こちらの記事では、強制わいせつ事件における時効に関する情報をまとめています。
強制わいせつ事件の加害者となった場合、事態を早期に解決に導くためには、時効によらず早期に弁護士に相談し、示談を締結することが重要となります。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
強制わいせつ事件の時効には刑事と民事がある
強制わいせつ事件の時効には、刑事事件としての時効と民事事件としての時効があります。
刑事事件の時効(公訴時効)を迎えると起訴されることがなくなり、逮捕されたり裁判を受けることもなくなります。また民事事件の時効を迎えると、被害者から損害賠償請求を受ける可能性がなくなります。
まずは強制わいせつ罪の定義と、その時効について見ていきましょう。
強制わいせつ罪の定義
強制わいせつ罪については、刑法176条に以下のように定義されています。
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
刑法176条
具体的には、13歳以上の者に対し、同意なしに胸を揉む、陰部を触る、服を脱がしたり中に手を入れる等の行為を行った場合が該当します。13歳未満に対しては同意の有無にかかわらずわいせつ行為をした時点で同罪が成立します。
また、酒に酔った状態など、被害者を心神喪失もしくは抗拒不能の状態にしてわいせつな行為を行った場合は準強制わいせつ罪(刑法178条1項)が適用されます。これは罪名だけを見ると軽くも見えますが、実際には強制わいせつ罪と同じ刑罰が適用されます。
18歳未満の者に対し、「監護者であることによる影響力に乗じて」わいせつ行為を行った場合も、監護者わいせつ罪として強制わいせつ罪と同様の刑が科されます。
その他、強制わいせつではなく痴漢や盗撮に該当すると判断された場合は軽犯罪法や各都道府県の迷惑防止条例が適用されるケースもあります。
強制わいせつ事件における刑事の時効(公訴時効)
強制わいせつ事件の公訴時効は、刑事訴訟法250条の規定により7年と定められています。
また、強制わいせつによって死傷結果を生じさせた場合には、より重たい強制わいせつ致死傷罪(刑法181条)が成立し、公訴時効もより長い期間になります。
具体的には、被害者をケガさせてしまった場合には公訴時効は15年、被害者を死亡させてしまった場合には公訴時効は30年になります。
公訴時効期間は犯罪行為が終わった日を1日目とカウントして計算をします。
罪名 | 法定刑 | 公訴時効 |
---|---|---|
強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪・ 監護者わいせつ罪 | 6月以上10年以下の懲役 | 7年 |
強制わいせつ等致傷罪 | 無期または3年以上の懲役 | 15年 |
強制わいせつ等致死罪 | 無期または3年以上の懲役 | 30年 |
刑事事件の時効制度についてより詳しく知りたい場合には『刑事事件の公訴時効期間を一覧表で解説!|時効の不安は弁護士に相談』の記事をご覧ください。
強制わいせつ事件における民事の時効(損害賠償・慰謝料請求の時効)
以上は刑事的な手続きについて解説しましたが、以下は強制わいせつ事件事件を起こした場合、刑事事件の手続きとは別に存在する民事事件の手続きについて解説します。
強制わいせつは民法709条が定める不法行為にあたり、被害者は加害者に対して賠償請求をする権利があります。
ただしこの賠償請求権にも時効が存在します。被害者が加害者を知った時点から3年、事件が発生した時点からは20年というのが民事事件の時効であり、この期間を経過すると支払う義務がなくなります。
強制わいせつの時効をめぐる近年の動向
強制わいせつは被害者の心身に大きな傷を残す犯罪であり、特に幼少時の性的虐待などについては訴え出ることが困難でもあることから、近年、現状の公訴時効の7年の延長や撤廃を求める声が大きくなっています。
2017年に行われた刑法の改正では性犯罪全般の厳罰化が図られましたが、時効の撤廃などについては証拠の保存が難しいことなどがあり見送られました。そのため強制わいせつの時効は現在も7年となっていますが、近年の動向としてそのような流れがあることは覚えておくべきでしょう。
強制わいせつ事件は時効を待つよりも弁護士へ相談を
ここまでは強制わいせつ事件に適用される罪名と、その時効についてみてきました。それでは、強制わいせつ事件を起こしてしまった場合、その後の対応はどのようにすべきなのでしょうか。
時効成立を待つことのリスク
強制わいせつ事件を起こした場合、その時効が成立するのを待つことは賢明な判断とはいえません。強制わいせつは犯行を目撃された場合は現行犯逮捕されることもありますが、その後の捜査で証拠が見つかり後日逮捕されるケースもあります。
逮捕された時点で何もせず時効を待っていたとなれば、反省の態度が見られないとしてそのぶん刑事処分も厳しいものとなることが予想されます。また、時効である7年もの間、ずっと逮捕の危険を抱えながら日常生活を送ることは精神的にも非常に不安定なものといえるでしょう。
実際の事例をみても、2020年9月、大阪府において、7年前の女児に対する強制わいせつについて別の事件で逮捕された男性のDNA型が一致し、ちょうど時効の前日に起訴されたというケースがあります。
強制わいせつにより前科を付けないためにすべきこと
強制わいせつにより逮捕され前科がつくことを防ぐためには、時効が成立するのを待つのではなく、できる限り早い段階で被害者と示談を締結し、不起訴処分を得る、もしくは事件化を防ぐことが大切です。
示談を締結することで強制わいせつ事件の解決を図る
示談を適切に締結するためには、早期に弁護士に相談することが重要です。
示談により釈放や不起訴の可能性を高める
強制わいせつは被害者の存在する犯罪であるため、事態の解決には適切な被害者対応が重要になります。
ただし、強制わいせつ罪は以前は被害者の告訴を必要とする親告罪でしたが、2019年に被害者の負担軽減などの観点から法改正がなされ、現在では被害者の告訴を必要としない非親告罪となっています。
しかし、非親告罪であっても被害者の意思や示談の有無は重視されます。道義的にも被害者対応はきちんと行うべきですし、示談を締結することにより逮捕や勾留を回避し早期に釈放される可能性が高まるほか、その後の刑事処分においても裁判を行わない不起訴となる可能性も高くなります。
被害者と示談するためには早期に弁護士に相談する
強制わいせつ事件においては、被害者は加害者側に対して強い恐怖心を抱いていることが考えられます。対応を行うにあたっては被害者の心情に配慮し、細心の注意を払うことが求められます。
そうした事情もあり、強制わいせつ事件において示談を締結しできる限り早期に事態を解決するためには、まずは経験豊富な弁護士に相談することが重要です。