
会社から横領の疑いをかけられている場合、横領を認めないという対応は正しいのでしょうか。
この記事では、身に覚えのない横領の疑いをかけられて認めない場合の対応方法、実際に会社のお金を着服したけれども横領を認めない場合の流れなどについて、刑事事件を扱う弁護士が解説しています。
横領を認めない場合の対応方法、横領を認めない根拠となる証拠、横領を認めない場合の流れなどについて知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
横領を認めない場合の対応は?
横領を認めない場合とは?
会社から横領の疑いをかけられている場合、横領を認めないという対応で問題ないのか、不安になりますよね。
横領を認めない場合については、以下のようなケースがあるでしょう。
横領を認めない場合
- 会社の商品の在庫数があわず、横領を疑われたが、横領をしていない場合。
- バイト先のレジの金銭があわず、横領を疑われたが、横領をしていない場合。
- 数年間、会社のお金を横領してきたが、解雇されるので横領を認めない場合。
横領を認めない場合については、様々なケースがあります。
実際に雇い主などから横領の疑いをかけられたら、どうやって対応していけばよいのでしょうか。
横領を認めない場合は「落ち着いて対応」?
横領の疑いをかけられた場合、まずすべきことは、落ち着いて状況を把握することです。
横領の疑いをかけられた場合、多くの人は慌ててしまい、適切な対応ができなくなることがあります。
しかし、慌てて弁解したり、嘘をつくことは、状況を悪化させるだけです。
実際は横領をしていないのに、認めてしまうと、その後挽回することが難しくなることもあります。
まずは、落ち着いて状況を把握し、適切な対応を検討しましょう。
対応に困るようであれば、早期に横領事件に詳しい弁護士に相談してみましょう。
横領を認めない場合は「弁護士に相談」?
横領を認めない場合は、弁護士に相談して適切な対応をとることが大切です。
刑事事件をあつかう弁護士であれば、刑事責任を回避するために様々な対策を立ててくれます。
弁護士は、横領の疑いを晴らすための調査をしたり、有利な証拠を集めたりする手助けをしてくれます。そして弁護士は、集めた証拠や法律論を駆使して、警察や検察と交渉をしたり、裁判で被告人を弁護したりしてくれます。
横領事件の捜査が始まる前であれば、弁護士の早期対応によって警察の捜査を回避できる可能性もあるでしょう。
横領を認めない場合でも「特別な対応」は必要?
横領を認めない場合でも、弁護士相談などの「特別な対応」は必要でしょう。
会社の商品や金銭を横領したと疑われた場合、証拠がそろえば、業務上横領罪に問われる可能性があります。
業務上横領罪は、刑法253条に規定されている犯罪です。
業務上横領罪で有罪判決を受けた場合、法定刑は10年以下の懲役になります。
(業務上横領)
第二百五十三条 業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。
刑法253条
また、民事上の賠償責任として、横領した金銭を会社に返還するように請求されます。
身に覚えのない横領事件であっても、このような刑事罰や、民事上の賠償などの責任を問われるリスクがあるので、適切な弁護活動をしてもらう必要があります。
また、実際には関与しているけれど「横領を認めない場合」では、証拠の内容によっては、その後、起訴されて有罪になる可能性もあります。そして、ずっと横領を認めなかったことや、横領したお金を弁償していないこと等の事情が考慮されて、刑罰が重くなることもあるでしょう。
このような懸念があるならば、早めに横領を認める方針に転換して、会社との示談を進めていく対応をとったほうがよいでしょう。
実務上、示談が成立すれば不起訴になり、刑事裁判が開かれず有罪判決が下されないということもよくあります。
横領を認めない場合の証拠
会社側が集める証拠
会社側があなたの横領行為を主張してくるとき、客観的な根拠が特に無いケースもあるでしょう。
ですが、実際に、以下のような客観的証拠を会社側が集めることができた場合、警察に被害届が出されて捜査が進められる可能性があります。
横領の根拠になる証拠
- 領収書
- 通帳の記録
- 防犯カメラの映像
- パソコンのログ
被疑者側が集める証拠
横領したと疑われている側(被疑者側)としては、以下のような証拠を収集することが考えらえるでしょう。
被疑者側が集める証拠
- 横領していないことを証明する書類
- 横領していないことを証明する証言
- 横領していないことを裏付ける状況証拠
上記のほか、「横領をしたといえる客観的な証拠がない」ということも、横領をしていない証拠となります。
警察や検察から捜査を受けた際、横領をした客観的証拠がないのであれば、そのことを弁護士に主張してもらって、横領の嫌疑を晴らすことも考えられるでしょう。
横領を認めない場合の方針は正しい?弁護士の役割は?
1.横領行為による懲戒解雇を回避
横領をした場合は、会社を懲戒解雇される可能性が高まります。
実際には横領行為をしていないのに疑われている場合、横領に関する客観的証拠を引き合いにだしながら、会社側と冷静に話し合いの機会を持つ必要があるでしょう。
法律の専門家である弁護士に相談することで、会社に対する対応についても最善を尽くすことができるでしょう。
2.横領の刑事事件化・捜査を防ぐ
横領を認めない場合でも、実際には横領をしていたというケースもあるでしょう。
そのような場合は、横領事件の被害届を警察に提出される前に、横領を認めて、会社と示談交渉をおこない早期解決を図るという対策が考えられます。
示談とは、会社に対して「横領した金銭」を返還するなどして、当事者間では損害賠償の問題が解決していることを確認するものです。
示談の中で、横領事件についての被害届を出さないことや、提出済みの被害届を取り下げる旨を約束してもらえることも多いものです。
そのため、示談交渉が成功すれば、刑事告訴(刑事事件化や捜査)を回避できる可能性が高まります。
示談交渉を行うためには、弁護士に相談することが大切です。
通常、刑事事件では、弁護士をとおして示談交渉をおこないます。
弁護士が加害者の代わりに示談交渉をおこなうのは、加害者本人から直接連絡があることを拒む被害者の方がいたり、ご本人同士では冷静な話し合いをするのが難しかったりするためです。
刑事事件の経験豊富な弁護士であれば、示談金の金額や示談条件の切り出し方など工夫して示談交渉を進めてくれるでしょう。
横領を疑われている会社員は、早めに弁護士に相談することで、示談交渉に費せる時間が増えます。
早期の弁護士相談によって、刑事事件化を防げる可能性や、社会的信用を早期に回復できる可能性が高まるでしょう。

3.横領事件の調査や証拠収集
弁護士は、横領の疑いに対する調査を行い、証拠を集める手助けをします。
調査等の内容としては、以下のようなものがあります。
横領事件の弁護活動における調査・証拠収集
- 関係者の事情聴取
- 証拠の収集
- 法令の調査
- 調査・収集した情報を用いて見通しや対策を立てる
弁護士は、収集した証拠から今後の見通しを立てて、取調べにはどうやって対応していったらよいのかという提案も してくれるでしょう。
また、警察などの捜査機関が不正に証拠を収集していた場合は、弁護士は捜査の不備等を指摘する等して早期釈放を目指してくれるでしょう。
4.警察・検察と交渉して早期釈放
弁護士は、警察や検察と交渉し、被疑者の不利益な処分を回避する手助けをします。
交渉の内容としては、以下のようなものがあります。
警察や検察との交渉
- 逮捕された場合は早期釈放をめざす
- 不起訴処分をめざす(不起訴になれば前科がつかない)
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・逮捕されたら│逮捕の種類と手続きの流れ、釈放のタイミングを解説
5.裁判で被告人を弁護する
弁護士は、裁判で被告人を弁護し、無罪判決や軽い刑罰を求める手助けをします。
弁護の内容としては、以下のようなものがあります。
刑事裁判の弁護活動
- 無罪であることを立証する
- 被告人に有利な事情を主張する
数年にわたる横領事件では、裁判になることもあります。
弁護士には守秘義務があるので、信頼できる弁護士に早期に相談して、今後の対策を立てることが重要です。
横領を認めない場合によくある質問
Q1.えん罪なのに解雇された時の対応は?
実際に横領をしてしまっている場合、懲戒解雇になる可能性があります。
一方、実際に横領をしていない場合でも、会社によっては解雇しようとしてきたり、退職勧奨を受けたりすることもあるでしょう。
しかし、会社が従業員を解雇するためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要です(労働基準法16条)。
つまり、えん罪の場合は、会社は従業員を解雇できないことになります。
もしも横領をしていないのに解雇された場合には、会社と直接話し合いをするか、それでも解決できない場合は労働審判や裁判で争う手段があるでしょう。
Q2.横領は弁護士相談で解決しますか?
横領は、弁護士に相談することで解決する可能性があります。
弁護士は、横領事件の法律的な問題についてアドバイスし、刑事責任や民事責任を免れるための弁護をします。
また、横領事件の解決に向けて、会社や警察との交渉や示談交渉を行います。
横領事件に巻き込まれた場合は、早期に弁護士に相談することをお勧めします。
Q3.業務上横領罪の刑罰の相場は?
会社のお金を着服した場合、業務上横領罪に問われる可能性があるでしょう。
業務上横領罪とは「業務上自己の占有する他人の物を横領した」場合に成立する犯罪です(刑法253条)。
業務上横領罪の法定刑は、1ヶ月~10年以下の懲役になります。
実際に受ける刑罰の重さ(量刑)は、横領した金額、横領した者の地位、横領した者の動機、横領した者の前科などによって異なります。
一般的に、横領した金額が大きければ大きいほど、刑罰は重くなります。たとえば、会社の役員や上級管理職である場合は、着服した期間が長くなったり、被害金額が大きくなりやすい傾向があるため、刑罰が重くなる傾向があるでしょう。
横領罪で有罪判決を受けた場合、懲役刑を受ける可能性があります。
懲役刑の刑期は、横領した金額によって左右される傾向があるでしょう。
一般的に、横領した金額が100万円以下であれば、執行猶予付きの懲役刑が科せられることが多いといわれています。一方、横領した金額が100万円を超えると、実刑判決を受ける可能性が高くなるでしょう。
Q4.横領の示談金はいくらですか?
横領の示談金は、横領の金額や横領の態様などによって異なります。
一般的には、横領の示談金の相場としては、横領の金額の1〜2倍程度、あるいは被害金額に10万円~20万円程度加えた金額などが相場といえるでしょう。
しかし、示談金相場には明確な定めはなく、横領の態様が悪質な場合は、示談金がさらに高くなることもあるでしょう。
金額交渉については、加害者本人から会社側に伝えづらい事情でもあるので、こういう面で弁護士に示談交渉をしてもらうメリットを実感することができるでしょう。
Q5.横領の弁護士費用はどのくらいですか?
横領行為について弁護士を依頼する場合、かかる弁護士費用は事務所によって異なります。
かかる弁護士費用の内訳としては、法律相談料、着手金、成功報酬、出張日当、実費等です。
事件の難易度や、弁護活動の成果によって弁護士費用が変動することが多いため、弁護士に事件を依頼する前に必ず料金表などを確認しましょう。
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