ひき逃げをすると、救護義務違反だけでなく過失運転致死傷罪なども成立します。ひき逃げは、通常の交通事故よりも悪質性が高く、厳しい刑事責任が問われやすい犯罪です。
重大事故で逃げたケースだけに限らず、以下のような状況もひき逃げに該当する可能性があります。
- 交通事故の後に現場を離れてしまった
- 接触がなかったと思った
- 相手が大丈夫と言ってその場を去ってしまった
全てのケースで逮捕されるとは限りませんが、被害者をひいたことに気づきながら逃げてしまうと、警察に発覚して逮捕される可能性が高くなるでしょう。
適切に対処すれば何事もなく解決できたようなちょっとした事故が、ひき逃げ事件となってしまい、刑罰が科されてしまうケースもあるのです。
この記事では、ひき逃げすると逮捕されるのか、逮捕後の流れ、前科はつくのかという気になるポイントについて詳しく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
ひき逃げすると警察にバレる?逮捕される?
ひき逃げすると警察にバレる?
ひき逃げは警察に犯行が発覚しやすい事故類型です。
警察が事故現場の周囲にある防犯カメラなどを活用して捜査すれば、ひき逃げの多くのケースで加害者が特定されるでしょう。
事故を起こした運転手には、被害者を救護する義務と警察に報告する義務が発生しますが、ひき逃げはこれらに違反しています。その上、被害者を死傷させている場合には、重大な犯罪として取り扱われることでしょう。
ひき逃げが発覚すると、多くのケースで逮捕され、事情聴取を受ける流れとなります。
ひき逃げすると必ず逮捕される?
ひき逃げをしたとしても、被害者が軽傷の場合は逮捕されないこともありえます。
しかし、ひき逃げの加害者は一度、犯行現場から立ち去っています。
このような事実があるため、逃亡の恐れがあるとして逮捕される可能性が高いといえるでしょう。
また、ひき逃げにより被害者が死亡したり重傷を負ったりした場合も、逮捕される可能性が高いです。
ひき逃げの場合は、街中に設置されている防犯カメラの映像、被害者や目撃者が記憶した加害車両のナンバーから警察の照会システムによって加害車両が特定されるケースがあります。その他にも、被害者や目撃者のドライブレコーダーから特定されることもあるでしょう。
これらの方法により、事件発生当日や翌日に警察が加害者の自宅に来て、逮捕に至ることが多いです。前科がつくことを回避したり、執行猶予や刑を軽減するためには、早期に弁護士に依頼することをおすすめします。
ひき逃げで逮捕されたら弁護士に相談
逮捕後、早期に釈放されるには弁護士に依頼することが最善の方法です。弁護士は、検察官や裁判官に勾留すべきではないという意見書を提出したり、面会して勾留しないよう説得します。
勾留された場合には、「準抗告」という不服申し立てを行い釈放に向けて活動を行うでしょう。
さらに、起訴された場合は、保釈の申し立てを行うことで身体拘束からの解放を目指します。
このように、弁護士は刑事手続きの各段階で釈放に向けて全力を尽くしてくれるのです。
ひき逃げにより逮捕・勾留され長期間の身柄拘束を受けた場合には、以下のようなリスクが考えられます。
- 近所や職場に逮捕されたことを知られてしまう
- 職場に逮捕されたことが知られて解雇される恐れがある
- 悪質な事故である場合には報道されて多くの人に知られてしまうことがある
このような事態を防ぐためにも早期の釈放が望ましいといえるため、弁護士を依頼して早期釈放となるよう取り組んでもらうべきでしょう。
ひき逃げで逮捕を回避するにはどうすればいい?
ひき逃げ後に逃げ続けるのは絶対NG
事故直後、気が動転して逃げてしまってもそのまま逃げ続けることは決してしないでください。
逃亡を続けるほど情状が悪くなり、刑罰が重くなるおそれが高まります。被害者の苦しみから目をそむけ生活を続けることは、加害者にとっても精神的に辛いものです。
とはいえ、自分一人で警察に出頭するのは勇気がいることです。事実関係を正確に説明することも一人では難しい場合も多いでしょう。
このような場合、弁護士に自首同行を依頼することで、精神的負担は相当軽くなります。
また、弁護士は、事前に事実関係を丁寧に聴き取り、事情聴取の際にどのように伝えるべきかアドバイスします。必要に応じて弁護士から警察に説明することも可能です。
交通事故事件の取り調べで聞かれる内容や、取り調べの注意点などについては『交通事故事件の加害者はどうなる?取調べの対応は?弁護士解説』の記事で解説しています。あわせてご確認ください。
ひき逃げ後は自首も検討する
ひき逃げ事故の直後に弁護士に相談して、自首に同行してもらうことで、逮捕を回避する可能性を高めることができます。
警察が被疑者を逮捕するためには、「逃亡のおそれ」と「罪証隠滅のおそれ」が必要です。
弁護士が自首に同行することで、いずれもリスクがないと判断されれば、逮捕されることはありません。弁護士は「さらに逃亡することはない」「出頭要請がある場合には必ず対応する」などと説得力をもって伝え、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを主張します。
もっとも、ひき逃げ事故の場合、「逃亡のおそれ」が既に現実のものとなってしまったため、自首したとしても逮捕・勾留される可能性が残っています。
しかし、逮捕・勾留の回避が難しかったとしても、自首することによって、裁判官の裁量次第で刑が軽くなる可能性があります(刑法42条1項)。事案によっては、略式起訴となり罰金で済んだり不起訴となることもありえるでしょう。
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・自首すると減刑や逮捕にどれくらい影響がある?自首の要件や方法を解説
ひき逃げとは?そもそもどんな犯罪?
どのような行為が「ひき逃げ」になるの?
ひき逃げとは、自動車などの運転中に人身事故があった場合に、道路交通法で定められた必要な措置を講じることなく現場を離れることをいうのです。
典型的には、自動車で人をひいてそのまま逃げる場合がひき逃げに当たります。
さらに、自動車同士が衝突して、負傷者が出たのに放置して逃げる場合も該当するでしょう。
ひき逃げはどのような犯罪に当たるの?
ひき逃げをした場合、運転者の義務を果たさなかったことについて、道路交通法の救護義務違反や報告義務違反の罪に該当します(同法第72条)。
また、相手方を自動車の運転で怪我をさせたことについて、自動車運転処罰法の過失運転致死傷罪(同法第5条)や危険運転致死傷罪(同法第2条)などに該当します。
複数の罪で同時に起訴された場合、道交法違反と過失致傷罪や危険運転致死傷罪は併合罪となり、刑罰の上限が変わるので注意が必要です。
ひき逃げした場合に懲役刑になるのか、罰金刑になるのかなど、ひき逃げの刑罰についての詳細は『ひき逃げの刑罰とは?初犯は執行猶予?ひき逃げの刑罰の実例を紹介』をご覧ください。
なお、自転車によるひき逃げ事故の場合は、自動車の場合と比べて軽い法定刑が設定されています。自転車でひき逃げした場合の刑罰や流れについての詳細は、関連記事をお読みください。
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・自転車でひき逃げしたらどんな罪?逮捕されない・不起訴で前科をつけない方法
ひいたことに気が付かなかった場合の犯罪
加害者が人をひいたことに気が付かなかった場合には、報告義務違反や救護義務違反が認められません。
そのため、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪のみが成立することとなります。
ただし、人をひいたことに気が付かなかったと判断されることが必要となるため、ただ気が付かなかったと主張するだけでは難しいでしょう。
ひき逃げで逮捕された後の流れ
ひき逃げの疑いで逮捕された場合、その後の刑事手続がどのように進むのか気になる方は多いでしょう。逮捕は最大3日間、起訴前勾留は最大20日間続く可能性があります。
ここでは、逮捕から起訴されるまでの流れを具体的にご説明します。
①逮捕~警察での取り調べ
逮捕されると警察で取調べを受けます。取調べは警察と一対一で行われるので、精神的に厳しいものがあるでしょう。
また、取調べで話した内容は供述調書という書面にまとめられますが、この書面の内容を後で「間違いだ」と認めてもらうのは非常に困難です。
そのため、供述内容やどういう記載の仕方がされているかは注意する必要があります。
特に、「ひいたことに気が付かなかった」など自身に有利となる供述内容を正確に記載してもらえるようにすることは、簡単ではないでしょう。
適切に対応するためにも、刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼し、取り調べで何をどう話すべきか十分にアドバイスを受けることをおすすめします。
②【逮捕後48時間】検察官への送致(送検)
警察は、留置する必要があると判断した場合、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければなりません。被疑者は、逮捕の翌日か翌々日に検察庁に連れて行かれ、釈放の有無が検討されることになります。
③【逮捕後72時間以内】勾留請求・勾留質問
検察官は、送致された被疑者と面談して、留置の必要があると判断した場合、送致から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければなりません。
つまり、勾留請求のタイムリミットは逮捕から72時間以内(3日間以内)です。
勾留請求を受けた裁判官は、被疑者と面接して勾留するかどうか決めます。これを勾留質問といいます。全国的には勾留請求日と同じ日に勾留質問が行われることが多いようです。
④【最大20日間】逮捕後の勾留
裁判官が勾留を必要と判断すると勾留状を発付します。これを勾留決定といいます。逮捕後の勾留は原則として10日間です。
ただし、裁判官が「やむを得ない事由」があると認めるときは、検察官の請求により勾留期間を延長することができます。延長期限は最大10日間です。
勾留が認められると、逮捕を含めて起訴・不起訴の判断が下されるまでに最大23日の身体拘束となるおそれがあるため、弁護士により勾留を防ぐ弁護活動を行ってもらうべきでしょう。
⑤起訴・不起訴の決定
勾留期間が終わると、検察官は起訴するかどうかの判断を行います。ひき逃げの場合、悪質性が高いと判断されて刑事裁判になる可能性が高いです。
もっとも、被害者が軽傷の場合など状況によっては略式起訴となり罰金刑で済むこともあります。
また、示談が成立して被害者が加害者を許すという意思を示している場合などは、不起訴となる場合もあるでしょう。
⑥裁判・判決
起訴となった場合には、検察官の作成した起訴状が届き、定められた期日に裁判が行われます。
起訴後は保釈請求により釈放可能
起訴となった後であれば、保釈請求を行うことで身柄拘束から解放することが可能です。
保釈請求を行うには保釈金を納めることが必要となるので、事前に保釈金の相場額を確認して用意しておくと良いでしょう。
保釈請求の流れについて詳しく知りたい方は『保釈申請の流れ。保釈条件と必要な保釈金は?起訴後の勾留から解放』の記事をご覧ください。
裁判では執行猶予付きの判決となれば釈放可能
裁判が進行し、判決の言い渡しがなされた場合、執行猶予付きの判決であれば判決の言い渡しを受けると同時に釈放となります。
執行猶予付きの判決を受けられるよう、刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼するべきといえるでしょう。
執行猶予と実刑判決の違いについて詳しく知りたい方は『執行猶予とは?懲役実刑との違いは?執行猶予中の逮捕で取り消し?』の記事をご覧ください。
ひき逃げで逮捕されると前科がつくのか
ひき逃げの場合、刑事裁判で有罪になった場合や、略式起訴されて罰金刑になると前科がつきます。前科がつくことを避けるには、不起訴処分とすることが必要です。
ひき逃げで不起訴処分となるには示談が重要
不起訴処分となるには、一日も早く被害者に謝罪と賠償を行い示談を成立させることが重要です。では、早期に示談を成立させるにはどうすればよいのでしょう。
多くの場合、加害者は対人無制限の保険に加入していると思います。
しかし、その場合でも保険会社に任せきりにせず、弁護士に依頼の上、示談交渉を行うことをおすすめします。
なぜなら、保険会社による示談は進捗が遅いことが多いので、刑事処分が出るまでに成立しないおそれが高いからです。
また、保険会社による示談書には被害者が加害者を許すという文言は入っていないことが一般的です。この点でも、保険会社による示談を待っていては不十分といえるでしょう。。
一方、弁護士は被害者の心情に十分配慮しつつ、早期の示談成立を目指して交渉を進めます。刑事弁護の経験豊富な弁護士であれば、加害者を許すという文言付きの示談書を取り交わすことも期待できるのです。
そして、弁護士は、検察官に対し、示談書を添付した上で起訴しないよう求める意見書を提出します。検察官が、起訴は必要ないと判断すれば不起訴となり、直ちに釈放され前科もつきません。
刑事弁護士の示談 | 保険会社の示談 | |
---|---|---|
示談内容 | 刑事処分への影響大 | 刑事処分への影響小 |
交渉期間 | 即交渉で短期間 | 治療待ちで長期間 |
ひき逃げの刑罰は初犯だと執行猶予や減刑となるのか?
ひき逃げは、悪質性が高いと判断され刑事裁判になる可能性が高い犯罪です。裁判になった場合、禁錮刑よりも重い懲役刑が求刑されるのが一般的でしょう。
もっとも、前科前歴がなく、被害者が死亡していないケースでは執行猶予になる可能性も十分あります。量刑は一概には言えませんが、初犯で死亡事案でなければ、懲役1年から2年、執行猶予3年となることが多いようです。
他方、危険運転致死傷罪など悪質性が相当高い犯罪の場合、初犯でも実刑になる可能性が高いです。
裁判で重視されるのは、ひき逃げの態様、悪質性、怪我の程度や後遺症の有無といった結果の大きさになります。
執行猶予や減刑となるためには、示談を成立させることが非常に重要です。被告人が真摯に反省していることや家族による監督が期待できるといった事情も量刑上有利に考慮されます。
ひき逃げ事件に強いアトム法律事務所
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また、ご家族がひき逃げで逮捕された場合、長期間の身柄拘束が考えられるため、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
アトム法律事務所では警察が介入した事件について、初回の無料相談を実施しています。
また、逮捕された本人のもとへ面会する初回接見を依頼していただければ、ご本人に直接アドバイスや伝言を伝えることができます。
刑事事件はスピードが重要です。警察対応や被害者対応などを弁護士がスムーズに完了させることで、刑事処分が軽くなる可能性が高まります。
ご自身やご家族が起こしたひき逃げ事件について不安がある方は、お気軽にお問合せください。