2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
公務員として働いている方が交通事故を起こしてしまった場合、「仕事を続けられるのか」「失職してしまうのか」と大きな不安を抱えるのは当然のことです。
結論として、公務員が交通事故で拘禁刑以上の刑に処せられると、欠格事由に該当して失職する可能性があります。
一方、不起訴処分を獲得できれば欠格事由には該当せず、公務員として働き続けることができる可能性が高いです。失職を回避するためには、不起訴処分を獲得することが重要です。
この記事では、公務員が交通事故を起こした場合の処分内容、失職を防ぐための具体的な対処法、弁護士に相談するメリットについて、法令の根拠を交えてわかりやすく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
公務員の交通事故に対する処分
公務員が交通事故を起こした場合、職を失う経路は大きく分けて2つあります。
(1)当然失職(欠格条項への該当)
国家公務員法・地方公務員法では、一定の刑罰を受けた場合に自動的に公務員の資格を失うことが定められています(欠格条項)。
具体的には、拘禁刑以上の刑(死刑・拘禁刑)に処せられた場合、当然失職となります(国家公務員法38条1号・76条、地方公務員法16条・28条4項)。
欠格条項の判断基準
- 拘禁刑の実刑判決:判決が確定した時点で当然失職
- 執行猶予付き判決:判決が確定した時点で当然失職
- 罰金刑:欠格条項に該当せず、当然失職とはならない
「逮捕」「起訴」「勾留」の段階では当然失職にはなりません。確定判決が出て初めて失職となります。
(2)懲戒免職(任命権者による処分)
欠格条項に該当しない場合でも、任命権者の判断によって懲戒処分が行われることがあります(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。
主な懲戒処分には、軽い順に以下の4種類があります。
懲戒処分の種類
| 処分の種類 | 内容 |
|---|---|
| 戒告 | 文書または口頭による厳重注意 |
| 減給 | 一定期間、基本給の一部を減額 |
| 停職 | 1日以上1年以下の職務停止。給与なし |
| 免職 | 公務員の身分を剥奪。最も重い処分 |
懲戒処分の事由は以下の3つです。
懲戒処分の事由
- 国家公務員法・地方公務員法などに違反した場合
- 職務上の義務に違反し、または職務を怠った場合
- 国民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合
この3番目の規定により、飲酒運転・無免許運転など、たとえ職務外での犯罪・罰金刑にとどまる場合でも、懲戒処分の対象となりえます。
人事院が公表している「懲戒処分の指針」では、交通事故・交通法規違反に関する処分の標準例が示されています。主な基準は以下のとおりです。
交通事故・交通法規違反に関する処分の基準
- 飲酒運転・無免許運転:免職
- 飲酒運転等の車両への同乗:免職または停職
- 著しい速度超過等の悪質な交通法規違反:停職・減給・戒告
- 人身事故(人を死亡させ、または重篤な傷害を負わせた場合):免職・停職・減給
地方公務員の場合は各自治体が独自の基準を設けていることが多いため、所属先の処分基準も確認する必要があります。
なお、処分量定の決定にあたっては、事故の態様、過失の程度、日頃の勤務態度、事故後の対応などが総合的に考慮されます。
罰金刑なら失職しない?処分の分かれ目
交通事故を起こしたからといって、必ず失職するわけではありません。罰金刑にとどまれば欠格事由には該当せず、公務員資格を失うリスクは低くなります。
ただし、罰金刑であっても懲戒処分の対象になる可能性はあります。失職を防ぐために最も重要なのは、不起訴処分を獲得することです。
交通事故で成立する犯罪と刑罰の一覧
交通事故を起こした場合に成立する可能性のある犯罪と、その法定刑は以下のとおりです。
交通事故事件で成立する可能性のある犯罪
| 罪名 | 行為 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 過失運転致死傷罪 (自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条) | 自動車の運転上必要な注意を怠ること | 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪 (自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条) | 故意に一定の危険な運転を行うこと | ・人を負傷させた場合は15年以下の拘禁刑 ・人を死亡させた場合は1年以上20年以下の拘禁刑 |
| 道路交通法違反 (救護義務違反、同法117条2項・1項、72条1項前段) | 交通事故を起こしたにもかかわらず、負傷者を救護しないこと | 10年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 道路交通法違反 (報告義務違反、119条1項17号、72条1項後段) | 交通事故を起こしたにもかかわらず、警察官に報告しないこと | 3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金 |
過失運転致死傷罪と危険運転致死傷罪は、不注意で事故を起こしたのか、故意に危険な行為をして事故を起こしたのかという点で異なります。
「人の死傷」という結果が同じでも、刑罰や不起訴率に大きな違いがあるので注意が必要です。
交通事故の不起訴率|統計データから見る実情
公務員が交通事故で失職を避けるために最も重要な「不起訴処分の獲得」について、統計データを確認しましょう。
過失運転致死傷等の不起訴率は80%以上
令和7年版犯罪白書によると、令和6年における過失運転致死傷等の不起訴率は82.6%となっており、大多数の事件が不起訴で終結しています(令和7年版 犯罪白書 第4編/第1章/第3節/1)。
令和6年における検察庁終局処理人員総数の起訴率32.6%と比較しても、交通事故事件は不起訴となる割合が高い傾向にあります。
なお、危険運転致死傷罪の場合は起訴率が大幅に高くなるため、飲酒運転や著しい速度超過など悪質な態様の事故では楽観視できない点に注意が必要です。
不起訴の可能性を高めるポイント
交通事故で不起訴となるかどうかは、主に以下の要素で判断されます。
交通事故で不起訴となるポイント
- 事故態様
相手が自動車か歩行者か、事故の状況はどうだったか - 行為態様
スピード違反や飲酒運転などの悪質な行為があった - 被害結果
死亡、重傷、軽傷など被害の程度 - 示談の成立
被害者との間で示談が成立しているか(特に宥恕条項の有無)
特に、被害者との示談を早期に成立させ、宥恕(被害者が加害者を許すこと)を得ることが、不起訴獲得に向けた最も有効な手段です。
交通事故で不起訴を目指したい方は『交通事故で不起訴になるケースとポイントとは?交通事故事件の不起訴率は?』の記事をご覧ください。
交通事故を起こした公務員がすべきこと
公務員が交通事故を起こしてしまった場合にすべきことは、次の3つです。
- 速やかに警察に事故を報告する
- 被害者への謝罪と賠償を行う
- 弁護士に相談する
警察への事故の報告は、道路交通法で定められています(道路交通法72条1項)。また、被害者に対する謝罪と賠償は、事故加害者であれば当然必要となります。
しかし、交通事故は運転手が任意保険に加入していることが多く、当事者間の損害賠償は保険会社を通じて行われる場合がほとんどです。
とはいえ、治療期間が長く刑事処分までに保険会社の示談が終わらない場合などは、別途示談を成立させる必要があります。
当事者同士での交渉はまとまらないことも多いため、被害者対応が必要な場合は、弁護士に代行してもらいましょう。
公務員の交通事故で弁護士に相談するメリットは?
公務員が交通事故を起こした場合、弁護士に相談するメリットは「警察の捜査へのアドバイス」「軽い処罰に向けた裁判弁護」「被害者との示談代行」の3点です。
特に被害者との示談代行は、弁護士に依頼することがポイントになります。
示談と聞くと保険会社に任せておけばよいと考える方がいるかもしれません。
しかし、保険会社は被害者の治療終了後でなければ示談を進めることができません。治療が終了するのは怪我の具合によっても異なりますが、事故発生から数か月、場合によっては数年後であるケースも珍しくありません。
また、保険会社による示談はあくまで民事上の問題解決を目的としているため、宥恕条項など、加害者に有利な条項は盛り込みません。
そのため、示談を保険会社任せにしていると、起訴されて刑事処分が重くなってしまうおそれがあるのです。
早期に示談交渉を開始するには弁護士への依頼がポイント
早期に示談交渉を開始するには、刑事事件に強い弁護士に依頼することがポイントになります。
刑事事件に強い弁護士であれば、宥恕条項などを含んだ被害者との示談を迅速に成立させることができる可能性が高まります。
示談によって不起訴を獲得できれば、公務員の欠格事由には該当しないため、失職リスクは大幅に低下します。ただし、不起訴であっても懲戒処分(減給・停職等)が科される可能性は残るため、弁護士への相談を継続することが重要です。
公務員が交通事故を起こした場合のよくある質問
Q.交通事故を起こすと逮捕される?
交通事故を起こすと、事故の態様によっては逮捕される可能性があります。
交通事故で逮捕されるかどうかの基準は、行為態様の悪質さと、被害結果の大きさです。
逮捕の要件の一つに、逃亡または罪証隠滅のおそれがあります。行為態様が悪質で被害結果が大きいほど、刑罰が重くなることが予想されます。その分、逃亡や罪証隠滅のおそれが高まると考えられるため、逮捕の可能性が大きくなるのです。
交通事故で逮捕の可能性が高いケースと低いケースを知りたい方は『逮捕の基準(逮捕される条件)とは?書類送検になる基準は?』の記事をご覧ください。

(1)逮捕(最大72時間拘束)
警察署に連行され、取り調べを受けます。その後、検察官に送致され、勾留されるかどうかが決定されます。
(2) 勾留(最長20日間)
裁判官が勾留を決定すると、最大で20日間拘束されます。この間に再度取り調べが行われます。
(3) 起訴・不起訴の判断
検察官が、起訴するかどうかを決定します。
- 不起訴(罰則なし) → 釈放されるが、懲戒処分の可能性あり
- 略式起訴(罰金) → 軽微な場合は罰金刑で終了
- 正式起訴(裁判) → 重大な事故は裁判で審理
(4)裁判・判決(有罪の場合は前科がつく)
実刑・執行猶予・罰金刑などの判決が下されます。
逮捕後の流れや釈放されるタイミングについて詳しく知りたい方は『逮捕されたら?逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説』の記事をご覧ください。
Q.執行猶予付きの判決でも公務員は失職しますか?
執行猶予付きであっても、拘禁刑の言渡しを受けたことには変わりなく、国家公務員法・地方公務員法上の欠格事由に該当し、原則として失職します。
ただし、地方公務員の場合は条例で別段の定めを設けている自治体もあるため、個別に確認が必要です。
Q.物損事故(人身事故ではない事故)の場合はどうなりますか?
物損事故の場合、過失運転致死傷罪は成立しません。ただし、当て逃げ(措置義務違反)をした場合は道路交通法違反として刑事処分の対象になり得ます。
また、物損事故であっても飲酒運転や著しい速度超過を伴う場合は懲戒処分の対象になりえます。物損事故のみの場合は欠格事由に該当するケースは稀ですが、所属先への報告義務がある点に注意が必要です。
Q.公務員が交通事故を起こした場合、職場に報告する義務はありますか?
多くの官公庁・自治体では、勤務時間内外を問わず交通事故を起こした場合の報告義務を定めています。
報告を怠った場合、事故自体の処分に加えて信用失墜行為(国家公務員法99条)に問われる可能性もあります。報告を行った上で適切に対応することが、処分を軽減するためにも重要です。
アトムの解決事例(公務員の交通事故)
過失運転致傷
アトムの解決事例(不起訴で失職回避)
40代の公務員女性が市内を自動車で走行中、突然飛び出してきた自転車と衝突し、被害者に尾てい骨のひびを負わせた過失運転致傷の事案。事故後の警察対応に不信感を抱き、刑事事件化を懸念して弁護士に依頼した。
弁護活動の成果
弁護士が再度の実況見分に同行して警察の誘導を牽制するとともに、被害者へお見舞金10万円を支払い宥恕の上申書を取得。検察官がこれらの事情を高く評価し不起訴処分を即決、依頼者は前科なく職を失わずに事件を解決した。
酒気帯び運転
アトムの解決事例(不起訴で失職回避)
前日に飲酒した40代の公務員(学校関係者)が、翌日昼にバイクを運転中に交通違反をきっかけに呼気検査を受け、基準値超のアルコール(0.20mg/L)が検出された酒気帯び運転の事案。依頼者本人にアルコールが残っている自覚はなく、逮捕・起訴による失職を強く懸念していた。
弁護活動の成果
弁護士はウィドマーク法を用いた科学的計算に基づき飲酒の故意を否認する意見書を検察官に提出し、20万円の贖罪寄付や公務員としての社会的制裁の大きさも主張した。これらが総合的に考慮され不起訴処分を獲得、前科および失職のリスクを回避することができた。
公務員の交通事故で失職を防ぎたい方は弁護士に相談
まとめ
公務員が交通事故を起こした場合、一般の方以上に深刻な影響を受ける可能性があります。拘禁刑以上の刑に処せられれば、欠格事由に該当して公務員としての職を失うおそれがあるためです。
しかし、被害者との示談交渉を適切に進めれば、不起訴処分を獲得して失職を回避できる可能性は十分にあります。
交通事故を起こしてしまい、公務員としての将来に不安を感じている方は、できるだけ早い段階で刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
ご依頼者様からのお手紙・口コミ評判
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
スムーズに事件解決することができました。

(抜粋)人生で初めての人身事故で困っていたところ、日曜日にもかかわらず、竹原先生にお話を聞いて頂き、アドバイスを頂戴し、ホッとしたのを記憶しています。その後は、竹原先生のご教示に従い、スムーズに事が運び、不起訴となりました。いろいろなアドバイスを頂き、お話しを聞いて頂いたこと心より感謝しております。
先生のおかげで前科がつきませんでした

(抜粋)野尻先生、ありがとうございました。先生のおかげで前科が付きませんでした。検察庁からの呼び出し後、少ない時間の中で、被害者の方から嘆願書を頂き不起訴処分になりました。人身事故を起こしてから不安な毎日でした、でも野尻先生のおかげで私は、救われました。感謝しております。これからは安全運転に心掛け事故を起こさないようします。野尻先生、本当にありがとうございました。
アトムは24時間365日相談予約受付中
アトム法律事務所では、全国主要都市に支部を持っており、刑事事件の相談は全国から受け付けています。交通事故の加害者相談を数多く取り扱ってきた実績もあり、加害者の当事者やそのご家族に安心してご相談を受けていただける環境が整っています。
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