
2023年7月13日、盗撮を処罰する「撮影罪」が新たに導入されました。
「軽犯罪法違反」と聞くと大した罪にならないと感じる方も多いと思います。しかし、軽犯罪法違反で有罪になると前科がつき日常生活に大きな支障が生じます。
この記事では、軽犯罪法違反になる行為やよく問題になるケースを具体的にご説明します。不起訴となるための弁護活動も詳しくお伝えします。

※ 無料相談の対象は警察が介入した事件の加害者側です。警察未介入のご相談は有料となります。
目次
軽犯罪法違反とは?
軽犯罪法違反違反に該当する行為とは?
軽犯罪法違反になる行為は、以下のとおり、軽犯罪法1条1号から34号に規定されています。
道徳規範に違反する程度の比較的軽微な犯罪でも、放置すると重大犯罪に発展するおそれがあるため処罰対象としている点に特徴があります。
軽犯罪法1条規定の犯罪行為
号数 | 軽犯罪法違反に該当する行為 |
---|---|
1号 | 邸宅・建物等潜伏 |
2号 | 凶器携帯 |
3号 | 侵入具携帯 |
4号 | 浮浪 |
5号 | 粗野・乱暴 |
6号 | 消灯 |
7号 | 水路交通妨害 |
8号 | 変事非協力 |
9号 | 火気乱用 |
10号 | 爆発物使用等 |
11号 | 危険投注等 |
12号 | 危険動物解放等 |
13号 | 行列割込み等 |
14号 | 静穏妨害 |
15号 | 称号詐称・標章等窃用 |
16号 | 虚偽申告 |
17号 | 氏名等不実申告 |
18号 | 要扶助者・死体等不申告 |
19号 | 変死現場等変更 |
20号 | 身体露出 |
21号 | (削除) |
22号 | こじき |
23号 | 窃視(のぞき) |
24号 | 儀式妨害 |
25号 | 水路流通妨害 |
26号 | 排せつ等 |
27号 | 汚廃物投棄 |
28号 | つきまとい等 |
29号 | 暴行等共謀 |
30号 | 動物使嗾(しそう)・驚奔 |
31号 | 業務妨害 |
32号 | 田畑等侵入 |
33号 | はり札・標示物除去等 |
34号 | 虚偽広告 |
軽犯罪法違反行為の刑罰は?
軽犯罪法違反に該当する行為をすると、拘留または科料で処罰されます(軽犯罪法1条)。未遂犯は処罰対象外です(刑法44条、8条)。
- 拘留
1日以上30日未満の期間、刑事施設に拘束される刑罰(刑法16条) - 科料
1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収される刑罰(刑法17条)
なお、情状により、刑の免除、または、拘留及び科料が併科される可能性があります(軽犯罪法2条)。
拘留・科料は軽い罪と考えがちですが、どちらも前科になります。前科がつくと就職など様々な面で不利益が生じます。軽犯罪法違反行為をしてしまい前科がつくことを避けたい場合には弁護士に相談することをおすすめします。
関連記事
軽犯罪法違反で逮捕・勾留される可能性は?
軽犯罪法違反行為のみを理由に逮捕・勾留される可能性は低いです。
刑事訴訟法上、軽犯罪法のような拘留又は科料にあたる罪について逮捕ができるのは、被疑者が定まった住居を有しない場合、または正当な理由がなく出頭の求めに応じない場合に限られています。
刑事訴訟法199条1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(略)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。
もっとも、絶対に逮捕されないとは言い切れません。なぜなら軽犯罪法違反行為をした場合でも、別の罪名で逮捕されるケースがあるからです。
その典型例が、撮影罪が導入される前の盗撮です。盗撮行為は、軽犯罪法1条23号違反の他、迷惑防止条例違反に該当する可能性があります。東京都の場合、盗撮行為の法定刑は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」です。
迷惑行為防止条例違反で逮捕・起訴され有罪判決を受けると、軽犯罪法違反より重く処罰されるおそれがあります。
このような事態を防ぐため、盗撮の疑いをかけられたら、できる限り早く弁護士にご相談ください。
弁護士は、早期釈放を求める意見書やご家族による身元引受書を提出します。また、犯行の具体的内容、被害状況を分析し処罰の必要性が低い旨を説明し、不起訴処分を求めます。
関連記事
軽犯罪法違反で検挙後の流れは?
職務質問などをきっかけに軽犯罪法違反で検挙されると、最寄りの警察署に任意同行を求められます。電話で警察から呼び出しを受けることもあります。
警察署では、取り調べ(事情聴取)が行われ供述調書が作成されます。「やったことを反省し、今後はもう同様の行為は行わない」という旨の上申書の記入が求められることもあるようです。写真や指紋、DNA検査用の唾液などをとられ、携帯していた凶器などは没収(所有権の放棄)されることが一般的です。
これらは任意での捜査ですので、拒否することもできますが、不必要に警察に食ってかかるような態度をとってしまうと問題が拡大し、追及が厳しくなったり取り調べが長時間化することもあるので注意が必要です。
取り調べ等がスムーズに終われば、たいていはそのまま帰宅が許されます。パトカーで自宅まで送られたり、家族などの身元引受人に迎えに来てもらう必要がある場合もあります。
その後は、在宅事件として捜査書類が検察に送られ(書類送検)、1か月ほど経つとまた捜査機関から連絡があり、起訴・不起訴の最終処分が決定します。
起訴するかどうかは検察官が判断します。起訴されてしまうと有罪となり前科がつく確率が極めて高いですが、変な争い方をしなければ不起訴(起訴猶予)で済むことも多いです。被害者がいる類型で不起訴を得るためには示談することも重要です。
関連記事
よく問題になる軽犯罪法違反のケース
①窃視(のぞき)
「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」には、軽犯罪法1条23号違反(窃視)が成立します。
例えば、他人の住宅敷地内に侵入して浴場内をのぞき見た場合、軽犯罪法違反と住居侵入罪(刑法130条前段)の2つの罪が成立します。
なお、18歳未満の児童だと知って盗撮した場合、児童買春・児童ポルノ禁止法によって処罰される可能性があります。盗撮内容が児童ポルノに該当する場合、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されるおそれがあります(児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項)。
【コラム】盗撮行為は軽犯罪法違反?迷惑防止条例違反?
軽犯罪法1条23号の「のぞき見」には盗撮行為も含まれます。また、盗撮行為は各都道府県の迷惑防止条例でも規制されています。では、軽犯罪法違反と迷惑防止条例違反の違いは何なのでしょうか?
以前は「公共の場所」での盗撮は迷惑防止条例違反、「公共の場所以外」の盗撮は軽犯罪法違反という対応がされていました。
しかし、現在では、迷惑防止条例における盗撮行為の規制場所が拡大されています。
例えば、東京都迷惑防止条例では、公共の場所以外の住居、学校や会社のトイレ・更衣室等も新たに盗撮行為の規制場所に加えられました(参考・警視庁HP)。
したがって、例えば、職場の女子トイレに小型カメラを設置し利用者を撮影すると、東京都の場合は迷惑防止条例違反になります。
これに対し、盗撮行為の規制場所が公共の場所に限定されている自治体もあります。このような自治体では、職場内での盗撮行為は迷惑防止条例違反にならず、軽犯罪法違反として処罰される可能性があります。
関連記事
②つきまとい等
「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えるような仕方で他人につきまとった者」には、軽犯罪法1条28号違反(つきまとい等)が成立します。
「不安若しくは迷惑を覚えるような仕方」でつきまとったといえるかどうかは、時刻、場所、つきまとった時間等の事情を総合的に考慮して判断されます。
例えば、深夜に人通りの少ない通りで被害女性の後ろを物陰に隠れながら無言で長時間追いかける行為は、本罪に該当します。
【コラム】つきまとい行為は軽犯罪法違反?ストーカー規制法違反?
つきまとい行為が反復継続して行われ、かつ、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、それが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充たす目的であった場合、ストーカー規制法違反が成立します。ストーカー規制法違反が成立すると、軽犯罪法違反(つきまとい等)は吸収されます。
ストーカー行為の法定刑は、禁止命令等に違反していない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です(ストーカー規制法18条)。
禁止命令に違反してストーカー行為をした場合の法定刑は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金です(ストーカー規制法19条1項)。
なお、つきまとい行為は迷惑防止条例によって処罰される可能性もあります。東京都の場合、ねたみや恨みなど悪意の感情に基づき反復してつきまとい行為をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金で処罰されます。
関連記事
③身体露出
「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」には、軽犯罪法1条20号違反(身体露出)が成立します。
「公衆にけん悪の情を催させるような仕方」は、行為主体、露出部位・程度、行為の場所等を総合的に考慮し、一般人が不快感を覚えるかどうかを基準に判断されます。
本罪に該当する行為でも、それが一般人の羞恥心を害する程度に至ると公然わいせつ罪(刑法174条)が成立します。例えば、陰部をことさら露出する行為は公然わいせつ罪に当たります。
関連記事
④虚偽申告・業務妨害
「虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者」には、軽犯罪法1条16号違反(虚偽申告)が成立します。
また、「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」には、軽犯罪法1条31条違反(業務妨害)が成立します。
軽犯罪法の虚偽申告や業務妨害に該当する犯罪の典型例は、「警察鬼ごっこ」、俗に「ポリ鬼」と呼ばれる行為です。「ポリ鬼」は、虚偽の110番通報をした後、警察に捕まらないよう逃げるといういたずらです。未成年者が面白半分で行うケースがありますが、これは歴とした犯罪です。
虚偽通報が多数回にわたるなど悪質性の高いケースでは、刑法233条の偽計業務妨害罪が適用される可能性もあります。偽計業務妨害罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
関連記事
⑤凶器携帯・侵入具携帯
「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」には、軽犯罪法1条2号違反(凶器携帯)が成立します。
また、「正当な理由がなくて合かぎ、のみ、ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」には、軽犯罪法1条3号違反(侵入具携帯)が成立します。
職務質問で警棒、スタンガン、金属バット、などが見つかるケースが凶器携帯の典型例です。護身用であっても「正当な理由」と警察は判断してくれません。カバンに入れて持ち歩くだけでなく、乗っている車の中から見つかって検挙されるケースも少なくありません。趣味のアウトドアで使うナイフなども、車に常備してあれば軽犯罪法で検挙される可能性があります。
軽犯罪法違反の弁護ならアトム法律事務所へ
ここでは、弁護士に軽犯罪法違反の弁護を依頼するメリットをご紹介します。
軽犯罪法違反の弁護はアトムにお任せください!
- 逮捕回避・早期釈放
- 不起訴による前科回避
- 示談による早期解決
弁護士への相談が早いほど軽犯罪法事件がスピーディーに解決し、平穏な生活に戻れるのも早くなります。
アトム法律事務所は刑事事件に注力する事務所としてこれまでに数多くの軽犯罪法違反事件を解決してきた経験と実績があります。


早期の示談で不起訴獲得
軽犯罪法違反のうち、盗撮・つきまといなど被害者のいるケースでは、不起訴となるため早期の示談成立が非常に重要です。
示談交渉は、刑事弁護の経験豊富な弁護士への依頼が必須です。
弁護士であれば、被害者の精神的苦痛をやわらげつつ、加害者の刑事処分を軽くするバランスのとれた示談を締結することが可能です。
例えば、盗撮のケースであれば、被害者に今後一切近寄らないと誓約する条項を盛り込むなどの配慮を行います。
関連記事
軽犯罪法違反にとどまる旨の主張で逮捕・起訴を回避
軽犯罪法違反にとどまる行為が、より重い犯罪として検挙されてしまうケースは少なくありません。
例えば、電車内での痴漢行為は迷惑防止条例違反や不同意わいせつとして検挙される場合が多いです。しかし、より詳しく状況を分析すれば、軽犯罪法1条5号違反(粗野・乱暴)にとどまるケースもあります。
また、暴言は、名誉毀損罪や恐喝罪など刑法犯として検挙されるケースが多いです。しかし、実質は軽犯罪法1条5号違反(粗野・乱暴)に過ぎないケースも存在します。
その他にも、建造物損壊罪や器物損壊罪として検挙された行為が、軽犯罪法1条33条違反(はり札・標示物除去等)に過ぎない事案、詐欺罪として検挙されたが軽犯罪法1条34条違反(虚偽広告)にとどまる事案など様々なケースが考えられます。
弁護人は、これらの事案で被害状況や具体的な行為態様を分析し、軽犯罪法違反にとどまる旨を説得的に主張します。その結果、逮捕・起訴を回避できる可能性が高まります。
少年事件にも対応
軽犯罪法違反事件は未成年者が当事者となるケースも少なくありません。未成年者の刑事事件は、少年事件として扱われます。
少年事件は原則としてすべて家庭裁判所に送られます。少年事件では、再犯のおそれをいかに低下させるかが最終処分を軽くするポイントです。
アトム法律事務所の弁護士は少年事件にも対応しております。少年が自分自身で犯行原因や再犯防止策について考えを深められるよう弁護士がしっかりサポートします。
また、少年の交友関係などの改善にも努めます。被害者のいる事件では、示談にも尽力します。
お子さんが軽犯罪法違反で検挙され刑事事件弁護士をお探しの方は、ぜひアトム法律事務所の弁護士にご相談ください。
関連記事
・少年事件の流れを弁護士がわかりやすく解説|逮捕されたら弁護士に相談
・未成年が盗撮したら逮捕される?逮捕後の流れ|示談すれば処分は軽くなる?
アトム法律事務所は軽犯罪法違反の解決実績多数!
アトム法律事務所の弁護士は、軽犯罪法違反の事案を数多く解決してきました。以下は解決実績の一部です。
不起訴を獲得したケース
同僚と旅館に宿泊した際、女性用露天風呂にビデオカメラを差し向けて同僚女性を撮影しようとしたケース。迷惑防止条例違反(盗撮)で逮捕され、のちに軽犯罪法違反に変更された事案。
弁護活動の成果
弁護活動を尽くし不起訴処分を獲得した。
依頼者のお手紙
不起訴を獲得したケース
コンビニエンスストアのトイレに盗撮目的で侵入し、携帯電話機を上からかざして被害者女性を盗撮して、後日警察から呼び出され事情聴取を受けたケース。建造物侵入罪、軽犯罪法違反の事案。
弁護活動の成果
被害店舗から嘆願書を取得し、被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。不起訴処分となった。
事件化を防いだケース
経営する事務所の更衣室とトイレに小型カメラを仕掛け、従業員女性の着替えや用便の様子を盗撮した事案。被害者に気付かれ弁護士を介して連絡がきたケース。刑事事件化前に受任。
弁護活動の成果
被害者に謝罪と賠償を尽くし、宥恕条項(加害者を許すという条項)付きの示談を締結。刑事事件化せず事件終了となった。