窃盗罪の時効には、刑事事件としての時効と、民事事件としての時効の2種類があります。この記事では、それぞれの意味と、時効完成に必要な期間について解説しています。刑事事件の時効は公訴時効といい、検察官の公訴権が消滅することを意味しています。民事事件の時効は、被害者の損害賠償請求権の消滅を意味しています。いつから時効がカウントされるのか、いつ完成するのかについて、詳しくは弁護士にお尋ねいただくことをおすすめします。
窃盗で逮捕される可能性があるのか、被害者対応(示談)の重要性もあわせて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
目次
窃盗罪の時効は何年?万引きを例に弁護士が解説
窃盗事件(万引き)の公訴時効は7年
窃盗事件の時効が成立すると、その事件では起訴されることがなくなります。刑事事件における時効を「公訴時効」といいます。窃盗事件の公訴時効は7年で、事件から7年が経過すれば、検察官はその事件を起訴することはできなくなります。どのようなケースで公訴時効が成立するか、具体例を示してみたいと思います。
窃盗事件の代表格ともいえる万引き事件で公訴時効が成立する事例を取り上げます。店内の防犯カメラで万引きをしていることが明らかで、警察が捜査を開始したとします。しかし、証拠であるカメラの映像からは犯人の顔が不明確で、犯人にたどりつく証拠がない場合があります。この状態で7年が経過すれば、事件は公訴時効にかかり、検察官は事件を起訴できなくなるというわけです。
公訴時効が成立すれば万引きは逮捕されない?
窃盗事件が公訴時効にかかると、検察官の公訴権は消滅します。すると、逮捕されることもなくなります。逮捕は捜査の一環で、捜査は公訴提起に向けられた活動として行われるものです。つまり、公訴提起ができない事件については捜査が行われることはなく、逮捕されることもありません。
公訴時効が成立すると、迷宮入り事件(未解決事件)となり、事件は捜査が打ち切られます。万引き事件を繰り返す犯人であっても、その証拠から犯人特定に結びつかないまま時効が成立することもあります。法律を知らなければ、万引き事件の公訴時効が成立しているか自分では判断できないこともあります。まだ逮捕の可能性があるのか、不安な方は弁護士に問い合わせてみるのがよいでしょう。
公訴時効が成立 | 公訴時効が未成立 | |
---|---|---|
警察 | 逮捕できない | 逮捕できる |
検察 | 起訴できない | 起訴できる |
公訴時効のカウントは弁護士に確認を
公訴時効がいつからカウントされているか、いつ成立するかという問題は、専門家でなければわかりにくものです。公訴時効は、刑事訴訟法に規定されています。刑事訴訟法253条1項には、「時効は、犯罪行為が終つた時から進行する。」と書かれていますので、警察が事件を認知してからカウントされるわけではありません。被害者が被害届を出したタイミングからカウントされるわけでもありません。
また、窃盗の法定刑は、刑事訴訟法250条2項4号「長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年」という部分にあてはまります。窃盗罪の刑罰は、「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」(刑法235条)です。10年以下の懲役では最大で懲役10年ということを意味します。そのため、刑事訴訟法250条2項5号にある「長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年」はあてはまりません。「10年未満」には、10年が含まれないからです。
「時効」という言葉自体は知っていても、その詳細の理解は難しいものです。そこで、自分の事件が公訴時効にかかっているかを確認するためには、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
窃盗罪の民事の時効|3年と20年の意味とは
窃盗の時効「刑事事件の時効」と「民事事件の時効」がある
窃盗事件の時効には、「刑事事件の時効」と「民事事件の時効」があります。刑事事件の時効は、公訴時効を意味しています。検察官の公訴権が消滅するということですので、公訴時効が成立すれば刑事裁判を受けることはなくなります。一方で、民事事件の時効というのは、損害賠償請求権が消滅するタイムリミットを意味しています。
窃盗事件の被害者は、犯人に対して損害賠償請求をすることができます。刑事事件は公権力(警察、検察官、裁判所)の作用により、犯人に刑事罰を与えるかどうかという問題ですが、民事事件はそれとは別次元の話になります。民事事件は、金銭による事件解決を図る流れを指しますので、損害賠償請求できる権利の有無が問題になります。
民事事件の時効は「3年」と「20年」が重要
窃盗の民事事件の時効は、「3年」と「20年」という2つが重要になります。事件が発生してから20年が経過すれば、民事事件の時効は成立します。そして、被害者が損害及び加害者を知ったときから3年が経過すれば時効が成立します。どこからをスタートとするかで、3年と20年、どちらの期間が時効完成に必要かが変わります。
民事事件の時効が完成すると、その窃盗事件での損害賠償請求はできなくなります。つまり、被害者は加害者に対して金銭での解決を求めることができなくなるわけです。通常、事件が発生すると、刑事事件と民事事件はそれぞれ別軸で進行していきます。時効成立に必要な時間もそれぞれ異なりますので、整理して理解する必要があります。
刑事事件 | 民事事件 | |
---|---|---|
効果 | 起訴されなくなる | 賠償請求されなくなる |
期間 | 7年 | 3年または20年 |
窃盗事件、民事の時効が成立すれば示談できなくなる?
窃盗事件で民事の時効が成立すると、それ以降は示談ができなくなるのでしょうか。答えは、「ノー」です。民事の時効は、被害者が加害者に損害賠償請求できる権利が消滅することを意味します。示談を制限するという意味ではありません。そのため、加害者が示談をするため被害者に連絡をとることは、ありえるということになります。
ただし、加害者が被害者に対して直接アプローチすることは、被害者の感情を高ぶらせたり話し合いにならないというリスクもあります。特に、事件から時間が経過していると、示談交渉のハードルは高くなるものです。自分で無理に示談を進めるのではなく、まずは弁護士に相談してから行動することをおすすめします。場合によっては、示談交渉を専門家に依頼されるのが得策といえるでしょう。
弁護士からのアドバイス|窃盗の時効が気になる方へ
窃盗事件で逮捕されないために
窃盗事件で逮捕されないためには、刑事事件の時効(公訴時効)を理解しておくことが重要です。また、時効を迎えなくても、自首や逮捕によって事件が進行していくことも考えられますので、その時の対応方法についても考えておく必要があります。窃盗事件は、被害届が提出される前に示談交渉を開始するという解決方法があります。弁護士に間に入ってもらい、被害者との話し合いで示談を締結します。
金銭による賠償(示談金の支払い)を行い、被害届の提出を思いとどまってもらう約束をすることがあります。仮に、被害届が提出されても、被害者対応が済んでいることは、逮捕回避にプラスに働きます。このとき、弁護士に依頼して適切な対応をしていることが重要です。自分で被害者に接触しているという事実は「証拠隠滅」を疑わせる事情にもなり得ますので、慎重に行動しなければいけません。
関連記事
・窃盗でも逮捕されない場合とは?逮捕されないためにするべきこと
窃盗事件は被害者対応(示談)で解決を図る
窃盗事件の解決には、被害者対応が必須です。被害者に謝罪をし、被害弁償を支払うことが示談のポイントになります。さらに、被害者から宥恕(「許す」という意味です。)を得られれば、それも大きな意味を持ちます。示談の内容は示談書に記載します。示談書は当事者双方のサインをして、両者が合意していることを形として残します。
弁護士は、示談書を検察官に示し、被害者対応が完了していることを報告します。被害弁償を行い、被害者が宥恕しているという事実は、検察官が刑事処分を検討する上で重要な証拠になります。示談の成立は、不起訴処分の可能性を高めるため、検察官が起訴・不起訴を決めるまでに示談交渉を完了させることが大切です。
早く弁護士相談をすれば解決も早くなる
窃盗事件は、事件発生から間もない時点で弁護士に相談すれば、解決も早くなります。時間が経てばたつほど、被害者対応の難易度は高まります。また、警察による逮捕の可能性も高くなります。できるだけ早い段階で弁護士に相談することで、弁護活動の幅が広がり、早い解決が期待できます。
逮捕されてしまうと、日常生活や仕事への影響も避けられません。逮捕されるかもしれないと怯えた毎日を過ごすことは、精神衛生上もよくありません。弁護士であれば、解決策の提案をしてくれますので、窃盗事件でお困りの方はまず弁護士相談を受けていただくことをおすすめします。
関連記事
・窃盗で逮捕されたら弁護士に相談を
・窃盗事件|弁護士に無料相談「処分の見込み」「弁護活動」「費用」
まとめ
窃盗事件の時効については、法律の専門知識がないと理解しにくいものです。窃盗の時効には刑事事件の時効と民事事件の時効、2種類があります。自分の窃盗事件では、いつになれば時効が完成するか、気になる方は弁護士までお問合せください。また、窃盗事件の解決には被害者対応と警察対応が重要です。早期解決、逮捕回避を目指すために、弁護士からのアドバイスを参考にしてみてください。