住居侵入をした上で窃盗を行うと、通常の窃盗よりも逮捕される可能性が高くなるでしょう。
住居侵入窃盗は次のようなケースが典型例となります。
- 他人の家に侵入して金品を盗んでしまった
- 好きな女性の家に忍び込んで下着泥棒をしてしまった
空き巣などの住居侵入窃盗は、住居侵入罪と窃盗罪の2つの犯罪が成立する行為です。
本記事では、住居侵入窃盗に関する刑罰、逮捕、示談などについて解説しています。
他人の住居に侵入し、窃盗罪を犯してしまった場合は、なるべく早い段階で弁護士に相談してください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
住居侵入窃盗で問われる罪
住居侵入窃盗とは
住居や建造物などに不法に侵入した上での窃盗は、侵入窃盗と呼ばれます。
「侵入窃盗罪」という犯罪は法律上存在しませんが、スリや万引きなどの窃盗罪と区別するために一般的な用語として使われています。
住居侵入窃盗とは侵入窃盗の内、「住居」に不法に侵入して窃盗を行うことです。
住居に誰もいないときに窃盗を行う「空き巣」や、住居に人がいるときに窃盗を行う「居空き」等が住居侵入窃盗の代表例です。
住居侵入をして実際に窃盗を行うと、住居侵入罪と窃盗既遂の2つの犯罪が成立します。
住居侵入をしたが窃盗の目的を達成しなかった場合には、住居侵入罪と窃盗未遂の2つの犯罪が成立します。
量刑については、以下で説明していきます。
住居侵入罪
住居侵入罪は、正当な理由なく他人の住居に侵入する犯罪です。
「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」が法定刑となります。
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法130条
住居侵入罪における住居とは、家だけではなく、人が生活している場所を指しています。例えばホテルや艦船、車中など、人が生活している場所であれば全て住居に該当します。
正当な理由とは、住居侵入が法律によって許されている場合や、住居侵入が社会的に許容されている場合をいいます。例えば、警察官が捜査のために住居に立ち入ったり、消防士が火災の消火のために住居に立ち入ったりする場合は、正当な理由があると認められます。
窃盗罪
窃盗罪とは、他人の財物を盗む犯罪です。
「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が法定刑となります。
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法235条
「窃取」とは、占有者の意思に反してその占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことです。占有されていないものを盗んだ場合には、占有離脱物横領という犯罪が成立します(刑法254条)。
住居侵入窃盗の場合は、たとえ家に誰もいなくても、家財は住んでいる人の占有下にあるとみなされます。そのため、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪が成立します。
住居侵入窃盗の刑罰
住居侵入窃盗は、住居侵入罪と窃盗罪の2つの犯罪が成立する行為です。
窃盗目的で住居侵入した場合、両者は牽連犯(けんれんはん)と呼ばれる関係になります。
牽連犯とは、2つの行為が目的と手段になっている場合を指します。
住居侵入窃盗は、窃盗という目的を果たすために住居侵入を行うため、牽連犯に該当します。
牽連犯に該当すると、2つの罪のうち、より重い法定刑で処罰されることになります。
住居侵入窃盗の刑罰はより重い窃盗の法定刑である「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。
もっとも、侵入行為のない通常の窃盗と比較すると、住居侵入窃盗は悪質性が強くなります。そのため侵入窃盗で有罪となる場合には、刑罰が重くなる可能性が高いです。
また、窃盗罪は未遂も処罰されます。住居に侵入して金品を盗もうとしたが、住人にバレて目的を達成できなかったようなケースも、住居侵入窃盗として窃盗罪が適用されます。
関連記事
・逮捕されたらすぐに呼ぶべき弁護士とは|弁護士費用と連絡方法
住居侵入窃盗での逮捕
住居侵入窃盗は逮捕される?
住居侵入窃盗は、犯行が発覚すれば逮捕される可能性が高いです。逮捕されやすいのは、住居に忍び込んだ際に盗撮など他の罪も犯していないか、余罪が残っていないかなどを警察が捜査するためです。
住居侵入窃盗での逮捕は、現行犯逮捕と後日逮捕の両方があり得ます。
現行犯逮捕
現行犯逮捕の場合は、居住者に発見されてその場で取り押さえられるケースが挙げられます。
また、犯行直後の不審な様子を警察に見られてしまい逮捕に繋がるケースもあり得ます。
侵入窃盗で逮捕された場合には、警察の厳しい取り調べが待っています。
不必要な供述や、加害者に不利になる供述を誘導される場合があるため、弁護士のアドバイスを聞いてから対応した方がよいでしょう。
後日逮捕
後日逮捕の場合は、居住者が警察に被害申告を行い、事件の捜査の過程で犯人が特定されるケースがほとんどです。
犯行から逮捕までは時間が残されているため、現行犯逮捕されていない場合には、なるべく早く弁護士に相談してください。
弁護士は状況に応じて、自首や示談など、逮捕を回避する可能性を高くする方法を提案します。
関連記事
・逮捕されたら|逮捕の種類と手続の流れ、釈放のタイミングを解説
・逮捕後は弁護士選任を|国選弁護人・私選弁護人・当番弁護士は違う?
住居侵入窃盗で逮捕されたときの流れ
住居侵入窃盗で逮捕された場合、警察署に連行されます。
逮捕から48時間以内に事情聴取が行われ、被疑者は検察に送致されます。
検察官は、被疑者を釈放するか勾留請求するかを送致後24時間以内に判断します。
裁判所が勾留を認めた場合、被疑者は最大10日間勾留されます。
勾留期間は必要に応じて10日間延長される可能性があるため、逮捕後の身柄拘束は最長で23日間に及ぶ場合があります。
勾留期間が終了した後、検察官は、被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断します。検察官が起訴した場合、被疑者は裁判にかけられることになります。
関連記事
・弁護士が教える怖い警察の取り調べへの対応法|録音や拒否はできる?
・黙秘権って何?逮捕後に黙秘すると不利?有利になる場合とは?
・勾留とは何か。勾留手続きや拘留との違いは?早期釈放を実現する方法
住居侵入窃盗での逮捕を防ぐためには
住居侵入窃盗での逮捕を防ぐための手段には、自首と示談があります。加害者の逃亡や証拠隠滅のおそれがないと警察が判断すれば、逮捕ではなく在宅捜査で事件が進みます。
自首とは、警察が犯人を特定する前に出頭して自白することです。自首が成立すれば、逮捕や勾留を回避するだけでなく、起訴されて有罪となった場合に刑が減軽する可能性が高くなります。
また、被害者が警察に届け出る前に示談を成立させることができれば、警察が介入することなく事件は終了します。
自首も示談も、高度な法律的知識が求められるため、加害者自身で進めようとしても難しい場合が多いです。専門家のアドバイスを聞いて、適切に対応していきましょう。
なお、弁護士による自首同行も有効です。お一人で警察に行くことに迷いがある方は、一度検討してみてください。
関連記事
・自首同行のメリットと必要性は?自首同行の流れや弁護士費用のポイント
住居侵入窃盗での示談
住居侵入窃盗で示談するとどうなる
住居侵入窃盗は、示談を成立させれば不起訴処分を獲得できる可能性が高くなります。
しかし、住居侵入窃盗の示談は簡単ではありません。
被害者の処罰感情によっては、示談どころか一切の接触を拒否される場合もあり得ます。
住居侵入窃盗の被害者は、家を知られていることへの不安や財産を盗まれたことへの怒りなどにより、強い処罰感情を持ちやすいのです。
住居侵入窃盗の示談金相場
住居侵入窃盗の示談金は50万円~300万円ほどとなります。
住居侵入罪だけであれば数十万円となるケースが一般的ですが、侵入窃盗は窃盗罪に関する慰謝料の分が加算されるため、示談金が高額になりやすいのです。
しかし、示談金の相場は大体の目安に過ぎません。
窃盗した物や金額、侵入の態様などにより、示談金はケースバイケースとなるため、各事案ごとに柔軟な対応が必要となります。
住居侵入窃盗の示談金に影響する要素
住居侵入窃盗の示談金は、犯行態様や被害感情などにより大きく変動します。
示談金が高額になりやすい主な要素
- 処罰感情が強い
- 犯行が計画的
- 住み続けられないので転居が必要になった
- 加害者が侵入窃盗の常習犯
- 加害者の社会的地位が高い
被害者の処罰感情が強いと、相手から許してもらうために示談金が高額になりがちです。
また、犯行が計画的で悪質だったり、過去に何度も繰り返していたりする場合は、相場よりも高い示談金でないと被害者が納得しないケースが多いでしょう。
住居侵入された苦痛で被害者がもうその家に住み続けられない場合、引っ越し費用を示談金の一部で負担することも考えられます。
関連記事
住居侵入窃盗の示談交渉の進め方
住居侵入窃盗で示談成立を希望する際には、早めに示談交渉を試みることが重要です。
犯行から時間が経って示談を持ち掛けると、被害者が応じてくれない可能性が高くなってしまいます。長時間が経過すると、被害者の怒りや処罰感情が一層強くなり、示談交渉が難しくなる可能性があります。
住居侵入窃盗で示談を検討している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
刑事事件の解決実績が豊富な弁護士であれば、被害者の心情や犯行の状況を踏まえて示談交渉を進めることができます。
当初は連絡や接触を拒否していた被害者も、弁護士が粘り強く交渉することで、交渉に応じてもらえるケースも存在します。
関連記事
・刑事事件の示談の流れ|加害者が示談するタイミングや進め方は?
アトム法律事務所の住居侵入窃盗の解決実績
アトム法律事務所は、刑事事件の解決に強みを持つ法律事務所です。
住居侵入窃盗の案件も、示談を成立させ不起訴を獲得したケースや執行猶予を獲得したケースなど、解決実績が豊富です。
ここでは、住居侵入窃盗に関するアトム法律事務所の解決実績の中から、一部を抜粋してご紹介します。
他人の住居への侵入窃盗(不起訴)
マンションの室内に侵入し、現金が入ったバッグ等を盗んだとされた事案。余罪多数。
弁護活動の成果
被害者全員と示談を締結。依頼者のメンタルトラブルについて病院のカルテ等を提出した結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
他人の住居での下着泥棒(執行猶予)
ベランダに干してあった女性用下着を盗もうとしたものの犯行を目撃され逃走したとされた、いわゆる下着泥棒のケース。住居侵入と窃盗の事案。同種余罪あり。
弁護活動の成果
被害者の一部と示談を締結。執行猶予付きの判決となった。
示談の有無
あり(一部)
最終処分
懲役1年6か月執行猶予3年
住居侵入窃盗を弁護士に相談するメリット
取り調べの対応方法をアドバイス
住居侵入窃盗の疑いがかかった場合、慎重な取り調べの対応が重要です。特に事件を否認している場合は、供述調書の内容が今後を左右します。
警察の誘導通りに自白して調書が作成されると、後から覆すことは困難です。
ご自身にとって不利な状況を作らないため、取り調べ前に弁護士からアドバイスを聞くようにしてください。
逮捕されているケースでは、黙秘権を行使して、弁護士が到着するまで何も話さない方が適切な場合もあります。
早期釈放に向けた弁護活動
住居侵入窃盗で逮捕された場合、早期釈放を目指すために弁護士の助言を得ることが有益です。弁護士は、適切な保釈の手続きや証拠の整理などに尽力し、被疑者の早期釈放に努めます。
逮捕されてしまった場合には、すぐに接見を依頼し、早い段階で弁護士をつけることで、早期釈放の可能性が高まります。
弁護士費用のかからない国選弁護人に依頼しようとする方も中にはいますが、国選弁護人は勾留された後でなければ依頼できません。
そのため、逮捕後の勾留を回避してなるべく早く日常生活に戻るためには、逮捕直後から私選弁護士をつけるべきでしょう。
被害者との示談交渉
住居侵入窃盗は、被害者との示談が成立していることで、逮捕回避や身柄の早期釈放の可能性が高まります。
また、加害者を許し刑事処分を望まないという「宥恕文言」を含む示談を締結することができれば、逮捕されたとしても不起訴の可能性が高くなります。
加害者自身が刑事処分を軽くするために示談して欲しいと交渉しても、応じてくれる被害者は数少ないものです。
しかし、第三者である弁護士が介入することで、被害者との示談交渉をスムーズに進められる可能性が高くなります。また、公正な示談金額や条件の設定を通じて、被害者との合意を築き、刑事事件を迅速に解決することができるでしょう。
アトム法律事務所には、住居侵入や窃盗事件で数多くの実績を持つ、刑事事件に強い弁護士が在籍しています。
住居侵入窃盗をしてしまい今後が不安な方は、お気軽にお電話ください。