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窃盗罪の時効|弁護士が解説する公訴時効と示談。万引き事件を例に

窃盗罪の時効

窃盗罪の時効には、刑事上の時効と、民事上の時効の2種類があります。

窃盗罪の刑事上の時効(公訴時効)は、原則として事件から7年です。民事上の時効は、被害者が損害および加害者を知った時点から3年または不法行為の時点から20年です。

この記事では、それぞれの時効と、時効完成に必要な期間について解説しています。

窃盗罪の時効はいつからカウントされるのか、いつ完成するのか、窃盗で逮捕される可能性があるのかなど、網羅的に解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

窃盗には2種類の時効がある!刑事と民事の違い

窃盗・万引きの時効には、「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2つがあります。2つは全くの別物です。まずはそれぞれの時効の意味を見ていきましょう。

刑事上の時効(公訴時効)は7年

刑事事件の「時効」とは、犯罪が発生してから一定期間が経過すると、その事件について起訴(公訴)することができなくなる制度です。これを「公訴時効」と呼びます。公訴時効が成立すると、たとえ犯人が判明しても刑事裁判を行うことはできません。

刑事訴訟法では、窃盗罪の公訴時効は「7年」と定められています。これは、窃盗罪の法定刑が「10年以下の拘禁刑」であるため、刑事訴訟法250条2項4号に該当し、7年となります。

たとえば、2020年4月1日に窃盗事件が発生した場合、2027年3月31日までに起訴されなければ時効が完成し、以降は起訴できません。

時効の起算点(いつからカウントが始まるか)

公訴時効は「犯罪行為が終わった時」から進行します

窃盗の場合、「盗んだ瞬間」すなわち、被害者の財物の占有が犯人に移転した時点が時効の起算点となります。

たとえば、Aさんの自転車を2019年4月1日に盗んだ場合、その日が時効の起算点です。仮に4日後に自転車を返却しても、窃盗罪の成立や時効の起算点には影響しません。このケースでは、2026年4月1日の午前0時を迎えた瞬間に公訴時効が成立することになります。

民事上の時効(消滅時効)は3年もしくは20年

刑事罰とは別に、犯人は被害者に対して、盗んだ物の代金などを賠償する義務を負います。この「損害賠償を請求する権利」にも時効があり、これを「消滅時効」と呼びます。

消滅時効は、刑事よりも少し複雑で、以下の2つの期間が定められています。

消滅時効

  1. 被害者が損害および加害者を知った時から「3年」
  2. 不法行為の時(万引きなどがあった時)から「20年」

消滅時効は、この2つのうち、どちらか早く到来した方で時効が成立します。

【具体例】 3年と20年の区別はどうなる?

消滅時効が3年と20年のどちらになるのか、具体例を見ていきましょう。

2025年4月1日にAさんがB店で万引き

  • 犯人がすぐに分かった場合:3年
    B店の店長が防犯カメラですぐにAさんが犯人と特定した場合、その時点から3年で時効が成立
  • 犯人がずっと分からなかった場合:20年
    犯人が誰か分からないまま時間が過ぎた場合、万引きがあった2025年4月1日から20年が経過すると、B店は損害賠償を請求できなくなる。

時効が成立したらどうなる?

もし、刑事・民事それぞれの時効が成立した場合、法的な関係はどうなるのでしょうか。時効が成立すると、刑事事件と民事事件ではそれぞれの法的な効果が異なります。

公訴時効が成立した場合

刑事事件における公訴時効は「起訴できる期限」を定めたものです。

この時効が成立すると、たとえ加害者が特定されていても検察は起訴できず、加害者は刑事裁判にかけられなくなります。裁判にかけられない以上、逮捕されることもなくなります。つまり、刑事上の責任を問われなくなるということです。

消滅時効が成立した場合

民事事件における消滅時効は、損害賠償請求などの「権利を行使できる期間」を制限するものです。

消滅時効が成立すると、被害者は加害者に対して慰謝料や治療費の支払いを求めることができなくなります。

弁護士からのアドバイス|窃盗の時効が気になる方へ

窃盗事件で逮捕されないために

窃盗事件で逮捕されないためには、刑事事件の時効(公訴時効)を理解しておくことが重要です。また、時効を迎えなくても、自首や逮捕によって事件が進行していくことも考えられますので、その時の対応方法についても考えておく必要があります。

窃盗事件は、被害届が提出される前に示談交渉を開始するという解決方法があります。弁護士に間に入ってもらい、被害者との話し合いで示談を締結します。

金銭による賠償(示談金の支払い)を行い、被害届の提出を思いとどまってもらう約束をすることがあります。仮に、被害届が提出されても、被害者対応が済んでいることは、逮捕回避にプラスに働きます

このとき、弁護士に依頼して適切な対応をしていることが重要です。自分で被害者に接触しているという事実は「証拠隠滅」を疑わせる事情にもなり得ますので、慎重に行動しなければいけません。

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公訴時効が成立すれば万引きは逮捕されない?

窃盗事件が公訴時効にかかると、検察官の公訴権は消滅します。すると、逮捕されることもなくなります。逮捕は捜査の一環で、捜査は公訴提起に向けられた活動として行われるものです。つまり、公訴提起ができない事件については捜査が行われることはなく、逮捕されることもありません。

公訴時効が成立すると、迷宮入り事件(未解決事件)となり、事件は捜査が打ち切られます。万引き事件を繰り返す犯人であっても、その証拠から犯人特定に結びつかないまま時効が成立することもあります。

法律を知らなければ、万引き事件の公訴時効が成立しているか自分では判断できないこともあります。まだ逮捕の可能性があるのか、不安な方は弁護士に問い合わせてみるのがよいでしょう。

万引き事件で公訴時効が成立した場合

公訴時効が成立公訴時効が未成立
警察逮捕できない逮捕できる
検察起訴できない起訴できる

窃盗事件は被害者対応(示談)で解決を図る

示談とは

窃盗事件の解決には、被害者対応が必須です。被害者に謝罪をし、被害弁償を支払うことが示談のポイントになります。さらに、被害者から宥恕(「許す」という意味です。)を得られれば、それも大きな意味を持ちます。示談の内容は示談書に記載します。示談書は当事者双方のサインをして、両者が合意していることを形として残します。

弁護士は、示談書を検察官に示し、被害者対応が完了していることを報告します。被害弁償を行い、被害者が宥恕しているという事実は、検察官が刑事処分を検討する上で重要な証拠になります。示談の成立は、不起訴処分の可能性を高めるため、検察官が起訴・不起訴を決めるまでに示談交渉を完了させることが大切です。

早く弁護士相談をすれば解決も早くなる

窃盗事件は、事件発生から間もない時点で弁護士に相談すれば、解決も早くなります。時間が経てばたつほど、被害者対応の難易度は高まります。また、警察による逮捕の可能性も高くなります。できるだけ早い段階で弁護士に相談することで、弁護活動の幅が広がり、早い解決が期待できます。

逮捕されてしまうと、日常生活や仕事への影響も避けられません。逮捕されるかもしれないと怯えた毎日を過ごすことは、精神衛生上もよくありません。弁護士であれば、解決策の提案をしてくれますので、窃盗事件でお困りの方はまず弁護士相談を受けていただくことをおすすめします。

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窃盗・万引きの時効に関するよくある質問

Q.公訴時効はストップすることがある?

公訴時効は、一定の事情があると進行が停止します。たとえば、犯人が国外に逃亡している場合や、行方をくらませていて起訴状を送達できない場合には、その期間は時効が進みません。

また、共犯者がいる事件では、そのうちの一人に対して公訴が提起されれば、他の共犯者についても裁判が確定するまで時効が止まります。

つまり、逃亡や共犯者の存在によっては、公訴時効が大幅に延びる可能性があり、単純に「時効まで逃げ切れば終わり」とはいえない仕組みになっています。

Q.住居侵入と窃盗が同時に行われたら時効はどうなる?

住居侵入と窃盗が同時に行われた場合、判例上は「科刑上一罪」とされ、両罪をまとめて一つの罪として扱います。その際には、複数の罪のうち最も重い罪の刑罰を基準にして公訴時効が決まります

窃盗罪の刑罰は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」、住居侵入罪の刑罰は「3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」です。窃盗罪の方が重いため、時効は窃盗罪に合わせて計算されます。

このため、住居侵入と窃盗を同時に行った場合の公訴時効は、窃盗罪の7年(刑事訴訟法250条2項6号)となり、窃盗が既遂に達した時点から起算されます。

Q.時効が完成した後に犯人が判明したら起訴されますか?

時効が完成すると、たとえ犯人が判明しても刑事裁判で起訴されることはありません。

たとえば、商店で現金が盗まれた事件で、12年以上経過してから犯人が発覚したとしても、窃盗罪の時効7年がすでに完成しているため、起訴されることはないのです。

公訴時効の存在理由には、長い年月が経過すると証拠が散逸し、証人の記憶も薄れることや、被害者や社会全体の処罰感情が薄らいでくることなどが挙げられます。

したがって、時効が完成した事件については、刑事訴訟手続上、免訴となり処罰されることはありません。

アトムの解決事例(窃盗罪)

こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った窃盗事件のうち、万引きが問題になった事案について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。

万引きの解決事例

複数の店舗で万引きをしたが、示談などをおこない不起訴になった事例

書店で、雑誌など数千円相当の商品を万引きしたほか、ディスカウントストアでも食品など数千円相当を万引きした。窃盗事件の事案。


弁護活動の成果

書店とは示談を締結。ディスカウントストアとの示談は不成立だったが、被害弁償と謝罪を尽くした結果、不起訴処分となった。

菓子店で万引きをしたが、被害の弁償等をおこない示談を締結。不起訴になった事例

菓子店での接客態度に憤慨し、カウンターの商品数千円分を万引き。犯行に気づいた店長を車で振り切って逃走した。


弁護活動の成果

被害の弁償などを行い、店舗の店長と示談を締結。その結果、不起訴処分となった。

コンビニでの万引きで示談が成立し、不起訴処分となった事例

コンビニで商品を万引きした。犯行当時、家出をして不良グループに所属しており、リーダー格からの指示によって犯行に至った。窃盗として立件。


弁護活動の成果

被害者と示談を締結。裁判官に意見書を提出したところ、勾留請求却下となり、早期釈放に。情状弁護を尽くした結果、不起訴処分となった。

万引き以外の解決事例

アルバイト先の売上金を盗んだとされたが、示談成立で不起訴処分となった事例

アルバイト先のコンビニから店長管理の売上金数万円相当を盗んだとされる。当人同士で示談は済んでいたものの、検察官が起訴を匂わせていたケース。


弁護活動の成果

すでに謝罪と被害弁償を尽くしている旨を意見書にまとめ、検察官に提出。その結果、不起訴処分となった。

会社の売上金を盗んだ疑い(えん罪)で、不送致になった事例

勤務先において、一週間分の売上金を盗んだ疑いをかけられ、警察の調べをうけることになった窃盗のケース。依頼者は容疑を否認していたが立場や業務内容の関係で会社から一方的に疑いをかけられていた事案。


弁護活動の成果

警察への出頭に同行し、依頼者の精神的負担を軽減するとともに、今後の捜査の予定などを調査。刑事手続きを進める予定はないことを確認するに至った。

示談の有無

最終処分

不送致

コインランドリーで下着を盗んだが、不起訴処分となった事例

コインランドリーで下着を盗んだ。目撃者によって現場で取り押さえられ、警察に引き渡された。


弁護活動の成果

被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。その結果、不起訴処分となった。

まとめ

窃盗の時効について一言

窃盗の時効には刑事事件の時効と民事事件の時効、2種類があります。窃盗、万引きの公訴時効は、事件から7年です。時効が完成するまでは、捜査が続き、処罰される可能性があります。

防犯カメラの映像などが証拠となり、後日逮捕される可能性もあります。

窃盗罪(万引きを含む。)の刑罰は、「1か月以上10年以下の懲役」、または「1万円以上50万円以下の罰金」です。

後日逮捕の不安がある方や、ご自分の窃盗事件の時効がいつ完成するのか気になる方などは、弁護士までお問合せください。

また、窃盗事件の解決には被害者対応と警察対応が重要です。早期解決、逮捕回避を目指すために、弁護士からのアドバイスを参考にしてみてください。

アトムの弁護士の評判・依頼者の声

刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。

最高の弁護士さんに励まされどん底から救ってもらえました。

ご依頼者様からの感謝のお手紙(最高の弁護士さんに励まされどん底から救ってもらえました。)

この度は、先生に、大変お世話に、なりました。どん底から、私を救って下さり、再び、生きる希望、勇気、はげましを与えて下さり誠に有り難う御座いました。私は、本当に、心から先生に依頼、出会えて良かったです。そして、二度と万引きなどという、行為をせず、世間に迷惑をかけてきた償いをして行きます。うまく伝えられませんが、先生ありがとうございました。先生は、どこにも居ない最高の弁護士さんだと思います。

不安で一杯な心の支えになってくれてありがとうございました。

ご依頼者様からの感謝のお手紙(不安で一杯な心の支えになってくれてありがとうございました。)

先生、本当にありがとうございました
ぎりぎりの気持ちの中で先生にあえて本当に良かったです。万引きを3回もくりかえして、刑務所には入らなければとおもっていました。どうすれば良いのかとおもって、電話帳でアトム法律事務所を知っておもわず電話をしました所、とても感じよく話を聞いて頂き、事務所をたずねて、先生に会えました。
「執行猶予です大丈夫です」と言って頂き、何かもう言葉では言えないくらいに気持がかるくなったのを今でも実感できます。
不安で一杯な心の支えになって頂き本当にありがとうございました。この気持を忘れず持っていきたいとおもいます

不安で動揺している中、冷静・迅速に対応して頂きました。

ご依頼者様からの感謝のお手紙(早くで誠実な対応で身柄が解放され、不起訴になり感激しました。)

この度は息子の事件にご尽力下さいまして、ありがとうございました。突然の事でとても不安で、動揺しておりましたが、冷静に対応して下さり、また太田先生におかれましてはすぐに動いて下さいまして、検察や相手の方への示談の交渉など、いろいろと対応して頂きまして、不起訴処分になりました。本当に感謝しております。息子も今回の事を重く受け止め、深く反省をし、改めて先生に感謝しております。太田先生ありがとうございました。

アトムの弁護士相談:24時間予約受付

アトム法律事務所では現在、窃盗・万引き事件を含む刑事事件について、24時間365日相談ご予約受付中です。

また、警察沙汰になった事件では、初回30分無料で弁護士相談を実施しています。

  • 万引き事件で、警察から呼び出しを受けた
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くわしくはお電話でオペレーターにおたずねください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。全国15拠点を構えるアトム法律グループの代表弁護士として、刑事事件・交通事故・離婚・相続の解決に注力している。
一方で「岡野タケシ弁護士」としてSNSでのニュースや法律問題解説を弁護士視点で配信している(YouTubeチャンネル登録者176万人、TikTokフォロワー数69万人、Xフォロワー数24万人)。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士、弁理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了