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改正案が閣議決定された不同意性交等罪とは?要件や刑罰の内容と問題点を解説

2023年3月14日、不同意性交等罪の新設を含む、性犯罪の規定を見直す刑法改正案が国会に提出されました。

不同意性交等罪とは、被害者が「同意しない意思を形成、表明、全う」することが難しい状態で性交等を行う罪のことです。

同意のない性交等に対する処罰規定は、現行刑法では177条「強制性交等罪」と178条「準強制性交等罪」に置かれています。

今回の改正案が成立すると、強制性交等罪と準強制性交等罪が一つにまとまり、新たに不同意性交等罪が創設されることになります。

この記事では、不同意性交等罪の新設で、罪に問われる行為や刑罰がどう変わる見込みなのか、不同意性交等罪の問題点などについて解説します。

不同意性交等罪とは|罪の定義と刑罰

不同意性交等罪の定義

被害者が「同意しない意思を形成、表明、全う」することが難しい状態で性交等を行う罪が、不同意性交等罪です。

つまり、相手が抵抗できない状態で性交等を行う罪となります。

性交等とは、性交や肛門性交、口腔性交を指しています。膣や肛門に陰茎以外の体の一部を挿入する行為も含まれます。

(前略)・・・同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(中略)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、五年以上の有期拘禁刑に処する

刑法改正案177条

不同意性交等罪の刑罰

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上の有期拘禁刑です。

現行の強制性交等罪・準強制性交等罪では5年以上の有期懲役が法定刑ですので、刑の上限に変更はありません。

拘禁刑とは

拘禁刑とは、2025年に施行される見込みの改正刑法により新設される、新たな刑の種類です。自由刑の中の「懲役」と「禁錮」を一本化して新たに創設されることが決まりました。

拘禁刑の詳細については「拘禁刑とは?拘禁刑の内容、創設の理由を解説」をご覧ください。

不同意性交等罪はいつから新設される?

2023年3月時点では、不同意性交等を含む刑法改正案が衆議院に提出されたのみで、具体的な公布・施行の日にちが決まっているわけではありません。

国会の議論次第では、条文内容や刑期に変動がある場合もあります。

ですが、2023年夏頃の法案成立が見込まれているため、数年以内には不同意性交等罪が新設されることになるでしょう。

不同意性交等罪と強制性交等罪の違い|改正ポイントを解説

不同意性交等罪の新設による変更点は、次の5点が主なポイントになります。

不同意性交等罪の改正ポイント

  • 罪の名称変更
  • 法定刑の種類変更
  • 罪が成立する要件の拡大
  • 性交同意年齢の引き上げ
  • 時効の延長

名称の変更

現行の強制性交等罪が不同意性交等罪に変更されます。

不同意性交等罪には準強制性交等罪の内容も含まれるため、現行の刑法178条(準強制性交等罪)は削除される予定です。

法定刑の種類変更

不同意性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期拘禁刑」です。

強制性交等罪・準強制性交等罪の「5年以上の有期懲役」から刑の種類だけが変更となります。

罪が成立する要件を拡大

不同意性交等罪は、現行法に比べて成立要件が幅広くなっています。

現行の強制性交等罪が成立するには暴行・脅迫要件が必要です。不同意性交等罪が成立する要件は「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態」であることとなります。

つまり、被害者が行為に抵抗できない状態での性交等を処罰する規定になるのです

現行法については、「強制性交・強姦の弁護士相談|逮捕・不起訴・示談でお悩みの方へ」をご覧ください。

時効の延長

不同意性交等罪の公訴時効は、15年に延長されます

強制性交等罪の公訴時効は10年ですので、改正により5年延長されることになります。

さらに、犯罪行為終了時点で被害者が18歳未満の場合には、18歳になるまでの期間が時効の15年に加算されます。

公訴時効は刑事訴訟法250条に規定されています。今回の刑法改正案に併せて、刑事訴訟法の改正も実施される見込みです。

性交同意年齢の引き上げ

今回の刑法改正で性交同意年齢が16歳に引き上げられます

これにより、たとえ互いに同意していたとしても、中学生以下の子供との性交は原則処罰されることになります。

なお、13歳以上16歳未満の人との性交等は、5歳以上の年長者が処罰対象となります。この5歳差要件は、交際している同級生などとの性交等を除外するための規定です。

不同意性交等罪に問われる行為

被害者が抵抗できない状況で性交等を行うと、不同意性交等罪に問われます。

ここでは、改正案で示された「同意しない意思を形成、表明、全うできない」ケースを解説します。

被害者が抵抗できない状況での性交等

次の8つの行為や状態を利用して性交等を行う場合に、不同意性交等罪が成立する可能性があります(改正案176条、177条)。

①暴行・脅迫を用いた性交等

物理的に暴行を加えたり脅したりして、無理やり性交等を行う場合などです。
現行法では、強制性交等罪になります。

②心身の障害を用いた性交等

相手に障害を与えて性交等を行う、または既に障害がある人に性交等を行う場合などです。
現行法では準強制性交等罪になります。

③アルコール・薬物の影響を用いた性交等

酩酊状態にさせて性交等を行う、または既に酩酊状態にある人に性交等を行う場合などです。
現行法では準強制性交等罪になります。

④睡眠その他の意識不明瞭を用いた性交等

意識を不明瞭にさせて性交等を行う、または既に意識が不明瞭な人に性交等を行う場合などです。
現行法では準強制性交等罪になります。

⑤同意しない意思の形成・表明・全うするいとまがない状態

相手の気を逸らしたり、他のことに集中したりしている時に、不意打ちで性交等を行う場合などです。

⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖・驚愕させた性交等

行為を持ち掛けられた状況などが予想と異なり、同意しない意思を表明できない被害者と性交等を行う場合などです。

⑦虐待に起因する心理的反応を用いた性交等

身体的虐待や性的虐待、他者への暴行を見せるなどの心理的虐待を用いて、性交等を行う場合などです。

⑧経済的・社会的関係上の地位を用いた性交等

上司と部下という関係性に基づく影響力による不利益(自身の人事評価等)を気にして、抵抗できない場合などです。

相手が誤信している状況での性交等

行為がわいせつなものではないと誤信させたり、行為をする人を別人だと勘違いさせたりして性交等を行っても、不同意性交等罪に問われます。

行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又は それらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

刑法改正案177条2項

16歳未満の人との性交等

今回の改正で性交同意年齢が16歳に引き上げられます。つまり、15歳以下の子供は性交に同意する能力を持たないとみなされるということです。

これにより、中学生以下の子供との性交等は同意の有無にかかわらず、不同意性交等罪として処罰されることになります。

改正案では、177条3項として、以下の条文の追加が予定されています。

十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、 その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。

刑法改正案177条3項

現行法の性交同意年齢は13歳のため、12歳以下の子供と性交等を行うと、同意の有無にかかわらず強制性交等罪に問われます。

なぜ不同意性交等罪が新設されるのか

強制性交等罪の問題点|新設される理由

強制性交等罪の問題点は、性交等の際に暴行・脅迫がないと罪が成立しないことです。

例えば、人事権を持つ上司から誘われた場合、被害者が上司の立場を恐れて性交等を断れなくても、暴行や脅迫がなければ現行法では罪にならない可能性があります。

しかし、実際には上司が権力を悪用して部下を性的関係に追い込むケースが多数存在することが被害者団体などから指摘されてきました。

そのため、現行法では対処できないケースに対応するため、不同意性交等罪が設けられることになりました。

不同意性交等罪の問題点

不同意性交等罪の問題点は、性交等をした時点で同意があったと思っていた場合でも、後から被害者が「本当は同意していなかった」と申告することで、加害者として罪に問われる可能性があることです。

密室での性交等に同意があったことを証明するのは困難です。

被害者が後になって虚偽申告をした場合でも、強制性交等罪であれば、暴行や脅迫があったかどうかが判断基準なので、冤罪のリスクは低いと考えられます。

しかし、不同意性交等罪では、被害者が抵抗できる状況だったかどうかが判断基準になるため、現行法よりも罪が成立する可能性が高くなるのです。

上司と部下の例でいえば、上司の誘いを断れば自分の立場が危険になると部下が心配になり、抵抗できないような状況だったと認められれば、上司は加害者として処罰される可能性があります。

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