「高校生のわが子が大麻事件を起こし、逮捕されてしまった。いったいどうすればよいのか」
こちらの記事では、高校生の子どもが大麻・薬物事件で逮捕された時にどう行動すべきか、また退学になるのを回避するためにすべきことなどについて詳しく解説していきます。
高校生が大麻・薬物事件で逮捕された場合の処分を少しでも軽くするためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
目次
高校生が大麻・薬物で逮捕されたら退学になる?
高校生が大麻で検挙される事例は、近年急激に増加しています。警察庁の発表している「組織犯罪対策に関する統計」によると、令和4年に大麻で検挙された高校生の数は150人もいました。
SNSを使えば、誰でも手軽に薬物を売買できるようになり、大麻に手を出してしまう高校生が増えているのです。
大麻・薬物で逮捕されても退学になるとは限らない
高校生が大麻で逮捕された場合、最も気になることは学校を退学になるかどうかということでしょう。
結論から言えば、高校生が大麻・薬物で逮捕されても、必ずしも退学になるとは限りません。
学校教育の制度について定めた学校教育法は、11条において、「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは(略)児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。」と定めています。
また同法施行規則26条3項は、「退学は、(略)次の各号のいずれかに該当する児童等に対して行うことができる。」と定めています。
一 性行不良で改善の見込がないと認められる者
二 学力劣等で成業の見込がないと認められる者
三 正当の理由がなくて出席常でない者
四 学校の秩序を乱し、その他学生又は生徒としての本分に反した者
学校教育法施行規則26条3項
高校生の退学処分は高校の校則できまる
法律的には、逮捕されたことによって必ず退学になるわけではありません。
大麻で逮捕された高校生が退学処分になるかどうかは、各高校の校則によって決定されます。
公立高校と私立高校の退学基準の違い
高校生の処分に関して、明確な基準といえるものはありません。その裁量は基本的に個別の高校に委ねられています。
退学は最も重い処分であり、一般的には、重大な犯罪行為を犯した場合などに限られます。ただし、私立高校においては公立高校よりもやや厳しい措置が取られる傾向があるといえます。
大麻・薬物の刑罰は?高校生の場合はどうなる?
高校生が大麻・薬物の罪を犯した場合、最終的な処分はどのようなものになるのでしょうか。
大麻・薬物事件における刑罰について解説します。
大麻の所持・譲渡・譲受の刑罰
警察庁が公開している統計「令和4年における組織犯罪の情勢」によると、令和4年の薬物事犯検挙人員12,142人のうち、大麻による事犯は5,342人であり、全体の43.9%を占めています。
大麻に関する犯罪は、その犯行様態によって刑罰のパターンが変わることが特徴です。
免許等を持たずに個人で使用する目的で大麻を所持した場合や、大麻を売ったり買ったりした(譲渡・譲受)場合、以下の処罰が下ることが大麻取締法24条の2で定められています。
第二十四条の二 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する。
大麻取締法24条の2
また所持・譲渡・譲受の中でも、個人使用でなく営利目的が認められた場合、刑罰は重くなることが同法同条の2の2項に規定されています。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、七年以下の懲役に処し、又は情状により七年以下の懲役及び二百万円以下の罰金に処する。
大麻取締法24条の2
大麻の栽培・輸出・輸入の刑罰
大麻の栽培や輸出入を行った場合には、以下のようなより重い処罰が下ることが定められています。
第二十四条 大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び三百万円以下の罰金に処する。
大麻取締法24条
営利目的あり | 営利目的なし | |
---|---|---|
所持・使用など | 7年以下の懲役 | 5年以下の懲役 |
輸出入・製造など | 10年以下の懲役 | 7年以下の懲役 |
※営利目的がある場合は情状により罰金併科
大麻の初犯と再犯の刑罰の相場
大麻取締法で禁止されている主な行為は、上で見たように所持、譲渡・譲受、栽培、輸出入の4つですが、いずれの場合も刑罰は懲役刑以上となっており、罰金刑以下となることはありません。
ただし、懲役刑の判決を受けても、初犯であり悪質性も低いとみなされた場合は執行猶予がつくことも多いです。
しかし、逆に再犯となった場合は実刑となる可能性が高くなり、特に執行猶予判決を受けてから5年以内の再犯の場合はほぼ確実に実刑となります。
大麻以外の薬物の刑罰
大麻以外の薬物で、代表的なものは覚醒剤です。覚醒剤は「覚醒剤取締法」という法律によって規制されています。
覚醒剤の刑罰は大麻よりも重く、所持・譲渡・譲受・使用で10年以下の懲役、輸出入・製造で1年~20年の懲役です。営利目的が認められた場合はさらに刑の上限が上がります。
営利目的あり | 営利目的なし | |
---|---|---|
所持・購入など | 1年~20年の懲役 | 10年以下の懲役 |
製造・輸出入など | 無期若しくは 3年以上の懲役 | 1年~20年の懲役 |
※営利目的がある場合は情状により罰金併科
その他の主な薬物は「麻薬及び向精神薬取締法」によって規制されており、中でもヘロインは人体への影響が大きいため、覚醒剤と同等の重い刑罰が科されます。
MDMAなどは所持・譲渡・譲受・使用で7年以下の懲役、輸出入・製造で10年以下の懲役が科されます。
向精神薬は薬物の中で最も軽い刑罰が科されますが、所持で罰せられるのは、譲り渡す目的を持つ場合のみです。
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薬物事件で弁護士に相談するメリット|覚醒剤・大麻などで逮捕されたら
高校生の大麻・薬物事件の処分の相場
高校生が大麻・薬物事件を起こしても、刑罰が科されることは原則なく、更生と教育を目的とした保護観察処分となることが多いようです。
ただし、常習性や組織性、営利目的が認められるような悪質な場合では、少年院送致となる可能性があります。
高校生が逮捕された場合の流れについては、こちらの記事『高校生が逮捕されたらどうなる?早期に弁護士への相談を 』もご参照ください。
弁護士へ早期相談して高校生の退学回避を目指す
大麻・薬物犯罪を起こした高校生が退学処分を回避するためには、早期に弁護士へ相談することが重要です。
最後に、高校生の大麻事件で弁護士をつけるメリットをご紹介します。
弁護士が少年の更生をサポートし迅速に社会復帰
少年事件においては、少年がいかに更生できるかを示すことが重要となります。そのため、弁護士は法的な弁護活動だけでなく、少年の更生のサポートも行います。
具体的には、家庭環境を整えるために家族と協議したり、学校や職場の状況を調査したりするなどの活動を行います。
付添人として審判不開始や軽い保護処分を目指す
少年審判においては、少年側をサポートする人として付添人と呼ばれる人を付けることができ、通常の場合は弁護士がなるのが一般的です。
付添人は審判までに必要な準備を行い、少年が更生の道をたどっており処分を軽減すべきであるという弁護活動を行います。
少年審判においては、少年側のサポートを行う役割を持つことができるのは付添人のみとなっています。付添人は必ず付けなくてはならないものではありませんが、法的な視点から少年やその家族のサポートが可能な弁護士は心強い味方になります。
再犯防止の取り組みをしっかりと示す
大麻は再犯率の高い犯罪です。厚生労働省のホームページ「大麻をめぐる現状」によると、平成28年度における検挙者に占める再犯者の割合は22.4%となっていおり、これは10年前の平成18年度に比べて2倍近い数字です。また大麻はゲートウェイドラッグと呼ばれ、より依存性のある薬物の入口になるともいわれます。
そのため、罪を少しでも軽くするためには再犯防止のための取り組みをしっかりと行い、それを検察官や裁判官に示すことが必要となります。特に大麻は性質上被害者がおらず示談を締結することはできない犯罪であるため、再犯防止の取り組みは重要です。
具体的には、医療機関で治療を受け、「薬物のダルク」などの回復支援施設に入所して依存から回復するなどの取り組みを行います。弁護士や家族などと協力し、診断書やサポート体制などを証拠として提出することで、再犯防止の取り組みを明示するのです。