
刑事事件で逮捕されたあと、「処分保留で釈放」と言われた場合、ほっとする反面、「本当にこのまま終わるのか」「また捕まったりしないか」と不安になる方も少なくありません。
この記事では、処分保留とは何か、釈放後に考えられる展開(不起訴・起訴・再逮捕など)、そして今後どのように対応すべきかを、わかりやすくまとめました。
- 処分保留と不起訴の違い
- 処分保留後に起こり得る「その後」の流れ
- 不起訴になるまでの期間や連絡について
- 起訴される可能性、再逮捕されるリスク
- 釈放後に取るべき具体的な対応
上記のよくある疑問にも丁寧にお答えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
処分保留とは?意味と釈放の理由をわかりやすく解説
処分保留とは
処分保留とは、刑事事件の被疑者が逮捕・勾留されている間に、検察官が「起訴」または「不起訴」の最終判断を下せなかった場合、一旦その判断を保留し、被疑者の身柄を釈放する手続きを指します。
逮捕後、警察・検察は最大で23日間被疑者を拘束できますが、この期間内に十分な証拠が集まらず、起訴・不起訴の決定ができない場合に処分保留となります。
処分保留は「今は起訴できないが、今後の捜査次第では起訴や再逮捕の可能性がある状態」です。釈放されたからといって、「無実が証明された」「事件が終わった」というわけではありません。処分保留で釈放されても、起訴されて有罪判決をうける可能性はあります。
処分保留と不起訴の違いとは?
よく混同されやすいのが「処分保留」と「不起訴」です。「処分保留」は刑事処分の判断を先送りした状態であるのに対し、「不起訴」は、検察が最終的に起訴しないと正式に判断した状態です。
処分保留と不起訴の違い
処分保留 | 不起訴 | |
---|---|---|
意味 | 判断を先送りした状態 | 起訴しないと正式に決まった状態 |
釈放との関係 | 主に処分保留によって釈放される | 不起訴も被疑者の釈放を伴うことが多い |
事件の状態 | 「捜査中」で終了していない | 原則として事件は終了 |
再逮捕の可能性 | あり(新証拠や新事実が出た場合) | 基本的に再捜査や再逮捕はされにくい |
処分保留で釈放された「その後」の流れは?
処分保留で釈放された後、事件はまだ終了していません。処分保留で釈放後は、主に次の3つの展開が考えられます。
(1)不起訴になる
最も望ましいのは、検察が最終的に「不起訴」と判断し、刑事手続きが終了するケースです。
不起訴となる理由には大きく「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」の3種類があります。統計上、最も多かった不起訴の理由は「起訴猶予」であり、令和4年における起訴猶予は、不起訴処分全体の69.1%に上ります(令和6年版 犯罪白書 第2編/第2章/第4節)。
起訴猶予とは、犯罪の嫌疑(証拠)は十分にあるが、情状を考慮し、検察官が「起訴する必要がない」と判断した場合に行われるものです(刑事訴訟法248条)。
実務上、罪を認めている場合は、起訴猶予での不起訴を目指していくことになります。不起訴となれば前科はつかずに済むため、これまで通りの日常生活に戻れる可能性が高くなります。
遵守事項を定めた上で処分保留されるケースも
一部の地方検察庁では、被疑者の同意を得て遵守事項(守るべき条件・ルール)を定めた上で、処分を保留して釈放し、履行状況が順調であれば起訴猶予処分とする運用が行われていることもあります。
遵守事項には、以下のようなものが挙げられます。
- 被害者への接触禁止
- 一定期間の報告義務
- 更生支援プログラムへの参加
これらの条件をきちんと守ったことが確認された上で、最終的に「起訴猶予処分」となることもあるのです。
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・起訴猶予になりやすい人や事案の傾向は?不起訴と起訴猶予の違いも解説
(2)起訴される

釈放後も捜査が続けられ、十分な証拠が集まったと判断されれば、後日「在宅起訴」される可能性があります。起訴された場合は刑事裁判の対象となります。
起訴されると99%以上の確率で有罪判決となり、前科がつきます。
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(3)再逮捕される
処分保留で一時的に釈放されたとしても、後日、同じ事件に関して新たな証拠が見つかった場合や、別の犯罪(いわゆる「余罪」)が判明した場合には、再び逮捕されることがあります。
これは決して珍しいことではなく、捜査が継続されている中で起こるケースも多くあります。
再逮捕されたケースでも、逮捕後の流れは1度目の逮捕と同じです。逮捕後は事件が起訴されるかどうか決まるまで最長23日間身体拘束されるおそれがあります。

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処分保留から不起訴になるまでの期間と連絡の有無
不起訴になるまでの期間は?
個別の事件により異なりますが、釈放から数週間~数か月程度で不起訴処分となることが一般的です。ただし、長いケースでは半年以上経ってから通知されることもあります。
不起訴が決定された場合、連絡はある?
不起訴が決定しても、検察官には被疑者へ通知する義務はありません。実際には、何の連絡もなく不起訴処分となっていることもあり得ます。
もし長期間(2~3か月程度)検察庁から連絡がない場合は、捜査が継続しているか、すでに不起訴になっている可能性があります。その場合は、自分で検察庁に問い合わせるか、弁護士に相談して状況を確認してもらうのが確実です。
刑事訴訟法上、不起訴処分となった場合には「不起訴処分通知書」を請求することができます。弁護士がついていれば、弁護士が代わりに取得してくれますが、ご自身で請求することも可能です。
処分保留で釈放後、起訴・再逮捕される可能性
起訴される可能性(起訴率)は?
犯罪の種類や証拠の収集具合によって異なりますが、統計上、検察に送致された事件全体のうち、起訴率は32%でした(令和6年犯罪白書「起訴・不起訴人員の推移」より)。
ただし、「処分保留」となった場合は、現時点で証拠が十分ではないと判断されている状況ですので、直ちに起訴される可能性は高くないといえるでしょう。
とはいえ、その後に追って証拠が収集されれば、起訴される可能性は十分にあります。
再逮捕の可能性は?
再逮捕されるかどうかは、以下の事情があるかどうかに左右されます。
- 複数の容疑がある
- 証拠隠滅や逃亡の可能性がある
- 被害者や関係者への口裏合わせの可能性がある
再逮捕されたとしても、新たな勾留には裁判所の許可が必要です。
処分保留で釈放後にしておくべきこと
処分保留で釈放されたあと、必要以上に不安になる必要はありませんが、再逮捕や起訴といったリスクに対処するため、以下のような対応を心がけましょう。
(1)弁護士と連絡を取って状況を確認する
釈放された後も、身の回りでどのような動きがあるのか、検察や警察が引き続き捜査を行っているかを確認するために、引き続き弁護士と連絡を取りましょう。
弁護士は、今後「起訴される可能性があるかどうか」など法的な見通しについてアドバイスしてくれます。連絡を怠ると、重要な情報を見逃してしまうことになりかねません。
アトムの解決事例(処分保留後に不起訴処分)
特殊詐欺未遂事件として現行犯逮捕された事案。アルバイト先から荷物を受け取るよう指示を受け、被害者宅に行き現金を受け取ろうとした。故意ではないと否認。
弁護活動の成果
詐欺の受け子をやらされるとは知らなかった旨を、検察官に主張。処分保留で釈放された後、不起訴処分となった。
(2)事件に関する資料を整理
自分に関係する証拠ややり取りなどの資料、関係者の連絡先・証人となり得る人の情報などは、できるだけ整理しておきましょう。
なぜなら、将来的に再度事情聴取や起訴があった場合、自分の無実や反論・事情を説明するための材料となるからです。
(3)被害者がいる場合は弁護士を通じて示談交渉
もし事件に被害者がいる場合、起訴されるかどうかに大きく影響を与えるのが「示談」です。
示談が重要な理由は、示談の有無や交渉の経緯が処分や判決に影響を与えるからです。示談が成立すると、被害者の被害回復が図られ、加害者にとっても刑事処分の軽減につながる可能性があります。
ただし、自分で直接連絡を取るのは避け、必ず弁護士を通じて行いましょう。

弁護士であれば、加害者に連絡先を教えないという条件のもと、被害者の連絡先を検察官から入手することが可能です。
示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、被害者の心情も考慮しながら、適切なタイミングと金額で示談交渉することができます。
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・弁護士なしの示談交渉はリスク大!示談交渉に強い弁護士への依頼が必要な理由
アトムの解決事例(処分保留後、不起訴処分)
自動車内において、出会い系アプリを通じて知り合った被害者児童に金銭を支払って、性交等をしたとされるケース。警察官が自宅に訪問し、家宅捜索され逮捕された。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くして示談を締結し、嘆願書を取得したところ、勾留満期前に処分保留で釈放された。その後不起訴処分を獲得。
(4)日常生活では誠実な態度を保つ

逮捕の要件である証拠の隠滅や逃亡のおそれがあると疑われる行動は絶対に避けてください。警察や検察が日常生活を見て判断することもあるため、真面目に誠実な生活を心がけることが大切です。
職場や学校に復帰する場合も、できるだけ規則正しい生活を送り、社会的信頼を維持する姿勢を見せることが、今後の処分判断にも影響を与える可能性があります。
まとめ:処分保留で釈放後も油断は禁物、冷静に対応を
処分保留で釈放されたとはいえ、それは「事件が終わった」ことを意味しません。むしろ、起訴・不起訴・再逮捕といった判断が今後下される「中間的な状態」です。
こうした状況だからこそ、信頼できる弁護士に相談し、過度に不安にならず、今すべきことに落ち着いて対応することが重要です。
もし、自分やご家族が処分保留で釈放された場合は、早めに刑事事件に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
アトムご依頼者様からの感謝のお手紙
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丁寧な説明と迅速な対応が良かったです。

説明が丁寧で、全てに迅速で良かったです。大変お世話になりましてありがとうございました。
予想していたよりも良い結果で感謝しています。

当初は精神的に不安定でパニックな状態で全く眠れませんでした。次の日弁護士の先生のお話を聞いてすごく不安が解消しました。しかも今回自分が予想していた結果よりも良い結果でしたので感謝しかありません。大事なのは今後だと思っています。ずっと罪を背負っていかなければならないと思っています。何か変われるきっかけにしなければと思います。この度は本当にありがとうございました。
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