こちらの記事では、盗撮事件における時効に関する情報をまとめています。盗撮事件には主に軽犯罪法や迷惑防止条例が適用されますが、時効には刑事と民事があり、それぞれ年数も意味合いも異なります。
盗撮事件の加害者となった場合、事態を早期に解決に導くためには、時効によらず早期に弁護士に相談し、示談を締結することが重要となります。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
盗撮事件の時効には刑事と民事がある
盗撮事件の時効には、刑事事件としての時効と民事事件としての時効があります。
刑事事件の時効(公訴時効)を迎えると起訴されることがなくなり、逮捕されたり裁判を受けることもなくなります。また民事事件の時効を迎えると、被害者から損害賠償請求を受ける可能性がなくなります。
盗撮事件における刑事の時効(公訴時効)は何年?
盗撮事件の公訴時効は、迷惑防止条例・住居侵入罪・児童ポルノ禁止法の場合は3年、 軽犯罪法の場合は1年となっています(刑事訴訟法250条の規定による)。
罪名 | 法定刑 | 公訴時効 |
---|---|---|
迷惑防止条例違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金※ | 3年 |
住居侵入罪 | 3年以下の懲役または10万円以下の罰金 | 3年 |
児童ポルノ禁止法違反(製造) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 | 3年 |
軽犯罪法違反 | 拘留または科料 | 1年 |
※東京都の例。法定刑は都道府県により多少の差異があるものの、公訴時効は共通して3年。
刑事事件の時効制度についてより詳しく知りたい場合には『刑事事件の公訴時効期間を一覧表で解説!|時効の不安は弁護士に相談』の記事をご覧ください。
盗撮事件における民事の時効(慰謝料請求の時効)
以上は刑事的な手続きについて解説しましたが、以下は盗撮事件を起こした場合、刑事事件の手続きとは別に存在する民事事件の手続きについて解説します。
盗撮は民法709条が定める不法行為にあたり、精神的苦痛を受けた被害者は加害者に対して賠償請求(慰謝料請求)をする権利があります。
ただし、この賠償請求権にも時効が存在します。被害者が加害者を知った時点から3年、事件が発生した時点からは20年というのが民事事件の時効であり、この期間を経過すると支払う義務がなくなります。
まずは盗撮事件に適用される罪と、その時効についてみてみましょう。
盗撮罪という罪はなく、盗撮行為については基本的には各都道府県の迷惑防止条例もしくは軽犯罪法が適用されます。
盗撮の罪名はどうやって決まる?|公訴時効1年と3年の分かれ目
盗撮には迷惑防止条例もしくは軽犯罪法が適用される
公共の場での盗撮については迷惑防止条例が適用されます。迷惑防止条例は各都道府県ごとに名称が異なり、近年は自宅・学校・職場など公共の場以外での盗撮行為も規制している自治体が増えています。
一例として、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条を見ると、「正当な理由なく、次に掲げるものをしてはならない。」と定められています。
(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
迷惑防止条例は刑罰も各都道府県ごとに異なります。東京都の場合、上記に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とすることが定められています。公訴時効は3年です。
現状では迷惑防止条例は自治体による差異が大きく、都道府県によっては学校などにおける盗撮行為は「公共の場」ではないとして立件することができないことがあります。このことは近年問題視されるようになり、処罰範囲を拡大する改正が進められているほか、一律に刑法で「盗撮罪」を制定しようとする動きも見られるようです。
迷惑防止条例で立件できない場所での盗撮については、軽犯罪法23条が定めるいわゆる「のぞき行為」が適用されます。
二十三 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
軽犯罪法23条
軽犯罪法違反に問われた場合、1日以上30日未満の拘留、もしくは1000円以上1万円未満の科料となります。公訴時効は1年です。
盗撮に関連するその他の罪
また盗撮行為を行った場合、その他の罪にも問われるケースがあります。
盗撮を行うために他人の住居などに不法に侵入した場合、刑法第130条の住居侵入罪となり、3年以下の懲役または10万円以下の罰金、公訴時効は3年となります。このようなケースは牽連犯(けんれんぱん)といい、軽犯罪法違反より重い罪である住居侵入罪の方が適用されます。
また、18歳未満の児童が衣服の全部または一部を着けない状態で、性器などが露出されている様子を撮影したものなどを児童ポルノと呼ぶことが児童ポルノ禁止法2条に定められています。
上記の状態の児童を盗撮した場合、児童ポルノの製造にあたるため、3年以下の懲役または300万円以下の罰金で公訴時効は3年となります。
盗撮事件は時効を待つよりも弁護士へ相談を
ここまでは盗撮事件に適用される罪名と、その時効についてみてきました。それでは、盗撮事件を起こしてしまった場合、その後の対応はどのようにすればよいのでしょうか。
時効成立を待つことのリスク
盗撮事件を起こした場合、その時効が成立するのを待つことは賢明な判断とはいえません。
盗撮事件は基本的には現行犯逮捕が多いですが、時間が経過してから後日逮捕される可能性はゼロではありません。スマートフォンの中の画像が証拠となったり、あるいは街中の防犯カメラの映像などから捜査が進み逮捕に結びつくこともあります。
逮捕された時点で何もせず時効を待っていたとなれば、反省の態度が見られないとしてそのぶん刑事処分も厳しいものとなることが予想されます。また、盗撮事件の時効は最も軽いものでも1年に及び、その間ずっと逮捕の危険を抱えながら日常生活を送ることは、精神的にも非常に不安定なものといえるでしょう。
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盗撮により前科を付けないためにすべきこと
盗撮により逮捕され前科がつくことを防ぐためには、時効が成立するのを待つのではなく、できる限り早い段階で被害者と示談を締結し、不起訴処分を得る、もしくは事件化を防ぐことが大切です。
示談を締結し盗撮事件の解決を図る
示談を適切に締結するためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
示談により釈放や不起訴の可能性を高める
盗撮事件は被害者の存在する犯罪であるため、事態の解決には適切な被害者対応が重要になります。示談を締結することにより、逮捕や勾留を回避し早期に釈放される可能性が高まるほか、その後の刑事処分においても裁判を行わない不起訴となる可能性も高くなります。
被害者と示談するためには早期に弁護士に相談する
盗撮は性犯罪であり、被害者は加害者側に対して強い恐怖心を抱いている可能性があります。そのため、対応には被害者の心情に配慮し、細心の注意を払うことが求められます。
そうした事情もあり、盗撮事件において示談を締結しできる限り早期に事態を解決するためには、まずは経験豊富な弁護士に相談することが重要です。