2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
執行猶予期間中に再び罪を犯してしまったとき、ご本人もご家族も「もう刑務所に行くしかないのか…」と考えている方も多いかもしれません。
結論からいうと、再度の執行猶予を獲得するのは法律として非常にハードルが高いです。
しかし、2025年(令和7年)6月に施行された刑法改正によって、この再度の執行猶予の要件が一部緩和されました。以前までであれば、諦めるしかなかったケースでも、最新の法律のもとでは再度の執行猶予を獲得できる可能性も出てきています。
「自分(家族)の場合はどうなる?」「今からできることはあるの?」と不安を抱えている方に向けて再度の執行猶予が認められる条件や、獲得するためのポイントを解説します。
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目次
再度の執行猶予とは?
再度の執行猶予とは、「執行猶予の期間中に、別の事件を起こしてしまった人が、再度の裁判においても執行猶予を獲得する」ことをいいます。
本来、執行猶予は社会の中で反省し、二度と罪を犯さないことを約束して与えられるものです。
そのため、その期間に再び罪を犯してしまうと、裁判所や検察からはせっかくの更生のチャンスを裏切ったとして厳しくみられるのが一般的です。
再度の執行猶予が認められなかった場合、前回の執行猶予が取り消され、前回の罪(例えば2年)と今回の罪(例えば1年)の両方を合わせた期間(合計3年)、刑務所で過ごさなくてはいけません。
これを避けるための唯一の方法が再度の執行猶予になります。
再度の執行猶予の要件
再度の執行猶予を獲得するためには、法律で定められた厳しいハードルをクリアする必要があります。
ただし、2025年6月の法改正によって、以前よりもこのハードルが少し下がりチャンスが広がりました。
法改正前後の再度の執行猶予の要件
| 要件項目 | 改正前(~25年5月) | 改正後(現在) |
|---|---|---|
| (1)対象者 | 執行猶予期間中である人 | (変更なし) |
| (2)今回の刑期 | 1年以下の懲役・禁錮 | 2年以下の拘禁刑 |
| (3)特別な事情 | 情状に「特に」酌量すべきものがある | (変更なし) |
| (4)保護観察の有無 | 前回の猶予に保護観察がついていると不可 | 保護観察中でも認められる可能性がある |
裁判官が再度の執行猶予を与えようと判断するためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。
(1)前回の刑の執行猶予中であること
再度の執行猶予は、文字通り執行猶予を重ねる制度です。そのため、前回の執行猶予期間が続いていることが前提になります。
前回の執行猶予期間が終わっている場合には、今回の裁判においても通常の3年以下の条件をもとに執行猶予が認められる可能性があります。
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(2)今回の刑期が2年以下の拘禁刑であること
法改正前は、1年以下という非常に短い刑期でなければ再度の執行猶予の対象になりませんでした。
ただ、実際の裁判では、再犯であることを加味して刑期が1年以上となるケースが多くあり、この時点で再度の執行猶予の権利を失うケースが多くありました。
今回の法改正で2年に広がったことで、再度の執行猶予を目指せる可能性が高くなったといえるでしょう。
(3)情状に「特に」酌量すべきものがあること
この要件が最も重要で、ただ反省していることを主張するだけでは不十分です。
裁判官に、刑務所ではなく社会で更生させるべき特別な理由があると納得させなければなりません。
保護観察中でも認められる可能性がある
法改正前は、前回の執行猶予に保護観察がついていると、その期間中に再犯を起こすと再度の執行猶予は絶対に認められませんでした。
しかし、今回の法改正では、保護観察がついている最中の再犯であっても、裁判官の判断次第で、再度の執行猶予が認められるようになりました。
ただし、認められるためのハードルは依然として高いままです。保護観察を受けていたのにもかかわらず再犯をしてしまった事実は、裁判においてマイナスとなります。以前にも増して説得力のある更生プランを提示する必要があります。
3度目のチャンスはない
法改正でチャンスは広がりましたが、再度の執行猶予を受けた人は、必ず保護観察がつくことになります。
この再度の執行猶予の期間中に、さらに罪を犯してしまった場合、3度目の執行猶予は絶対に認められません。
再度の執行猶予の可能性
法改正によって、再度の執行猶予のチャンスはたしかに広がりましたが、依然として再度の執行猶予を獲得するのは、難しいのが現実です。
最初の執行猶予は、「反省しているなら、社会の中で更生できるはず」という裁判所の温情です。その信頼を裏切る形になるため、2度目の裁判は難しくなります。
2年以下の拘禁刑という枠
法改正によって、対象となる刑期が「1年以下」から「2年以下」に緩和されました。しかし、緩和されたとはいえ決して楽になったわけではありません。
通常の執行猶予は「3年以下」で認められますが、再度の場合は「2年以下」でなければなりません。少しでも罪が重くなると、その時点で実刑が確定してしまいます。
再犯ともなると、前回の刑よりも重い刑が言い渡されることが一般的であることも再度の執行猶予の獲得が難しい要因の1つです。
前提である2年以下の拘禁刑を目指すためにも、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁当切りという手法が難しくなった
法改正前には、裁判を長引かせて執行猶予の期間満了を待つ弁当切りという手法がありました。この弁当切りという手法も法改正によって通用しなくなりました。
- 法改正前(~25年5月)
- 有罪判決が出る「当日」までに前回の執行猶予期間が経過していれば、前回の執行猶予は取り消されずに、新しい事件についてのみ刑を受ける
- 法改正後(現在)
- 執行猶予期間中に「起訴」された場合、新しい事件の判決前に前回の執行猶予期間が経過していても、原則として前回の執行猶予を取り消されるようになった
逃げ得が許されない法律になったため、裁判を長引かせる時間稼ぎではなく、再度の執行猶予を獲得するための弁護活動が必要不可欠になりました。
なお、法改正前に執行猶予付き判決となった事件については、経過措置として改正前と同様の扱いになります(刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律448条)。
「特に」酌量すべきものという高いハードル
再度の執行猶予を与える条件として、単なる情状ではなく「特に」酌量すべき事情が必要と記載されています。この「特に」の二文字が実務上は非常に重い意味をもちます。
最初の信頼を裏切った人による「反省しています」「二度としません」の言葉では説得力がありません。
刑務所よりも、社会の中で更生ができると裁判官に認められる事情が必要です。
再度の執行猶予が認められる条件
では、どのようなケースであれば再度の執行猶予が認められる可能性が残されているのでしょうか。一例として以下のような要素が重なった場合、認められる可能性があります。
事件内容が軽微であること
前提として、事件そのものが重大である場合は、そもそも判決が2年を超えてしまい、再度の執行猶予の要件に当てはまりません。
そのため、少額の窃盗や、軽微な過失事故など、刑期が短い事件であることが前提ともいえます。
被害者との示談が成立している
被害者がいる事件では、示談が成立しているかどうかは大きなポイントになります。
示談金を支払うだけではなく、これ以上の処罰は望まないことを要求する嘆願書などがある場合も有利な情状があると裁判官に考慮されます。
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前回の犯罪と今回の犯罪に関連性がない
たとえば、前回の犯罪は窃盗、今回は不注意による交通事故など、性質がまったく異なる場合は再度の執行猶予を獲得できる可能性が高くなります。
対して、前回同様の犯罪を犯した場合、常習性があると判断され、再度の執行猶予を獲得することが難しくなります。
再犯防止の環境が整っている
同じことを繰り返すのではないか、という裁判官の疑念を払拭することも再度の執行猶予を獲得するためには重要な要素です。
そのため、再犯防止に向けた環境が整っていることも重要な要素になります。
実際の裁判では、再度の執行猶予が認められるかどうかは、事件内容だけでなく、捜査段階からの対応や弁護活動の内容にも大きく影響します。
再度の執行猶予を獲得するためのポイント
再度の執行猶予は、判決を待っているだけでは獲得することは非常に難しいです。しかし、可能性がゼロであるわけではないので、実現に向けて今すぐアクションを起こしましょう。
弁護士に相談する
法改正によって、要件が緩和されましたが、依然として厳しいことには変わりありません。今すぐ弁護士に相談して適切なサポートを受ける必要があります。
弁護士に相談・依頼をすることで、再度の執行猶予の可能性を少しでも高めることが期待できます。
「特に」酌量すべき事情の構築
最終的な判決を2年以下の拘禁刑に抑えることに加えて、「特に」酌量すべき事情があることを裁判官に伝える必要があります。
「特に」酌量すべき事情があることを論理的に主張するためには、高度な弁護技術が必要です。
法改正への対応
法改正前であれば、判決を遅らせて期間満了を待つ弁当切りという手法がありましたが、現在は通用しません。
ただし、法改正前に執行猶予付き判決となった事件については、経過措置として改正前と同様の扱いになります。そのため、自分やご家族が現在どんな状況にあるのかを把握することも重要です。
早期に弁護士と対応方針を固めて、真正面から有利な情状を主張できるよう準備をしておきましょう。
示談金の準備
示談が成立しているかどうかは、判決を下すうえでの大きな判断材料になります。
弁護士を通じて、被害者と示談を進めてもらい、示談金の準備も進めておきましょう。まずは、誠意をもって対応にあたることで示談の成立を目指しましょう。
具体的な再犯防止体制を整える
本人の意思による反省だけに頼らず、客観的に再犯防止体制を整えることも重要です。
主な再犯防止体制の例
- 家族・周囲による監督
- 例)24時間体制で生活状況を把握する
- 専門機関との連携
- 例)依存症や精神疾患が背景にある場合、専門機関への通院・サポートをする
- 生活基盤・就労先の確保
- 例)無職や困窮が原因の場合、更生支援施設への入所
- 経済的・物理的な制限
- 例)再犯の道具となりうるものを廃棄、解約する
アトムの解決事例をご紹介
アトム法律事務所では多くの事件の弁護活動を行ってきました。その中でも再度の執行猶予を獲得した事例をご紹介します。
窃盗(再度の執行猶予)
スーパーで刺身など、十数点の食品(数千円相当)を万引きした。なお、依頼者は窃盗で執行猶予中の身であった。
弁護活動の成果
保釈が認容されて、早期釈放が叶った。裁判の場では、窃盗症治療の通院記録などを証拠として提出。そのほか情状弁護を尽くした結果、執行猶予付き判決となった。
最終処分
懲役1年執行猶予4年
再度の執行猶予に関するよくある質問
Q.前回の罪と同じ犯罪(例:万引きの繰り返し)でも、再度の執行猶予は受けられますか?
法律上は可能ですが、難易度は極めて高いのが現実です。
同じ罪を繰り返している場合、裁判官から常習性がある、更生できなかったと厳しく判断されます。
Q.再度の執行猶予が認められない場合、すぐに刑務所に行くことになりますか?
原則として、判決が確定すると、前回の刑期と今回の刑期を合計した期間、服役することになります。
前回が懲役1年の判決、今回が拘禁刑1年の判決の場合は、合計2年間も刑務所に入ることになります。
Q.逮捕・起訴された後でも、再度の執行猶予を目指せますか?
はい、逮捕後や起訴後であっても可能性は残っています。
ただし、弁護活動の時間が限られると選択肢も少なくなっていきます。できるだけ早い段階で弁護士に相談し、再度の執行猶予を見据えた方針を固めておく必要があるでしょう。
まとめ|再度の執行猶予獲得に向けて今すぐ弁護士に相談
再度の執行猶予を獲得するのは、決して簡単ではなく困難です。しかし、法改正を経た現在では適切な弁護活動とご家族による支援が揃えば決して不可能ではありません。
被害者との示談交渉や再犯防止に向けた体制の構築など、相応の準備期間が必要になります。
もう刑務所に行くしかない、と投げ出す前に、まずは現在の状況を整理して一刻も早く弁護士に相談することをおすすめします。あなたとご家族の味方となって、最善の解決策を一緒に考えます。


