- 時効完成後でも逮捕される?
- 時効直前に逮捕されたら?
- 時効が完成する期間って犯罪ごとに違うの?
刑事ドラマなどでよく聞く「時効」という言葉ですが、なかなかその当事者になる機会は少なく、詳しく知る人は多くないでしょう。
この記事では刑事事件の公訴時効に関して、時効が完成する前後の逮捕の有無や、時効完成までの期間にスポットを当てて解説していきます。
目次
公訴時効直前の逮捕
時効直前で逮捕される可能性は低い
法律上は公訴時効が完成する前日であっても逮捕することが可能です。しかし、逮捕後の取り調べや送致の手続きには時間がかかり、送致を受けた検察官も起訴・不起訴の判断には時間を必要とします。急いで進めても捜査を数日間で終了させて起訴まで持ち込むことは難しいため、公訴時効が完成する直前で逮捕される可能性は低いといえます。
しかし、別の刑事事件の容疑がかかっていたり、公訴時効が完成するまでに数週間~1ヶ月ほど余裕があれば、逮捕して取り調べを行うには十分であるため警察が逮捕に踏み切る可能性もあります。
時効完成後に逮捕はされる?
時効完成後に逮捕されることはまずありません。
もし時効完成後に起訴された場合には「免訴」という判決が言い渡されます。
免訴とは「公訴権」という権利の消滅を理由に、有罪・無罪の判断をせずに裁判を打ち切ることを指します。すなわち逮捕をしてもその後の手続きがまったく進まないため、時効完成後の逮捕は無意味ということになります。
警察が時効完成の計算を誤って逮捕してしまった場合
警察が時効の計算を誤って完成後に逮捕をしてしまうケースも稀に発生します。
この場合でも、裁判所への令状請求などのタイミングで裁判官や検察官が気がつけば釈放してもらえます。
公訴時効について
公訴時効とは
そもそも刑事事件の公訴時効とはどのような制度なのかを確認しましょう。
公訴時効とは、犯罪が発生してから一定期間の経過により、検察官が被疑者を起訴するための「公訴権」という権利が消滅する制度のことを指します。一般的に用いられる時効とはこれを意味することが多いです。
公訴時効の存在理由としては以下の3点が挙げられます。
公訴時効の存在理由
- 長い時間経過により、被害者や社会からの処罰感情が薄れること
- 重要な証拠が散失して適正な判決が期待できないこと
- 一定期間追訴されていない事実状態を尊重し、被疑者の地位安定を図ること
公訴時効の起算点はいつ?
刑事事件の公訴時効を計算する際の起算点は、「犯罪による結果が発生したとき」とされていて、刑事訴訟法第55条1項には「時効期間の初日は、時間を論じないで1日としてこれを計算する」と記されています。
例えば2023年9月1日に万引きを行った場合、時効の起算日は2023年9月1日、窃盗の公訴時効は7年であるため、2030年9月1日になった時点で公訴時効が完成することになります。
なお、共犯者がいて2日以上にわたり犯行がおこなわれた場合には、最終の犯罪行為が終わったときを起算点として計算します。
公訴時効が完成するまでの期間
刑事事件の公訴時効は刑罰の程度などに応じて次の10種類に分けられます。
人を死亡させた罪で禁錮刑以上の刑の場合(死刑にあたる犯罪は除く)
①公訴時効期間:30年
強制わいせつ等致死、強制性交等致死など
②公訴時効期間:20年
傷害致死、危険運転致死など
③公訴時効期間:10年
過失運転致死、業務上過失致死など
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それ以外の場合
①公訴時効期間:25年
現住建造物等放火、外観誘致など
②公訴時効期間:15年
強盗致傷、強盗強姦、強制わいせつ致死傷、強制性交等致死傷など
③公訴時効期間:10年
強盗、傷害、傷害致死、覚せい剤輸出入など
④公訴時効期間:7年
窃盗(万引き含む)、詐欺、業務上横領、恐喝、覚せい剤使用・所持など
⑤公訴時効期間:5年
大麻所持、私文書偽造、酒酔い運転、過失運転致傷など
⑥公訴時効期間:3年
痴漢、盗撮、公然わいせつ、住居侵入、暴行、酒気帯び運転など
⑦公訴時効期間:1年
軽犯罪法違反など
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公訴時効は停止する?
刑事訴訟法第254条と第255条で定められた要件に該当する場合には、公訴時効の進行が止まることがあります。
- 検察官が該当事件に対して公訴の提起(起訴)をした場合
- 検察官が共犯の一人に対して公訴の提起した場合
- 犯人が国外逃亡している場合
- 犯人が身を隠していて起訴状の謄本の送達、または略式命令の告知ができなかった場合
公訴時効が停止すると、停止していた期間の日数は算入しません。
そのため起算点から計算して、本来であれば時効が完成している場合でも検察官は公訴を提起することができます。
また、公訴時効の再開に関しては停止前までに進行した期間から引き続いて開始されます。
時効の完成を待つのは良くない?
公訴時効の完成により刑事罰から逃げ切るのは現実的ではありません。
時効完成前に捕まってしまうと、通常の場合よりも悪質性が高いと判断されてしまうおそれもあります。
時効の完成を待つ生活とは…
たしかに時効が完成するまで逃げ切ることができれば罪には問われませんが、その期間中は気が休まらない苦しいものになります。
捜査機関との接触を避けて生活しようとしても、職務質問や運転免許証の更新など警察と関わらなければいけない機会は存在します。
また、年齢確認のための身分証明書の提示や行政の手続きなど、通常であれば何でもない些細な出来事にも強い緊張やストレスを感じてしまうことでしょう。
さらにあなた自身がなんらかの事件の被害者となった場合でも、警察に頼ることができず泣き寝入りしなければならないこともあるかもしれません。
通常であれば当たり前に利用できる支援やサービスにすら、恐怖を感じるようになってしまうのです。
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弁護士に相談して示談が成立するとどうなる?
もし示談を成立させることができれば、逃亡・証拠隠滅のおそれが低いと判断され、逮捕や勾留などの身体拘束をされる可能性も低くなります。
また検察官は起訴・不起訴の判断を行う際、被害者と示談が成立しているか否かを重要視します。
そのため、示談を成立させることで罪に問う必要がないと判断され、不起訴の判断が下される可能性を高めることができます。
不起訴処分を獲得できれば刑事裁判にかけられることも、刑事罰を受けることもありません。前科がつくこともないので、時効完成と同様の結果を得ることができます。
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早期に弁護士に相談を
刑事事件でトラブルになった場合は早期に弁護士に相談することが重要です。
取り調べに呼ばれたときのアドバイスや示談交渉など、弁護士だけができることはたくさんあります。
刑事事件に強い弁護士に相談することで、捜査が進行する前に被害者との示談が成立する可能性も高められるので、日常生活を守るためにもまずはデメリットなしの無料相談を試してみてください。