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盗撮の初犯|逮捕・起訴されて懲役や罰金になる?

盗撮の初犯

2023年7月13日、盗撮を処罰する「撮影罪」が新たに導入されました。

盗撮行為は初犯でも逮捕されて懲役刑や罰金刑に処されることはあるのでしょうか。

この記事では、盗撮の初犯で実刑になる可能性についてや、そもそも盗撮の成立する要件について、刑罰の相場などを解説します。

盗撮により前科が付くことを回避するためには、不起訴処分を得ることが重要であり、そのためにすべきことなどについても解説していきます。

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盗撮とは?どのような行為が盗撮になる?

盗撮で検挙される人員の数は近年増加傾向にあります。2019年の検挙人数は3,953人でしたが、これは9年前の2010年に比べると2倍以上の数字となっています。※

盗撮が急速に身近な犯罪となった背景にはスマートフォンの普及などがあり、盗撮は厳罰化傾向にあります。2023年の法改正では「撮影罪」が新たに導入され、盗撮は従来よりも厳しく処罰されるようになりました。

撮影罪が導入される前の盗撮行為については、基本的には各都道府県の迷惑防止条例もしくは刑法の住居侵入罪、軽犯罪法違反などが適用されます。

※ (法務省「性犯罪に関する刑事法検討会 第6回会議(令和2年9月24日)」配布資料「盗撮事犯の検挙状況(PDF)」より)

撮影罪における盗撮の刑罰(法定刑)

盗撮は原則、撮影罪に該当します

撮影罪とは、人の性的姿態等を同意なく撮影する罪のことです。性的姿態等とは、次の3つを指します。

  • 性器や臀部、胸部などの性的な体の部位
  • 性的な部位を隠すために着用している下着
  • わいせつな行為や性交等がされている間の姿態

電車内でスカートの中を盗撮したり、性交中の様子を同意なく撮影したりすると撮影罪に該当する可能性があります。

次の各号のいずれかに掲げる行為をした者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。

一 正当な理由がないのに、ひそかに、次に掲げる姿態等(略)を撮影する行為

イ 人の性的な部位(略)又は人が身に着けている下着(略)のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分

ロ イに掲げるもののほか、わいせつな行為又は性交等(略)がされている間における人の姿態

性的な姿態を撮影する行為等の処罰(略)に関する法律2条

撮影罪の法定刑は「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」です。

迷惑防止条例における盗撮の刑罰(法定刑)

撮影罪が導入される前(2023年7月12日まで)の盗撮に関しては、本的に迷惑防止条例が適用されます

一例として、東京都が定める「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条を見ると、「正当な理由なく、次に掲げるものをしてはならない。」と定められています。

(2) 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所

ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)

東京都「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」5条

迷惑防止条例は刑罰も各都道府県ごとに異なります。東京都の場合、上記に違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とすることが定められています。

都道府県によっては「公共の場」における盗撮のみを規制している場合もあります。
このとき、住居などの私有地の中や学校などにおける盗撮行為は「公共の場」ではないとして立件することができないことがあります。

刑法130条住居・建造物侵入罪における刑罰(法定刑)

撮影罪が導入される前の盗撮は、刑法130条に定められている住居・建造物侵入罪が適用されることもあります。

正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

刑法130条

住居・建造物侵入罪は正当な目的がない場合の他人の私有地などへの侵入を禁じています。

盗撮は当然に正当な目的にはなり得ないので、住居・建造物侵入罪も適用され得るわけです。

住居・建造物侵入罪が認められた場合、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。

軽犯罪法における刑罰(法定刑)

撮影罪が導入される前の盗撮は、軽犯罪法1条23号が定めるいわゆる「のぞき行為」が適用されることもあります。

正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者

軽犯罪法1条23号

軽犯罪法違反に問われた場合、1日以上30日未満の拘留、もしくは1000円以上1万円未満の科料となります。

盗撮で適用されうる主な法律

撮影罪条例刑法130条軽犯罪法
主な行為同意のない性的な撮影盗撮行為不法侵入のぞき行為
刑罰拘禁刑又は罰金懲役又は罰金懲役又は罰金拘留又は科料

盗撮に関連するその他の罪

盗撮を行うために他人の住居などに不法に侵入した場合、刑法第130条の住居侵入罪となり、3年以下の懲役または10万円以下の罰金となります。このようなケースは牽連犯(けんれんぱん)といい、軽犯罪法違反より重い罪である住居侵入罪の方が適用されます。

また、18歳未満の児童が衣服の全部または一部を着けない状態で、性器などが露出されている様子を撮影したものなどを児童ポルノと呼ぶことが児童ポルノ禁止法2条に定められています。

上記の状態の児童を盗撮した場合、児童ポルノの製造にあたるため、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。児童ポルノでの具体的な違法行為や刑罰、逮捕後の対応方法などについて詳しくは『児童ポルノで逮捕される事例や逮捕後の流れ。弁護士相談のメリット』の記事をご確認ください。

盗撮の初犯で逮捕された後の流れ

逮捕の流れ

盗撮の通常逮捕と現行犯逮捕

逮捕には通常逮捕現行犯逮捕の二種類があります。それぞれどういった手続きで行われる逮捕なのか解説していきます。

通常逮捕は後日逮捕とも呼ばれる形式で、刑事訴訟法に基づき、一定階級以上の警察官や検察官などが逮捕状を請求し、裁判官が逮捕の理由と必要性を認めた場合のみ逮捕令状を発行し、それによって逮捕が行われます。

次に現行犯逮捕があります。犯行中や犯行直後の犯人を逮捕することをいい、犯人を間違える可能性は低いため、逮捕状なく一般人でもできる(私人逮捕)ことが特徴ですが、逮捕後はすぐに警察官などに犯人を引き渡す必要があります。その後は最寄りの警察署に連行され、取り調べを受けることになります。

盗撮の場合は現行犯逮捕が多いですが、防犯カメラの画像などから盗撮の様子が発覚し、後日逮捕にいたるケースもあります。

平成31年の警視庁の統計によれば、同年の都内の刑法犯のうち、通常逮捕と現行犯逮捕の割合はおよそ1:1となっています。

現行犯逮捕と通常逮捕の違い

現行犯逮捕通常逮捕
令状不要必要
逮捕権誰でも警察
逮捕される可能性高いあり

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在宅事件とは?初犯の盗撮は逮捕されても釈放されることが多い

初犯の盗撮事件では、現行犯逮捕されたとしても、当日~2日ほどで釈放されて在宅事件になるケースが多いです。

在宅事件とは、被疑者が逮捕・勾留による身柄拘束を受けずに捜査が進められる事件のことです。

そもそも初めから逮捕されずに在宅事件として手続きが進むこともあります。

在宅事件であれば、捜査進行中であっても被疑者は普通に日常生活を送ることができます。ただ、捜査機関から呼び出しには応じなければなりません。
もしも呼び出しに応じなかった場合、罪証隠滅や逃亡のおそれがあるとみなされて身柄拘束をされてしまう可能性があります。

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逮捕勾留から起訴前の釈放までは最長23日間

次に、逮捕された後の流れをみてみましょう。逮捕されてから起訴・不起訴の決定が行われるまでは、最長で23日間の身体拘束が続く可能性があります。

逮捕後、事件を検察官に引き継ぐ検察官送致(送検)という手続きが48時間以内に行われます。検察官の判断により24時間以内に勾留請求が行われ、勾留質問などのあと、原則として10日間身柄が拘束されます。必要に応じ、さらに最長で10日間の勾留延長が行われます。

捜査の結果、検察官は起訴・不起訴を判断します。不起訴となった場合は釈放されますが、起訴されると略式裁判もしくは正式裁判が開かれ、罰金刑懲役刑などの刑罰が決定されます。

盗撮の初犯で前科がつくとどうなるのか

刑事処分に処される

一般的には初犯(これまでに刑罰を受けたことのない者が罪を犯した場合)であれば処分は軽くなる傾向があり、それは盗撮の場合であっても同じです。

ただし、行為の悪質性や反省の色が見られないといった事情によっては、起訴され前科がつく可能性が考えられます。盗撮事件においては罰金刑となるケースが比較的多いですが、有罪判決を受けた事実である前科は罰金刑でもつくことはしっかりと認識する必要があります。

また盗撮の常習犯については、東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」8条7項では、常習として盗撮行為をした場合は「2年以下の懲役及び100万円以下の罰金」と定めています。

例えば、初犯の盗撮犯を逮捕したところ、スマートフォン内から別の盗撮の証拠が見つかるというようなことがあります。このような場合は、常習性があるとみなされて初犯であっても処分が重くなることが考えられます。

解雇等の懲戒処分が下されることがある

盗撮の初犯で起訴されて有罪判決が下された場合、職場とは関係が無い私生活上の犯罪行為であっても、著しく企業秩序を乱したと判断されれば懲戒解雇事由に当たる可能性があります。
しかし、まだ起訴されていない捜査段階であれば懲戒解雇がなされる可能性は低いでしょう。また、起訴されたとしても、通常は判決が出るまで職場は処分を保留にしてくれます。

ただ、逮捕・勾留によって身柄拘束をされてしまった場合なら、無断欠勤したことを理由に解雇されてしまう可能性はあります。無断欠勤にならないようにするためにも、逮捕・勾留後は家族や友人に職場への連絡をお願いすることをおすすめします。

なお、公務員の場合であれば「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」は原則失職します(国家公務員法76条、38条1号、地方公務員法28条4項、16条1号)。執行猶予判決であっても失職します。
罰金刑で終わったとしても、国民の信頼を寄せられている立場である公務員は民間企業よりも厳しい基準の懲戒処分を受けることが予想されます。

被害者と示談を締結して解決すれば、不起訴で終わって前科がつかない可能性が高まります。盗撮で解雇・懲戒処分をされないようにするためにも、ただちに弁護士に示談交渉の進め方について相談することをおすすめします。

盗撮の初犯で前科をつけないためにすべきこと

盗撮により逮捕され前科がつくことを防ぐためには、できる限り早い段階で被害者と示談を締結し、不起訴処分を得る、もしくは事件化を防ぐことが重要です。

示談により釈放や不起訴の可能性を高める

盗撮事件は被害者の存在する犯罪であるため、事態の解決には適切な被害者対応が重要になります。示談を締結することにより、逮捕や勾留を回避し早期に釈放される可能性が高まるほか、その後の刑事処分においても裁判を行わない不起訴となる可能性も高くなります。

盗撮等の性犯罪は性依存症の治療が必要となる可能性あり

盗撮をはじめとした性犯罪で捕まった人の中には、無自覚のうちに性依存症となっている人もいます。

依存症が認められたからといって不起訴になったり、処分が軽く済んだりするわけではありません。しかし、弁護士は医療機関やカウンセラーを案内し、その治療を行うことにより、再犯防止に向けた取り組みとして示すことができます。

被害者と示談するためには早期に弁護士に相談する

盗撮は性犯罪であり、被害者は加害者側に対して強い恐怖心を抱いている可能性があります。そのため、対応には被害者の心情に配慮し、細心の注意を払うことが求められます。

そうした事情もあり、盗撮事件において示談を締結しできる限り早期に事態を解決するためには、まずは経験豊富な弁護士に相談することが重要です。

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