詐欺罪の立証は、証拠にもとづいておこなわれます。詐欺の証拠となるものは、供述や、通話記録、振込記録などです。これらの証拠が不十分であると、立証が難しい場合もあります。
証拠不十分であれば、詐欺で立件されることはありませんが、ある程度の証拠がそろっている場合、起訴されて有罪判決を受けることもあるでしょう。組織的犯罪であれば、初犯でも懲役実刑になることも多いものです。
この記事では、詐欺の証拠、逮捕や起訴の可能性、弁護士の対策などについて解説しています。
詐欺罪の立件、詐欺罪の証拠について気になる方は、最後までご覧ください。
目次
詐欺罪の証拠とは?逮捕や起訴の可能性は?
詐欺罪とは?
詐欺罪は、被害者の財産をだまし取る犯罪です。
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
刑法246条
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪の構成要件は、①人を欺く行為、②錯誤、③交付、④利益の移転、⑤故意などです。
これらの要件に該当する証拠がある場合、詐欺罪で逮捕される可能性があります。
詐欺罪の構成要件
- 人をあざむく行為
財産処分を動機づける「重要な事項」について、嘘をつくこと - 錯誤
被害者が、犯人の嘘を信じ込んだ状態になること - 交付
犯人や第三者に、被害者が自分の意思で、財産を差し出すこと - 利益の移転
財物(お金etc.)や利益(債権etc.)などが犯人や第三者に移転すること - 故意
1~4についての認識・認容(内心の問題)
これらの詐欺罪の構成要件に該当する証拠がある場合、起訴されて、有罪判決が出されれば、10年以下の懲役に処せられます。
なお、詐欺罪は未遂の場合でも処罰対象となります。被害者を騙して金銭などを得ようとしたものの、相手に気づかれたケースなどが詐欺未遂罪の典型例です。
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詐欺罪の立証は難しい?
詐欺罪の立証は難しいと言われていますが、それは犯人の内心を証明できる証拠を収集するのが難しいからです。
詐欺罪に問われるのは、犯人が被害者をだます時点で、「被害者がお金を差し出したいと思うように、嘘をついて、だまして、お金を受け取ろう」という意図があったことが証明された場合です。
詐欺罪の立証では、このような犯人の内面の認識・認容についての証拠が必要になるので、犯罪の証明が難しいとされています。
たしかに、詐欺の被疑者として逮捕されたとしても、「詐欺をするつもりは無かった。お金を借りた時は、必ず返すつもりだった」などと供述すれば、詐欺罪の意図、詐欺罪の故意は否定できてしまいそうです。
詐欺罪の証拠になるものは?
犯人の内面を立証できる証拠は、犯人の言い分(供述証拠)だけではありません。
電話の録音、メール・ラインなどの被害者とのやりとり、銀行口座の取引履歴、契約書類、経済的に困窮していた事実などが動かぬ客観的証拠となることもあります。
警察や検察は捜査のプロなので、あらゆる証拠を収集してきて、あなたの置かれた状況を想像し、詐欺罪を犯したのかどうかが検討されることになるでしょう。
①詐欺の故意の証拠(一例)
- 本当は赤字続きで自転車操業だったので、商品をわたせないと分かっていた。しかし、顧客に商品を購入させ、先払いで代金を受領した。
- その後、顧客に対する詐欺で逮捕。
- 家宅捜索によって、預金通帳の履歴、会社の帳簿、被害者とのメールなどが捜査されて、詐欺の故意が認定された。
②詐欺の故意の証拠(一例)
- 本当はお金を返すつもりはなかったのに、結婚をほのめかして、結婚できると誤解させたうえで相手に多額のお金をみつがせた。
- その後、結婚詐欺で逮捕。
- 相手とのLINEのやりとりなどから、嘘を並び立てていることがばれて、詐欺の故意が認定された。
たしかに、詐欺罪の立証は難しいとはいわれています。
しかし、詐欺罪の証拠がそろえば、立証されてしまいます。あなたが詐欺罪の犯人として逮捕されて取り調べを受けることになった場合、ただ単に「詐欺をするつもりは無かった」と主張したとしても、ほかの証拠があれば起訴される可能性もあるのです。
また、たんに見通しが甘かっただけで、本当に詐欺をするつもりはなかった場合でも、詐欺の被害届が提出されたら、捜査が進められることもあるでしょう。ある程度、証拠が押さえられた場合は、呼び出されて取り調べを受けることもあるでしょう。
警察の取り調べの対応方法について知りたい方は『警察の事情聴取(取調べ)をどう乗り切る?不利にならない対応と今後の流れ』の記事をご覧ください。
詐欺罪で逮捕される確率は?証拠があっても不起訴になる?
詐欺罪で逮捕される可能性は?
令和3年の詐欺罪の身柄率は、約47.5%です(令和4年 犯罪白書)。
刑法犯全体の身柄率が約34.5%であることからすると、詐欺罪は、逮捕される可能性が比較的高い事件であるといえそうです。
では、どのような詐欺事件が逮捕されているのでしょうか。
逮捕は、①嫌疑の相当性、②逮捕の必要性という2つの要件が認められてはじめて、実施されます。
詐欺の証拠が発見された場合、①嫌疑の相当性が認められることはあるでしょう。ですが、その場合でも、②逮捕の必要性という要件が認められなければ、逮捕されることはありません。
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逮捕を回避するための方法
逮捕を回避するには、逃亡のおそれや、証拠隠滅のおそれがないということを捜査機関や裁判所に理解してもらえるよう交渉する必要があります。
事件によっては、自首を検討する、被害者の方との示談を早急に進めるなどの対応が必要となるでしょう。
弁護士が自首に同行する「自首同行」も可能です。まずはご自身の件で自首は成立しうるのか、弁護士に相談してみることをおすすめします。『自首同行のメリットと必要性は?自首同行の流れや弁護士費用のポイント』参考にしてみてください。
詐欺罪で起訴される可能性は?
令和3年に詐欺罪で起訴された確率は、約52.7%です(令和4年 犯罪白書)。
刑法にある犯罪の起訴率が、約36.8%なので、詐欺罪の起訴率は比較的高いといえそうです。
刑法犯の起訴/不起訴
- 起訴
62396人 - 不起訴
107210人
詐欺罪の起訴/不起訴
- 起訴
8653人 - 不起訴
7764人
※「令和4年 犯罪白書」https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/69/nfm/n69_2_2_2_4_0.html(2023.9.14現在)
詐欺の証拠が無い場合は起訴されませんが、詐欺の証拠がある場合でも起訴されないことはあります。証拠不十分の場合や、起訴猶予の場合は、不起訴になります。
起訴を回避するための対策
起訴を回避するには、検察官を説得して不起訴処分を獲得するという対策が考えられます。
詐欺の証拠がある場合でも、証拠が不十分なときや、よい情状があれば、不起訴処分を獲得できるケースがあります。
ニュース
特殊詐欺事件でATMから現金を引き出す、いわゆる出し子役を務めたとして窃盗などの疑いで逮捕された男性について、仙台地検は不起訴処分にしました。(略)
不起訴の理由について仙台地検は、電気計算機使用詐欺については「十分な証拠が確保されなかった」、窃盗については「事件に関する事情を考慮して起訴猶予した」とコメントしています。
2023.7.28 khb東日本放送「特殊詐欺「出し子」で逮捕の男性 仙台地検が不起訴処分に」https://www.khb-tv.co.jp/news/14968327(2023.9.15現在)
詐欺罪の成立要件について証拠が足りないことや、示談成立、被害弁償の完了、再発防止策に取り組んでいることなどを主張して、不起訴処分の獲得を目指すことになるでしょう。
不起訴処分の場合、その後、刑事裁判にかけられることはなく、刑罰を科されることはなくなります。
起訴・不起訴について詳しく知りたい方は『起訴/不起訴ってなんですか?(嫌疑なし・嫌疑不十分・起訴猶予)』の記事をご覧ください。
詐欺の証拠があっても示談成立で不起訴?
示談とは、加害者が被害者に対して、謝罪を申し入れ、示談金を支払い、被害者からゆるしを得て、刑事事件の被害にまつわる賠償問題について和解をすることです。
示談をすると、民事上の賠償責任を解消できるだけでなく、刑事責任が軽くなる可能性もでてきます。
示談では示談金を支払う必要がありますが、示談金は詐欺被害のお金を返金するだけではなく、慰謝料の意味合いも有します。
そのため、示談金の金額は、詐欺で得た金額や、そのお金に少し上乗せした金額になることが多いでしょう。被害者の処罰感情が強い場合は、高額になる傾向もあるでしょう。
詐欺の証拠があり起訴された場合の示談の効果
詐欺被害の金額が多額にのぼる、計画性がある、組織的犯行であるなど、わるい情状がたくさんある場合は、起訴されて刑事裁判がひらかれることもあります。
起訴される可能性はあっても、示談が無意味というわけではありません。示談の成立は、よい情状として裁判官に考慮してもらえます。よい情状がたくさんあれば、検察官の求刑よりも刑罰が軽くなる、懲役の実刑判決ではなく執行猶予判決になるといった可能性を高めることができます。
詐欺事件の場合、たとえば以下のような情状証拠(刑罰を軽減するための有利な証拠)があるとき、懲役の年数や、執行猶予の有無に影響があるといえるでしょう。
詐欺の情状証拠
- 示談書
詐欺の被害者と示談が成立したことを表す書面 - 領収書
詐欺の被害弁償をおこなったことを表す領収書 - 嘆願書
被害者が詐欺事件をおこした本人の処罰・厳罰を望まない旨の書面 - 親族・上司の上申書・誓約書
親族や上司が詐欺事件をしたご本人を監督する旨を誓約する書面
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詐欺の証拠に関連してよくある質問
Q.詐欺の立証は難しいですか?
詐欺罪は、「欺く行為」をした時点で、犯人に被害者をだます故意があったことを証明する必要があるので、立証が難しいといわれています。
投資詐欺であれば投資を持ちかけた時点、寸借詐欺であれば借金を申し込んだ時点、無銭飲食であれば食事を注文した時点で、詐欺の故意が必要です。
投資を持ちかけた時点では配当できる見込みがあった、借金した時点ではお金を返せる見込みがあった、注文時点では支払うつもりだったなどの主張に信ぴょう性があれば、詐欺の立証は難しいものでしょう。
その主張に信ぴょう性があるかどうかは、証拠をもとに判断されます。
ただし、詐欺罪の故意(内心)の証拠は、被疑者取り調べの内容だけではなりません。物的証拠であっても、詐欺の故意の証拠になります。あなたの経済状況を証明できる証拠、取引記録などの証拠によっては、詐欺の故意が立証されることもあるでしょう。
Q.どこからが詐欺になるのですか?
詐欺罪は、人を欺(あざむ)いて、錯誤(さくご)におちいらせ、財産を処分させて、犯人や第三者に移転させる行為をした場合に成立する犯罪です。その結果、詐欺被害が発生することになります。
詐欺事件として問題になるのは、返済できる見込みがないのに借金名目でお金をだまし取ったり、リターンが出る見込みがないのに投資をもちかけて資金をだまし取ったり、恋愛感情を利用してお金などをだまし取ったりしたケースです。
いつかは返そうと思っていた場合でも、実際に返済の見込みが立たないようなケースでは、資産や被害者とのやりとりなどが証拠となり、詐欺罪で立件される可能性もあるでしょう。
また、振り込め詐欺の受け子・かけ子も、組織の末端であろうと詐欺罪で立件されます。被害者がだまされたふりをして、警察に捜査協力をしている場合、その場に現れたあなた自身が証拠になって、詐欺未遂罪で逮捕されることもあるでしょう。
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Q.詐欺罪の弁護士費用はいくらですか?
弁護士費用の内訳は、法律相談料、着手金、成功報酬、出張日当、実費などです。
弁護士の法律相談の費用については、初回無料や、30分~1時間程度で5,000円~10,000円ほどが相場になるでしょう。
なお、アトム法律事務所では、警察から呼び出しがきた、詐欺事件で逮捕されたなどの警察介入事件では、初回30分の弁護士の法律相談料は無料0円です。
着手金は、弁護活動に着手する対価となる費用です。通常、事件の難易度や、逮捕事件かどうかによって、料金が設定されていることが多いでしょう。
成功報酬は、弁護活動の成果に対する対価となる費用です。通常、得られた成果によって料金設定があります。
弁護士費用について、よく分からないところがある場合、弁護士相談の際、担当の弁護士に直接たずねるなどして、確認しておきましょう。
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Q.詐欺罪の示談金はいくらですか?
詐欺罪の示談金は、被害者の希望額や加害者が実際に支払える金額によって、変わります。
ただ詐欺罪の示談金の相場としては、被害金額があまり大きくない場合は、被害金額に10万円~50万円程度を上乗せした金額になることもあるでしょう。
アトム法律事務所が過去に取り扱った詐欺事件の示談金相場は、約50万円前後でした。
もっとも、被害者側の要求と、ご自身の資力との兼ね合いで、交渉によって決めていくことになります。
詐欺の証拠がおさえられた…詐欺に強い弁護士に相談したい
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- 詐欺で逮捕される?何が証拠になる?
- 詐欺の証拠がおさえられた…どう対応すればよい?
- 詐欺の証拠がある場合でも、不起訴や刑罰の軽減を目指せる?
このような詐欺の証拠にまつわる不安をお持ちの方はいませんか。
詐欺罪は、証拠がある場合、逮捕される可能性も高く、事案によっては初犯であっても懲役の実刑判決が出される可能性がある犯罪です。
ですが、刑事事件にくわしい弁護士の弁護活動によって、不起訴や刑罰の軽減を目指せる側面もあります。
警察に詐欺の被害届が提出される前であれば、被害者の方との示談成立による早期解決を目指す方法もあるでしょう。
一度、あなたの詐欺事件の不安について、アトム法律事務所の弁護士に相談してみませんか。
アトム法律事務所は、刑事事件に注力する弁護士事務所として設立された経緯があります。設立当初からの積み重ねがあるので、解決実績も豊富です。
弁護士相談ご希望の場合は、24時間365日つながる法律相談予約窓口にお電話ください。
警察から呼び出された、逮捕されたなど警察介入事件では、初回30分の弁護士相談が無料0円です。お気軽にお電話ください。
早期の弁護士相談が、早期解決の秘訣です。