ベランダなどから下着を盗み出す、いわゆる「下着泥棒」行為を行ってしまった……。このような場合、逮捕されることはあるのでしょうか。
この記事では、下着泥棒はどのような罪に問われるのかについてや、逮捕され前科が付く可能性、逮捕された場合の流れなどについて解説します。
下着泥棒によって前科をつけないためには不起訴処分を得ることが重要であり、そのためには早期に弁護士に相談することが必要です。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
下着泥棒で問われる可能性のある罪
下着泥棒を行った場合、主に問われる可能性のある罪は主に窃盗罪や住居侵入罪です。
窃盗罪の刑罰
窃盗罪は、刑法235条に定められた罪です。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法235条
窃盗罪は一般にイメージされる「泥棒」であり、「他人の財物」を「窃取」した場合に成立します。「窃取」とは、他人の占有している財産や物品(この場合は下着)を、その意思に反して自分または第三者のものとしようとする行為のことを指します。
窃盗罪には未遂罪もあるため、下着泥棒を行おうとしたものの住人に発見され失敗に終わったなどといった場合であっても、窃盗未遂罪として処罰されることがあります。
そのほか、住居に忍び込んだ際に在宅していた相手から強引に下着を奪ったり、逃走時に暴力を振るったなどの場合においては、窃盗罪より重い強盗罪や事後強盗罪が適用されることもあります。
住居侵入罪の刑罰
下着泥棒を行うために他人の住居などに無断で立ち入った場合、刑法130条に定められた住居侵入罪(建造物侵入罪とも)が適用されることがあります。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
刑法130条
部屋の中ではなくベランダなどに干してある下着を盗んだ場合、住居侵入罪になるのかと思われる方もいるかもしれません。しかし、ベランダは住居の一部と考えられているため、住居侵入罪に問われるケースが多いです。
また、個人の住宅ではなくコインランドリーの洗濯機などから下着を盗み出すケースも考えられますが、この場合にも下着泥棒目的でコインランドリー内に立ち入るのは正当とはいえないため、建造物侵入罪が適用されることがあります。
下着泥棒で逮捕される可能性と、逮捕された場合の流れ
それでは、実際に下着泥棒を行った場合、逮捕される可能性はどの程度あるのでしょうか。また、逮捕された場合の流れはどのようなものとなるのでしょうか。
下着泥棒は通常の窃盗よりも逮捕率はやや高い
これまでにアトム弁護士事務所が扱った事件では、窃盗事件全体では逮捕されたケースが5割ほどであるのに対し、下着泥棒では7割ほどのケースで逮捕されています。下着泥棒については、一般的な窃盗事件よりも逮捕される可能性がやや高くなっていることがうかがえます。
逮捕には2つの形式がある
逮捕には主に2つの形式があります。一つ目の通常逮捕は、後日逮捕とも呼ばれる形式で、刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官などが逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合のみ逮捕令状を発行し、それによって逮捕が行われます。
次に現行犯逮捕があります。犯行中や犯行直後の犯人を逮捕することをいい、犯人を間違える可能性は低いため、逮捕状なく一般人でもできる(私人逮捕)ことが特徴ですが、逮捕後はすぐに警察官などに犯人を引き渡す必要があります。その後は最寄りの警察署に連行され、取り調べを受けることになります。
下着泥棒の場合、犯行現場を目撃されたことにより現行犯逮捕されることも多いですが、防犯カメラやインターホンの記録映像から犯行の様子が明るみに出て後日逮捕に至るケースもあります。
逮捕勾留から起訴前の釈放までは最長23日間
次に、逮捕された後の流れをみてみましょう。逮捕されてから起訴・不起訴の決定が行われるまでは、最長で23日間の身体拘束が続く可能性があります。
警察は微罪処分として釈放する場合もありますが、それ以外の場合、事件を検察官に引き継ぐ検察官送致(送検)が48時間以内に行われます。検察官の判断により24時間以内に勾留請求が行われ、勾留質問などのあと、原則として10日間身柄が拘束されます。必要に応じ、さらに最長で10日間の勾留延長が行われます。
捜査の結果、検察官は起訴・不起訴を判断します。不起訴となった場合は釈放されますが、起訴されると略式裁判もしくは正式裁判が開かれ、罰金刑や懲役刑などの刑罰が決定されます。
下着泥棒で前科をつけないためにすべきこと
下着泥棒の初犯で前科をつけないためには、早期に弁護士に相談し、不起訴処分を得ることが重要です。
不起訴処分を獲得し前科を回避する
検察官により起訴が行われた場合、裁判で無罪になるのは非常に難しくなります。しかし、検察官が不起訴処分の判断を下した場合は、裁判を受けること自体がなくなるため、前科がつく可能性はゼロになります。
すなわち、前科がつくことを回避するためには、不起訴処分を目指すことが最も現実的な手段となります。
示談により不起訴の可能性を高める
下着泥棒のような被害者のいる犯罪の場合、早期に被害者対応を行うことが肝要です。示談を締結することで、検察官が再犯の可能性や加害者家族への影響などといった様々な情状を考慮し、最終的に「起訴するほどではない」と判断する「起訴猶予」の可能性が高まります。
被害者と示談するためには弁護士に相談する
被害者との間に示談を締結するためには、弁護士によるサポートが欠かせません。
下着泥棒は痴漢や強制わいせつのような直接相手の身体に危害を加える性質の犯罪ではないものの、広く性犯罪の一種といえます。そのため、当然被害者は加害者に対して強い恐怖心や嫌悪感を持っていることが多く、単独で示談交渉を行うのは極めて困難と考えられます。
このようなケースにおいても、経験豊富な弁護士であれば、被害者の心情に最大限配慮した対応を行い、適切に示談を締結することを目指すことが可能です。
また、逮捕されてから起訴される前の身柄拘束が続く期間は最大で23日間ですが、起訴が決定された後で示談が成立しても、後から不起訴とすることはできないため、示談交渉はその間に行う必要があります。そのため、できる限り早い段階で弁護士に相談することが大切になってきます。
逮捕されている場合、加害者本人は示談交渉はできず、また逮捕されていない場合であっても加害者と被害者が直接示談交渉を行うことは困難です。そのため、示談交渉の際は弁護士を間に立てることが必要となります。