頻発する盗撮の状況
弊所がご相談や弁護のご依頼をいただく盗撮事件、ニュース等で取り上げられる盗撮事件において、よく見られる盗撮の状況を紹介します。似た状況で盗撮を行い、警察に逮捕・検挙されてしまった方やそのご家族の方は、お一人で悩みを抱えず、盗撮事件に強いアトム法律事務所の弁護士にご相談下さい。
バスでの盗撮
バスでの盗撮事件の事例
バス車内にスマホ設置 盗撮容疑で運転手の男性逮捕
女性乗客の下着などを盗撮する目的で自らが運転する路線バスの車内にスマートフォンを設置したとして、甲府署は、山梨交通バス運転手、X容疑者(32)を逮捕した。「間違いありません」と容疑を認めているという。容疑は、南アルプス市内から甲府市内に向かうバスの車内にスマートフォンを設置した、としている。同署によると、スマートフォンは運転席周辺に設置されており、動画を撮影していたという。今年に入り男性客から「不自然なところにスマートフォンがある」との通報を受け、捜査していた。
(毎日新聞 2021年)
バス停で女子高生のスカート内盗撮 公務員の男性逮捕
京都府は、バス停留所で女子高校生のスカート内を盗撮したとして府迷惑行為防止条例違反容疑で逮捕された府健康福祉部の男性主査を減給1カ月(10分の1)の懲戒処分にしたと発表した。府によると、当時府高齢化支援課副課長だった主査は、出勤中の京都市北区のバス停前で、府内の公立高校の女子生徒のスカート内にスマートフォンを差し入れ、盗撮したとしている。
( 産経新聞 2021年 )
バスでの盗撮の違法性
バス内での盗撮は、各県が定める迷惑防止条例に違反します。
ここでは、京都府迷惑防止条例(京都府迷惑行為等防止条例)に基づいて、ご説明します。
第3条
何人も、公共の場所又は公共の乗物にいる他人に対し、他人を著しく羞恥 させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、みだりに次に掲 げる行為をしてはならない。
(4) 着衣等で覆われている他人の下着又は身体の一部(以下「下着等」という。 )をのぞき見すること。
(5) 前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣等の中をのぞき込み、又は着衣 等の中が見える位置に鏡等を差し出し、置く等をすること。
2 何人も、公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、タクシーその他不特定又は 多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物にいる他人に対し、前項に規定 する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 通常着衣等で覆われている他人の下着等を撮影すること。
(2) 前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣等の中をのぞき込み、又は撮影 する機能を有する機器(以下「撮影機器」という。)を通常着衣等で覆われて いる他人の下着等に向けること。
第10条 第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として第3条、第6条又は第8条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する
上記にいう「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。)をいい、「公共の乗物」とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物をいいます。バスは不特定多数の者が自由に利用し得る乗り物であるため、公共の乗物にあたります。
バスにおける盗撮は、立っている女性のスカートの中にスマートフォン等を差入れ、あるいは、座っている女性の前方側に立ってスマートフォンを構えた上、下着等の撮影をするものが考えられますが、見知らぬ男性に、自分の極めてプライベートな部分を密かに撮影されるということは、これを知った女性を極めて強く羞恥させ、不安を覚えさせる行為といえます。
盗撮事件がバスで頻発する背景
電車バスは、盗撮事件が多く生じている場所です。警察庁が令和二年に公表した警察白書によると令和元年の盗撮の摘発件数は3,953件で、バスでの盗撮は10件に上ります。(全体の0.2%)、統計全体で4位となっています。
バスで盗撮事件が起こりやすいのは、どうしてでしょうか。それは、バスが、(1)盗撮の加害者・被害者となり得る人が多い、(2)盗撮の機会が生じやすい場所だからだと考えられます。
(1)バスは盗撮の加害者・被害者となり得る人が集まる場所
当然のことのようですが、盗撮事件が生じるのは、盗撮を行う男性と盗撮の対象となる女性がいる場所です。男性と女性がいない場所では盗撮事件は起きません。逆に、盗撮の潜在的な加害者となる男性と被害者となる女性が多く集まる場所では、人の少ない場所よりも相対的に盗撮事件が生じやすくなります。
日本において、バスは電車と並ぶ交通手段であり、通勤、通学、買物などの日常的な用事から旅行等まで、様々な目的で使用されています。この中でも特に通勤・通学に多用されており、朝の通勤・通学ピークの時間帯及び夕方以降の帰宅ピークの時間帯には、とりわけ利用者が集中します。これがバスで盗撮事件が頻発することの前提です。
(2) バスは盗撮の機会が生じやすい場所
平成23年の警察庁の発表によると平成22年の盗撮の摘発件数は1,741件で、そのうちの98%に当たる1,702件が「下着などの盗撮」でした。平成25年の警察白書には盗撮された部位に関する統計は掲載されていませんが、下着など、スカートの下から密かに撮影がされているケースが多いと考えられます。
乗車ピークの時間帯は、自由に体が動かせないほど人が密集します。そのため、男性が女性と密着していたとしても不自然ではない環境となります。そして、そのような混雑状況において乗客は他人の行動を確認する余裕がない状態となります。特に、低い位置ほど目が届きにくい為その傾向は強まります。
スマートフォン等は手の平大の大きさであり、片手で撮影ができます。そのため、上述のような混雑の中でも、女性のスカートの下に手をもっていって撮影をすることが可能です。
乗車ピークは毎日生じるため、その分盗撮の機会が生じやすいといえます。