2023年7月13日以降の事件は「撮影罪」に問われます。
頻発する盗撮の状況
弊所がご相談や弁護のご依頼をいただく盗撮事件、ニュース等で取り上げられる盗撮事件において、よく見られる盗撮の状況を紹介します。似た状況で盗撮を行い、警察に逮捕・検挙されてしまった方やそのご家族の方は、お一人で悩みを抱えず、盗撮事件に強いアトム法律事務所の弁護士にご相談下さい。
パチンコ店での盗撮
パチンコ店での盗撮事件の事例
小学校教諭がパチンコ店員を盗撮
パチンコ店で女性のスカート内を盗撮したとして、福井県警福井署と県警少年女性安全課は、県迷惑防止条例違反(ひわいな行為)の疑いで、福井市の同市立小学校教諭の男(28)を再逮捕した。同署によると、「パチンコ店に行ったかもしれない」と供述しているが、容疑については黙秘している。再逮捕容疑は23日と30日に、福井県内のパチンコ店で、それぞれ別の女性従業員のスカート下にカメラ機能付き電子機器を差し入れ盗撮した疑い。同署によると、教諭は5月3日、同じパチンコ店で、盗撮目的で女性従業員のスカート下にカメラ機能付き電子機器を差し入れたとして現行犯逮捕され、「覚えがない」と容疑を否認していた。逮捕後の捜査で、電子機器にスカート内の画像が見つかったことなどから今回の容疑が分かった。逮捕を受け、福井市の吉川雄二教育長は「市立小教諭が再逮捕されたという事実を重く受け止めている。状況をしっかり確認した上で、(逮捕容疑が)事実であれば厳正に対処していく」と話した 。
( 産経新聞 2021年 )
家庭裁判所職員が盗撮で逮捕 「スカート内が気になった」と容疑を認める
広島南署は、パチンコ店で女性店員(19)のスカート内を盗撮したとして、県迷惑防止条例違反の疑いで、広島家裁職員、X容疑者(55)を現行犯逮捕した。「スカート内が気になった」と容疑を認めている。逮捕容疑は、広島市南区のパチンコ店で、女性店員のスカートの中にデジタルカメラを差し入れて盗撮した疑い。署によると、別の店員が気付いて取り押さえ、110番で駆け付けた署員に引き渡した。
(産経新聞 2019年)
パチンコ店での盗撮の違法性
パチンコ店での盗撮は、原則として撮影罪が成立します。
撮影罪とは「性的姿態等撮影罪」の略称で、体の性的な部位や下着などを相手の同意なく撮影したり、盗撮したりする罪のことです。
撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」となります。
撮影罪が導入される前の盗撮であれば、各県が定める迷惑防止条例に違反します。
ここでは、千葉県迷惑行為防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)に基づいて、ご説明します。
(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)
第3条の2
何人も、みだりに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であ つて、次の各号に掲げるものをしてはならない。
第1号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物において、人の通常衣服で隠されている下着又 は身体を、写真機その他の機器(衣服を透かした状態を撮影することができるものを 含む。以下「写真機等」という。)を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機等を 差し向け、若しくは設置すること。
イ 浴場、更衣室、便所その他の人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる 場所及び住居
ロ 公共の場所(イの場所を除く。)又は公共の乗物
ハ 学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りするこ とができる場所(イ及びロの場所を除く。)又はタクシーその他の不特定若しくは 多数の者が利用することができる乗物(ロの乗物を除く。)
第13条
第3条第2項、第11条又は前条第1項の規定のいずれかに違反した者は、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2 常習として第3条第2項、第11条又は前条第1項の規定のいずれかに違反した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
上記にいう「公共の場所」とは、道路、公園、広場、駅、空港、ふ頭、興行場その他の公共の場所(乗車券等を公衆に発売する場所を含む。)をいい、「公共の乗物」とは、汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物をいいます。パチンコ店も不特定多数の者が自由に出入りできる施設であるため、公共の場所にあたります。
パチンコ店での盗撮の多くは、パチンコ店の女性従業員のスカートの中にスマートフォン等を差入れ、又は、上が映るようにしたカメラ等の入ったカバン等を女性のスカートの下に置いて、下着等の撮影をするというものですが、見知らぬ男性に、自分の極めてプライベートな部分を密かに撮影されるということは、これを知った女性を極めて強く羞恥させ、不安を覚えさせる行為といえます。
盗撮事件がパチンコ店で頻発する背景
パチンコ店は、頻繁に盗撮事件が生じている場所の一つです。警察庁が令和二年に公表した警察白書によると令和元年の盗撮の摘発件数は3,953件で、そのうちゲームセンター・パチンコ店での盗撮は151件に上ります(全体の3.8%)。パチンコ店で盗撮事件が起こりやすいのは、どうしてでしょうか。それは、パチンコ店が、(1)盗撮の加害者・被害者となり得る人が多い、(2)盗撮の機会が生じやすい、(3)盗撮の手段となる道具を用いやすい、(4)盗撮をしていることが気付かれにくい場所だからだと考えられます。
(1)パチンコ店は盗撮の加害者・被害者となり得る人が集まる場所
当然のことのようですが、盗撮事件が生じるのは、盗撮を行う男性と盗撮の対象となる女性がいる場所です。男性と女性がいない場所では盗撮事件は起きません。逆に、盗撮の潜在的な加害者となる男性と被害者となる女性が多く集まる場所では、人の少ない場所よりも相対的に盗撮事件が生じやすくなります。
パチンコ店における盗撮の被害者の多くは、その店舗の女性従業員であると考えられます。パチンコ店では、女性従業員に制服としてスカートを支給・貸与し、フロア業務に従事させます。そのため、パチンコ店は盗撮の対象となりうる女性が(ある程度)常時いる場所といえます。次に、パチンコ店は駅周辺や人が集まりやすい繁華街などに建てられる傾向があり、不特定多数の男性が来店します。これが、盗撮事件が頻発することの前提です。
(2)パチンコ店は盗撮の機会が生じやすい場所
平成23年の警察庁の発表によると平成22年の盗撮の摘発件数は1,741件で、そのうちの98%に当たる1,702件が「下着などの盗撮」でした。平成25年の警察白書には盗撮された部位に関する統計は掲載されていませんが、下着など、スカートの下から密かに撮影がされているケースが多いと考えられます。
上述の通り、パチンコ店は女性従業員がフロア業務に従事している場所です。そして、従業員は、フロアを巡回し、遊戯をしている客の対応等の業務を行います。そのため、女性従業員が男性遊戯客の近くを通る機会が頻繁にあります。
また、パチンコ店内の通路は、通路に沿って遊戯機と椅子が並べられており、一般に狭くなっています(いわゆるドル箱が置かれている場合は、さらに狭くなっている場合があります)。そのため、通路を通る、あるいは、遊戯客対応を行っている女性従業員と、遊戯機の前に座っている男性との距離は比較的近接することになります。
また、遊戯客の対応を行っている際は、その対応に集中するため、周囲への注意が散漫になるといえます。
以上より、パチンコ店は盗撮の機会が生じやすい場所といえます。
(3)パチンコ店は盗撮の手段となる道具を用いやすい場所
パチンコ店には、視界を遮る大きさの遊戯機が通路に沿って密集して設置されており、見通しがさほどよくないのが一般的です。また、勝てば現金が得られ、負ければ現金を失うという遊戯の性質上、遊戯客は自己の遊戯に集中しており、他の客の行動に注意を払っていることは少ないと考えられます。そのため、周囲から盗撮をしている様子を目撃されにくい環境であるといえます。
また、現代ではスマホやカメラ付携帯電話が広く普及しており、遊戯中にこれらを操作する人がいても不自然だと思われない状況になっています。
店内には、大きな音の音楽が流れ、遊戯機から大きな音が発生しているため、常に賑やかで、盗撮の際に多少の音を立てたとしても、周囲には聞こえない環境があります。
他人の目を警戒しなくてはならない範囲が限られており、かつ、スマホ等を操作していたとしてもあやしく思われないため用いやすいということが、パチンコ店で盗撮事件が起きやすい理由の一つとなっています。
(4)パチンコ店は盗撮をしていることが気付かれにくい場所
上述の通り、パチンコ店は、視認性が比較的低く、従業員の周囲への注意が散漫になる機会が多々ある場所です。一方、男性がスマホを使用することは一般化しています。また、店内ではBGMや遊戯機から発生する音により常に大きな音が発生しており、多少スマホ等の操作音がしても周囲に気づかれにくい環境があるといえます。さらに、遊戯中の男性は、座った状態から女性従業員を盗撮し、すぐに遊戯に戻ることもできます。そのため、女性従業員は、男性が周囲でスマホ等を操作していても、自分が盗撮された・されているとは気付きにくいと考えられます。