取り調べの際、弁護士が同席してくれれば不安にならず、冷静に対応できそうです。
しかし現時点では、被疑者取調べにおいて、弁護人が立会いをする権利が法律には規定されておらず、警察や検察から取調べの立ち会いを拒否されることも多いものです。
取り調べに弁護士が同席できない場合、どのような対応ができるのでしょうか。
この記事では、取り調べに弁護士が同席できる条件や、弁護士の立会いが認められない場合の対応策として黙秘権(供述拒否権)の行使、弁護人の接見、弁護人の出頭同行などについて説明しています。
これから警察や検察の取り調べを受ける方は、まずはこの記事を読んで、どのように取り調べに対応すればよいのか、理解を深めましょう。
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取り調べに弁護士は同席できる?
被疑者が取り調べに弁護人を同席させる権利はある?
被疑者(容疑者)として逮捕された場合などは、取調室において、刑事事件の内容を話すよう求められます。
このような捜査のことを取調べと呼びます。
取り調べでは、捜査官から自白を求められたり、話したことと違うニュアンスで供述調書が作成されたりすることがあります。その結果、後日、刑事事件の処分が決まる際、供述証書の内容が不利益な証拠になるといった問題が発生することがあります。
違法な取り調べ・不当な取調べを回避する一番の解決策としては、弁護士が取調べに同席することです。
しかし、現在の日本の法律では、取り調べの際、弁護士に同席してもらうことは、被疑者の権利として明確には規定されていません。取り調べに弁護人を同席させる権利があるかどうかは、法的解釈が分かれるところです。
弁護人の立会権を認める裁判はある?
無罪になった被告人が、「弁護人の立会いなしの取調べを拒否し続けたことで逮捕されたため、そのような検察官の逮捕状請求・裁判官の逮捕発付は違法である」などとして、国を訴えた裁判があります。
この裁判では、弁護人が取調べに同席する権利について言及されていますが、裁判所は弁護人立会権について否定的な見解を示しました。
選任した弁護人を取調べに立ち会わせる権利があると当然に解されるわけではなく,明文で弁護人の取調べ立会権を認める規定は存在しない上,最高裁判所による明確な判断も示されておらず,弁護人の取調べ立会権があるとの解釈は確立していない。
名古屋高判令和4年1月19日令和3年(ネ)第167号
この裁判所の判断の当否はさておき、実務の運用上、現状では、取調べに弁護士が同席できる可能性は非常に低いものであるといえます。
取り調べに弁護士を同席させるための条件は?
取り調べに弁護士が同席できるかどうかは、現状、現場の取調べ官が事案に応じて判断することになっています。
そのため、取り調べの際に、弁護士の同席が認められる条件があるとすれば、それは、取り調べ官の同意を得るというものです。
取り調べ時における弁護人の立会い(同席)
現行制度
- 関連する規定は置かれていない。
- 実務上、検察官において、取調べ機能を損なうおそれ、捜査の秘密が害されるおそれ等を考慮して、事案に応じて適切に判断(略)
※1 法務省においては、弁護人を立ち会わせて取調べを実施した具体的な事例については把握していない。
法務省「資料5」https://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/pubcomm/m-01.pdf(2023.10.20現在)
取り調べに弁護士が同席できない時の対策は?
適切なタイミングで弁護士が接見する
被疑者には、弁護人と立会人なしに面会できる権利が保障されています(接見交通権)。
取調べを受ける可能性がある場合、悩みがある場合などは、弁護士を呼んで接見(面会)をしてもらいましょう。弁護士は留置場まで来てくれて、面会室で、捜査官の立会いなしで、接見をしてくれます。
立会いと違い、取り調べにリアルタイムでかかわることはできませんが、弁護士接見は被疑者の権利を守るために、実務上、非常に役立つものです。
取り調べに弁護士が同席できない場合、被疑者は一人で取調べを受けることになりますが、証拠隠滅のおそれなどを理由に家族や友人などでも面会を禁止されるなか、朝から晩まで密室での取調べが行われるため、虚偽の自白をしてしまう人もいます。
また、外部との連絡がとれないことで、勤務先や家族などに迷惑をかけてしまうこともあります。
そのため、見方になってくれる弁護士との面会が、逮捕された人の権利を守るために非常に重要になるのです。
弁護士が適切なタイミングで接見を行うことで、被疑者が不利な供述をしてしまうリスクを軽減することができます。
弁護士との接見では、取調べの状況や捜査官から聞かれた内容などを確認したうえで、黙秘すべきかどうかなど、弁護士が適切なアドバイスをしてくれます。
また、捜査官の取調べの方法に疑問がある場合、弁護士目線で検討し、不当・違法な取り調べであれば抗議をおこなってくれます。
弁護士接見の内容
- 取調べの状況を確認する
- 取調べでどのような質問をされたか確認する
- どのような供述をしたか確認する
- 困っていることや不安なことを確認する
- 今後の対応についてアドバイス
etc.
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弁護人が出頭に同行・待機する
身体拘束をうけていない被疑者の場合、在宅事件として捜査が進められます。在宅事件の場合、家で生活しながら、警察や検察から呼び出しを受けた時だけ任意出頭し、取調べをうけることになります。
在宅事件の場合は、警察署や検察庁まで出頭する際、弁護士に同行してもらうのがよいでしょう。取り調べに同席できなくても、取り調べ室の近くで弁護士が待機することはできます。
取調べの最中に弁護士の助けを借りたいと思ったときは、取調べ官に申し出て、すぐに弁護士と相談することが可能です。
なお逮捕されていない被疑者については、原則として取り調べ室を自由に退出することができます(刑事訴訟法198条)。そのため、在宅事件の被疑者は、取り調べ室にとどまる義務はなく、いつでも取調べ室を退出することができます。
但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
刑事訴訟法198条1項ただし書
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黙秘権を行使して供述を拒否
取り調べに弁護士が同席できない場合、不利な供述をしてしまうリスクを軽減するためには、黙秘権を行使して供述を拒否することも検討すべきです。
黙秘権とは、自己に不利益となる供述を強要されない権利です。黙秘権は、憲法38条1項、刑事訴訟法311条1項で定められている権利です。
黙秘権を行使するには、捜査官に「黙秘権を行使します」「弁護士に黙秘するように言われています」とだけ発言し、あとは黙っていればよいでしょう。
ただし、事案によっては黙秘権行使によって捜査が長引く可能性もあります。具体的な事案について、どのような対応をとるべきかについては、弁護士と相談するのがよいでしょう。
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・黙秘権って何?逮捕後に黙秘すると不利?有利になる場合とは?
供述調書にサインしない(修正申立権・署名押印拒否権)
供述証拠とは、取り調べで話した内容を記録した書面で、犯罪認定の証拠になるものです。
取り調べに弁護士が同席できない場合、被疑者は一人で取調べを受けることになるので、捜査官の誘導質問に乗ってしまい、自分では意図しない内容の供述調書が出来上がってしまうことがあります。
供述調書については、読み聞かせをうけて内容を確認したうえで、正しければサインをします。サインをした後は、その供述調書の訂正を求めることはできません。
そのため供述調書の内容が間違っている場合、サインをする前に訂正を求める必要があります。
ただし実際のところ、「今日のところは、これでサインしてほしい」などと言われ、供述調書の訂正に応じてもらえないこともあります。その場合は、供述調書への署名・押印を拒否してください。供述調書にサインをする前に必ず弁護士に相談してください。
供述調書の対応
- 供述調書の訂正を申立てる(訂正申立権)
- 供述調書への署名押印を拒否する(署名押印拒否権)
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弁護士の取り調べ対応でよくある質問
Q.取り調べのための出頭同行について、弁護士費用はいくらかかりますか?
警察や検察から取り調べのために呼び出しを受けた際、弁護士に出頭の同行を依頼するケースでは、多くの場合、単発ではなく、弁護士に対して、刑事事件の弁護活動を正式に依頼する必要があるでしょう。
弁護士費用には、着手金、成功報酬、出張日当、実費などがあります。
取り調べの出頭同行を依頼するのであれば、少なくとも着手金と出張日当がかかります。
弁護士費用の具体的な金額については、弁護士事務所ごとに違いがあるので、依頼を検討している弁護士事務所に直接確認するのがよいでしょう。
Q.取り調べのときに、弁護士を呼ぶにはどうしたらいいですか?
目の前にいる警察官や検察官に、「弁護士を呼んでください」と伝えれば、弁護士を呼ぶことができます。
具体的にどこの弁護士事務所の誰を呼べばいいのか分からない場合、「当番弁護士を呼んでください」と伝えるのが良いのではないでしょうか。
当番弁護士であれば、初回1回のみになりますが、逮捕直後に無料で呼ぶことができます。
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・逮捕後すぐ呼べる当番弁護士とは?制度の評判や呼び方・費用もわかる
Q.逮捕されて取り調べ中の家族に、弁護士を派遣するにはどうしたらいい?
いちばん手軽な方法としては、弁護士会に連絡をいれて、当番弁護士を派遣する方法です。
ただし、当番弁護士の場合、たまたまその日に当番をしている弁護士が派遣されるもので、自分で弁護士を指定できるわけではありません。
刑事事件の経験豊富な弁護士を、家族に派遣してあげるには、自分で弁護士を探す必要があります。
「刑事事件 弁護士」などとネットで検索することで、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士事務所を見つけることができるのではないでしょうか。
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取り調べに弁護士が同席できない場合でも、弁護士の出頭同行、接見、黙秘権、修正申立権、署名押印拒否権などをうまく活用して、取り調べに適切に対応していくことは可能です。
取り調べの不安がある方は、刑事事件の取り調べの実情にくわしい弁護士に、早めに相談に行きましょう。
なおアトム法律事務所では、24時間365日つながる相談予約受付窓口を設置しています。
- 警察から呼び出された。数日後に取調べを控えているので取り調べ対応のアドバイスがほしい
- 取り調べのための出頭するので、弁護士に同行してほしい
- 逮捕中で取り調べをうけている家族に、弁護士を派遣してあげたい
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