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大麻の刑罰|執行猶予の可能性と刑罰を軽くするためにできること

大麻の刑罰

大麻は、諸外国では合法な国もあるため軽く考えられることもありますが、日本では厳しい刑罰が予定されている犯罪です。

大麻は、所持・譲渡・譲受、栽培・輸出入が法律で禁止されています。大麻の刑罰は罰金刑のみが規定されておらず、必ず懲役刑もしくは懲役刑と罰金刑の併科となります。

この記事では、大麻の犯行態様ごとに大麻の刑罰はどのくらいなのか、執行猶予の可能性はあるのか、前科がついた場合の影響について詳しく解説します。

なお、当記事で記載の未成年(少年)とは20歳未満の少年のことであり、民法上の成人(民法第4条)とは異なります。

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大麻の刑罰|犯行態様で科される刑罰は異なる

大麻で犯罪となる行為と刑罰は、犯行態様や目的によって、以下のように規定されています。

大麻の刑罰

行為刑罰
所持・譲渡・譲受(大麻取締法24条の2第1項)5年以下の懲役
営利目的の所持・譲渡・譲受(同法24条の2第2項)7年以下の懲役
又は7年以下の懲役及び200万円以下の罰金
栽培・輸出入(同法24条第1項)7年以下の懲役
営利目的の栽培・輸出入(同法24条第2項)10年以下の懲役
又は10年以下の懲役及び300万円以下の罰金

いずれの場合も、個人使用目的でなく、営利目的が認められると、刑罰は重くなります。それぞれ詳しく解説します。

大麻の所持・譲渡・譲受の刑罰

免許等なく個人で使用する目的で大麻を所持した場合や、譲渡・譲受した場合の刑罰は、5年以下の懲役刑です(大麻取締法24条の2第1項)

また、営利目的で大麻の所持、譲受・譲渡を行った場合の刑罰は、7年以下の懲役刑です。情状によっては200万円以下の罰金も併科される場合があります。

所持は、自分の支配下に大麻がある状態のことをいい、カバンや衣服のポケットなどに携帯する場合に加え、車や家で保管する場合も含みます。所持量が微量(0.5グラム以下)の場合は、大麻草なら不起訴になる場合もありますが、濃度が高い樹脂だと通常起訴されます。

譲渡・譲受は、有償無償を問わず違法行為です。友人・知人などに大麻を無償で渡した場合でも、犯罪となります。

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大麻の栽培・輸出・輸入の刑罰

免許等なく個人使用目的で大麻を栽培や輸出入した場合の刑罰は、7年以下の懲役刑です(同法24条第1項)。栽培や輸出入は社会に与える害悪が大きいことから、所持等に比べて重い刑罰になります。

また、営利目的で栽培や輸出入をした場合の刑罰は、10年以下の懲役刑です。情状により300万円以下の罰金も併科される場合があります。

栽培は、種まきから収穫までの行為をいい、種を撒けば既遂です。大麻種子は規制対象外ですが、輸入した種子と栽培道具などを持っていると、大麻栽培の予備罪で逮捕される可能性があります。

輸出入では、税関で大麻が発見されたり、追跡された大麻が配送され受領した時点で逮捕されるケースが多いです。

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大麻の使用でも刑罰が科される見込み

2023年12月6日に大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部改正法案が可決・成立したことにより、これまで違法でなかった大麻の「使用」も禁止する罰則が設けられました。

改正法において、大麻は麻薬の一部という位置付けとなり、大麻を使用した場合の刑罰は、7年以下の懲役です。2024年中の施行が見込まれています。

参考:大麻取締法及び麻薬及び向精神薬取締法の一部を改正する法律の成立について

大麻の刑罰を回避するには不起訴を目指すことが重要

大麻の刑罰の重さは何で判断される?

大麻事件に関する犯罪で、実際に裁判官から科される刑罰の重さは、主に以下の事情などから総合的に判断されます。

大麻事件の刑罰の重さを決める事情

  • 大麻の量
  • 初犯か再犯か
  • 営利目的の有無

大麻の量は刑罰の重さに影響を及ぼします。過去の裁判では、1gの大麻所持で懲役1年執行猶予3年が言い渡された例や、大麻170gの栽培で懲役2年6月執行猶予4年が言い渡された例があります。一般的に大麻の量が多い方が、刑罰が重くなることが予想されるでしょう。

また、再犯や営利目的の場合は、初犯や非営利目的の場合と比較すると刑罰が重くなる可能性が高いです。

大麻事件で刑罰を回避するためには不起訴を目指す

日本では、起訴されると99.9%の確率で有罪となり、刑罰を受けることになります。そのため、大麻事件で刑罰を受けることを回避するためには、不起訴処分を獲得することが重要です。

不起訴になれば、そもそも裁判が開廷されないため、有罪にならずに済みます。前科もつかないので、スムーズに社会復帰できる可能性も高まります。

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大麻事件で不起訴は期待できる?

令和4年の大麻取締法違反における不起訴率は、約49%です(令和5年版 犯罪白書より)。約半数が不起訴になるとはいえ、大麻は再犯率が高く社会的影響も大きいので、甘く考えてはいけません。不起訴になりやすいケースとしては、直接的な証拠である大麻そのものが見つかっていない場合や、見つかっても1回の使用量に満たない微量(0.5g以下)であるような場合が考えられます。

大麻は初犯でも刑罰を受ける可能性があります。特に営利目的の場合は起訴され、執行猶予が付かずに実刑となることもあります。初犯でも実刑になる可能性などを詳しく知りたい方は、『大麻は初犯でも逮捕や実刑になる?刑罰の相場や逮捕後の流れを解説』の記事もご覧ください。

大麻での刑罰を軽くするためにできること

大麻事件で不起訴を主張するときはもちろん、起訴されてしまった場合でも、刑罰を軽くするためには自白・反省の態度を示したり、再犯防止の取り組みを主張したりすることが重要です。

自白・反省の態度を示す

大麻の刑罰を軽くするためには、大麻に関与したことの自白や、反省の態度を示すことが重要です。具体的には、大麻の入手ルートを包み隠さず打ち明けたり、反省文を書いたりすることなどが挙げられます。

犯行の証拠が明白なのに大麻への関与を否認したり、裁判で言葉を濁すと、再犯の恐れや大麻への未練があると判断され、罪が重くなる可能性があります。

再犯防止の取組みを主張する

大麻事件で刑罰を軽くするためには、弁護士に依頼して再犯防止に向けた活動の取組みを検察官に伝えてもらうことが大切です。

大麻の罪は、被害者がいない犯罪ですので、被害者と示談をすることはできません。大麻などの薬物犯罪は、いかにして薬物と手を切り更生していくかを具体的に考える必要があります。

たとえば、薬物専門の医療機関での治療を受けること、薬物のダルクなどの回復支援施設に入所して大麻依存を断ち切ることなどが挙げられます。それらの医療機関の診断書や施設の入所証明書、家族のサポート体制などを、弁護士と協力して証拠化して提出することが再犯防止の取組みを伝えるために重要です。

執行猶予付き判決を目指す

大麻の刑罰は罰金刑のみが規定されておらず、必ず懲役刑もしくは懲役刑と罰金刑の併科となります。執行猶予がつかなければ実刑となり、判決を言い渡された期間、刑務所に服役しなければなりません。そのため、大麻事件で起訴されたら、刑を軽くするために執行猶予付き判決を目指すことになります。

大麻で執行猶予付き判決を得て、刑務所行きを避けるには、再犯しないことを裁判官に十分に理解してもらうことが重要です。執行猶予付判決をもらえれば、前科は付くものの、一定期間無事に過ごせば刑務所に入らずに済みます。

大麻の場合、初犯で個人使用目的の場合は執行猶予がつくことが多く、所持、譲受・譲渡の量刑相場は、懲役6か月〜1年で執行猶予3年です。ただし、営利目的、大量の所持、常習性がある場合等は実刑になりやすいです。弁護士と相談して準備を重ね、反省と再犯防止を伝える法廷弁護活動が重要です。

再犯・前科があっても再犯防止の取組みを主張する

大麻を含む薬物事件では、同種前科・前歴があると刑罰が重くなります。大麻の常習性が認められ、情状が悪くなるからです。前回の大麻で不起訴になっても、再犯の場合の不起訴は困難です。また、前回の事件からの期間も影響し、執行猶予付の懲役刑の判決を受けてから5年以内の再犯の場合はほぼ実刑になります。

執行猶予中の再犯の場合、今回の判決が1年以下の懲役刑で、特に酌量すべき情状があれば、再度の執行猶予が可能です(刑法25条2項)。大麻の単純所持等では再度の執行猶予も期待できますが、再犯防止の取組みが不可欠です。初犯以上に再発防止の取組みを見える化し、弁護士に十分主張してもらうことが大切です。

大麻で刑罰を受けて前科がついたときの影響

大麻で刑罰を受けて前科がついたことは学校・会社にバレる?

大麻の前科は、原則として学校・会社にバレることはありません。前科の履歴は警察・検察、本籍地の市区町村に保管されていますが、第三者はもちろん本人も開示できない秘匿情報として管理されています。

ただし、医学部生が国家試験に合格し医師登録をする際の申請書等から学校に知られる等の場合があります。

大麻で刑罰を受け前科がつくと会社に解雇される?

大麻の前科がついたことによって会社に解雇されるかは、会社が定めている就業規則によります。ただ、懲戒解雇には至らないとしても、私生活上の犯罪行為をしたとして、普通解雇の対象になる可能性は小さくありません。

もっとも、大麻事件で逮捕され、身柄拘束が長期化することで会社を辞めざるを得なくなる可能性もあります。大麻で逮捕されるケースや逮捕後の流れを詳しく知りたい方は『大麻で逮捕されたら|逮捕の条件とその後の流れ』の記事をご覧ください。

また、大麻事件で前科がついてしまうと、就職や転職の場合に前科があることを伝えるか否かが問題になります。会社に情報を求められても応じるかは本人の自由意思ですが、隠したこと自体が、会社によっては解雇事由になる可能性があるので注意が必要です。

大麻の前科で就けない仕事はある?

前科があると就けない職業は多いです。罰金刑以上で制限を受け例外的に許される資格(相対的欠格事由)と、禁固刑以上で例外なく制限される資格(絶対的欠格事由)があります。どちらも執行猶予期間中は制限を受け、資格によっては実刑期間が満了してもその後最長10年の制限を受ける場合もあります。

大麻は懲役刑のみのため、以下のように相対的・絶対的欠格事由の両方に該当します。

相対的・絶対的欠格事由となる職種の例

  • 相対的欠格事由:医師、看護師、薬剤師、保健師、調理師、柔道整復師等
  • 絶対的欠格事由:公務員、自衛隊、保育士、社会福祉士、古物商、士業全般等

資格制限を避けるには、弁護活動で不起訴を目指すことが重要です。

大麻の刑罰でパスポートがとれなくなる?

日本では、前科があっても原則パスポートを取得できますが、例外的に以下の場合にはパスポートが取れない場合があります(旅券法13条1項2号、3号)。

パスポートが取れない場合がある人

  • 死刑、無期、2年以上の懲役刑の罪で起訴されたり逮捕状等が出されている人
  • 禁錮以上の刑で服役するか、仮釈放や執行猶予中等の人

大麻取締法の主な刑罰は2年以上の懲役刑であるため、上記の両方に該当します。そのため、大麻事件で逮捕状が出されている場合や、起訴された場合、執行猶予期間中の場合、有罪判決を受けて服役中の場合は、パスポートが取れません。旅行や仕事で海外によく行かれる方は、このような制限を避けるためにも、やはり不起訴の獲得が重要になります。

大麻の刑罰でお悩みの方はアトム法律事務所へ相談ください

大麻事件で刑罰を受けることを心配されている方は、まず初動を誤らないことが大切です。個人使用目的で所持・栽培などをしていたとしても、大麻の量によっては営利目的を疑われることもあります。警察は芋づる式に大麻に関与した人物の捜査を進めるためにも、取り調べで厳しい追及を行ってくることが考えられます。

取調べは精神的なストレスがかかるだけでなく、身体拘束による体調不良も生じやすいものです。できるだけ早い釈放を目指すこと、不起訴処分を獲得すること、また裁判になっても執行猶予を獲得することを考え、まずは大麻事件の解決実績が豊富な弁護士に相談することがおすすめです。

また、大麻で刑罰を回避したり、軽減したりするためには、家族のサポートが必要不可欠です。まずは、今後の対応を知るためにも相談を活用し、何をすべきか弁護士と一緒に整理しましょう

アトム法律事務所では、警察が介入した事件について初回30分無料の対面相談を実施しています。24時間365日、土日夜間も電話窓口でご予約を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

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岡野武志弁護士

監修者

アトム法律事務所
代表弁護士 岡野武志

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高校卒業後、日米でのフリーター生活を経て、旧司法試験(旧61期)に合格し、アトム法律事務所を創業。弁護士法人を全国展開、法人グループとしてIT企業を創業・経営を行う。
現在は「刑事事件」「交通事故」「事故慰謝料」などの弁護活動を行う傍ら、社会派YouTuberとしてニュースやトピックを弁護士視点で配信している。

保有資格

士業:弁護士(第二東京弁護士会所属:登録番号37890)、税理士

学位:Master of Law(LL.M. Programs)修了