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頻発する盗撮の状況 – レンタルビデオ店での盗撮

頻発する盗撮の状況

弊所がご相談や弁護のご依頼をいただく盗撮事件、ニュース等で取り上げられる盗撮事件において、よく見られる盗撮の状況を紹介します。似た状況で盗撮を行い、警察に逮捕・検挙されてしまった方やそのご家族の方は、お一人で悩みを抱えず、盗撮事件に強いアトム法律事務所の弁護士にご相談下さい。

レンタルビデオ店での盗撮

レンタルビデオ店での盗撮事件の事例

背後からスマホでスカートの中を撮影 会社員の男を現行犯逮捕

愛知県春日井市のレンタルビデオ店で、女性(26)が盗撮被害に遭うという性犯罪事件が発生。盗撮行為をしたのは愛知県春日井市の会社員、U容疑者(50)で現行犯逮捕。取り調べに対し、「撮影したことに間違いありません」などと話しており、容疑を認めているという。男は、春日井市内のレンタルビデオ店で、女性客(26)に対し背後から近づき、スカートの中をスマートフォンの動画で撮影したとみられる。盗撮被害に遭った女性が犯行に気付き、男に声をかけたところ店外に逃走。男性店長が追いかけて路上で取り押さえ、現行犯で逮捕。警察はスマホを解析するなどして余罪についても調べる方針。
(東海テレビ 2021年)

男性消防士長が盗撮で逮捕 罰金の略式命令

和歌山市内の店舗で女性のスカート内を携帯電話で撮影したなどとして、和歌山県迷惑防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)の罪で略式起訴されていた同市消防局の男性消防士長(32)について、和歌山簡裁は罰金40万円の略式命令を出した。起訴状などによると、消防士長は和歌山市内の店で、女性のスカート内を動画撮影機能が付いた携帯電話で盗撮。1月にも、市内のレンタルビデオ店で携帯電話を女性のスカート内に向けたとしている。
(産経新聞 2015年)

公務員男性が盗撮で逮捕 罰金刑を受け懲戒処分

厚木市は、県迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで現行犯逮捕された公園緑地課の主事補の男性(25)を停職4カ月としたと発表した。男性は同日、依願退職した。市によると、男性は市内のレンタルビデオ店で携帯電話のカメラ機能で女性のスカート内を撮影し、店員に取り押さえられた。略式起訴され、罰金刑となった。
(神奈川新聞 2013年)

レンタルビデオ店での盗撮の違法性

レンタルビデオ店での盗撮は、各県が定める迷惑防止条例に違反します。
ここでは、福岡県迷惑防止条例に基づいて、ご説明します。

(福岡県迷惑防止条例)
第六条

何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに 、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる 行為をしてはならない。

2 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所に おいて、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をし てはならない。

一 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞ き見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この 条において「写真機等」という。)を用いて撮影すること。

二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。

3 何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為 をしてはならない。

一 公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆 が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態に ある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。

二 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向 けること。


第11条 第2条又は第6条から第8条までの規定のいずれかに違反した者 は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第12条 常習として前条第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

上記にいう「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。)をいい、「公共の乗物」とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物をいいます。レンタルビデオ店も不特定多数の者が自由に出入りできる施設であるため、公共の場所にあたります。

レンタルビデオ店における盗撮の類型は、目的のビデオを探すため棚の傍に立っている、あるいはかがんでいる女性のスカートの中にスマートフォン等を差入れて下着等の撮影をするというものが考えられますが、見知らぬ男性に、自分の極めてプライベートな部分を密かに撮影されるということは、これを知った女性を極めて強く羞恥させ、不安を覚えさせる行為といえます。

盗撮事件がレンタルビデオ店で頻発する背景

レンタルビデオ店は、盗撮事件が多く生じている場所です。警察庁が令和二年に公表した警察白書によると令和元年の盗撮の摘発件数は3,953件で、そのうち書店・レンタルビデオ店での盗撮は206件に上ります。この数字は、駅・電車(1位)、ショッピングモール(2位)に続く3位のものとなっています。
レンタルビデオ店で盗撮事件が起こりやすいのは、どうしてでしょうか、(1)加害者・被害者となり得る人が多い、(2)盗撮の機会が生じやすい、(3)盗撮の手段となる道具を用いやすい、(4)盗撮をしていることが気付かれにくい場所という4点から検討してみましょう。

(1) 加害者・被害者となり得る人が多い場所

当然のことのようですが、盗撮事件が生じるのは、盗撮を行う男性と盗撮の対象となる女性がいる場所です。男性と女性がいない場所では盗撮事件は起きません。逆に、盗撮の潜在的な加害者となる男性と被害者となる女性が多く集まる場所では、人の少ない場所よりも相対的に盗撮事件が生じやすくなります。
一般的なレンタルビデオ店は、子供からお年寄までを対象とする多種多様なアニメ、映画を取り揃えています。また、ビデオ(DVD等を含みます)は、再生機(パソコンを含みます)があれば楽しめる娯楽の一つで、人数も問いません。CD販売店や書店を併設している店舗も多くあります。そのため、幅広い年齢層の男性・女性がレンタルビデオ店を訪れています。
立地も重要です。テンタルビデオ店は駅ビルや駅周辺、繁華街などに店舗を置くことが多く、それゆえに不特定多数の男性・女性が訪れやすい環境にあることが多いといえます。

(2) 駅は盗撮の機会が生じやすい場所

平成23年の警察庁の発表によると平成22年の盗撮の摘発件数は1,741件で、そのうちの98%に当たる1,702件が「下着などの盗撮」でした。平成25年の警察白書には盗撮された部位に関する統計は掲載されていませんが、下着など、スカートの下から密かに撮影がされているケースが多いと考えられます。
レンタルビデオ店にいる女性は、盗撮がしやすい状態にあるといえます。商品を探す際には、①棚に向かい、通路を背にしていることが一般的なため、背後に立ちやすいこと、②動きが少ないこと、③商品に意識を集中するため周囲への注意が散漫になりやすいこと、④低い位置に商品があることも多く、女性がしゃがむ機会が多いこと、男性がしゃがんでいても不自然ではないこと、がいえるためです。また、目的のビデオを探して歩き回る行為と盗撮の対象を探す行為とが外見上区別がつきにくいため、犯行がやりやすいと考える男性もいると思われます。

(3) レンタルビデオ店は盗撮の手段となる道具を用いやすい場所

前述の通り、レンタルビデオ店は、女性が通路側に背中を向けて、数分程度、ビデオの紹介等に集中した状態で静止しているという環境があります。そのため、背後・左右への注意が散漫になっており、盗撮されていてもこれに気が付きにくい状態にあります。
また、周囲の人間も、目的のビデオの棚を探している者以外は、男性・女性とも自分の見ているビデオのパッケージ等に集中しており、他人が何をしているか、されているか把握しにくい状態にあります。一般的に本棚には背丈が高いものを用い、他の書棚との間隔を詰めて設置するため、見通しがあまりよくないこと、人員に余裕のある店舗でなければ店員はレジで待機していることが多いのもこれらの点を強める要因です。
さらに、レンタルビデオ店では、探している本が配置してあった書棚の前に立って内容を確認するのが一般的であるため、空いている店内で、女性の隣や背後に(背中向きで)立ったとしてもさほど不自然ではない環境といえます。

(4) レンタルビデオ店は盗撮をしていることが気付かれにくい場所

前述の通り、レンタルビデオ店は男性女性とも周囲への注意差が散漫になっており、盗撮に気が付きにくい場所の一つになっていると言えます。また、人員に余裕がない一般のレンタルビデオ店の店員はレジにいることが多く、頻繁な見回りを行わない傾向があります。そのため、店員による発見の機会も少ないといえます。

犯罪学上、「自分の行動が他人に見られているかもしれない」と感じさせることは、人を犯罪から遠ざける、抑止のための有力な方策とされています。しかし、レンタルビデオ店は、被害者や周囲の人が盗撮に気付きにくい環境であるため、この抑止の力が働きにくいのです。これも盗撮がレンタルビデオ店で頻発する一つの理由です。


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