尿検査で薬物の陽性反応が出たら逮捕されるのでしょうか。
尿検査が避けられない場面で、薬物の陽性の反応が出たらどうなるか不安に感じている方は多いでしょう。
そこで、この記事では、尿検査で薬物の陽性反応が出たら逮捕されるのか、尿検査は拒否できるのか、薬物事件で逮捕された後の流れを詳しく解説しています。
また、会社の健康診断などで行われる病院での血液検査、尿検査で薬物がバレる可能性についても解説します。
尿検査などで薬物がバレることに関してご不安を抱えている方は、最後までご覧ください。
※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
尿検査で陽性反応が出たら逮捕される?尿検査は拒否できる?
尿検査で陽性反応が出たら逮捕される?
尿検査で薬物の陽性反応が出ると逮捕される可能性があります。
そもそも警察の捜査における尿検査は、薬物使用の有無を調べるために行われるものです。
尿検査では、大麻、覚せい剤、MDMA、LSDなどの違法薬物の成分を検出することができます。メチルフェニデートなどの向精神薬の検出も可能です。
逮捕は、被疑者として認められる十分な証拠があり、「証拠隠滅のおそれ」や「逃亡のおそれ」が認められる場合に行われる手続きです。
尿検査で薬物の陽性反応が出たら、薬物を使用している証拠になります。
また、証拠隠滅を図るために薬物仲間に所持している薬物を捨てるよう指示を出すなどのおそれがあるため、逮捕につながる可能性は十分にあります。
警察の尿検査は拒否できる?
警察の捜査における尿検査は、任意であれば原則拒否できます。
しかし、拒否し続けると、裁判所発付の令状に基づく強制採尿が行われる可能性があります。
尿検査が求められる場面は、職務質問の所持品検査で違法薬物は見つからなかったものの、尿検査のために任意同行を求められるケースがあげられます。
警察は、本人照会を行い、薬物の前科前歴がある場合などは、尿検査を求めることがあるのです。
任意同行は、あくまで任意であるため、拒否することができます。
しかし、職務質問を行った以上、警察は任意同行による尿検査をしつこく求める場合があるでしょう。尿検査を拒否することは、薬物使用の疑いをさらに深めてしまいます。
強制採尿は拒否できない
警察は、捜査対象者が薬物使用に関して濃厚な嫌疑があると判断した場合、強制採尿の令状を裁判所に求めることができます。
強制採尿の令状が発付された場合は、拒否できません。
強制採尿は、病院で尿道からカテーテルを挿入して尿を強制的に採取されます。自分で尿を提出することと比較すると精神的ショックは大きいでしょう。
令状を出された場合には、尿の提出は避けられないため、自分で尿を提出することをおすすめします。
薬物の陽性反応が出る期間は?
尿検査で薬物の陽性反応が出る期間は、一般的に使用から数日~2週間といわれています。
覚せい剤や大麻などの成分は、尿中に長時間残留するため、2週間を経過しても尿検査で陽性反応が出る場合もあります。
薬物の種類によっては、常習者において、3か月を超えて検出されるものもあります。
尿検査の鑑定結果はいつ分かる?
尿検査は、科学捜査研究所など専門的な機関で、分析・鑑定されます。
尿検査の鑑定結果が出るまでにかかる日数は、早くて1. 2日です。遅いと1か月以上かかる場合もあります。
尿検査を行ったあとは、在宅捜査で警察から取り調べが行われることになるでしょう。
その後の尿検査の結果次第では逮捕されることもあります。あるいは、薬物を所持しているか調べるために家宅捜索や差押えが行われる可能性もあります。
薬物を使用しており、陽性反応が出ることが見込まれる場合は、事前に弁護士に相談するべきでしょう。
弁護士に相談することで、今後の刑事処分の見通しを把握することができます。
薬物事件で逮捕された後の流れは?問われる刑罰は?
薬物事件で逮捕された後の流れは?
薬物事件で逮捕されると、48時間以内に警察から検察官に引継ぎが行われます(送致)。
送致を受けた検察官は、24時間以内に被疑者を勾留すべきかどうかを検討し、勾留が必要だと考えれば裁判官に勾留請求をします。
勾留請求が行われると、裁判官が被疑者本人と面談をして勾留するかどうかの判断を行います。
裁判官が勾留の必要性があると判断した場合は、10日間の勾留が決定します。10日間で捜査が終わらなかった場合には、「捜査未了」として勾留を延長されることがあります。延長されると、10日を限度として、その範囲内で勾留が継続されます。
つまり、逮捕されると、起訴・不起訴の判断が下るまで最長で23日間の身体拘束を受ける可能性があるのです。
長期間身柄を拘束されてしまうと、学校を退学になったり、職場を解雇されたりするリスクが高まります。
薬物事件で問われる刑罰は?
薬物は、薬物すべてを取り締まる法律はなく、違法薬物それぞれに対して法律と刑罰が定められています。
ここでは、代表的な薬物である大麻と覚せい剤の刑罰をご紹介します。
大麻取締法
違法薬物の代表例である大麻は、大麻草(カンナビス属の植物)やその加工物のことです。
大麻取締法では、大麻の所持・譲受・譲渡は、5年以下の懲役刑が定められています。営利目的で大麻の所持・譲受・譲渡した場合は、7年以下の懲役又は7年以下の懲役及び200万円以下の罰金刑になります。
大麻は栽培・輸出入も禁止されています。大麻を栽培・輸出入した場合は、7年以下の懲役刑が科されます。
営利目的で大麻の栽培・輸出入をした場合には、10年以下の懲役又は10年以下の懲役及び300万円以下の罰金刑になります。
なお、大麻の使用については、刑罰の対象になりません。そのため、尿検査で大麻の陽性反応がでても、刑罰に問われない可能性はあります。
ただし、大麻の使用を証拠に捜査が進められ、所持・譲受・譲渡などをしていれば罪に問われる可能性は高いといえるでしょう。
態様 | 営利目的 | 非営利目的 |
---|---|---|
所持・譲受・譲渡など | 7年以下の懲役 | 5年以下の懲役 |
栽培・輸出入 | 10年以下の懲役 | 7年以下の懲役 |
※営利目的の所持・譲受・譲渡などは200万円以下の罰金が併科されることがあります。
営利目的の栽培・輸出入は300万円以下の罰金が併科されることがあります。
覚せい剤取締法
覚せい剤は、アンフェタミン、メタンフェタミンを含有するものなどがあげられます。
覚せい剤取締法では、覚せい剤の所持・使用で、10年以下の懲役刑が定められています。営利目的の所持・使用になると、1年以上の懲役又は1年以上の懲役及び500万円以下の罰金になります。
使用は刑罰の対象外である大麻と異なり、覚せい剤は使用も罪に問われます。
また、覚せい剤を製造・輸出入した場合は、1年以上の有期懲役になります。懲役刑は、1年以上20年以下の範囲で科されるため、最長で20年の懲役刑になる可能性があります。
さらに営利目的で覚醒剤を製造・輸出入した場合は、無期懲役若しくは3年以上の懲役又は無期懲役若しくは3年以上の懲役及び1,000万円以下の罰金刑です。
態様 | 営利目的 | 非営利目的 |
---|---|---|
所持・使用など | 1年以上20年以下の懲役 | 10年以下の懲役 |
製造・輸出入 | 無期懲役若しくは3年以上の懲役 | 1年以上の懲役 |
※営利目的の所持・使用などは500万円以下の罰金が併科されることがあります。
営利目的の製造・輸出入は1,000万円以下の罰金が併科されることがあります。
その他の薬物に関しては、下記のページをご覧ください。
関連記事
・麻薬の所持・使用は必ず逮捕される?勾留されやすいって本当?実際に逮捕される4パターン
病院の血液検査や尿検査で薬物はバレるのか
血液検査や尿検査で薬物の使用がバレることは基本的にない
会社の健康診断などで行われる血液検査や尿検査で、薬物の使用がバレることは基本的にありません。
病院の血液検査や尿検査は、薬物反応をみるものではなく、健康状態をみるものです。
一般的な健康診断では、検査項目に薬物検査は含まれていないことが多いです。検査項目に含まれていなければ、血液検査や尿検査により薬物の使用がバレることはないでしょう。
医師の通報をきっかけにバレる可能性はある
血液検査や尿検査などで薬物の使用がバレなければ安心というわけにはいきません。
血液検査や尿検査などの健康診断を行った医師による通報をきっかけに、薬物の使用がバレる可能性はあります。
医師には「診断の結果、受診者が麻薬中毒者であった場合、都道府県知事に届け出なければならない」(麻薬取締法58条の2)という通報義務があるからです。
薬物は使用者の人格や性格、挙動などに影響を及ぼします。言動や挙動などに不審な点がみられた場合は通報され、薬物の使用がバレる可能性はあるでしょう。
薬物事件は弁護士に相談
薬物事件は弁護士に相談
尿検査などで逮捕されることを心配している方は、弁護士に相談してください。
薬物事件は、法律知識を必要とする事件です。弁護士に相談することで逮捕される可能性や、刑罰を軽減する方法など、被疑者が取れる最善策を知ることができます。
薬物事件は逮捕されてしまうと、勾留される可能性が高いです。
長期間身体拘束されてしまうと、学校や職場にも知られてしまい、退学や解雇になるおそれもあります。
できる限り、日常生活への影響を避けたいとお考えの方も、弁護士に相談し、今後の対策を立てることが重要です。
薬物事件で逮捕されても不起訴になる?
薬物事件で逮捕されても、不起訴になる可能性はあります。
実際、薬物事件で執行猶予中や、営利目的で所持していた場合は、不起訴になることは難しいです。また、覚せい剤の使用・所持は、初犯であっても起訴される可能性が高いです。
一方で大麻は、初犯で所持量が微量であれば、不起訴の可能性は十分に出てきます。
刑事事件は刻一刻と進むため、事件解決に向けた取り組みを早急に行うことが鍵になります。
薬物事件は再犯防止策を示すことが重要
薬物事件で、不起訴獲得や刑罰を軽減するためには、再犯防止策を示すことが重要です。
薬物は一度手を出してしまうと、抜け出すのは非常に難しく、再犯率が高いことが実情です。
具体的には、医療機関で治療を受け、「薬物のダルク」などの回復支援施設に入所して依存から回復するなどの取り組みを行います。
弁護士や家族などと協力し、診断書やサポート体制などを証拠として提出することで、再犯防止の取り組みをアピールできます。
薬物を二度と使用しないためには、家族の支援も大切です。弁護士は、家族にも薬物の恐ろしさや治療の必要性を理解してもらうよう働きかけます。
起訴された場合は、裁判の中で、被告人を支えていくことを家族に証言してもらうこともあります。
まとめ
尿検査の結果、薬物の陽性反応が出ると逮捕される可能性があります。
使用する薬物の種類や量などによっては、初犯であっても刑罰が科されることもあるでしょう。
薬物事件で不起訴の獲得や刑罰の軽減を図るためには、刑事事件に強い弁護士に相談・依頼することが重要です。