
執行猶予中にもかかわらず犯罪を起こしてしまったり、過去の余罪が発覚したり、交通違反や人身事故を起こした場合、「執行猶予が取り消されるのでは……」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「執行猶予中の犯罪・余罪」がどのような影響を及ぼすのか、具体例とともにわかりやすく解説します。
万が一に備えた対策や、刑事処分をできるだけ軽くするためのポイントもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
執行猶予中の犯罪|再犯するとどうなる?
そもそも執行猶予とは
執行猶予とは、刑事裁判で有罪判決を受けた際、刑の執行を1年から5年の間猶予し、その期間を無事に過ごせれば、刑の執行が免除される制度です(刑法25条)。
しかし、執行猶予中に新たな犯罪を犯したり、以前の未発覚の犯罪(余罪)が表面化したりすると、執行猶予が取り消され、もともとの刑を受けなければならなくなる可能性があります。
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執行猶予中の再犯・余罪発覚・交通違反で起こりうるリスクとは?
執行猶予中に犯罪や違反行為をしてしまった場合、以下のようなリスクが考えられます。
リスク | 内容 |
---|---|
執行猶予取り消し | 執行猶予が取り消され、もともとの懲役刑や禁錮刑がそのまま執行される |
新たな実刑判決 | 新たに犯した犯罪について別の実刑判決を受ける可能性がある |
追起訴・刑の重複 | 余罪により、再度起訴され、刑期が延びることがある |
とくに、新たな犯罪だけではなく、過去の未発覚の犯罪(余罪)が執行猶予中に発覚するケースでも、執行猶予取り消しの対象となり得ます。
執行猶予が取り消されたらどうなる?
執行猶予が取り消されると、基本的にはもともとの懲役刑や禁錮刑が執行されます。さらに、その後に新たな犯罪を犯している場合は、その新しい罪に対する刑も上乗せされるため、刑期が長くなることもあるのです。
【具体例】執行猶予取り消しで懲役が合算されるケース
判決内容 | 刑の内容 |
---|---|
最初の判決 | 懲役1年6か月・執行猶予3年 |
次の判決 | 懲役2年(執行猶予中の新たな犯罪) |
結果 | 執行猶予取り消し → 懲役3年6か月(合算) |
このように、執行猶予中に別の罪を犯して有罪判決を受けると、元の1年6か月の懲役に加えて、新たな2年分の懲役刑も加算されます。したがって、合計3年6か月の実刑となり、刑務所で過ごすことになります。
執行猶予中に発生しやすいトラブルとリスクは?
執行猶予中の犯罪・再犯例
たとえば、以下のような犯罪は一般的に再犯のリスクが高いとされています。
- 窃盗
- 盗撮
- 暴行・傷害
- 薬物(大麻・覚せい剤など)
これらの犯罪を執行猶予中に起こした場合、ほとんどのケースで執行猶予が取り消される可能性が高いです。
執行猶予中の余罪発覚
たとえば、執行猶予判決を受ける前に犯していた別の犯罪が、執行猶予中に発覚した場合も問題になります。
この場合も、刑法26条に基づき、執行猶予が取り消されるリスクがあります。
たとえば、以下のようなケースが挙げられます。
- 判決前に行っていた別の詐欺行為が発覚
- 以前起こしていた傷害事件で新たに被害届が出される など
執行猶予中の交通違反・人身事故
執行猶予中の交通違反・人身事故が問題となるケースもあります。ただし、執行猶予中に交通違反や人身事故を起こしたからといって、必ずしも執行猶予が取り消されるわけではありません。
一般的にはスピード違反や信号無視といった軽微な交通違反では、執行猶予が取り消される可能性は低いです。一方、事故や違反の内容が重大なものであれば、執行猶予の取り消しにつながるリスクが高まります。
交通違反の中でも特に注意が必要なケース
- 酒気帯び運転、酒酔い運転
- 無免許運転
- ひき逃げ
- 重大な過失運転致傷・致死(人身事故)
こうした場合は、軽微な交通違反とは異なり、執行猶予取り消しの対象になりやすいです。
交通違反・人身事故と執行猶予の関係
軽微な違反 | 重い違反 | |
---|---|---|
違反の例 | 信号無視・一時停止無視 | 酒気帯び・無免許運転 |
基本的な扱い | 原則として執行猶予取り消しの可能性は低い | 刑事事件化すれば執行猶予取り消しの可能性あり |
※あくまで判断材料の一部です。実際の事情により異なります。
執行猶予中に再犯・余罪発覚した場合の流れ
ここでは、執行猶予中に再犯・余罪発覚した場合にどのような手続きが進むのか、流れをわかりやすく解説します。
(1)新たな犯罪または余罪の発覚
執行猶予中に新たな犯罪を犯した場合や、過去に関与していた別の犯罪(余罪)が発覚した場合、その事実は重く受け止められます。
事件が明るみに出るきっかけとしては、被害者からの被害届や目撃者による通報、警察による別件捜査の過程などが挙げられます。
執行猶予中とは、一定期間にわたり誠実に生活態度を改めることを条件に、刑の執行が猶予されている状態です。その期間中の犯罪行為は、裁判所から与えられた猶予の信頼を裏切る行為と評価され、厳しい対応がとられる可能性があります。
(2)逮捕・取り調べ
新たな犯罪や余罪が判明した場合、警察によって逮捕される可能性があります。逮捕後は警察署に連行され、犯行の内容や動機などについての取り調べ(事情聴取)が行われます。
逮捕されない場合でも、警察から呼び出しを受け、警察署で取り調べを受けることになるでしょう。

取り調べでは、自分に不利なことを無理に認めさせられてしまうケースもあるため、早めに弁護士に相談することが非常に重要です。
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・警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ
(3)検察による起訴の判断
警察から事件が検察に送致され、検察が「起訴するかどうか」を判断します。
事件が起訴されると、裁判所で正式な刑事裁判が行われ、量刑(懲役・罰金など)が決定される流れとなります。執行猶予中であれば、この判断が執行猶予の取り消しに大きく関わってきます。
とくに注意すべきなのは、「執行猶予中の再犯」であることが、検察の起訴判断において不利に働く点です。そのため、取り調べの段階から一貫した方針での対応や、弁護士による早期の介入が非常に重要となります。

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(4)裁判所による執行猶予の取り消し審理
起訴された場合、裁判所では新たな事件に関する裁判が行われるだけでなく、裁判所は元の執行猶予付き判決について「執行猶予を取り消すかどうか」を審理します。
この審理では、以下のような点が重視されます。
- 新たな犯罪の内容・悪質性
- 被害者との示談の有無
- 反省の態度や更生の可能性
- 再犯防止への取り組み(通院、支援団体の利用など)
裁判で情状酌量を得るためには、被害者との示談、反省の態度や再犯防止への取り組みを示すことが重要です。
(5)原判決の刑が執行される(収監)
執行猶予の取り消しが決定されると、これまで猶予されていた懲役刑や禁錮刑などがそのまま執行されることになります。これを「原判決の刑の執行」といい、通常は刑務所に収容されることになります。
たとえば、前回の判決で「懲役2年、執行猶予3年」とされていた場合、執行猶予が取り消されれば、その「懲役2年」が実際に執行され、収監されることになります。
なお、新たに犯した罪についても有罪となれば、その刑と元の刑が合算されたり、それぞれの刑をどのように執行するか(併合刑といいます)については、裁判所が最終的に判断します。
執行猶予中に問題を起こした場合の対処法
執行猶予中に再犯や交通事故などを起こした場合、以下のような行動が重要になります。
できるだけ早く弁護士に相談する
まず最優先で行うべきなのが「弁護士への相談」です。
執行猶予が取り消されるリスクがある場面では、法律の専門知識が不可欠であり、自己判断で対応してしまうと状況を悪化させるおそれがあります。
「執行猶予が取り消されるかどうか」「新たに起こした事件の影響がどの程度か」といった重要な判断は、弁護士のアドバイスなしには非常に難しいのが現実です。
早い段階で弁護士に相談することで、今後の流れや取るべき行動が明確になります。結果として執行猶予取り消しの回避や刑事処分が軽減される可能性が高まります。
示談交渉で不起訴獲得を目指す
執行猶予中に犯罪を犯しても、その犯罪が不起訴となれば、執行猶予が取り消される可能性は低いです。
起訴猶予中に事件が発覚して取り調べを受けていたり、逮捕されたりしても、すみやかに弁護士が入って弁護活動を行えば、不起訴を獲得できる可能性が高まります。
執行猶予中に起こした事故や事件に被害者がいる場合は、示談を成立させることが有効です。
示談とは、加害者と被害者が話し合いをして、損害賠償や謝罪の方法について合意することを指します。

示談が成立すると、被害者側の処罰感情が和らぐことが多く、以下のような効果が期待できます。
- 検察官の起訴判断に有利に働く
- 「情状酌量(=同情できる事情)」として刑が軽くなる可能性がある
特に執行猶予中の場合、新たな事件で起訴されるかどうかは、示談の有無によって左右されることがあります。
示談は弁護士への依頼が必須
示談は弁護士への依頼が事実上必須です。被害者は加害者との直接のやり取りを嫌がります。また、捜査機関も証拠の隠滅などを防ぐために、被害者に加害者と直接やり取りしないようにアドバイスしていることが多いです。
そのため、被害者がいる場合は、できるだけ早く弁護士を通じて示談交渉を始めることがとても重要です。
被害者がいない薬物事件のような犯罪でも、弁護士を通じて警察や検察に対して有利な事情を主張することが大切です。
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再犯防止に向けた具体的な取り組み・反省の姿勢を示す
執行猶予中に問題を起こした際、「もう二度と繰り返しません」と口で言うだけでは、裁判所にあなたの更生の意思はなかなか伝わりません。
再犯のリスクが低い、つまり今後同じ過ちを繰り返さない見込みがあることを示すうえで重要なのは、実際の行動です。どのように生活を立て直そうとしているか、どんな改善に取り組んでいるかを、具体的な証拠とともに示すことが求められます。
以下のような取り組みは、再犯防止策として評価されやすいです。
- アルコールや薬物依存が原因の場合:専門機関への通院・リハビリ
- 精神的・環境的な問題があった場合:カウンセリングに通う
また、反省の意思を示すためには、自筆の反省文の提出が効果的です。なぜ反省しているのか、今後の対策などを書くといいでしょう。
こうした再犯防止に向けた取り組みを文書や証明書の形で提出することで、裁判所に対して「反省しており、社会復帰に向けて真剣に取り組んでいる」という姿勢が伝わります。
まとめ|執行猶予中の再犯・余罪発覚は非常にリスクが高い!
執行猶予中に再犯してしまったり、余罪が発覚したりすると、執行猶予が取り消され、もともとの刑が執行される可能性が高まります。
再度の執行猶予、いわゆる「ダブル執行猶予」が認められることもありますが、そのハードルは非常に高いです。一般的には、再犯が軽微である場合や、反省の姿勢が強く示されている場合などに限られます。
再度の執行猶予の条件
- 前の刑について執行猶予期間中の者で、保護観察に付せられていない者
- 今回、言い渡される刑が「1年以下の懲役又は禁錮」である
- 情状に特に酌量することがある
執行猶予中の再犯・余罪のお悩みは、できる限り早期に刑事事件に強い弁護士へ相談し、示談交渉や情状弁護の準備を進めることが重要です。
刑事事件に強いアトム法律事務所では、再度の執行猶予付き判決を獲得できた複数の実績もあります。
アトムの解決事例(1)薬物事件で再度の執行猶予獲得
自宅で大麻数グラムを所持しているところを検挙され、捜査中にさらに大麻十数グラムも見つかった大麻取締法違反の事案。なお依頼者は大麻取締法違反の容疑で執行猶予中の身だった。
弁護活動の成果
大麻約1.7gの所持については不起訴処分を獲得。大麻約13.63gの所持については、情状弁護を尽くし、執行猶予付き判決を獲得した。
アトムの解決事例(2)窃盗事件で再度の執行猶予獲得
スーパーで万引きをし、窃盗として立件された。なお、過去にも窃盗の前歴が複数あり。
弁護活動の成果
被害店舗と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。裁判の場で情状弁護を尽くした結果、執行猶予付き判決となった。
弁護士の口コミ・アトムを選んだお客様の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のお客様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
厳しい状況の中、先生のおかげで再度の執行猶予を得られました。

太田先生には、又お世話になりました。息子の執行猶予中の再犯で、再の執行猶予を望むのは、かなり厳しい案件でしたが、先生の並々ならぬ尽力により、得ることができました。 ありがとうございました。 判決の日先生からの電話に、喜んでくれている先生の気持ちが伝わってきました。 息子は病院に毎日通院しております。 この先どれくらいの道程になるかわかりませんが、家族で見守り支え進んでいきたいと思います。 ありがとうございました。
休日や深夜も弁護活動をして頂き、精神的に乗り越えることができました。

この度は私の弁護を請け負って頂き本当に有難う御座います。本当に情けない事件を引き起こしてしまい、刑事さんからは指示があるまで被害者の方に謝罪などを勝手にしないようにと言われておりましたが、検察官から社会的責任は必らず負ってもらうと厳しく申しつけられて恐怖を感じ、アトム法律事務所さんに弁護を求めて駆け込んだ感じです。裁判も含めてもちろん初めての体験で日々恐怖の連続でしたが、貞先生には休日や深夜までも弁護活動に奔走して頂き、恐怖からくる私の質問に対しても励ましを込めて応対して頂いたおかげで何とか精神的に乗り越えることが出来ました。心より御礼申し上げます。
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