捜査機関が家や職場に訪ねてきて、証拠品を探し出して押収することを「家宅捜査(家宅捜索)」や「ガサ入れ」などと言います。家宅捜査は予告なく行われますので、突然のことで驚かれる方が多いでしょう。
この記事では、家宅捜査の流れや条件を知りたい方に向けて、以下について詳しく説明します。
- 家宅捜査とは
- 家宅捜査の条件
- 家宅捜査の流れ
- 家宅捜査を受けたらどう対応すればいいのか
- 家宅捜査を受けたらどうなるのか
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
家宅捜査とは
家宅捜査とは何か?
家宅捜査とは、捜査機関(警察や検察)が裁判官の発付する捜査令状に基づいて犯罪の被疑者の自宅や職場などを捜索し、証拠物を押収する手続きのことを言います。家宅捜査は、刑事事件の捜査において重要な証拠の収集手段の一つです。
「家宅捜査(家宅捜索)」とは俗的な言い方で、法律上は「捜索」と言われます。ですが、この記事では馴染みのある家宅捜査という言葉を使用していきます。
どういうときに家宅捜査される?
家宅捜査を受ける可能性が高いのは、以下のような場合です。
- 犯罪の被疑者として捜査されている場合
- 犯罪の証拠が自宅や職場に存在すると捜査機関が判断した場合
- 捜査機関が捜査に必要な情報を自宅や職場から収集できると判断した場合
盗撮などの性犯罪、薬物犯罪、窃盗罪などの捜査においては、家宅捜査が行われることが多くあります。
家宅捜査を行うための条件
家宅捜査は被疑者のプライバシーを侵害する行為ですので、無制限に行うことはできません。裁判所が捜査の必要性を認めて捜査令状を発付した場合にのみ、捜査機関は家宅捜査を行うことができます。
捜査令状には以下のような項目の記載が必要です。
- 被疑者若しくは被告人の氏名
- 罪名
- 差し押さえる物
- 記録・印刷する電磁的記録
- 捜索すべき場所、身体、物
刑事訴訟法
第218条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
第219条 前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、記録させ若しくは印刷させるべき電磁的記録及びこれを記録させ若しくは印刷させるべき者、捜索すべき場所、身体若しくは物、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証に着手することができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
例外として、被疑者の逮捕と同時であれば令状なしで家宅捜査をすることができます。
家宅捜査の流れ
捜査機関が実際に家宅捜査を行う際の流れは、以下の通りです。
- 裁判所から捜査令状を取得
- 捜索対象者に対して捜索令状を提示し、内容を読み上げる
- 捜索対象者の自宅や職場を捜索する
- 捜索によって発見された証拠品を押収し、保管する
もし家宅捜査を受けたら
家宅捜査は拒否できる?
家宅捜査は強制処分であり、拒否できません。捜索対象者は、警察の捜査に協力する義務があります。家宅捜査に抵抗した場合、公務執行妨害罪が成立してしまう可能性があるため、適法な捜査であるならば抵抗すべきではありません。
家宅捜査に立ち会うべき?
家宅捜査時に本人が不在の場合は、本人が立ち会わずに捜索することも可能で、その場合は家族や同居人、隣人などが立ち会う必要があります。しかし、弁護士としては、ご本人が立ち会うことを強くお勧めします。
捜査機関は捜査令状に基づいて捜索を行う必要がありますが、捜査令状自体がない場合や、捜査令状が違法である場合、捜査方法が不当である場合は、立ち会って令状などの確認をすることで捜査機関の違法な行為を抑止することができるというメリットがあります。ですので、家宅捜査に立ち会う際は令状の有無や記載内容を確認すべきでしょう。
弁護士は、一定の要件を満たせば「弁護人」または「代理人」として家宅捜査に立ち会うことが可能です。
家宅捜査を受けた後どうなるのか
家宅捜査を受けたら逮捕される?
刑事事件の被疑者を逮捕するためには、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」と「逃亡または罪証隠滅のおそれ」がなければいけません。
裁判官から捜査令状が発行されている時点で「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」はある程度濃くなっているはずではありますが、家宅捜査を行った結果上記の条件を満たさなかった場合は、逮捕されないこともあります。
家宅捜査で押収された物件はどうなる?
家宅捜査で押収された物件は、捜査機関が証拠として使用するために留置しますが、留置の必要がなくなれば事件の終結を待たずに還付(返還)されます。また、請求により仮の還付を受けることも可能です。ただし、捜査機関が還付に応じない場合も多くあります。押収される物の中には携帯電話やキャッシュカードなど、日常生活に支障が出てしまうものもあります。還付されず困っている場合は、裁判所に対して準抗告を申し立てることが可能です。
なお、犯罪行為に使用された凶器や、違法薬物などの没収刑の対象となる物品が押収された場合は、没収されてしまい戻ってくることはありません。
家宅捜査を受けたら必ず起訴される?
家宅捜査を受けても、起訴されない可能性はあります。
捜査自体が違法であれば、その捜査で収集された物件は証拠として使うことができません。また、適法に捜査が行われた場合も、押収した証拠品やその後の取調べで犯罪を立証できる証拠が集まらなかった場合は、不起訴になる可能性が高いです。
家宅捜査を受けたら弁護士を立てるべき?
家宅捜査を受けた場合、弁護士を立てると以下のようなメリットがあります。
弁護士から警察に対して、犯行事実がないことや、逮捕の条件を満たしていないことなどを主張していき、逮捕・起訴の回避や一刻も早い釈放を目指すことができます。
また、取り調べにおいて自身に不利な供述をしてしまわないかなどについても、弁護士から適切なアドバイスが得られるでしょう。
もしも逮捕されてしまった場合、逮捕からおよそ三日間は、家族でも面会が許されておらず、面会できるのは弁護士だけです。その間にも取り調べは進んでいきますので、少しでも早く弁護士に相談されることをおすすめします。