2025年6月より、懲役・禁錮刑が「拘禁刑」に統一されました。
「お酒の席でつい手が出てしまった」「口論になり胸ぐらをつかんだ」——こうした行為は暴行罪に該当し、初犯であっても逮捕される可能性があります。
暴行罪の法定刑は2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。
「初犯なら大事にはならないだろう」と思われるかもしれませんが、被害者の処罰感情や行為の悪質性によっては、初犯でも厳しい処分を受けることがあります。
一方で、早期に示談を成立させるなど適切に対応すれば、不起訴処分となり前科を回避できるケースも少なくありません。
この記事では、初犯で暴行事件を起こしてしまった方やそのご家族に向けて、重要なポイントを弁護士がわかりやすく解説します。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
暴行罪とは?成立要件と具体例
暴行罪は「人の身体に対する不法な有形力の行使」によって成立します。直接身体に触れる行為だけでなく、触れない行為でも成立する場合があります。
| カテゴリ | 具体例 |
|---|---|
| 直接的な暴行 | 殴る、蹴る、叩く、押す、髪を引っ張る |
| 物を使った暴行 | 物を投げつける(当たらなくても可)、水をかける |
| 身体を拘束 | 胸ぐらをつかむ、腕をつかんで引っ張る |
| 間接的な暴行 | 狭い室内で刃物を振り回す、大音量で耳元で叫ぶ |
| その他 | 唾を吐きかける、塩を振りかける |
ただし、社会通念上許容される程度の軽微な接触(例:肩を軽く押す等)は暴行と評価されない場合もあります。
また、胸ぐらをつかむといった行為も、状況によっては正当防衛や緊急避難が成立する場合があります。
暴行罪と傷害罪の違い
暴行の結果、相手に少しでも怪我をさせてしまった場合は傷害罪となります。
| 項目 | 暴行罪 | 傷害罪 |
|---|---|---|
| 法定刑 | 2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料 | 15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 罰金相場 | 10万円〜30万円 | 30万円〜50万円 |
| 示談金相場 | 10万円〜30万円 | 30万円〜100万円以上 |
打撲、擦り傷、むち打ち、さらには精神的なPTSDなども傷害に含まれます。相手が診断書を提出すれば、傷害罪として捜査されることになります。
暴行罪の初犯で逮捕・起訴される可能性
暴行罪は初犯であっても逮捕・起訴される可能性があります。
全てが初犯ではありませんが、実際に過去にアトムで取り扱った暴行罪の事例の逮捕率は約47%でした。
暴行罪の初犯で逮捕されるケース

暴行罪は初犯であっても、状況次第で逮捕される可能性があります。逮捕には大きく分けて「現行犯逮捕」と「通常逮捕」の2種類があります。
逮捕の種類の比較
| 項目 | 現行犯逮捕 | 通常逮捕 |
|---|---|---|
| 逮捕のタイミング | 犯行中や直後に身柄を確保 | 逮捕状に基づき後日逮捕 |
| 初犯の影響 | 初犯かどうかは関係なし | 初犯は逮捕を回避できる傾向がある |
現行犯逮捕の場合、その場で前科の有無を確認することはできないため、初犯であっても関係なく逮捕されます。
一方、後日逮捕(通常逮捕)の場合は、初犯であれば「逃亡や証拠隠滅のおそれ」が低いと判断されやすく、逮捕を回避できる可能性が高まります。
ただし、以下のようなケースでは初犯でも逮捕リスクが高くなります。
初犯でも逮捕リスクが高い行為
- 暴行の態様が悪質(凶器を使用した、執拗に暴行した等)
- 被害者の処罰感情が極めて強い
- 警察の呼び出しを無視するなど、逃亡や証拠隠滅の疑いがある
- 住所不定など、身元が不安定である
暴行罪の初犯で不起訴・起訴になりやすい要素
暴行罪で逮捕された場合でも、不起訴処分になる可能性があります。初犯であれば、その可能性はさらに高まります。検察官が起訴・不起訴を判断する際には、以下の要素が考慮されます。
| 不起訴になりやすい要素 | 起訴になりやすい要素 |
|---|---|
| 初犯(前歴なし) | 前科・前歴がある |
| 示談が成立している | 示談が成立していない |
| 被害者が許している | 被害者の処罰感情が強い |
| 犯行態様が軽微 | 犯行態様が悪質 |
| 反省の態度がある | 否認している・反省なし |
初犯かつ示談成立というケースでは、不起訴となる可能性が高いです。逆に、初犯であっても示談ができず被害者が厳しい処罰を求めている場合は、起訴されるリスクがあります。
暴行罪の初犯で前科はつく?
前科がつくのは、起訴されて有罪判決を受けた場合のみです。したがって、逮捕されただけでは前科はつきません。また、仮に逮捕されたとしても、不起訴処分となれば前科はつきません。
ただし、日本の刑事裁判の有罪率は約99.9%(令和7年版犯罪白書より)です。つまり、一度起訴されてしまうと、ほぼ確実に有罪となり前科がつきます。
つまり、前科を回避するためには、起訴される前の段階で示談を成立させ、不起訴処分を獲得することが重要です。
暴行罪の初犯で逮捕されたらどうなる?

暴行罪の疑いをかけられて逮捕された場合、まずは警察署に連行されて警察官の取調べを受けます。
逮捕後48時間以内に事件は検察官に送致(引き継ぐこと)され、その後で検察官により起訴するかどうかの判断が行われます。
被疑者は逮捕から起訴までの間、最大で23日間留置場や拘置所に拘束されることになります。
起訴された場合は裁判を受けることになり、その中で有罪・無罪か、有罪の場合どういった罰が科されるかが決定されます。
暴行罪初犯の刑罰は?罰金・拘禁刑の相場
暴行罪(刑法208条)の法定刑は、2年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料です。
暴行罪初犯の罰金相場は10万円〜30万円
暴行罪の初犯で起訴された場合、罰金刑が選択されることが多いです。罰金額は事案の内容によりますが、概ね10万円〜30万円程度が目安となります。
| 事案の程度 | 罰金額の目安 |
|---|---|
| 軽微(押した・胸ぐらをつかんだ等) | 10万円〜15万円 |
| 中程度(殴った・蹴った等) | 15万円〜25万円 |
| やや重い(複数回暴行・凶器使用等) | 25万円〜30万円 |
初犯でいきなり上限の30万円が科されるケースは稀ですが、態様が悪質な場合は高額になる傾向があります。
実刑になる可能性は?
暴行罪の初犯でいきなり実刑(刑務所収容)となる可能性は低いでしょう。
正式裁判で拘禁刑が言い渡された場合でも、初犯であれば通常は執行猶予がつくのが通常です。執行猶予がつけば、刑務所に入ることなく社会生活を続けられます。
暴行罪初犯で逮捕・起訴を防ぐ方法
示談成立が最も重要
暴行罪の初犯で逮捕や起訴を回避するために最も効果的なのは、被害者との示談を成立させることです。示談が成立すれば、検察官は当事者間で解決済みと判断し、不起訴とする可能性が高まります。
暴行罪の示談金相場
暴行罪の示談金相場は、10万円〜30万円程度が目安です。
| 事案の内容 | 示談金の目安 |
|---|---|
| 軽微な暴行(押した・つかんだ等) | 10万円〜15万円 |
| 一般的な暴行(殴った・蹴った等) | 15万円〜30万円 |
| 悪質な暴行(凶器使用・執拗等) | 30万円以上 |
実際にアトムの弁護士が対応した暴行罪の事例では、示談金の相場は30万円程度でした。
ただし、これらはあくまで目安の数値であり、被害者の処罰感情や被害の程度、加害者の資力などによって金額は変動します。
暴行事件における示談金や慰謝料がどのように決まるのかは『暴行罪の加害者になった場合の慰謝料・示談金の相場。金額はどう決まる?』の記事が参考になります。あわせてご確認ください。
暴行事件で弁護士に依頼するメリット
暴行事件の解決には、専門家である弁護士の介入が不可欠です。
弁護士ができること
- 被害者との示談交渉が可能
警察は加害者本人に被害者の連絡先を教えることはありません。弁護士であれば連絡先を取得し、代理人として交渉できます。 - 早期釈放に向けた活動
勾留阻止の働きかけや意見書の提出により、早期釈放を目指します。 - 不起訴処分の獲得
示談成立のサポートに加え、検察官に対して不起訴が相当である旨の意見書を提出します。
上記の他にも、検察官や裁判官へ刑事処分軽減の働きかけや、取調べの対応についても弁護士から適切なアドバイスが受けられます。
暴行事件で逮捕されるのを防ぎたい、なるべく早く釈放したい、前科がつくのを回避したいといった場合は弁護士に相談することをお勧めします。
暴行罪を弁護士に相談するメリットはこちらの記事で詳細に解説しているので併せてご確認ください。
アトムの弁護士が対応した暴行罪の事例
暴行罪(不起訴処分)
花見をしていた折、泥酔して18歳未満の被害児童にからみ、首根っこをおさえるなどの暴行を加えた。暴行罪の事案。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。
示談の有無
あり (20万円)
最終処分
不起訴処分
暴行罪(不起訴処分)
被害者と依頼者の腕が接触し、被害者の腕をつかんだとされたケース。後日被害届が出されるも、依頼者は故意ではないと主張していた。暴行罪の事案。
弁護活動の成果
被害者と意見が食い違っていたことから、実況見分を行ってレポートを作成し、検察に対する意見書に添付。不起訴処分となった。
示談の有無
なし
最終処分
不起訴処分
暴行罪の初犯に関するよくある質問
暴行罪の初犯で会社にバレますか?
一般的には会社に通知されることはありませんが、事案によっては発覚する可能性があります。
また、逮捕された場合でも、早期に釈放されれば体調不良等の説明で対応できる可能性があります。
ただし、実名報道や長期欠勤となった場合は発覚のリスクが高まります。
相手が先に手を出してきた場合も暴行罪になりますか?
正当防衛が成立すれば罪には問われません。
ただし、正当防衛には厳格な要件(急迫不正の侵害など)があり、反撃が過剰であれば過剰防衛として罪に問われる可能性があります。
正当防衛の成立要件についてはこちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
被害届を出された後でも示談できますか?
被害届を出された後でも示談はできます。示談が成立して被害届が取り下げられれば、不起訴処分となる可能性が高くなります。
ただし、示談成立が必ず不起訴につながるわけではなく、事件の悪質性や被害者の処罰感情等によっては起訴されることもあります。
暴行罪の初犯のお悩みは弁護士に相談
暴行罪は初犯であっても逮捕される可能性がある犯罪です。しかし、早期に適切な対応を取れば、不起訴処分を獲得し、前科を回避できる可能性は十分にあります。
- 初犯でも現行犯逮捕される可能性はある
- 前科回避には起訴前の示談成立が最重要
- 弁護士に依頼することで示談交渉・早期釈放が可能
暴行事件は時間との勝負です。逮捕前であれば逮捕回避、逮捕後であれば早期釈放・不起訴獲得に向けて、早急に弁護士に相談することをおすすめします。


