詐欺の受け子とは、オレオレ詐欺などの特殊詐欺で、被害者のお金やキャッシュカードを受け取る人のことです。
詐欺の主犯格ではありませんが、受け子は詐欺の実行犯なので、現場で逮捕される可能性も高く、起訴されれば初犯でも実刑になる可能性があります。
令和5年度、特殊詐欺の検挙人数のうち約75.6%が受け子・出し子など主犯格でない者でした(警察の統計より)。
「高額バイト」などの誘い文句で勧誘され、個人情報を教えてしまい、受け子として詐欺に加担せざるを得なくなるケースもあります。
本記事では、詐欺の受け子について、逮捕の流れ、不起訴や刑罰の軽減を目指す方法などを解説します。
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目次
詐欺の受け子の罪名・刑罰
詐欺の受け子とは?
詐欺の受け子とは、オレオレ詐欺などの詐欺事件で、金融機関の職員や警察、弁護士、息子の知人などのふりをして、被害者からお金やキャッシュカードを受け取る役割の人のことです。
関連記事
・オレオレ詐欺・振り込め詐欺の逮捕はどうなる?不起訴や執行猶予の可能性は?
詐欺の受け子の類型
詐欺の受け子には、以下のような類型があります。
詐欺の受け子の類型
- 現金受け取り型
被害者から直接、現金を受け取る類型。 - 現金送付型
被害者から送付されてくる現金を受け取る類型。 - キャッシュカード受け取り型
被害者から直接、キャッシュカードを受け取る類型。 - キャッシュカードすり替え型
被害者のキャッシュカードと、事前に用意しておいた偽物のカードをすり替える類型。
キャッシュカード受け取り型・すり替え型の受け子は、高齢者の特殊詐欺被害が増え、多額のお金の引き出しについて、銀行が警戒を強めた頃から増加した手口です。
詐欺の受け子・出し子・かけ子の違い
なお、キャッシュカード受け取り型・すり替え型の場合、その後、口座からお金を引き出す役割を担う人もいます。この人のことを「出し子」と呼びます。
また、電話をかけて被害者をだます役割の人を「かけ子」といいます。
役割 | |
---|---|
受け子 | 現金やキャッシュカードを被害者から受け取る |
出し子 | 被害者に振り込ませた現金をATMから引き出す 関連記事:詐欺の出し子で逮捕された後の流れ |
かけ子 | 親族や公的機関を名乗り被害者に電話をかける |
詐欺罪(受け取り型・送付型)の場合
詐欺の受け子のうち、現金受け取り型・キャッシュカード受け取り型・現金の送付型は、詐欺罪に問われます。
詐欺罪の法定刑は1ヶ月以上10年以下の懲役です(刑法246条1項)。
詐欺罪には罰金刑はなく、刑事裁判で有罪になれば、1ヶ月以上10年以下の範囲で、懲役刑がくだされます。
受け取り型・送付型が詐欺罪になる理由
詐欺罪は、被害者が財産を渡したくなるような嘘をついて、被害者に誤解させ、財産を交付させ、不当に利益を移転させる犯罪です。
かけ子が電話で被害者に嘘をついた時点で、詐欺罪の実行の着手が認められるので、その後に関与した受け子や出し子も共犯者として詐欺罪に問われます。
詐欺罪になる仕組み
- 嘘をつく(いつわる行為)
←かけ子が被害者に電話をかけて嘘をつく - 被害者の誤解(錯誤)
←被害者がお金やカードを渡そうと決意する - 財産の交付
←受け子が被害者からお金やカードを受け取る - 利益の移転
←受け子が現金を受け取ったことで、被害者のお金が組織のものになる
←出し子がキャッシュカードで預金を引き出し、犯行グループのものになる
窃盗罪(すり替え詐欺)の場合
詐欺の受け子のうち、キャッシュカードすり替え型は、窃盗罪に問われます。
窃盗罪の法定刑は、1ヶ月以上10年以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金です(刑法235条)。
すり替え詐欺が窃盗罪になる理由
窃盗罪は、財産を持っている人の意思に反して、財産を盗む罪です。
すり替え型の受け子は、被害者に印鑑を取りに行かせる等して注意をそらし、その間に事前に用意しておいた偽物のカードとすり替えます。
被害者の目を盗んでおこなうカードのすり替えは、被害者の意思に反して財産を盗む行為といえるので、受け子は窃盗罪に問われます。
関連記事
・窃盗罪の法定刑・構成要件は?不起訴処分や執行猶予を獲得するには?
詐欺の受け子の量刑相場は?
詐欺の受け子・出し子の執行猶予の割合
執行猶予とは、有罪判決で言い渡された刑罰の執行が猶予されるというものです。懲役刑が言い渡されても、執行猶予がつけば、すぐに刑務所に入る必要はありません。
一方、執行猶予がつかずに、すぐに刑務所に入るような判決のことを実刑判決といいます。
令和2年度、犯行の手口に特殊詐欺が含まれている事案で、東京地裁・横浜地裁・さいたま地裁・千葉地裁で判決の言渡しを受けた者についての統計があります。
この統計では、詐欺の受け子・出し子で執行猶予がついた割合は45.1%、実刑の割合は54.9%でした。
執行猶予・実刑 | 割合 |
---|---|
執行猶予 | 45.1% |
実刑 | 54.9% |
『令和3年版 犯罪白書』「第8編 詐欺事犯者の実態と処遇【PDF:4.9MB】」「8-5-3-16図」(P.422)より抜粋して編集。犯行の手口に特殊詐欺が含まれている者(特殊詐欺事犯者)のうち、東京地方裁判所、横浜地方裁判所、さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者についての調査結果。
特殊詐欺は、組織的・計画的に遂行され、被害者の心情につけいるなど犯行態様は悪質で、被害金額が多額になることも多く、刑罰は重くなりがちです。
受け子は、組織の末端といえども、お金やカードを受け取るという詐欺の犯行において不可欠な役割を果たします。
そのため、詐欺の受け子も「実刑」という重たい刑罰になる可能性は十分にあるのです。
詐欺の受け子・出し子の刑罰の分布
同じ統計では、詐欺の受け子・出し子の量刑の分布も紹介されています。
統計上、詐欺の受け子・出し子でもっとも多い量刑は、2年以上3年以下の懲役(全部執行猶予)で約44%でした。
刑期 | 執行猶予・実刑 | 割合 |
---|---|---|
~1年未満 | 全部執行猶予 | 1.1% |
1年以上~2年未満 | – | なし |
2年以上~3年以下 | 全部執行猶予 | 44.0% |
1年以上~2年未満 | 実刑 | 5.5% |
2年以上~3年以下 | 実刑 | 37.4% |
3年超~4年以下 | 実刑 | 11.0% |
4年超~5年以下 | – | なし |
5年超~10年以下 | 実刑 | 1.1% |
『令和3年版 犯罪白書』「第8編 詐欺事犯者の実態と処遇【PDF:4.9MB】」「8-5-3-16図」(P.422)より抜粋して編集。犯行の手口に特殊詐欺が含まれている者(特殊詐欺事犯者)のうち、東京地方裁判所、横浜地方裁判所、さいたま地方裁判所及び千葉地方裁判所で判決の言渡しを受けた者についての調査結果。
執行猶予判決の要件
法律上、判決が懲役3年以下であれば、執行猶予となる可能性があります。しかし、3年を超える懲役刑の場合は執行猶予を付けることはできません。特殊詐欺で逮捕された場合、初犯であっても執行猶予が付けられず、実刑となることがあるのです。
特殊詐欺では、「息子の緊急事態に身を削って金策をした」という被害者もいます。被害者の被害感情や犯人への処罰感情が峻烈であるほど、検察官は代弁する形で厳しい判決を求めます。組織の末端である受け子であっても一発実刑となる可能性は否定できません。
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詐欺(受け子)のアトムの解決事例
詐欺の受け子:不起訴処分
詐欺未遂事件として現行犯逮捕された事案。アルバイト先から荷物を受け取るよう指示を受け、被害者宅に行き現金を受け取ろうとしたもので、故意を否認していたケース。
弁護活動の成果
詐欺の受け子をやらされるとは知らなかった旨を検察官に主張。処分保留で釈放されたあと不起訴処分となった。
最終処分
不起訴
詐欺の受け子:懲役3年執行猶予5年
オレオレ詐欺の受け子をしたとされたケース。電話で指示を受け指定の場所で被害者から金銭を受け取ろうとしたところ、警察に逮捕された。詐欺未遂の事案。
弁護活動の成果
起訴後に受任。被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。裁判の場で情状弁護を尽くし執行猶予付き判決を獲得した。
示談の有無
あり
最終処分
懲役3年執行猶予5年
詐欺の受け子:懲役3年執行猶予5年
いわゆるオレオレ詐欺の受け子を行ったとされたケース。弁護士を装い、数名の被害者から合計1000万円以上を受け取った。後日警察が自宅を訪問し、詐欺容疑で逮捕された事案。
弁護活動の成果
被害者全員と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。裁判の場で情状弁護を尽くし執行猶予付き判決を獲得した。
示談の有無
あり
最終処分
懲役3年執行猶予5年
詐欺の受け子の逮捕
詐欺の受け子の逮捕手続き
詐欺の受け子は、現行犯逮捕されたり、後日逮捕されたりします。
詐欺の受け子の逮捕手続き
- 現行犯逮捕
犯行の最中や直後に現場で逮捕されること - 後日逮捕
裁判官が発行した逮捕状を根拠に、犯行後しばらくしてから逮捕されること
逮捕の種類について詳しく知りたい場合は『 逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説』の記事もご覧ください。
詐欺の受け子を逮捕するための捜査
さて、詐欺の受け子が逮捕されるきっかけは、だまされたふり作戦などが代表例です。
受け子が逮捕されるきっかけ
- だまされたふり作戦
- 防犯カメラ
- 共犯者の供述(自白)
だまされたふり作戦
詐欺の受け子は、だまされたふり作戦により、現行犯逮捕される可能性が高いです。
だまされたふり作戦とは、特殊詐欺に気づいた被害者が、警察の指示でだまされたふりを続け、受け子をおびきだして現行犯逮捕する手法です。
だまされたふり作戦が実行された場合、詐欺の受け子は詐欺未遂罪で逮捕されます(最高裁判所平成29年12月11日決定)。
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被害者宅周辺の防犯カメラ
詐欺の受け子は、防犯カメラ映像により、後日逮捕される可能性もあります。
詐欺の受け子は被害者の自宅に行くので、周辺の防犯カメラ映像に車のナンバーなど犯人特定につながる情報が映っていることがあるのです。
また、防犯カメラによる追跡調査により、詐欺の受け子が逮捕されることもあります。
ATMに設置された防犯カメラ
キャッシュカード受け取り型・すり替え型の場合、被害者からキャッシュカードを入手した受け子が、そのまま出し子として、ATMで預貯金を引き出す場合があります。
この場合、ATMに設置された防犯カメラに、犯行中の姿が録画されるので、動かぬ客観的な証拠となります。
共犯者の供述
特殊詐欺は、組織的な犯罪です。自分が逮捕されなくても、共犯者の自白で自分が受け子として関与していたことがバレてしまう可能性があります。
逮捕されたらすぐに弁護士接見を
逮捕されると、その直後から警察の被疑者取調べが始まります。犯行の経緯や動機について、細かく確認されます。ここでの供述は今後の刑事事件の流れに影響を及ぼしますので、後に不利益にならないよう慎重な受け答えをしなければいけません。
そこで、弁護士の助言が必要になります。
弁護士はいつでも本人と面会することが可能です。
たとえ、ご家族が面会禁止(接見禁止)であっても、弁護士なら留置されている警察署へおもむき、面会(接見)を申し入れることができます。
ご家族が特殊詐欺で逮捕されてしまった場合には、弁護士に相談し、警察署への派遣を検討してください。
詐欺の受け子の逮捕後の流れ
(1)警察官の取り調べ・送致
詐欺の受け子で警察に逮捕された後は、警察官の取り調べを受けます。
そして、警察の逮捕後24時間以内に、検察官に事件が引き継がれます(送致)。
取り調べの対応方法については『警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ』の記事で詳しく解説しています。
(2)勾留・勾留延長
勾留とは、逮捕後におこなわれる身体拘束手続きのことです。
勾留は原則10日間です。
勾留が延長されるとさらに10日を限度として身体拘束が継続して行われます。
勾留・勾留延長が決定する流れ
詐欺の受け子の身柄を受け取った検察官は、捜査のためにまだ釈放はできないと判断した場合、裁判官に対して勾留請求をおこないます。
勾留請求をうけた裁判官は、勾留するかどうかを審査します。
被疑者は裁判官から勾留質問を受けることになります。問答の後、裁判官から勾留するか否かの決定が下されます。
詐欺の受け子は勾留になりやすい
勾留は、住居不定、証拠隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかが認められ、勾留の必要性がある場合に決定されます。
オレオレ詐欺や振り込め詐欺などの特殊詐欺は、組織的に行われているケースが大半です。このような共犯者がいる犯罪では、証拠隠滅(口裏合わせ・口封じ)のおそれがあると考えられますので、逮捕後、勾留が続く可能性が高いです。
関連記事
・勾留とは何か。勾留手続きや拘留との違いは?早期釈放を実現する方法
詐欺の受け子は接見禁止になる?
接見禁止とは、証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれなどがある被疑者について、勾留中、弁護士以外の者との面会が禁止されることです。
オレオレ詐欺などの組織的犯罪では、関係者を通じた証拠隠滅行為を防ぐために、勾留中、「接見禁止」の処分が出されることがあります。
接見禁止処分になれば、外部との接触は一律に禁止されることが見込まれます。
つまり、接見禁止になれば、ご家族の方でも面会できないことが通常です。
最大20日間の勾留中ずっと、接見禁止となり、ご家族と会えないのは、ご本人にとって相当な心の負担となります。
家族と会えず心の支えがないまま、取調べに臨めば、警察官の誘導どおりに受け答えをしてしまうリスクも高まります。
このような場合はぜひ弁護士を頼ってください。
弁護士に伝言を依頼するなどして、ご本人の支えになることができます。証拠隠滅行為にあたらない限り、弁護士はご家族のサポートも可能なのです。
関連記事
・逮捕後の接見禁止は解除できる?接見禁止の解除方法を弁護士が解説
(3)起訴
検察官は、勾留(または勾留延長)の満期までに、被疑者を詐欺の受け子として起訴するかどうかを決定します。
起訴とは、刑事裁判を開く手続きをとることです。
不起訴を目指すには、検察官が起訴の判断を下す前に、手を尽くす必要があります。
(4)裁判
裁判では、裁判官が証拠調べをおこない、被告人を有罪にするか無罪にするか、有罪の場合は刑罰をどうなるかなどを決めます。
起訴後、多くの場合、起訴から約1ヶ月程度で初回の裁判期日をむかえることになります。
単純な事件では2回程度で裁判が終わることも多いです。
しかし、詐欺の受け子として多数の事件にかかわっている場合、証拠調べに多くの時間を割く必要があるので、裁判が長引く可能性があります。
なお、特殊詐欺に加担してしまったのが20歳未満の少年である場合は成人と異なる手続きが取られることになるので、詳しくは『未成年が詐欺罪で逮捕された後の流れは?捜査や少年審判の対応方法』の記事をご覧ください。
詐欺の受け子の弁護活動
(1)詐欺の受け子の「示談」
詐欺の受け子をしてしまった場合、被害者の方との示談は非常に重要です。
示談とは、加害者が被害者に謝罪をして、被害者の方と和解することです。
示談の効果
示談が成立していれば、判決で執行猶予が獲得できたり、刑の減軽が実現したりする可能性があります。
受け子という特殊詐欺の悪質性を考えると厳罰に処せられる可能性が高いですが、被害者との示談ができていることで不起訴の可能性も残されているでしょう。
特に、「早い段階で示談が成立していること」や「被害者からの許し(宥恕)を得た示談であること」は、後の刑事処分に影響を与えます。
詐欺の受け子の示談金
詐欺事件の示談では、示談金(詐欺の示談で支払うお金)、被害弁償(だましとったお金と同額の返金)を支払うケースも多いです。
ただし、特殊詐欺の場合、被害者の人数が多数おり、被害金額が膨大になることも予想されます。
受け子の場合、詐欺に加担したときの報酬は多くて1件5万円程度です。そのため、受け子ひとりだけで被害者に返金等をすることが難しいことも多いです。
この場合、詐欺の受け子が準備できるお金を等分した金額を、被害者の方々に提示し、納得いただけないか交渉を試みる対応が考えられます。
また、詐欺の共犯者が明らかになっている場合は、他の加害者についた弁護士とも足並みを合わせつつ、少しでも被害者に返金できるよう段取りを進めるケースもあります。
刑事事件や示談交渉の経験が豊富な弁護士に相談し、なるべく早期の段階で示談成立にむけて動いてもらいましょう。
関連記事
・詐欺事件で示談できると刑事罰が軽くなる?示談成功のポイントがわかる
特殊詐欺での示談のポイント
オレオレ詐欺や振り込め詐欺など、特殊詐欺での示談にはいくつかポイントがあります。それは、徹底的に被害者の感情に寄り添うことです。
たとえば、被害者が高齢である場合、騙されてお金を振り込んだことを家族に責められ、被害者自身が自責の念に苦しんでいるというケースもあります。事件を起こしたことで、どこまで深い傷を負わせることになったかをよく理解し、それに対して真摯に謝罪をすることが大切です。場合によっては、被害者家族全員への謝罪も検討しなければなりません。
また、被害者は一度騙されるという経験をすると、弁護士が被害弁償のために連絡をしても、「それも嘘なのではないか」と警戒をすることがあります。被害者の心情に十分な配慮が必要ですので、場合によっては検察官に示談の趣旨を被害者に伝えてもらってからコンタクトをとることもあります。
(2)詐欺の受け子の「不起訴」
不起訴を目指す場合、検察官に不起訴の判断をだしてもらえるよう、検察官を説得する必要があります。
無実である場合、不起訴を目指すべきです。
一方、詐欺の受け子をしてしまった場合でも、諸般の事情から不起訴(起訴猶予)になるケースもあります。
弁護士は、詐欺の受け子が不起訴になる理由について検討し、意見書、面談などで検察官と交渉します。
(3)詐欺の受け子の「執行猶予」
詐欺の受け子で実刑判決を回避し、執行猶予を目指すには、真摯に反省し、更生の道を進んでいることを示す必要があります。
たとえば、被害者の方との示談、詐欺の関係者と連絡を絶つこと、就労・就労意欲など、反省や更生の可能性を示す事情をより多く主張することが重要です。
詐欺の受け子になってしまったご本人が今後更生できるよう、ご家族がご本人を監督していくことを誓約することも重要なポイントです。
(4)詐欺の受け子の「無罪」
詐欺の受け子が無罪を目指す場合、詐欺の故意が無かったことを主張することが考えられます。
現金受け取り型の受け子の場合、(1)被害者から受領する物が現金であること、(2)受領が詐欺等の違法行為にもとづくことの2点を認識しているとき、故意が認められる傾向があります。
そのため、現金受け取り型の詐欺の受け子が、無罪を目指す場合は、これら(1)(2)の認識が無かったことを主張する必要があります。
ただし、無罪主張が簡単に認められるわけではありません。
受け子は受領の際に偽名を名乗るでしょうし、対面して高齢者から何らかの物を受領すること、面識のない相手の指示に従い待機・移動・受領をおこなうこと等から、昨今社会問題化している特殊詐欺ではないかと容易に見当がつくからです。
そのため、早急に、刑事事件に強い弁護士に具体的な事情を相談して、あなたが無罪であることを主張できる根拠を見つけてもらう必要があります。
(5)詐欺の受け子の「保釈」
保釈とは、起訴後に釈放されることです。
詐欺の受け子の場合、共犯者が多く、証拠隠滅のおそれ(刑事訴訟法89条4号)に配慮しなければならないなど、保釈の許可が下りにくい傾向はあります。
しかし、刑事事件に強い弁護士は、タイミングを見計らないながら、早期保釈が実現するようチャレンジをあきらめません。
関連記事
・保釈申請の流れ。保釈条件と必要な保釈金は?起訴後の勾留から解放
Q.詐欺の受け子は若者が多い?
統計資料によると、受け子の5人に1人は少年であるとのことです。令和5年における特殊詐欺に関わった少年の検挙人員は、特殊詐欺の総検挙人員の17.6%を占めます。そのうち、受け子としてかかわった少年は受け子の総検挙人員の19.8%です(警察庁刑事局の資料「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」より参照)。
近年では、X(旧ツイッター)などのSNS、ネット掲示板等で、「書類や荷物を受け取るだけの簡単なアルバイト」と偽る闇バイトの求人に、未成年者を含む若者が応募し、犯罪に巻き込まれるケースが目立ちます。
また、もともと知り合いだった先輩から気軽に誘われて、受け子をしてしまう少年も多いです。先輩と後輩という関係上、怪しいと感じても断りにくい状況を利用されます。
詐欺の受け子になるきっかけ
- お金に困って、掲示板でみずから応募
- 先輩からすごまれ、詐欺に加担
- SNSで楽して稼げるバイトに応募したら、特殊詐欺の受け子だった
Q.我が子を詐欺の受け子にさせない対策
我が子を特殊詐欺に加担させないために、親ができることは、まず第一に「日ごろから家族で会話する時間を設ける」ことです。
親として、子どもを特殊詐欺に加担させないためには、「深夜の外出や無断外泊させない」といった対応も必要かもしれません。
また、子どもがインターネット、スマホなどを利用する際、保護者(ペアレント)が制限を設定できる機能(ペアレンタルコントロール)を適切に使い、子どもの動向を見守るという対応も考えられます。
Q.詐欺の受け子の闇バイトの特徴は?
特殊詐欺の受け子を始めとする闇バイトでは、バイトに応募する際、不自然な方法で個人情報の送信を求めてきたり、テレグラムの利用を支持されたりします。
この時点で、特殊詐欺であると気づき、手を引くことが賢明です。
特殊詐欺を含む闇バイトの特徴
- 写真(身分証を持った自撮り)の送信を要求される
- 写真(現住居の分かる公共料金などの請求書)の送信を要求される
- Googlemapなどで調べた自宅の位置情報、自宅の写真の送信を求められる
- 家族の情報を教えるように求められる
こういった情報を使って「警察に相談したら制裁を加える」「受け子に加担したことをバラす」などと脅され、抜け出したくても抜け出せない状況に追い込むのが組織の常とう手段です。
Q.詐欺の受け子になった後の対処法は?
闇バイトに申し込んでしまい、組織から脅されて抜け出せなくなってしまったら、迷わず「警察相談ダイヤル#9110」や近くの「警察署」、都道府県警察本部の「少年相談窓口」などに相談しましょう。
なお、すでに受け子で逮捕されてしまった場合は、ご家族の方が弁護士に今後の対応を相談してください。
初回接見サービスのご案内
刑事事件は逮捕直後から、きびしい取り調べが始まります。特殊詐欺の場合、余罪が多数あることも想定されます。
弁護士なら、逮捕直後からご本人に面会できます。取り調べのアドバイスはもちろんのこと、証拠隠滅行為に該当しない限りで、ご家族からのご伝言も承ることが可能です。
- 本人の口から事情を聴きたい
- 味方であると伝えたい
- 刑事事件に強い弁護士をつけてあげたい
このようなご要望がある場合、アトム法律事務所の初回接見サービスをご検討ください。
詐欺の受け子事件は弁護士相談を!
最後にひとこと
詐欺の受け子は、被害者から直接お金やキャッシュカードを受け取る役割なので、足がつきやすく逮捕されやすいといえます。
また、詐欺の受け子は組織の末端ですが、詐欺組織の一員であることには変わりないので、起訴されれば重たい処罰が下される可能性が高い犯罪です。
ただし、詐欺の受け子は、詐欺の故意が無い場合、被害者と示談ができた場合、更生の能性が高い場合など、不起訴を目指せる可能性はあります。
起訴された場合も、刑事事件に強い弁護士に情状弁護を依頼することで、執行猶予付きの判決を目指せる可能性があります。
詐欺事件を弁護士に相談するか迷われている場合は、こちらの関連記事『詐欺加害者の弁護士|詐欺に強い弁護士とは?弁護士費用や選び方がわかる』もあわせてご覧ください。
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- 詐欺の受け子で、息子が逮捕された
- 詐欺の受け子で、警察の家宅捜索を受けた
- Twitter・テレグラムで応募したアルバイトの件で、警察から呼び出しを受けた
このようなお悩みをお持ちの方は、気軽にお問い合わせください。
逮捕されると刑事手続きはどんどん進められ、「気が付けば起訴されていた」ということにもなりかねません。事件の全体像や裁判の流れ、判決の見込みも把握していく必要がありますので、まずは専門家に助言を求めることが大切です。
オレオレ詐欺の「受け子」で逮捕されると、長期にわたり身体拘束されることが予想されます。また、刑事裁判を受けることも視野にいれなければいけません。会社への対応をどうするか、ニュース報道への対応をどうするか、警察の捜索にはどう対応すべきか、検討することはたくさんあります。
どれだけ早い段階で弁護士に適切な弁護活動をしてもらうかが重要です。
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