不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の証拠には「被害者や目撃者の証言」「防犯カメラ映像」「犯行時の指紋」などがあります。
不同意わいせつ事件は、客観的な証拠がなくても被害者の供述だけで逮捕されるおそれがある事件です。
犯行中の様子がカメラ映像に残っていたり、被害者に指紋が付着していたりすると、逮捕される可能性が高くなるでしょう。
- 不同意わいせつで逮捕されやすい証拠はどのようなもの?
- 不同意わいせつで証拠がない場合は逮捕されない?
この記事では、上記のような疑問を抱えている方向けに、不同意わいせつの証拠について詳しく解説していきます。
不同意わいせつ事件を起こしてしまい、今後どうなるのか不安な方は最後までお読みください。
目次
不同意わいせつ(旧強制わいせつ)で逮捕されやすい証拠とは
被害者の証言
被害者の証言は、不同意わいせつ事件が発覚するきっかけとなります。
目撃者がいて通報されたり、警察に現行犯逮捕されたりしない限り、被害者が申告しなければそもそも事件が発覚することはありません。
性犯罪は被害を申告しづらいという性質上、警察に届け出た被害者の主張が受け入れられやすい傾向があります。
被害者の証言の例
- 職場の同僚から飲み会の帰りに性被害を受けた
- 病院の診察室で医師・歯科医師からわいせつ行為をうけた
- 教員から性行為を強要された
そのため、被害者が警察に相談すると捜査が開始され、加害者に連絡が入る場合があります。
未遂であっても被害者の証言があれば、逮捕される可能性はあるでしょう。
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加害者と被害者に面識がない場合
全く知らない相手に不同意わいせつ行為をした場合には、被害者の証言だけで逮捕される可能性は低いでしょう。
しかし、相談を受けた警察は、防犯カメラの映像や目撃証言などを収集します。
その上で捜査の過程で犯人だと疑うのに十分な証拠が集まれば、逮捕されることもあり得ます。
加害者と被害者に面識がある場合
当事者間に面識がある場合には、不同意わいせつの被害者の証言が証拠となり、逮捕される可能性が高くなります。
とはいえ、実際には行為の時点で同意があったケースもあり得るため、捜査機関は慎重に事件を捜査します。
「被害者の証言」が証拠になるかどうかは、加害者と被害者との関係性や、知り合った経緯、過去の連絡の履歴、被害者が事件直後に家族や友人に相談した形跡があるかなどが総合的に判断され、逮捕の有無が決まります。
目撃者の証言
周囲に第三者がいる状況での不同意わいせつは、目撃証言が証拠となって逮捕される可能性が高いでしょう。
目撃証言が証拠になる不同意わいせつの典型例は、痴漢です。
痴漢行為に対しては、各都道府県の迷惑防止条例が原則適用されますが、悪質な犯行であれば不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪となる場合があります。
電車や駅など、公共の場所での痴漢は、第三者に目撃されやすい犯罪です。
被害者の証言に第三者の目撃証言が加わると、逮捕に繋がりやすいといえます。
痴漢と不同意わいせつ
公共の場所で被害者の胸や臀部を触る行為は、各都道府県の迷惑防止条例で規制されています。
しかし、身体を何度も撫でまわしたり、下着の下から陰部を直接触ったりすると、条例違反ではなく、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪になるのが実務の通例です。
痴漢で成立する犯罪について詳しく知りたい方は『痴漢はどのような犯罪になる?痴漢事件に強いアトム法律事務所』の記事をご覧ください。
防犯カメラの映像
公共の場所での不同意わいせつは、防犯カメラの映像が証拠となって逮捕に繋がる可能性があります。
夜中に背後から抱き着いて胸をもんだり、車の中で嫌がる相手にわいせつ行為をした場合には、一見誰にも見られていないように思えるかもしれません。
しかし近年、街中には至る所に防犯カメラが設置されており、犯行が記録されているケースは意外と多いものです。
撮影された顔や身体の特徴が一致していると、逮捕される可能性が高くなります。
公共の場所での不同意わいせつは、被害届の提出をきっかけに捜査が開始される可能性が高いでしょう。被害届が出された場合の対処法について詳しく知りたい方は『不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪で被害届を出されたときの対処法』の記事を合わせてご覧ください。
被害者に付着した指紋
犯行時に付着した指紋も、不同意わいせつの証拠となる場合があります。
任意捜査を受けている最中に採取された指紋と、被害者の下着や身体などに付着した指紋が一致すると逮捕される可能性が高くなるのです。
警察の捜査に対して当初は加害者が犯行を否定していても、指紋が一致したと言われてしまえば不利な状況となってしまいます。
任意捜査を受けている場合には、指紋の採取を求められても拒否することが可能です。
しかし、逮捕されている場合や身体検査令状と呼ばれる裁判所の令状がある場合には、拒否することはできません。
もっとも任意捜査の段階であっても、捜査に非協力的な姿勢を見せると、疑いを強めてしまう結果になりやすいため、可能な限りで協力すべきでしょう。
実際に犯行をしていて指紋を採取されたくない、採取された後の警察対応に不安があるなどの事情がある場合には、早い段階で弁護士に相談しておきましょう。
指紋の採取方法や採取された指紋のデータがどうなるのか詳しく知りたい方は『逮捕されるか不安…捕まるかもしれない時の対処法!指紋採取は強制?』の記事をご覧ください。
証拠がなければ不同意わいせつは逮捕されない?
証拠がなければ逮捕されない
不同意わいせつの証拠が全く存在しない場合には、逮捕されることはありません。
しかし、目撃証言や防犯カメラ映像などの客観的な証拠がなくても、被害者の証言が証拠となって後日逮捕される可能性はあります。
後日逮捕のためには「犯罪を疑う相当な理由」と「逮捕の必要性」が必要です(刑事訴訟法199条)。
警察から捜査を受けていて、被害者の証言が「犯罪を疑う相当な理由」であると判断されれば逮捕の可能性が高まります。
「逮捕の必要性」は「証拠隠滅のおそれ」か「逃亡のおそれ」のどちらかがある場合に認められます。
不同意わいせつで捜査されている間、事情聴取に応じなかったり捜査に協力しなかったりすると、「証拠隠滅のおそれ」か「逃亡のおそれ」があると判断されて逮捕されやすくなるでしょう。
証拠が見つかって後日逮捕されるタイミングは?
不同意わいせつの後日逮捕のタイミングについては、捜査機関にしか分かりません。加害者自身で逮捕のタイミングを知る方法はありません。
不同意わいせつの被害者の供述調書が有力な証拠とならず、逮捕されなかったとしても、事件は在宅捜査として継続している場合があります。
捜査の結果、不同意わいせつをしたと考えられる有力な証拠が見つかると、被疑者の逃亡を防ぐために逮捕される可能性が出てきます。
同意があったのに訴えられた場合の証拠とは?
相手の同意を得てわいせつな行為をしたのに、後になって「そのつもりはなかった」「同意はしてなかった」と訴えられた場合はどうすればいいのでしょうか。
同意があったのに不同意わいせつで訴えられるケースは以下が挙げられます。
同意があったのに不同意わいせつ罪で訴えられるケース
- 仲が悪くなって無理やりの行為だったと訴えられる
- 付き合う気がないと判断されて同意のない行為と訴えられる
- 性行為が交際相手などにバレて被害者として自己防衛している
- 示談金目的で同意をしたふりをしている
同意があったのに訴えられた場合には、当事者の関係性やわいせつ行為の態様などが証拠となるでしょう。
不同意わいせつ罪は、同意を得ることなくわいせつな行為をする犯罪です。
たしかに、同意書面や同意する旨の録音や動画がない状況では、性行為前後の状況や実際の同意の有無は当事者にしか分かりません。
しかし、その場合には、当事者がどのように知り合って何回会っているのか、被害者の身体に痣や傷ができていないかなどが総合的に判断されるでしょう。
不同意わいせつ罪での逮捕を防ぐために用意すべきものは?
不同意わいせつ罪での逮捕を防ぐためには、予め性行為前に同意書面を作成するか、性行為に同意していることが証明できる音声を録音することが理想です。
しかし、あまり現実的ではないうえ、性行為に同意していることが証明できる音声を録音していたとしても、録音していたこと自体が問題となることもあります。
たとえば、同意を得る場面だけでなく性行為の最中も録音していたような場合です。性行為中の音声を録音した場合、重大なプライバシー侵害につながりかねません。
実際には同意があったのに、不同意わいせつ罪で捜査を受けている場合には、冤罪を防ぐため弁護士へ相談することをおすすめします。
もっとも、相手は同意がなかったと主張していることになるので、取り調べでの発言には注意が必要です。できる限り早く弁護士に相談し、取り調べの対応や対処法について相談してください。
夫婦や恋人同士での不同意わいせつの証拠は?
夫婦や恋人間の性的行為が、不同意わいせつに該当するかを示すためには強力な証拠が必要です。パートナー同士であれば、日常的に性的接触をしていると推測されるためです。
不同意わいせつ罪は、夫婦や恋人であっても成立する犯罪です(刑法176条1項)。
パートナー同士の不同意わいせつの証拠としては、親族や友人に日頃からわいせつ行為について相談している連絡の履歴や、身体への暴行の形跡などが挙げられます。
被害状況によっては、逮捕されることもあるでしょう。
不同意わいせつで証拠が見つかったら、起訴されて有罪になる?
必ずしも起訴されて有罪になるわけではない
不同意わいせつで防犯カメラや指紋などの証拠が見つかっても、必ず起訴されるわけではありません。
これは同意なしに性交や強姦(レイプ)した場合も同様です。
起訴とは、検察官が刑事裁判が必要だと判断した場合の処分です。
特に不同意わいせつで被害者との示談が完了しているケースでは、処罰を与える必要がないと判断されやすく、起訴猶予の不起訴処分となる可能性があります。
また、不同意わいせつの証拠が被害者の供述のみで、捜査機関が不同意わいせつを立証する証拠が不十分だと判断するような場合は嫌疑不十分で不起訴となることもあるでしょう。
さらに、不同意わいせつの証拠は見つかったものの、犯人だと特定できなかったケースでは、嫌疑なしの不起訴で終了する可能性が高いでしょう。
不同意わいせつ(旧強制わいせつ)で不起訴になる理由や不起訴を獲得するポイントについて知りたい方は『不同意わいせつ(旧強制わいせつ)の不起訴獲得のポイントは?裁判を回避した実例は?』の記事をご覧ください。
起訴されて有罪になりやすいケース
不同意わいせつで証拠が見つかって起訴されやすいのは、次のようなケースです。
- 被害者との示談が不成立
- 余罪が多数
- 同種前科が多数
被害者との示談は不起訴処分を獲得するために重要ですが、被害者の処罰感情によっては示談交渉が難航することがあります。
最後まで被害者から許しをもらえずに示談が不成立になると、起訴される可能性が高くなります。
また、不同意わいせつや不同意性交などの余罪が多数ある場合には、全ての被害者と示談しきれない場合があるでしょう。
仮に全て示談を成立させたとしても、事件の態様や犯行の悪質性によっては、起訴される場合もあり得ます。
日本の刑事事件では、起訴されると、99%の確率で有罪判決を受けることになります。
刑事処分を回避し、前科をつけないようにするためには、不起訴処分を目指す必要があります。
不同意わいせつ罪の刑罰
不同意わいせつ罪の刑罰は「6月以上10年以下の拘禁刑」です。罰金刑は規定されていないため、有罪判決を受けると執行猶予が付かない限り実刑となります。
なお、2023年の刑法改正前の事件であれば、強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪に問われます。
- 不同意わいせつ罪:2023年7月13日以降に起こした事件
- 強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪:2023年7月12日以前に起こした事件
不同意わいせつ罪と強制わいせつ罪の違いについて詳しく知りたい方は『不同意わいせつ罪とは?逮捕されたらどうなる?強制わいせつ罪との違いを解説』の記事もご覧ください。
同意を得ずに性交をした場合には、事件の日付や態様によって「不同意性交等罪」「強制性交等罪」「準強制性交等罪」「強姦罪」「準強姦罪」のいずれかに問われる可能性があります。
同意を得ずに性交した場合の刑罰について詳しく知りたい方は『不同意性交等罪とは?いつから適用される?強制性交との違いについて解説』の記事をご覧ください。
不同意わいせつの証拠でお悩みの場合は弁護士に相談ください
不同意わいせつ事件を起こし、証拠がないから問題ないと思っていても、警察の捜査によっては突然容疑がかけられたり逮捕されたりする可能性があります。
不同意わいせつ事件で今後の処分がご不安であれば、弁護士までご相談ください。
弁護士であれば、警察の取り調べの対応方法をアドバイスすることが可能です。また、被害者との示談交渉を代行し不起訴処分や刑の減軽を目指します。
アトム法律事務所は設立当初から刑事事件をあつかっており、不同意わいせつ(旧強制わいせつ)罪の解決実績も豊富な弁護士事務所です。
被害者の方との示談交渉についても、誠意をもってあなたの謝罪の気持ちをお伝えし、示談成立にむけて尽力します。性犯罪の再発防止についても、刑事弁護人の視点から、必要な対策を提示することもできます。
また不同意わいせつのえん罪事件では、不同意わいせつ罪の構成要件に該当しないことを主張するなど、検察官や裁判官を説得する弁護活動をおこないます。
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