 | 最低額と最高額がそれぞれ2分の1 |
| 拘留 | 最長期間が2分の1 |
| 科料 | 最高額が2分の1 |
減刑の恩恵は、すべての犯罪で一律ではありません。
法定刑が軽い犯罪や、下限が設定されていない犯罪(例:窃盗罪、10年以下の拘禁刑)の場合、裁判官は自首減軽という特別な規定を用いなくても、一般の情状酌量の範囲内で軽い刑を選択できます。
しかし、殺人罪や強盗罪のように法定刑の下限が高い犯罪では、裁判官が「法定刑の下限(5年)では重すぎる」と感じたとしても、情状酌量だけを理由にする場合、法定刑の下限の半分までしか刑を軽くすることができません。
一方で、自首が認められると、法律上の減刑によって法定刑の下限が半分(例:2年6ヶ月)になった上で裁判官はさらに情状酌量を適用できるようになります。つまり、法定刑の下限の1/4(例:1年3ヶ月)まで減刑ができます。
このように、自首をすることで、裁判官は柔軟な量刑判断を可能にします。その恩恵は法定刑が重い犯罪ほど大きくなります。
ただし自首が成立すれば必ず減刑されるわけではなく、「裁判所の裁量」にゆだねられる点に注意が必要です。
自首が有利に働くケースとは?
自首が有利に働くケース
- 初犯である
- 反省の気持ちが強く、供述に一貫性がある
- 被害者との示談が成立している
- 事件の内容が比較的軽微である(万引き、暴行など)
- 犯行から間もない
- 法定刑の下限が重い犯罪で、執行猶予を付す必要がある場合
こうした事情がある場合、自首は「情状酌量(じょうじょうしゃくりょう)」の材料としても考慮され、執行猶予付き判決や不起訴になる可能性が出てきます。
ただし、重大な事件や常習性がある場合は、自首しても必ず減刑・不起訴になるわけではない点には注意が必要です。
法定刑の下限が重い犯罪の場合
介護疲れによる殺人罪のような、酌むべき事情が大きい事案では、自首が重要な役割を果たします。
日本の刑法では、執行猶予は原則として「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」の判決にしか付与できません。
殺人罪の法定刑の下限は5年です。情状酌量だけでも、刑を2分の1(下限2年6ヶ月)まで減刑できるため、理論上は執行猶予を付すことができます。
しかし、自首が適用されると、まず法定刑の下限が「2年6ヶ月」に引き下げられます。重要なのは、裁判官はその上でさらに情状酌量を適用できる点です。
これにより、刑の下限は4分の1である「1年3ヶ月」まで引き下げられます。
その結果、裁判官は「1年3ヶ月〜」という、より柔軟な範囲内で量刑判断が可能となり、情状酌量だけの場合よりも相対的に執行猶予付き判決を選択しやすくなります。
仮に執行猶予がつなかったとしても、刑期が4分の1になるため、自身に有利な判決になると言えます。
これは、強盗罪や不同意性交等罪など、法定刑の下限が3年を超える多くの重大犯罪において、実刑を回避し得る法的手段であることを意味します。
自首に減刑を認める理由
刑法が自首に任意的減軽を認める理由は、主に以下の二点です。
刑事政策的理由(捜査の効率化)
犯人が自ら名乗り出ることで、犯人や犯罪事実の特定、証拠収集が容易になり、捜査の効率化と事件の迅速な解決につながります。
また、無実の人が誤って処罰されるのを防ぎ、実行前の自首であれば犯罪自体を未然に防止する(社会防衛)という大きな利益もあります。
犯情・倫理的理由(改悛の情)
自ら罪を認め、処罰を受けようとする行為は、犯人の深い反省(改悛の情)の表れと評価されます。この反省の態度は、犯人に対する法的な非難の程度を和らげる情状として考慮されます。
裁判官はこれら二つの理由を考慮し、減刑するかどうかを裁量で決定します。そのため、たとえ自首が成立しても、反省の情が薄いと判断されれば、減軽されないこともあります。
自首したら逮捕される?逮捕後はどうなる?
「警察に行ったら、逮捕されてしまうのでは…?」と不安を感じる方もいると思います。
結論から言うと、 自首した場合でも必ずしも逮捕されるとは限りません。警察や検察は、逮捕せずに「在宅事件」を選択することもあります。
逮捕されるかどうかの判断基準は?

被疑者を逮捕するには、罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があり、かつ被疑者が逃亡したり証拠隠滅したりするおそれがあることが求められます。
万引きや軽微な傷害など、比較的軽い事件で、身元もはっきりしており家庭や職場がある場合は、逮捕されず自宅での生活を続けながら捜査を受ける「在宅事件」になることもあります。
もちろん、事件の内容や証拠の状態によっては、その場で逮捕されることもあり得ます。
だからこそ、自首前に弁護士に相談して、状況を整理し、最善の対応方法を一緒に考えることが重要です。
自首で逮捕後はどうなる?

逮捕された場合、起訴されるまで最大で23日にわたり身体拘束が継続する可能性があります。
逮捕後、48時間以内に警察は事件を検察官に送り、以降は警察と検察が共同で捜査を行います。
事件を送られた検察官は身体拘束を続けるべきかどうかを判断し、続けるべきだと判断すれば24時間以内に勾留請求を行います。
そして、勾留請求を受けた裁判官が勾留を認めれば、最大20日にわたり警察署内の留置場で身体拘束が継続されてしまうのです。
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自首する方法は?
「自首しようと思ったけど、何から始めればいいの?」こう考える方も多いのではないでしょうか。
自首の方法としては主に2通りあります。
主な自首の方法
- 自分で警察に電話し、自首の意思を伝えて日時を調整し出頭
- 弁護士を通じて警察と事前に連絡を取り、出頭(弁護士が同行)
どちらの方法でも、事前に警察と連絡を取ることでスムーズに対応してもらえる可能性が高まります。弁護士の同行があると、手続きや取り調べへの不安も軽減されます。
(1)自分で警察に電話し、自首の意思を伝えて日時を調整し出頭
まず、最寄りの警察署に電話をかけて「自首したい」という意思を伝えます。その際に、出頭する日時を警察と相談して決め、指定された日時に警察署へ行きます。
事前に連絡を入れることで、警察も受け入れ体制を整えることができ、混乱を避けることができます。
(2)弁護士を通じて警察と事前に連絡を取り、出頭(弁護士が同行)
弁護士に依頼し、弁護士が警察と事前に連絡を取って自首の段取りを整えます。出頭日時や手続きの調整を弁護士が行い、当日は弁護士が同行して警察署へ行きます。
法律の専門家がサポートすることで、取調べや手続きへの不安が軽減され、より安心して自首することができます。
自首に弁護士が同行するメリット
| 本人のみ | 弁護士が同行 | |
|---|---|---|
| 逮捕の可能性 | あり | 低くなる |
| 自首内容 | 曖昧になるおそれ | 正しく伝達可能 |
弁護士による自首同行にはメリットが多数あります。弁護士事務所に相談するか否かお悩みの方は、以下の関連記事をお読みください。
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自首前に弁護士に相談すべき4つの理由
(1)自首に同行してくれる
警察署に初めて行くのは不安が大きいものです。弁護士が同行すれば、警察とのやりとりも円滑に進み、自首の意思を正確に伝えるサポートをしてくれます。
精神的な負担も軽減され、安心して手続きができます。
アトムの解決事例(盗撮事件:自首後に不起訴処分獲得)
飲食店内のトイレにおいて、コンセント型カメラを設置し盗撮をしたとされたケース。店員がカメラを発見し警察に届け出た。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
依頼者と共に自首に同行。被害店舗の店長と示談を締結し贖罪寄付も行った結果、不起訴処分となった。
(2)取り調べへのアドバイスを受けられる
自首後の取調べでは、言葉の使い方次第で誤解を招く可能性があります。
弁護士から事前にアドバイスを受けることで、反省の気持ちや事実を正しく伝え、誤った供述を防ぐことができます。
(3)逮捕の回避や早期の釈放に向けて動いてくれる
自首の際に、弁護士から逃亡や証拠隠滅のおそれがない意見書を提出してもらうなどして、逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
また、万が一逮捕された場合でも、勾留請求の却下申し立てなど早期の釈放や不当な拘束に対する対応を任せることができます。
アトムの解決事例(バイクのひき逃げ事件:自首で逮捕回避)
バイクを追い抜こうとした際の接触事故。事故当時、接触に気づかずに走り去ったが、車に傷があったことから事故を起こしたことを知った。刑事事件化前に受任。
弁護活動の成果
自首に同行し、逮捕回避の意見書を提出した結果、逮捕されなかった。また、情状弁護を尽くした結果、不起訴処分となった。
(4)被害者との示談交渉をサポート
被害者がいる場合、示談の成立は不起訴や執行猶予の判断に大きく影響します。
弁護士が間に入ることで、適切な謝罪や示談交渉がスムーズに進み、加害者・被害者双方にとって納得のいく結果が得られやすくなります。
アトムの解決事例(わいせつ事件:自首後に不送致処分)
男子大学生が、女子大生の家で宅飲みをしていたところ、女子大生の乳房や陰部を触った事案。女子大生から被害届を出したと言われ、今後の対応についてご相談にいらした。
弁護活動の成果
弁護士が自首同行のうえ、逮捕や報道を回避されたい旨の意見書を提出。結果、逮捕や報道を回避することができた。
自首をしたほか、少年事件でもあったためか、警察が、被害者との取次に協力的で、比較的スムーズに示談交渉を開始できた。
被害者の方に謝罪と賠償を尽くし、示談が成立。結果、不送致で事件終結となった。
自首に関するよくある質問
自首した後の流れはどうなる?

自首が受理されると、警察(または検察)は、被疑者を取り調べた上、自首調書を作成します(刑事訴訟法245条・241条2項、犯罪捜査規範64条1項)。
自首調書には、自首した本人の身上、自首した事件の概要、自首した理由などが書かれます。
自首すれば、必ず減刑されるの?
必ず減軽されるわけではありません。自首が成立しても「任意的減軽」なので、裁判官や検察官の判断で決まります。ただ、自首は情状として有利に働く可能性が高いです。
家族が自首を代わりにしても成立しますか?
本人以外が申し出ても「自首」とは認められません。ただし、警察に情報提供することで、捜査の過程で有利になる場合もあります。
未成年でも自首できますか?
未成年でも自首可能です。少年事件として処理されますが、自首によって反省の意思が示されることで、処分が軽くなる可能性があります。
犯罪をしてから時間が経っていますが、それでも自首はできる?
自首自体は可能です。ただし、「捜査機関に発覚する前」かつ「自発的」である必要があるため、減刑対象となるかはケースによります。弁護士に相談するのが確実です。
後悔しない自首をしたい方は弁護士に相談
自首は、罪を償おうという強い意志の表れであり、とても勇気のいる決断です。
法律上の「自首」と認められるための条件には厳格なルールがあり、その効果や手続きについて正しく理解して行動することが必要です。自首には慎重な判断が求められるため、後悔しない自首をしたい方は、刑事事件に強い弁護士に相談してください。
アトムの弁護士の評判・依頼者の声
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