受け子や出し子などで詐欺行為に加担した場合、刑事事件と民事事件双方で訴えられる可能性があります。
詐欺罪の刑事上の時効(公訴時効)は7年です。民事上の時効は、被害者が損害および加害者を知った時点から3年または不法行為の時点から20年です。
刑事と民事は、制度面でも時効期間も異なります。時効が過ぎたと安心していると、ある日突然逮捕されたり、刑事事件で刑罰を受けても被害者から損害賠償を請求される可能性があります。
この記事では、詐欺罪の時効や時効前に被害者と示談するメリット、弁護士に依頼すべき理由についてわかりやすく解説します。
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目次
詐欺の時効は何年?
詐欺の時効には、「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2つがあります。2つは全くの別物です。まずはそれぞれの時効の意味を見ていきましょう。
刑事上の時効(公訴時効)は7年
詐欺罪の時効(公訴時効)は7年です。
刑事事件の時効のことを「公訴時効」といいますが、これは、犯罪をした人を裁判に行うことのできる期間のことをいいます。公訴時効が成立すると、たとえ犯人が判明しても刑事裁判を行うことはできません。
ただし、公訴時効には例外があります。犯罪をした人(被疑者)が外国にいる場合、その間は時効が停止します(刑事訴訟法255条)。国内で逃亡している場合は、時効のカウントは止まりません。
また、検察官に起訴されても時効が停止するので、裁判中に時効を迎えても罪に問われることになります。

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民事上の時効(消滅時効)は3年もしくは20年
民事事件として詐欺の損害賠償請求をする権利の時効(消滅時効)は3年もしくは20年です。
詐欺の加害者と被害を知った時から時効がスタートし、3年経つと請求できなくなります。加害者と被害を知らなかった場合でも、行為があった時から20年経つとそれ以降は請求できません。
ただし、民事上の消滅時効は、内容証明郵便で支払いを求められると6か月完成が猶予されます。また、相手から裁判を起こされたり(請求)、加害者側が詐欺を認めた場合(承認)は更新されます。消滅時効が更新されると、一旦時効期間がリセットされ、そこから3年のカウントが再開します。
なお、詐欺加害者が逃亡していて居場所がわからない状態でも、被害者が「公示送達」という方法を取れば消滅時効は更新されます。公示送達とは、裁判所の掲示板に「原告が被告に対して訴訟を提起したので被告は訴状を取りに来てください」という内容の書面が掲示されることです。公示送達の掲示後、2週間が経過すれば訴状が届いたものとみなされ、時効は更新されます。
詐欺の時効はいつから数える?時効が停止する期間とは
詐欺の時効はいつから進行する?
刑事事件としての詐欺の公訴時効は、詐欺行為が終わった時から進行し、7年で完成します。詐欺の余罪が多数ある場合は、一つ一つの詐欺事件について個別に時効が進行します。長期間オレオレ詐欺に加担していたような場合、最初の詐欺は時効でも、直近の詐欺は時効前で罪に問われる場合もあります。
民事事件としての詐欺の損害賠償請求権の消滅時効は、被害者が加害者と損害を知った時から進行し、3年で消滅します(主観的起算点:民法724条1項)。また、どちらも特定できない場合でも、詐欺行為があった時(権利行使できる時)から20年で消滅時効にかかります(客観的起算点:同条2項)。
詐欺の時効は停止・更新されるケースがある
詐欺をしてしまった場合、前述した通り、時効の停止や更新がなされるケースがあります。刑事事件の側面からは、国外にいた期間は時効が停止し、期間のカウントからマイナスされるので、旅行や仕事で海外に行っていた人が公訴時効が過ぎたと思っていると、実は時効前で逮捕され罪に問われることがあります。
民事事件の側面からは、別の根拠で損害賠償を請求される可能性があります。詐欺の損害賠償請求の根拠は、通常「不法行為」による時効は3年ですが、契約トラブルの場合は「債務不履行」を根拠に請求される場合があります。この場合の時効は5年ないし10年と長くなります。
詐欺罪で時効が完成するまで逃げ切ることは可能?
詐欺罪で時効が完成するまで「逃げ切る」ことは、現実的に困難なことが多いです。
詐欺事件は被害者の告訴や民事訴訟によって発覚しやすく、捜査が進みやすいため、時効成立を待つのはリスクが高いです。さらに、詐欺罪で時効を迎えても、民事上の損害賠償請求は別に存在するため、責任を完全に免れることはできません。
逃げ切りを狙うよりも、早期に弁護士に相談し、適切に対処する方が最終的なダメージを抑えることにつながります。
詐欺の時効が成立したらどうなる?
詐欺の時効の効果
| 刑事事件の時効 | 民事事件の時効 | |
|---|---|---|
| 効果 | 起訴されなくなる | 賠償請求されなくなる |
| 期間 | 7年 | 3年または20年 |
刑事事件の詐欺の時効成立後は、その罪に問われることがなくなります。公訴時効は、犯罪の終了時から一定期間が過ぎると検察官が起訴できなくなる制度です。詐欺行為の終了から7年が過ぎると、犯人が特定されても検察官は起訴できないので、その詐欺行為について罪に問われることはありません。
民事事件の詐欺の時効成立後は、損害賠償を請求されなくなります。消滅時効が成立するとその権利がなくなります。被害者が詐欺の加害者と被害を知った時から3年、またはどちらも分からない場合は詐欺行為から20年が過ぎると、損害賠償請求権が時効消滅するので被害者は請求できなくなります。
詐欺罪で公訴時効成立前に逮捕されたら?
公訴時効完成前に逮捕されて起訴されると、公訴時効が停止します。
その後は通常通りの刑事手続きにかけられ、裁判で有罪が確定すると前科がつくことになります。
詐欺罪の量刑は?
詐欺罪の刑罰は10年以下の拘禁刑です。
詐欺罪で罰金刑になることはありません。
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法246条
詐欺罪で受ける処分は、拘禁刑の実刑、執行猶予、無罪、不起訴処分の4つのいずれかです。
詐欺罪は初犯でも拘禁刑になる?
詐欺行為をしてしまい、逮捕・起訴されたとしても、初犯であれば執行猶予つきの判決となる可能性が高いです。
どの処分が下されるかは、犯行の悪質性、組織的犯罪かどうか、被害弁償の有無、動機や反省等の事情を考慮して決められます。初犯で、前科や前歴がないことは有利に考慮されます。
しかし、初犯であっても、執行猶予がつかず、拘禁刑の実刑になってしまう場合もあります。具体的には、複数の余罪がある場合、振り込め詐欺など組織的犯罪で犯行態様が悪質な場合、被害が大きく被害弁償もされていない場合などです。
拘禁刑になると、刑務所に収監され、前科がつくことになります。
詐欺未遂でも訴えられる?
詐欺罪には、未遂罪が規定されています(刑法246条、250条)。そのため、詐欺未遂の場合でも、刑事事件で訴えられ、罪に問われる可能性があります。
詐欺未遂の具体例としては、オレオレ詐欺で被害者宅にお金を取りに来た受け子が逮捕されるケースなどがあります。
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一方、詐欺未遂の場合、民事上の損害賠償請求は認められません。というのも、詐欺未遂の場合は損害自体が発生していないからです。未遂でも精神的苦痛を受けたとして慰謝料を請求される可能性もありますが、未遂の場合は同様に慰謝料請求も認められないのが原則です。
詐欺未遂と詐欺既遂の違い
| 詐欺未遂 | 詐欺既遂 | |
|---|---|---|
| 刑罰 | あり | あり |
| 損害賠償 | 不要(認められない) | 必要 |
詐欺罪で執行猶予判決を得るためには?
詐欺罪には拘禁刑しかないため、罰金刑になることはありません。そのため、詐欺罪で起訴されると必ず正式裁判が開かれ、執行猶予か実刑かが決められることになります。
日本では裁判で無罪判決を得ることは極めて困難です。
詐欺罪で執行猶予判決を得るためには被害者と示談をすることが重要です。
詐欺罪は他人を騙して財産を得る犯罪なので、被害を弁償して被害者の許しが得られれば、有利な事情として考慮してもらえるからです。
示談を成立させて執行猶予判決に繋げるには、弁護士に依頼することも重要なポイントです。
詐欺罪で時効を待つよりも、弁護士に相談して早期解決を
詐欺罪で不起訴、前科なしになるには?
詐欺罪で不起訴処分を獲得し、前科がつくことを阻止するには、被害者に謝罪と賠償を尽くして示談に応じてもらうことが重要です。詐欺罪は、被害者を騙して財産的な損害を与える犯罪なので、被害を弁償して許してもらうことが有利な事情として大きく考慮されるからです。
組織的な詐欺事件(オレオレ詐欺等)や前科がある等でなければ、示談をすることで不起訴を獲得できる可能性が高まります。
また、無賃乗車など被害が軽微な詐欺事件では弁護活動によって、示談ができなくても不起訴がもらえる可能性もあります。諦めずに早急に弁護士に相談することが重要です。
詐欺罪で示談する主なメリット

詐欺罪で示談するメリットには、不起訴処分を獲得できる可能性が高まること、民事上の問題も解決できること、被害者側にも役立つことなどがあります。まず、詐欺罪のような財産犯の場合、被害弁償をして示談できれば、被害者の損害が回復されたと考えられるので、有利な事情として考慮されます。
また、詐欺罪の場合、刑事処分とは別に被害者から損害賠償を請求される可能性がありますが、損害賠償の支払いも含めて示談することで、後から民事裁判を起こされることなく問題を一挙に解決できます。また、示談して賠償を尽くすことは、被害者にとっても早く損害回復ができるのでプラスになります。
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詐欺罪でも弁護士がいれば被害者と示談は可能
詐欺罪では被害者との示談が重要ですが、加害者側が直接被害者と交渉して示談することはおすすめできません。当事者間で無理に示談を勧めると、脅迫・強要など別の罪に問われたり、証拠隠滅を疑われる可能性があります。
しかし、弁護士に依頼すれば、最善の方法で被害者と示談することができます。そもそも被害者の連絡先を知らない場合は、弁護士を通じなければ被害者と接触することすらできません。
また、弁護士を通して謝罪の意思を伝えることで、事件を許して示談に応じてくれる被害者も少なくありません。
アトムの解決事例(詐欺事件の示談で不起訴獲得)
被害者女性の会社を騙し、虚偽の賠償金の存在を匂わせて不当に金銭をだまし取ったとされるケース。会社を騙すに際して契約書や領収書を偽造した。
弁護活動の成果
被害者と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分を獲得した。
詐欺被害者が会社の場合の示談はどうなる?
詐欺の被害者が会社の場合、示談の相手は会社になります。実際には、会社の代表者や、法務部や総務部の担当者などと示談をするのが通常です。
被害者が会社の場合は連絡先が分かることが多いですが、加害者個人が示談するのは困難ですし、また個人で動いて交渉すべきではありません。
弁護士なら、会社の適切な担当者と交渉し、示談に応じてもらえる可能性が高まります。詐欺の被害者が会社の場合、損害が大きくなりがちです。弁護士であれば、知識や交渉スキルを備えた経営者等とも対応し、被害弁償の方法等も交渉することが期待できます。まずは弁護士にご相談ください。
弁護士が示談交渉を行うメリット
| 弁護士 | 本人 | |
|---|---|---|
| 被害者の連絡先 | 問い合わせ可能 | 分からない |
| 示談成立 | 早期成立 | 時間がかかる |
| 示談金 | 妥当な金額が分かる | 妥当な金額が分からない |
アトムの解決事例(詐欺事件の示談で不送致)
勤務先の会社において、私物の電化製品等を購入した領収書を提出し、支払いを受けたとされたケース。依頼者が退職後、刑事事件化前に受任。
弁護活動の成果
被害会社と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。刑事事件化せず事件終了となった。
示談の有無
あり
最終処分
不送致
詐欺罪の弁護士相談はアトム法律事務所へ
詐欺罪は重大犯罪であり刑罰も重たいです。詐欺で逮捕される不安を常に抱えたまま生活するよりは、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
詐欺事件は、いかに早く弁護士に相談するかで、その後の流れが変わります。逮捕を回避したり、不起訴を獲得したり、執行猶予を目指すためには、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることが何より重要です。
弁護士の口コミ・アトムを選んだお客様の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のお客様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
不安で何も信じられない中、温かくご対応頂きました。

(抜粋)この度は、大変お世話になりました。警察の捜査で、不安になり、何も信じられなくなっていた私の話を親身になって聞いていただき、かつ適切にアドバイスをいただいたおかげで不起訴処分になりました。お世話になった山下先生、中村先生には感謝の気持ちでいっぱいです。山下先生、適切なアドバイス、迅速なご対応ありがとうございました。中村先生、何もわからず不安でいっぱいの私の相談に温かくお応えいただき本当に助けられました。ありがとうございます。2人の先生の弁護がなければ、不起訴処分はなかったと思います。本当にありがとうございました。
被害者様に嘆願書までいただき、精神的にも支えてもらいました。

(抜粋)本当に先生には、大変お世話になりありがとうございました。精神的にも、支えられ、先生のアドバイスがなければノイローゼになっていたと思います。誠実な対応や的確なアドバイス又被害者の方の単願書まで頂く事が出来、感動致しました。困難な事例だったと思いますが、粘り強く1つ1つ解決して頂きました。値段は高かったのですが、アトムさんにお願いして本当に良かったと思いました。温かい人柄で、今まで支えていただき本当にありがとうございました。
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