「警察から呼び出しを受けた」「家族が逮捕されてしまった」
そんな時、真っ先に頭をよぎるのは、密室で行われる取り調べに対する不安ではないでしょうか。
取り調べへの対処として、弁護士に立ち会ってもらいたいと考える方は多いです。しかし、現在の日本の法律では、取り調べに弁護士が「同席(立ち会い)」することは、原則として認められていません。
「それじゃあ、警察の言いなりになるしかないの?」と落ち込む必要はありません。弁護士が同席なしでも身を守る対策があります。
この記事では、日本の取り調べの現実と、不当な取り調べから身を守るための具体的な方法を解説します。
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取り調べに弁護士は同席・立ち会いできる?
弁護士の同席・立ち会いは原則不可
取り調べに弁護士が同席できれば、違法・不当な取り調べの防止に大きく役立ちます。しかし、日本の現行法では、取り調べに弁護人が同席する権利は明確に保障されておらず、実務上も原則として認められていません。
立会権を認めるべきだとする学説・意見もありますが、実務では警察・検察が同席を拒否し、弁護士が取り調べに同行したとしても「弁護士は取調室の外で待つしかない」というのが現実です。
弁護人の立会権を認める裁判はある?
無罪になった被告人が、「弁護人の立ち会いなしの取り調べを拒否し続けたことで逮捕されたため、そのような検察官の逮捕状請求・裁判官の逮捕発付は違法である」などとして、国を訴えた裁判があります。
この裁判では、弁護人が取り調べに同席する権利について言及されていますが、裁判所は弁護人立会権について否定的な見解を示しました。
選任した弁護人を取調べに立ち会わせる権利があると当然に解されるわけではなく,明文で弁護人の取調べ立会権を認める規定は存在しない上,最高裁判所による明確な判断も示されておらず,弁護人の取調べ立会権があるとの解釈は確立していない。
名古屋高判令和4年1月19日令和3年(ネ)第167号
この裁判所の判断の当否はさておき、実務の運用上、現状では、取り調べに弁護士が同席できる可能性は非常に低いものであるといえます。
取り調べに弁護士を同席・立ち会いさせるための条件は?
取り調べに弁護士が同席できるかどうかは、現状、現場の取調官が事案に応じて判断することになっています。
そのため、取り調べの際に、弁護士の同席が認められる条件があるとすれば、それは、取調官の同意を得るというものです。
取り調べ時における弁護人の立ち会い(同席)
現行制度
- 関連する規定は置かれていない。
- 実務上、検察官において、取調べ機能を損なうおそれ、捜査の秘密が害されるおそれ等を考慮して、事案に応じて適切に判断(略)
※1 法務省においては、弁護人を立ち会わせて取調べを実施した具体的な事例については把握していない。
法務省「資料5」https://www8.cao.go.jp/chosei/dokkin/pubcomm/m-01.pdf(2025.12.10現在)
取り調べに弁護士が同席・立ち会いなしでも身を守る対策は?
【逮捕された場合】「接見」を使う
日本の現行法では取り調べへの弁護士同席が原則認められないため、逮捕後の被疑者が自分の権利を守るためには、弁護士と直接面会できる「接見(接見交通権)」が最大の防御手段となります。
逮捕直後は、家族や友人との面会を禁止されることが多く、外部と完全に遮断された状態になります。この状況は、「捜査官の強い誘導」「ニュアンスの違う供述調書作成」などから、虚偽の自白が生まれやすい危険な環境です。そのため、唯一面会できる弁護士との接見が極めて重要になります。
弁護士接見では、以下のようなサポートが可能です。
弁護士接見の内容
- 取り調べの状況を確認する
- 取り調べでどのような質問をされたか確認する
- どのような供述をしたか確認する
- 困っていることや不安なことを確認する
- 今後の対応についてアドバイス
etc.
取り調べの内容を共有することで、弁護士は適切なタイミングで助言し、被疑者が不用意な供述をして不利になるリスクを大きく軽減できます。
実務上、逮捕後はすぐに取り調べが行われます。最初の取り調べで弁護士のアドバイスを受けることは難しいケースも多いですが、弁護士が早期に接見することで、不利な供述を避けるための戦略を立てることが可能になります。
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【逮捕されていない場合】取り調べ前に相談・出頭同行を依頼
逮捕されていない被疑者は、自宅で生活しながら警察・検察の呼び出し時に任意出頭し、取り調べを受けることになります。この場合、取り調べ前に弁護士へ相談することがもっとも効果的な防御策です。
事前に弁護士に相談することで、何を話すべきか、何を話さないべきかの整理や捜査官の典型的な質問と対応方針の説明などの助言をもらえます。事前に方針を持っておくことで、取り調べの場面で冷静に対応できるでしょう。
また、必要に応じて、警察署や検察庁まで出頭する際、弁護士に同行してもらうのがよいでしょう。取り調べに同席できなくても、取調室の近くで弁護士が待機することはできます。
取り調べの最中に弁護士の助けを借りたいと思ったときは、取調官に申し出て、すぐに弁護士と相談することが可能です。
なお、逮捕されていない被疑者については、原則として取調室を自由に退出することができます(刑事訴訟法198条)。そのため、在宅事件の被疑者は、取調室にとどまる義務はなく、いつでも取調室を退出することができます。
但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。
刑事訴訟法198条1項ただし書
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【逮捕あり/なし共通】黙秘権を行使して供述を拒否
取り調べに弁護士が同席できない場合、不利な供述をしてしまうリスクを軽減するためには、黙秘権を行使して供述を拒否することも検討すべきです。
黙秘権とは、自己に不利益となる供述を強要されない権利です(憲法38条1項、刑事訴訟法311条1項)。
黙秘権を行使するには、捜査官に「黙秘権を行使します」「弁護士に黙秘するように言われています」とだけ発言し、あとは黙っていればよいでしょう。
不利な発言をしないように、聞かれたことの一部だけ黙秘することも可能です。
ただし、事案によっては黙秘権行使によって捜査が長引く可能性もあります。具体的な事案について、どのような対応をとるべきかについては、事前に弁護士と相談しておくのがよいでしょう。
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【逮捕あり/なし共通】供述調書にサインしない
供述証拠とは、取り調べで話した内容を記録した書面で、犯罪認定の証拠になるものです。
取り調べに弁護士が同席できない場合、被疑者は一人で取り調べを受けることになるので、捜査官の誘導質問に乗ってしまい、自分では意図しない内容の供述調書が出来上がってしまうことがあります。
供述調書については、読み聞かせをうけて内容を確認したうえで、サインを求められます。サインをした後は、その供述調書の訂正をすることは原則不可能になります。
そのため、供述調書の内容が間違っている場合、サインをする前に訂正を求める必要があります。
ただし実際のところ、「今日のところは、これでサインしてほしい」などと言われ、供述調書の訂正に応じてもらえないこともあります。その場合は、供述調書への署名・押印を拒否してください。供述調書にサインをする前に必ず弁護士に相談してください。
供述調書の対応
- 供述調書の訂正を申立てる(訂正申立権)
- 供述調書への署名押印を拒否する(署名押印拒否権)
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・弁護士が教える怖い警察の取り調べへの対応法|録音や拒否はできる?
弁護士の取り調べへの同席・立ち会いに関するよくある質問
Q.海外では弁護士の取り調べへの立ち会いが認められてますか?
日本とは異なり、アメリカやイギリス、韓国などを中心に多くの国で、取り調べへの弁護士立ち会いが被疑者の権利として保障されています。
供述の任意性を担保し、不当な取り調べを防止するために、弁護人の立ち会いが「当然の権利」と考えられています。日本の制度は国際的に見ると厳しい運用といえるでしょう。
Q.日本で弁護人の取調べへの立ち会いは今後認められないんでしょうか?
日本弁護士連合会(日弁連)は、取り調べの透明性確保と被疑者の人権保護の観点から、取り調べへの弁護士立ち会いを明確な権利として法律に規定するよう継続的に提言しています。その取り組みとして、2021年には「取調べ立会い実現委員会」が設立されています。
現状は認められていませんが、国際基準や透明性の観点から、将来的には認められる可能性はあるでしょう。
Q.取り調べのための出頭同行について、弁護士費用はいくらかかりますか?
取り調べの出頭同行を依頼するのであれば、少なくとも着手金と出張日当がかかります。
弁護士費用には、着手金、成功報酬、出張日当、実費などがあります。
弁護士費用の具体的な金額については、弁護士事務所ごとに違いがあるので、依頼を検討している弁護士事務所に直接確認するのがよいでしょう。
アトムの解決事例(取調べへの出頭同行)
路上を歩いていた女性に声をかけてナンパしたが、無視されたことで背後から抱きつき胸を触るなどをした。強制わいせつの事案。
弁護活動の成果
出頭に同行し取り調べへのアドバイスを行った。被害者と宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。
Q.逮捕後の取り調べで弁護士を呼ぶにはどうしたらいいですか?
目の前にいる警察官や検察官に、「弁護士を呼んでください」と伝えれば、弁護士を呼ぶことができます。
具体的にどこの弁護士事務所の誰を呼べばいいのか分からない場合、「当番弁護士を呼んでください」と伝えるといいでしょう。
当番弁護士であれば、初回1回のみになりますが、逮捕直後に無料で呼ぶことができます。
関連記事
・逮捕後すぐ呼べる当番弁護士とは?制度の評判や呼び方・費用もわかる
Q.逮捕されて取り調べ中の家族に、弁護士を派遣するにはどうしたらいい?
いちばん手軽な方法としては、弁護士会に連絡をいれて、当番弁護士を派遣する方法です。
ただし、当番弁護士の場合、たまたまその日に当番をしている弁護士が派遣されるもので、自分で弁護士を指定できるわけではありません。
刑事事件の経験豊富な弁護士を、家族に派遣してあげるには、自分で弁護士を探す必要があります。
「刑事事件 弁護士」などとネットで検索すると、刑事事件の解決実績が豊富な弁護士事務所を見つけることができます。
取り調べの不安を弁護士に無料相談
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日本の法律上、取り調べへの弁護士同席・立ち会いは原則認められていません。
取り調べに弁護士が同席できない場合でも、弁護士の出頭同行、接見、黙秘権、修正申立権、署名押印拒否権などをうまく活用して、取り調べに適切に対たち応していくことは可能です。
取り調べの不安がある方は、取り調べが進んでしまう前に、一刻も早く刑事事件に強い弁護士にご相談ください。最初の対応が、その後の人生を大きく左右します。
アトムご依頼者様からの感謝のお手紙
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
相談したおかげで、自分自身が落ち着いて対応することができました。

(抜粋)事件を起こして警察の取り調べを受けることがかなり私の心身に苦痛をもたらし、もう何もかも終わりだと思ったこともありましたが、先生に相談させていただくうちに落ち着いて対応できるようになり、その結果、前科がつかない処分となり、本当によかったです。
前任の弁護士よりも動きが非常に早く、検察への出頭も同行して頂き大変心強かったです。

(抜粋)この度は出口先生、事務所の皆様、大変お世話になりました。今回の事故の件では最初は他の法律事務所の先生に依頼していたのですが、その先生とのやりとりに不安を抱えていたので他の法律事務所のお話も聞いた方がいいのかなと思ったのがお願いするきっかけでした。私は人身事故の加害者なので被害者の方と示談はもちろんの事、まずはなんとか連絡をつけたかった(前任の先生は動いてくれなかった)のですぐに動いて頂いたのも非常に心強かったです。
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- 警察から呼び出された。数日後に取り調べを控えているのでアドバイスがほしい
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