
取り調べ中に、警察から「上申書を書いてください」と言われ、戸惑った経験はありませんか?
「書いたほうがいいのか?」「本当は書きたくない」「あとから問題にならない?」といった疑問を持つ方は少なくありません。
上申書は、事件に関わる立場の人が、自ら、気持ちや事実関係を記載して提出する文書です。
上申書には、有利になるものもあれば、不利になるものもあります。
この記事では、上申書について、必要になる場面、効力、書き方などを解説します。
警察に上申書を書かされそうになった場合、拒否できるかについても言及するので、ぜひ最後までご覧ください。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は原則有料となります。
目次
警察等に出す「上申書」とは
上申書とは?上申書は誰が書く?
上申書(じょうしんしょ)とは、警察・検察・裁判所などの公的機関に対して、自発的に、情報を提供する文書のことです。
上申書を書くのは、事件にかかわる人物です。たとえば、以下のような人が上申書を書きます。
上申書を書く人(例)
- 被疑者(事件の容疑者。加害者のこと)
- 被害者
- 被疑者の親、上司
- 被疑者の弁護士
など
有利になる上申書・不利になる上申書
刑事事件で上申書が問題になるのは、おもに次のような場面です。
上申書には、被疑者にとって有利になるものと、不利になるものがあります。
上申書の種類(一例)
書く人 | 時期 | 目的・場面 | 効力 |
---|---|---|---|
被疑者 | 取り調べの時 | 犯行への関与を明らかにするため、書かされる。 | 有罪、量刑に影響(不利) |
被害者 | 示談成立の後 | 被疑者の厳罰を求めない意思の表明。 | 処分軽減に影響(有利) |
被疑者の親・上司等 | 処分が決まる前 | 被疑者の人柄、釈放の必要性等を伝える。 身元引受・監督を誓約。 | 処分軽減に影響(有利) |
弁護士 | 処分が決まる前 | 示談交渉の状況を伝える。 処分について意見する。 | 処分軽減に影響(有利) |
警察の取り調べ時に書かされる上申書は、被疑者にとって不利になる可能性があります。
警察が上申書を書かせる3つの理由とその効力
取り調べの際、警察が被疑者に上申書を書かせることがあります。
その目的は、犯行への関与を明らかにするためです。
取り調べでは通常、警察が被疑者の話を「供述録取書」としてまとめます。これは、被疑者から聞き取った内容を、警察官が書き起こす形式の供述調書です。
しかし、以下の3つの場面では、警察は、被疑者自身に「上申書」を書かせることにこだわる傾向があります。
警察が上申書を書かせる3つの場面
場面 | 上申書の例 |
---|---|
自白に信ぴょう性を持たせたい場面 | 殺人罪の容疑者に、犯行場所を書かせる。凶器の絵を描かせる |
次回の検挙に備える場面 | ストーカー行為の被疑者に「被害者に二度と近づきません」と書かせる |
事件処理を円滑に終えたい場面 | ケンカの当事者に「互いに被害届を出しません」と書かせる |
自白に信ぴょう性を持たせるための上申書
(例:殺人)
警察が、被害者自身に「上申書」を書かせる場合、自白に信ぴょう性を持たせる意図があります。
たとえば、「犯行場所や凶器の特徴を自ら書いた」という体裁を整えることで、自白の信ぴょう性を高めることができます。
このような上申書が有力な証拠となり、起訴されたり、裁判で裁かれたりする可能性があります。
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次回の検挙に備えるための上申書
(例:ストーカー)
今回は見送る場合でも、将来的な検挙・立件に備えて、「被害者に二度と近づきません」といった内容の上申書を書かせることがあります。
これは、ストーカー行為などの再発が懸念されるケースでよく見られます。
今回は注意で済んだ場合でも、このような上申書が残ることで、次回、法律の要件を満たすこととなり、罰則が科される可能性があります。
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事件処理を円滑に終えるための上申書
(例:ケンカ)
また、検察への送致を行わずに、警察の判断で捜査打ち切りとする場合も、当事者双方に上申書を書かせることがあります。
たとえば、警察は、喧嘩の当事者に「お互いに被害届を出さない」と書面を書かせた後、事件の捜査を終わりにすることがあります。
なお、このような上申書に「必ず、捜査を打ち切らなければならない」といった法的効力はありません。
しかし、実務では、捜査打ち切りになる可能性は非常に高いです。
捜査打ち切りとなれば、自分が立件されないメリットはありますが、相手を立件してもらえない側面もあります。
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上申書を書きたくない!提出後に効力を否定できる?
上申書は「拒否」できる?
結論から言えば、「書かない選択」は可能です。
取り調べ時の上申書は、自発的に書くというよりも、警察の取り調べ担当官の指示どおりに書かされるケースが少なくありません。
上申書の提出には、法的な義務はありません。
警察が強く勧めてきた場合でも、「拒否は可能」です。書き始めた場合でも、途中で書きたくないと思ったら、無理に書き進める必要はありません。
書かないことで、法的に罰せられることはありません。書きたくない気持ちがあるなら、はっきりと断ることが重要です。不安があれば、弁護士を通じて対応しましょう。
やっていないのに犯人扱いされてお悩みの場合は、『やってないのに犯人扱いされた!警察への対処法は?冤罪・無実を証明するには?』の記事もご覧ください。
上申書は「撤回」できる?
一度、上申書を提出してしまった場合、その内容をあとから撤回するのは、とても難しいのが実情です。
撤回の意思を伝えたい場合は、新たに、別の上申書を作成して提出する方法も考えられます。
ただし、前回に提出した上申書の内容と矛盾する場合、一般的には、あとから提出した上申書のほうが、信用されにくいというリスクがあります。
上申書を「書かされた」ときの対応は?
「警察に言われるままに書いてしまった」「本当は言いたくないことまで書かされた」とモヤモヤする方も少なくありません。
警察に上申書を「書かされた」時の対処例としては、次のようなものが考えられます。
書かされたときの対処例
- 書いた日付、担当警察官の名前をメモしておく
- 上申書のコピーまたは写真を手元に保管する
- 第三者機関(弁護士会、法テラス)へ相談する
被疑者に「有利」な上申書とその効力
上申書の効力
被疑者にとって有利な上申書もあります。
「上申書にどれだけの影響力があるのか?」
これは、多くの方が気にするポイントです。
上申書の効果として、不起訴や刑罰の軽減につながることが期待できます。
ただし、被疑者に有利な上申書にも、法的拘束力はないため、過度な期待には注意が必要です。
上申書の種類
以下のような上申書は、被疑者の処分の回避、処分の軽減につながる効果が期待できます。
上申書を書く時期と目的
書く人 | 時期 | 目的・場面 |
---|---|---|
被害者 | 示談成立の後 | 被疑者の厳罰を求めない意思の表明。 |
被疑者の親・上司等 | 処分が決まる前 | 被疑者の人柄を伝える。 身元引受・監督を誓約。 |
弁護士 | 処分が決まる前 | 示談交渉の状況を伝える。 処分について意見する。 |
こちらでは、被害者の上申書、被疑者の親・上司等の上申書について、説明します。
被害者の上申書
被害者の上申書には、減刑嘆願書や被害届取り下げ書、告訴取消書などがあります。
被害者の上申書(一例)
- 嘆願書
「加害者をゆるし、厳罰を望まない」旨を記した書面 - 被害届取り下げ書
「加害者をゆるし、被害届を取り下げる」旨を記した書面 - 告訴取消書
「加害者をゆるし、刑事告訴を取り消す」旨を記した書面
これらの上申書は、被害者の処罰感情の低下をあらわす書面であるため、加害者の処分軽減につながる効果が期待できます。
被害者の被害届取下げについて詳しくは『被害届を取り下げてもらう方法│取下げ可能な期間・示談金相場は?』をご覧ください。
刑事告訴取り消しについて詳しくは『刑事事件の告訴とは?刑事告訴された場合の流れと対処方法を解説』をご覧ください。
被疑者の親・上司等の上申書
被疑者の親、上司などは、被疑者の普段の人柄や反省の様子を伝えたり、被疑者の身元引受人となる旨を誓約したりする上申書を作成します。
早期釈放を目指す場合には、釈放させたい理由も記します。
たとえば、薬物依存や性犯罪の再発を防ぐ治療を受けさせるために、釈放させたいといった理由です。
また、逮捕・勾留されているご本人が、一家の大黒柱、会社の稼ぎ頭である場合、私生活や事業の継続に大きな支障が出ることを具体的に説明することで、釈放の必要性を訴えることができます。
このように、被疑者の親・上司等の上申書も、被疑者にとって有利な効果が期待できます。
上申書の書き方
もしも上申書を書くことになった場合、以下のポイントを意識しましょう。
書き方のポイント
- なるべく事実に即した具体的な内容を書く
- 感情だけでなく、事実関係や経緯も記録する
- 虚偽の記載は絶対に避ける(偽証罪などのリスクも)
市販のテンプレートやネット上のサンプルをそのまま使うと、不正確な記載になることがあります。内容によっては不利益を被る可能性もあるため、安易な記述は避けましょう。
上申書について弁護士ができるサポート
弁護士は、上申書の作成のサポートのほか、弁護士自身が上申書を作成して、被疑者の処分軽減のために尽力します。
弁護士がサポートできること(例)
- 上申書を提出すべきかどうかの助言
- 記載内容のチェックや文案の作成サポート
- 上申書を提出して、警察・検察への対応をおこなう
上申書の作成のサポ―ト
上申書の作成や提出は、非常にデリケートな問題です。
迷ったり不安を感じたりしたときは、弁護士に相談するのが最も安心です。
弁護士自ら上申書を作る
被疑者の弁護士は、被疑者の処分の回避、軽減のために、適宜、以下のような意見書を提出します。
弁護士の上申書(一例)
- 逮捕回避の意見書
- 実名報道回避の意見書
- 勾留阻止の意見書
- 不起訴処分意見書
逮捕回避の上申書
たとえば、弁護士が自首同行をする際、逮捕回避の上申書をたずさえて警察に提出することで、「逃亡や証拠隠滅のおそれがなく、逮捕の必要はない」と訴えるケースがあります。この書面には、今後の生活・勤務先の状況、身元引受人の存在などを記載し、逮捕しなくても捜査可能である旨を丁寧に説明します。
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実名報道回避の意見書
また、逮捕や起訴のタイミングで実名報道される可能性があるため、弁護士が捜査機関に対して、実名報道を控えるよう求める上申書を提出することもあります。
勾留阻止の上申書
そのほか、被疑者の早期釈放を目指す場合には、ご家族などの上申書とあわせて、弁護士自身が勾留を阻止するための上申書を作成し、検察官や裁判官に提出して説得を図ります。
万が一、勾留が決定してしまった場合でも、弁護士はその決定を不服として準抗告(不服申立て)を行い、裁判官の判断を再度求めることが可能です。
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不起訴処分意見書
さらに、弁護士は「不起訴処分を求める意見書(不起訴処分意見書)」を提出し、刑事処分を回避するための働きかけを行います。
この時点で示談が成立していれば示談書も提出しますが、示談交渉がまだ進行中の場合でも「示談交渉経過報告書」を作成することで、被疑者が誠実に示談に取り組んでいる姿勢を示し、処分の軽減を目指します。
このように、弁護士が作成する各種意見書や上申書は、被疑者の処分を回避・軽減するうえで非常に重要な役割を果たします。
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警察対応・上申書の不安は弁護士に相談を
まとめの一言
警察の言うままに上申書を書いてしまったけれど、「これで良かったのか?」と不安を感じる方は少なくありません。
大切なのは、「上申書の提出を強制されることはない」という事実を理解すること。そして、少しでも内容に疑問があれば、できるだけ早く弁護士に相談することです。
また、弁護士に依頼すれば、被害者の方の嘆願書、親戚や上司の方からの上申書、弁護士の意見書など有利な上申書をもって、不起訴や刑罰軽減を目指せる可能性もあります。
自分ひとりで悩まず、専門家と連携して、後悔のない対応をしていきましょう。
アトムの弁護士の解決事例
こちらでは、過去にアトム法律事務所で取り扱った刑事事件について、プライバシーに配慮したかたちで一部ご紹介します。
弁護士の上申書で処分回避(死亡事故)
車と歩行者による死亡事故。青信号に従って車が交差点に進入したところ、赤信号を無視して死角から飛び出してきた歩行者を避けきれず衝突し、歩行者は死亡した。
弁護活動の成果
遺族対応を誠実に行い、検察官に対しては現場検証、信号サイクル表等をもとにした上申書(意見書)を提出。その結果、嫌疑不十分で不起訴処分となった。
示談の有無
-
最終処分
不起訴
弁護士の上申書で早期釈放(痴漢)
電車内で横に座った女性の太ももを触るなどし、降りる際にも身体に触れ、現場で取り押さえられて逮捕された。迷惑防止条例違反の事案。
弁護活動の成果
受任後、裁判官に上申書(意見書)を提出したところ、勾留請求が却下されて早期釈放が叶った。また、被害者との示談締結により、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
弁護士の上申書で処分回避(殺人・傷害)
家族間でトラブルになった後、車で帰ろうとした際に、身内が車に乗り込んでくる途中で発車させた。この行為が危険視され、殺人未遂の容疑で逮捕された。
弁護活動の成果
捜査機関の誘導により、殺意を認める供述調書が作られていたため抗議文を提出。傷害罪に罪名変更となった。また、被害者に謝罪と賠償を尽くして示談を締結した結果、不起訴処分となった。
示談の有無
あり
最終処分
不起訴
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アトムの弁護士の評判・依頼者の声
刑事事件に強い弁護士選びには、実際に依頼したユーザーの口コミを見ることも効果的です。アトム法律事務所が過去に解決した、刑事事件のご依頼者様からいただいた感謝のお手紙の一部を紹介しますので、ぜひ弁護士選びの参考にしてください。
被害者様に嘆願書(上申書)までいただき、精神的にも支えてもらいました。

本当に先生には、大変お世話になりありがとうございました。精神的にも、支えられ、先生のアドバイスがなければノイローゼになっていたと思います。誠実な対応や的確なアドバイス又被害者の方の嘆願書まで頂く事が出来、感動致しました。困難な事例だったと思いますが、粘り強く1つ1つ解決して頂きました。値段は高かったのですが、アトムさんにお願いして本当に良かったと思いました。温かい人柄で、今まで支えていただき本当にありがとうございました。
職場に不利益がないよう上申書(意見書)も作成してくれました。

この度は、野尻先生には、本当にお世話になりました。勾留請求却下、嫌疑不十分以上での不起訴の獲得のため、色々な事をして頂きました。検察への働きかけはもちろんのこと、私が職場において不利益を被ることがないように意見書の作成もして頂きました。おかげさまで、逮捕され捜査対応となったことにより存在した偏見の目がなくなり、職場での立場も回復しました。今後も大変な案件はたくさんあると思いますが今後とも野尻先生の御活躍を祈念させて頂きます。本当にお世話になりました。ありがとうございました。
アトムの弁護士相談:24時間予約受付中
アトム法律事務所では現在、弁護士相談のご予約を24時間受付中です。
また、警察沙汰になった事件では、初回30分無料で弁護士相談が可能です。
- 警察に逮捕された
- 警察から呼び出しがあった
- 検察に起訴すると言われている など
くわしくはお電話でオペレーターにおたずねください。
万一、不利な上申書を書かされてしまった後でも、刑事事件に強い弁護士に相談することで、挽回できる可能性もあります。
アトム法律事務所は、2008年創業以来、警察・検察の捜査を受けている加害者側の弁護活動に注力してきました。
刑事事件の解決実績が豊富な弁護士集団です。
刑事事件でお悩みの方は、是非一度、アトム法律事務所の弁護士までご相談ください。