
自首すると刑は減軽されるのでしょうか。自首をすれば、逮捕回避の可能性を高めることはできるのでしょうか。この記事では、自首が成立する要件やその具体的な方法について解説しました。また、一人で警察に自首するときと、弁護士に同行してもらうときでは、何が違うかについても解説しています。
自首を検討している方には、ぜひこの記事を参考にしていただきたいと思います。自首のメリット・デメリットを知った上で、どのタイミングで警察に出頭すべきか、今後の行動を決める参考資料としてください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
自首で減刑を望む方へ|自首の要件と注意点
自首すると減刑される?
自首は、刑法42条に定められています。42条1項には、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と書かれていますが、「減軽することができる」という表現に注意が必要です。
自首をすると必ず刑が軽くなるというわけではなく、「軽くなる可能性がある(軽くならない場合もある)」ということになります。
また、法律上の言葉として、刑が軽くなることは「減軽」といい、「減刑」とは書きません。「減刑」という場合は政令で刑を軽くしてもらうという特別な場合(「恩赦」といいます)を指します。ただ、一般的な言葉として、刑を軽くすることを減刑と表現することがあるため、この記事では「減刑」も「刑の減軽」という意味で使用することにします。
自首の4つの要件とは?
自首をするには、4つの要件が必要だといわれています。
- 要件① 自分で自発的に自分の犯罪事実を申告すること
- 要件② 自分の刑事処分を求めること
- 要件③ 捜査機関に対して申告すること
- 要件④ 事件の犯人と発覚する前に申告すること
①については、たとえば、自分で出頭するのが怖いからといって、誰かに依頼して警察まで申告に行ってもらったとしても自首は成立しません。
また、自分で申告に行ったものの、嘘の内容であったり犯罪を否認するような内容は自首とは認められません。自首する場合には、自分が犯罪を犯したこと、その内容をできる限り正確に話すということが大切です。

自首は警察署に出頭する時期が大切
要件④も、とても重要なことです。自首は、捜査機関がまだ事件の犯人のことを把握していないというタイミングで捜査機関(通常は警察署)に出頭することが必要です。すでに捜査機関が事件の犯人がわかっている状況では、自分で警察に出頭しても自首としては扱われません。
また、警察から任意の出頭要請があり、それに応じたような場合でも、それは自首にはあたりません。自首が成立しなければ、刑法42条1項が適用されず、刑の減軽対象とはならないのです。
自首による減刑以外のメリット

自首は逮捕回避の可能性を高める
自首すると逮捕されることはなくなるのでしょうか。答えは「ノー」です。しかし、実際には、自分で自分の罪を認め警察に申告したという事実は、証拠隠滅の可能性を下げ、逃亡の恐れも否定する事情となります。そのため、逮捕の必要がないとして在宅事件として捜査される可能性を高めることはできるでしょう。
犯罪の内容にもよりますが、窃盗、暴行、痴漢、盗撮などの犯罪で自首により逮捕が回避できるケースも多いです。先に捜査機関が情報を得る前に、自首することで逮捕回避を目指すということも重要な選択です。逮捕されると完全に身動きがとれなくなるため、生活上さまざまな支障が生じます。できる限り逮捕は回避すべきといえます。
自首は示談の可能性を高める
弁護士が被害者と示談交渉する際、通常は警察に「示談交渉したい」旨の連絡をし、被害者に取り次いでもらいます。
自首が成立している場合は、自首の事実が警察を経由して被害者に伝わることになるでしょう。
自首の事実が伝わることにより、被害者に反省の意が伝わり、結果として示談に応じてもらいやすくなります。
自首は報道リスクを少なくする
刑事事件は逮捕された際に報道されることが多いです。
インターネットにより逮捕報道が拡散してしまえば、そのすべてを削除することは容易ではありません。
自首により逮捕回避ができたなら、報道されるリスクを少なくすることができます。
関連記事
・刑事事件が報道される基準やリスク、実名報道を避ける方法を解説!
自首した後の流れ
自首後は取り調べがなされる
自首が受理されると、警察(または検察)は、被疑者を取り調べた上、自首調書を作成します(刑事訴訟法245条・241条2項、犯罪捜査規範64条1項)。
自首調書には、自首した本人の身上、自首した事件の概要、自首した理由などが書かれます。
自首後に逮捕される場合もある
たとえ自首した場合であっても、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれがあると、逮捕される可能性が否定できません。
そこで、自首の際にはできる限り事件に関する証拠を持参すべきです。
事件に関する証拠を持参することで、逮捕や家宅捜索を防げる可能性があがります。
自首後に逮捕されなければ在宅事件になる
自首が受理され事件として立件されることになった場合、在宅事件になることが多いです。
在宅事件では、警察や検察から呼び出しがあった場合に、警察署や検察庁に出向き、取り調べを受けることになるでしょう。
在宅事件だと身体拘束がないため、呼び出しがあった場合以外は、これまで通り日常生活を送ることができます。
関連記事
減刑されるための自首の方法とは?
自首で減刑されるためには、犯罪の発覚前もしくは犯人不明の段階で、捜査機関に対して自発的に犯罪を申告する必要があります。警察署へ出頭する際には、弁護士に同行してもらうことも可能です。
警察官に正しく情報を伝え、逮捕回避や減刑の可能性を高くするためにも、弁護士と同行して自首する方法がおすすめです。
自首の方法①自分一人で警察署に出頭する場合
まず、最寄りの警察署に出頭し、受付で自首しに来たことを告げましょう。すると、犯罪内容によって担当の課の刑事が事情を聞いてくれます。痴漢や盗撮の場合は「生活安全課」、薬物事件の場合は「銃器薬物対策課」、詐欺の場合は「刑事課知能犯係」、窃盗罪では「刑事課盗犯係」など、犯罪により担当部署がわかれています。
自首した際に、話が合理的でなかったり、証拠がなく話に裏付けがない場合には自首と認められず帰されてしまうことも否定できません。実際に警察署に出向くと緊張してうまく話せないという方も多いです。自首を決めた場合には、事前に何を伝えるか、メモをつくるなどして話を整理しておくとよいでしょう。
自首の方法②弁護士に同行してもらう場合
自首は自分一人で行くこともできますが、弁護士に同行を求めることもできます。弁護士をつけると、反対に印象が悪くなるのではないかと考える方もいますが、それは誤りです。弁護士が同行することで、警察が必要とする情報を正しく伝えることができ、法律上の問題点も整理して示すことができます。曖昧な自首の仕方をするのではなく、自分がしっかり犯罪事実に向き合っていることを示すために、弁護士の同行は大きな意味があるのです。
また、自首とともに被害者対応も誠実に行うことを示す意味で、弁護士の存在を捜査機関に伝えることが可能です。犯人自身が被害者と接触することはない、証拠隠滅のおそれもないということを、弁護士の存在からアピールすることができます。そして、弁護士をつけて自首をするという事実から、逃亡のおそれを否定することができ、逮捕回避の可能性をあげることにもつながります。
自首に弁護士が同行するメリット
本人のみ | 弁護士が同行 | |
---|---|---|
逮捕の可能性 | あり | 低くなる |
自首内容 | 曖昧になる恐れ | 正しく伝達可能 |
自首すべきか迷ったら弁護士にすぐ相談を
自首すべきが迷った場合には、すぐに弁護士までご相談ください。自首は逮捕回避や刑の減軽という点で重要な意味をもちます。しかし、自首はタイミングを間違えれば成立しなくなるのです。犯罪事実及び犯人が発覚して自首が成立しなくなれば、逮捕される可能性もでてきます。少しでも自首を迷った場合には、まず弁護士に相談し、自首に同行してもらえるかも確認することをおすすめします。